【R-18】俺、門番なんですが！？王様！？【本編完結】

番外編

計画と現在

　
　ヴィルを見に行った頃から、俺の頭の中では様子が変わってしまったヴィルが脳裏に焼きついて、夢にまで見るようになった。
　どうしたら、ヴィルは昔のように笑うだろうかと考えながらも、魔王候補としての仕事をこなしていき、土台をつくりあげて俺は現魔王に魔王の座を譲るように言った。
　
　俺が魔王になるのも、全てはヴィルのため、ヴィルを迎えに行くには誰も文句を言わない土台が必要だった。
　現魔王ができなかったこと、ヴィルの家族をとめることができなかったことを、俺がやる。
　力だけで支配しても意味がない、それ以外にも魔族を支配するには頭脳も必要だ。
　
　力だけで恐怖だけで支配していた現魔王だから、できなかったことだ。力が全ての弱肉強食、その世界を築いておいて、それでも人間を受け入れていた理由は、人間の知能が役立つからだ。
　あの日までは、それを理解していたから魔族も人間と仲良しごっこをすることを許した。
　
　だが、俺が人間によって誘拐されたことで、不満が爆発してしまった。人間は浅ましい、人間は汚い、人間は弱いくせにと、その不満を抑えることができず、人間と魔族は完全に交流が絶たれた。
　そうなるとハーフのヴィルの存在、嫁が人間であること、その2人を守るために人間の国へと旅立ってしまうのを誰もとめることはできず、ヴィルの両親とヴィルはこの国を去った。
　
　俺はあの時のことを今でも後悔してる。それの贖罪だろうと、なんだろうと、俺はヴィルを幸せにすると決めた。
　心の底からまた笑ってほしいと、昔のように戻ってくれたら願う。
　
　そのためなら俺は手段を選ぶつもりなどない。
　そう思えば、答えは簡単だ。ヴィルを自分の元に連れてくる。
　ただし、普通に連れてくるのは難しいことだ。それならとヴィルには可哀想なことをすることになるが、あのネックレスを壊すことに決めた。
　
　俺が直接出向くわけにもいかず、あの使い魔にヴィルのネックレスを壊すように命じた。
　最初こそ渋ったが、ヴィルをこちら側に連れてくるためだと言えば頷くしかなかったのか、渋々だが了承した。
　
　あのネックレスを壊すことはヴィルをまた危険な目に合わせることに繋がる。だが、それをするしかない。
　そのためにもヴィルを知ってる3人に守るよう命じた。人間側も誰かしらつけるだろうが、魔族の前では無力だ。
　
　昔と今では大きく変わった。ヴィルを迎えに行くための成果がこの一つだ、昔はまだ魔族は甘かったから、人間なんぞに俺が誘拐されることになったのだ。
　ならば、徹底して俺も俺以外の魔族も鍛え抜くべきだと考えた。より強さを求めて、二度と大事なものを失わないように。
　
　そうだ、あの人間の王に揺さぶりをかけるか、攻め入るぞと、それが嫌ならば生贄を捧げることだな……。
　などと言えば、どんな顔するだろうか、俺は上機嫌に手紙をしたためる。それを鳥の使い魔に渡して運ばせる。
　
　さぁ、国王よ、お前の返答はどうなるだろうな？
　
「これでいい、あとは待つだけだ」
　
　椅子に深く腰かけて、息を吐き出す。
　ゆっくりと瞼を閉じて、昔のキラキラとした目を向けてくるヴィルのことを思い出していた。
　脳内のヴィルはよく笑う子だった、いつもニコニコしてて誰からも愛されるような、そんな子だったのに、俺の弱さがヴィルを変えてしまった。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　全ては計画通りだった。抱き潰してしまったヴィルの頬を撫でる。
　涙のあとを指先で辿り、薄く開いた唇をふにふにと指先で弄る。
　ここ最近のヴィルはだいぶ昔に近づいていたようだ、コロコロと表情を変えて愛くるしかったと浅葱から聞いた。
　浅葱もオークもオロチもヴィルを知っているのに、ヴィルの記憶がないことを伝えていたから、初対面の振舞ったとは聞いた。
　それは俺もだ、辛い記憶を思いだす必要は無い。より強固にその記憶には蓋をしてやるつもりで、頭を優しく撫でながら魔力を流し込む。
　
　お前の父が守りたかったお前の心を俺も守るから、どうか、目を覚ました時には笑ってくれないか？　俺を選んでくれと心から強く願う。恋焦がれた相手を逃がすわけにないかない。
　もう逃がしてやれそうにもない。せいぜい俺に愛される覚悟をしてくれ。