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7. 模様
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学校に早くから来ているのは妖怪たちで、人間はギリギリにやってくる者が多い。
今日も、早い時間からやってきて空き教室にたむろしているのは妖怪たちだ。話している内容も正体を知られそうになったとか人間には聞かせられないような内容が多い。それぞれが体験したことを持ち寄り、情報交換をしているのだ。
私も、と言いたいところだけど、私は日当たりの良い教室で日向ぼっこするために早めに来ている。まあ、今は夏だから授業中が昼寝にはちょうど良い温度なんだけれどね。
欠伸をしながら教室に向かう途中で耳に入ってきたのは、人間の中でも過激派の部類に絡まれたという話だ。妖怪を排除するべく日々奮闘している集団で、妖怪を見つけると執拗に追ってくると言われている。私も私の周りでも出会ったことのある者はいなかったけれど、生徒の中にいるのは意外だった。ここに通っている者たちは人間社会に溶け込むのが上手いからだ。見つけるのも困難なはずだし、人間と争うのを好まない者が多いのに。
「疑われて追い詰められてヤバいって思ったら、無意識に模様浮き出てちまってアウト」
「つうか、バレたのになんでここにいるわけ?」
「なんか、逃げれた」
ラッキーだったな、と背中を叩かれていたけれど、狩られていないのが不思議でならない。しかも、驚いて模様まで出してしまったのに見逃されることなんてあるんだろうか。生物が警告色を出すのと同じで、妖怪によっては皮膚にそれが模様となって出てしまう者がいる。一発で妖怪だと気付かれてしまうし、過激派からは逃げられないと聞くのに。
「オレのこと追いかけてきたのは一人だったんだけど、追い詰められたときに後から来たヤツとそいつがなんかもめてたから逃げた」
「へー」
「でも、次そいつに会ったら、顔覚えられてるし確認するまでもなくやられちまうだろ。どうすんだよ」
「これでも持ってたらマシかもよ」
大変だなあ、と行儀悪くそのまま立ち聞きしてた私の手を取って教室に踏み込む綾。
綾が見つかったと話していた男子に渡したのは、妖怪御用達のお守りだ。けっこう高いものだけれど、前にお礼だって言われて私も綾からもらったことがある。
「えっ。お守り?」
「同じクラスのよしみであげる。本来の姿を多少隠す効果があるから、すれ違ったくらいじゃみつからないと思う」
「でも、オレ払えないよ」
「聞いてた? あげるって言ったの。もう少しで卒業なのに、クラスメイトが減っちゃうのは嫌だから」
「綾ちゃん!」
やったね! また新たに綾ちゃん信者ができちゃったよ。
でも、綾の言う通り、あと半年もしたら卒業なのに減っちゃうのはちょっと淋しいよね。見つかって排除されても自己責任って感じで、妖怪って自分とあまり関わり合いのない者に関してはそういうとこ薄情だったりするけれど、同じクラスならなあ。
はずみで教室内に引きずり込まれた私は綾の隣で大人しくしていたんだけれど、お守りをもらって高揚している子に私もお礼を言われる。私は何もしていないし、どちらかと言えば立ち聞きしててごめんと謝る方なんだけれど。これは、綾を連れてきたのが私だと思われているんじゃない? 確かに、普段から綾と一緒の行動が多いけれども!
綾にちらりと視線を向けると、首を左右に振って黙っとけの合図をされた。まあ、いいか。
大感謝をされながら見送られた私たちは、まだ人気の少ない廊下を歩く。
「ねえ、お守りって貴重なのに配っちゃって綾の分はあるの?」
「大丈夫。それより、澄は持ち歩いてる?」
「もちろん。持ち歩いてこそのお守りでしょ」
良かった、と安心したように笑う綾に、心配性だなあと言いながら近くにある手を繋ぐ。多分皆から見る綾の手は私より小さく見えるだろうけど、繋ぐと私よりも大きく骨張っていて男の人だなあって感じる。綾に関しては視覚も触覚も皆とは違うっていう、そんな些細なことが嬉しくて小さく笑う。すると、綾も綺麗な笑みを浮かべて私を見た。今日も綾は可愛いね。
お守りは綾がくれたものだし、持ち歩くに決まってる。鞄だと手元にないこともあるから、今は私のスカートのポケットの中だ。一応、肌身離さずという言葉は守っているんだよ。
「絶対に持ち歩いてね。あと、変な人には付いていかないでね」
「お子ちゃまじゃないので!」
そうじゃなくて、と頬を膨らませている綾と繋いだ手を大きく振って、大丈夫だよと告げる。
だって、私は綾に守られているから。知ってるよ、私の首筋に見えない綾の徴を付けたって。
妖狐の徴はお守りの何倍も効果がある。何をそんなに心配しているのか分からないけれど、綾の模様が私に刻まれているだけで安心する。
猫又のは弱すぎて何の意味も持たないけれど、許されるならいつか私も綾に、私の模様を刻みたいと思った。
今日も、早い時間からやってきて空き教室にたむろしているのは妖怪たちだ。話している内容も正体を知られそうになったとか人間には聞かせられないような内容が多い。それぞれが体験したことを持ち寄り、情報交換をしているのだ。
私も、と言いたいところだけど、私は日当たりの良い教室で日向ぼっこするために早めに来ている。まあ、今は夏だから授業中が昼寝にはちょうど良い温度なんだけれどね。
欠伸をしながら教室に向かう途中で耳に入ってきたのは、人間の中でも過激派の部類に絡まれたという話だ。妖怪を排除するべく日々奮闘している集団で、妖怪を見つけると執拗に追ってくると言われている。私も私の周りでも出会ったことのある者はいなかったけれど、生徒の中にいるのは意外だった。ここに通っている者たちは人間社会に溶け込むのが上手いからだ。見つけるのも困難なはずだし、人間と争うのを好まない者が多いのに。
「疑われて追い詰められてヤバいって思ったら、無意識に模様浮き出てちまってアウト」
「つうか、バレたのになんでここにいるわけ?」
「なんか、逃げれた」
ラッキーだったな、と背中を叩かれていたけれど、狩られていないのが不思議でならない。しかも、驚いて模様まで出してしまったのに見逃されることなんてあるんだろうか。生物が警告色を出すのと同じで、妖怪によっては皮膚にそれが模様となって出てしまう者がいる。一発で妖怪だと気付かれてしまうし、過激派からは逃げられないと聞くのに。
「オレのこと追いかけてきたのは一人だったんだけど、追い詰められたときに後から来たヤツとそいつがなんかもめてたから逃げた」
「へー」
「でも、次そいつに会ったら、顔覚えられてるし確認するまでもなくやられちまうだろ。どうすんだよ」
「これでも持ってたらマシかもよ」
大変だなあ、と行儀悪くそのまま立ち聞きしてた私の手を取って教室に踏み込む綾。
綾が見つかったと話していた男子に渡したのは、妖怪御用達のお守りだ。けっこう高いものだけれど、前にお礼だって言われて私も綾からもらったことがある。
「えっ。お守り?」
「同じクラスのよしみであげる。本来の姿を多少隠す効果があるから、すれ違ったくらいじゃみつからないと思う」
「でも、オレ払えないよ」
「聞いてた? あげるって言ったの。もう少しで卒業なのに、クラスメイトが減っちゃうのは嫌だから」
「綾ちゃん!」
やったね! また新たに綾ちゃん信者ができちゃったよ。
でも、綾の言う通り、あと半年もしたら卒業なのに減っちゃうのはちょっと淋しいよね。見つかって排除されても自己責任って感じで、妖怪って自分とあまり関わり合いのない者に関してはそういうとこ薄情だったりするけれど、同じクラスならなあ。
はずみで教室内に引きずり込まれた私は綾の隣で大人しくしていたんだけれど、お守りをもらって高揚している子に私もお礼を言われる。私は何もしていないし、どちらかと言えば立ち聞きしててごめんと謝る方なんだけれど。これは、綾を連れてきたのが私だと思われているんじゃない? 確かに、普段から綾と一緒の行動が多いけれども!
綾にちらりと視線を向けると、首を左右に振って黙っとけの合図をされた。まあ、いいか。
大感謝をされながら見送られた私たちは、まだ人気の少ない廊下を歩く。
「ねえ、お守りって貴重なのに配っちゃって綾の分はあるの?」
「大丈夫。それより、澄は持ち歩いてる?」
「もちろん。持ち歩いてこそのお守りでしょ」
良かった、と安心したように笑う綾に、心配性だなあと言いながら近くにある手を繋ぐ。多分皆から見る綾の手は私より小さく見えるだろうけど、繋ぐと私よりも大きく骨張っていて男の人だなあって感じる。綾に関しては視覚も触覚も皆とは違うっていう、そんな些細なことが嬉しくて小さく笑う。すると、綾も綺麗な笑みを浮かべて私を見た。今日も綾は可愛いね。
お守りは綾がくれたものだし、持ち歩くに決まってる。鞄だと手元にないこともあるから、今は私のスカートのポケットの中だ。一応、肌身離さずという言葉は守っているんだよ。
「絶対に持ち歩いてね。あと、変な人には付いていかないでね」
「お子ちゃまじゃないので!」
そうじゃなくて、と頬を膨らませている綾と繋いだ手を大きく振って、大丈夫だよと告げる。
だって、私は綾に守られているから。知ってるよ、私の首筋に見えない綾の徴を付けたって。
妖狐の徴はお守りの何倍も効果がある。何をそんなに心配しているのか分からないけれど、綾の模様が私に刻まれているだけで安心する。
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