蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

31. 義弟キリロスとの決闘

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 決闘当日、屋敷の前には使用人たちが集まり、ざわめきと緊張が空気を満たしていた。

 決闘場には、対戦者のカテリーナとキリロス、審判を務めるアレクシオス。証人として、義母カリスタと義妹ゼノビアの姿もあった。

 キリロスの名は、すでに「若き天才剣士」として広まっていた。
 まだ十一歳ながら剣術の才に恵まれ、強化魔法の精度は成人並みだった。
 さらに、カテリーナの背丈を超えるほどの体格を持ち、将来を嘱望されていた剣士だった。
 ただ、その実力を鼻にかけた態度はしばしば問題となり、アレクシオスからも度々叱責を受けていた。

「……強化魔法を含め、魔法の使用は一切禁止する。剣技のみでの勝負とし、先に三本先取した者を勝者とする。結果に従い、敗者は勝者に謝罪し、遺恨はここで解消する。――双方、異論はないな?」

「はい!」
「はい!」

 二人がほぼ同時に答えた。

「まず一本目の試合の武器だが、同じ木剣にするか? それとも、それぞれが用意した刃引きの剣、どちらにするか?」

「私はどちらでも。姉上に選ばせても構いませんよ」
「わ、私も、どちらでも」

 キリロスは肩をすくめながら、やれやれといったポーズを取り、カテリーナを見下ろした。

「姉上、兄上からいただいた剣でないと不安でしょう? それしか使えないんですから」

 カテリーナは一瞬、鋭い目で弟をにらんだが、口を開くより先にアレクシオスが声を上げた。
「では、公平を期して、一本目は同じ木剣を使用する」

 二人は無言で木剣を取り、ゆっくりと構えた。

「……何をやっても無駄なんだよ、姉上は!」

――ふぅ……。
 カテリーナは挑発には乗らず、静かに深呼吸し、集中を高める。

「始め!」

 号令と同時に、キリロスが先に動いた。
 上段から勢いよく斬りかかる。

――ヒュッ!

 だが、カテリーナはわずかに身をひねり、軽やかにそれをかわした。

「っ!?」

 キリロスの剣は空を斬り、彼はよろけてバランスを崩した。
 カテリーナは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに構えを戻す。

「このぉっ!」

 キリロスは苛立ち、連続して斬りかかった。
 しかし、カテリーナはわずかな動きだけで攻撃をかわし、また、木剣で斬撃をいなしていた。

「……あの、お兄さま……これは……」
「試合はもう始まっているぞ! 集中しろっ!」

 アレクシオスが一喝する。

 キリロスは顔を赤くし、攻撃しながら叫んだ。
「逃げるな! 戦えよっ! 手も足も出ないのかっ!」

 その直後、カテリーナはスッと一歩踏み込み、柔軟性を活かした上体のしなやかな動きでキリロスの剣をかわし、手首を軽くはじいた。

――カランッ

 その一撃で木剣を落とし、勢いからバランスを崩し、つまずいたように地面に転がってしまった。
 そして、倒れたままカテリーナを睨みつけ、叫んだ。

「い、今のは偶然だっ!」
「キリロス、あ、あの……」

 立ち上がったキリロスは落ちた剣を拾い、顔を真っ赤にして再び突進してきた。

――カンッ! シュッ! カンッ!

 全てを受け流すカテリーナの剣は、美しく、無駄がなかった。
 キリロスの剣は空を切り続け、打ち込んでも、打ち込んでも、かわされるか受け流されてしまい剣が届かない。

「なんでっ、なんでだよっ!」

 キリロスは焦っていた。
 本来なら姉を圧倒し、兄の誤りを示すはずだった。
 そしてカテリーナの無駄な努力を終わらせるつもりだった。

 だが、現実は違った。

――カンッ!

 カテリーナの剣が、キリロスの木剣をもう一度はじき飛ばした。
 次の瞬間、その剣先がピタリとキリロスの喉元で静止する。

「一本!」

 アレクシオスの声が場に響いた。

 ゼノビアは手を組んで、「あーあ」と呆れ顔をしていた。
 カリスタは唇をかみしめ、低く呟いた。
「……くっ、こうなることを恐れていたのにっ!」

 呆然とするキリロスが、震える声で絞り出した。

「姉上、なんで、なんで……」
「……ご、ごめんなさい、キリロス。……あなた、弱すぎるの」

 観戦していた使用人たちからは、大きな歓声が湧き上がっていた。
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