幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件

雪玉 円記

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Act.6 教団騎士団との戦い

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 ネレンミア殿が帰ってから、俺たちは忙しくしていた。
 御館様への報告から始まり、俺たちは拠点防衛の支度を整えていったのだ。
 まず非戦闘員の使用人の皆さん。希望した人には時期が来るまでは実家に帰省してもらうとの御館様のご指示があったらしく、ゲオルギオス様がその旨を通達された。
 だが今の所、使用人さんたちは全員留まっている。
 元鬼剣士の庭師のじいさま曰く、そんな根性なしは我らが家中には一人としておらん、らしい。
 戦える使用人たち……ぶっちゃけ、騎士団にも籍がある使用人たちのことだが、騎士団の騎士達と連携して色々な準備を整えていった。
 魔法防御の構築、物理的防御設備の建築、非常食・魔法薬・魔道具の作成。
 そして、これまでに増して熱の入った訓練。
 何故、戦時中にも等しい準備を進めているのかというと、全てはマナ・ユリエ教団が絡んでいるからだ。
 リリアンヌ奥様からの書簡に、こう書いてあるものがあったのだ。


〝恐らく、教皇猊下は聖戦を宣言するかもしれません。
 聖戦とは、世界樹とユグドラシル様の御身をお守りするために、帝国から教団と騎士団に与えられている免罪符です。
 聖戦を宣言し、皇帝陛下からの承認を得られれば、教団側は例え負けたとしても敗戦の咎を全て帝国が肩代わりします。
 勝った場合も、相手側からの怨嗟や他国からのそしりを、見当違いのことと逆に責め立てる権利を有している……。
 フィオデグリオの民はそう教育されます。
 そのため、聖戦となれば教団騎士団の士気は高いものになるでしょう。
 フィオデグリオとマナ・ユリエ教団は、教団の存在意義は全て世界樹のためにあると考えています。……最も、リアンちゃん……ユグドラシル様から見れば、人間の勝手な独りよがりに過ぎないのでしょうけれど。
 また、教団騎士団は全員魔法騎士です。その中でも団長や部隊長の攻撃魔法の腕はクリストファーちゃんに匹敵します。
 くれぐれも皆、油断しないでくださいね。〟


 世界樹の聖女として教団に所属した経験があるリリアンヌ奥様。
 そして、みなしごから聖女の護衛兼影武者に昇りつめた、元教団騎士団所属の母さん。
 お二人の連名で署名が入った手紙に、皆認識を新たにした。せざるを得ないだろう。
 なんだ、剣やら槍やらの腕は最低でもジャック殿クラス以上しかいなくて、魔法の腕は本気出したルーイ殿クラス以上しかいないって。
 というわけで俺は大いなる危機感を覚えた。なので、他の騎士と同じく毎日毎日訓練に明け暮れることにした。
 クリストファー様にお伺いを立てると、かなり真面目な顔で訓練漬けを許してくれた。
 クリストファー様もエウラリア様と一緒に、防衛魔法陣を張ったり忙しかったので、別行動もやむなしだ。
 その間、クリストファー様とリアンの護衛は妖精ズが分担してくれた。
 リアンを守るために色々忙しくしているのを汲んでくれたらしい。ついでとばかりに、防衛魔法にアレコレ口を出しても来るらしいが。
 そんな日々を一ヶ月ばかり過ごしたある晩。すっかり寝入っていたのだが、不意に意識が持っていかれた。

「ん?」

 きょろきょろと周りを見渡す。
 なんだかトレントたちに周囲を囲まれている。だが攻撃してくるような意図は一切感じない。俺も丸腰なので攻撃されても困るのだが。
 正面の一際デカいトレントが、幹にある虚のような口を開いた。
 ていうかこいつ、ボストレントの一本じゃないのか!?

『……ユグドラシル様の若君を託された人間よ、我はユグドラシル様の眷属である』
「は、はあ……」

 重厚な老人のような声だった。
 俺は今見ているこの光景を夢と判断した。今まで魔物どころか、普通の飼育用動物とも直接話をしたことすらないのだから。
 ボストレントは目っぽい虚を剣呑にすぼませ、更に続ける。

『身の程を知らぬ人間共が若君を狙い、貴様らのねぐらに夜襲を仕掛けんとしている。よくよく用心せよ』
「っ、夜襲!?」

 なんてことだ。隣国フィオデグリオに戻る時間を考慮しても、教皇はすぐに派兵を決めたことになるじゃないか!
 素早く防衛準備をすることを決めたゲオルギオス様と、それを了承した御館様の判断は適切だったとしか言いようがなくなる。

『もう彼奴らは我らが森を通り過ぎておる。猶予はそれほどないと心得よ』
「……分かりました。助言、感謝します」
『うむ。若君を守れよ、人間』

 その言葉を最後に、視界一面を風に飛ぶ木の葉に覆われた。
 思わず腕で目を庇う。
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