イケナイ恋

佐々蔵翔人

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同じ過ち

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赴任
私は星河市立南寺北中学校に行くことが決まった。
改めて新聞で勅使河原綾咲の文字を読んで改めて自分が先生になると実感した。
4月、南寺北中学校の新任として登壇して座っていた。なんて挨拶をしようと考えていた。
順番が回ってきて勅使河原先生お願いします。
「始めまして今年から音楽教諭として働くことになりました勅使河原綾咲です。まだ右も左も分からないひよっこですが皆さん1人1人に寄り添えるような先生を目指していきたいと思うので困ったことや他愛のないことなんでも話せるような先生でありたいと思います」
挨拶を済ませて教頭先生から1年1組を担当して頂きますとまさかいきなり担任を持てるなんて思いもしなかった。
教室に行って私は改めて挨拶をした。そして私はみんなに質問を投げかけた。
「皆さんは将来やりたいことはありますか?」
なんとクラスの半分以上が手が上がり自分が将来何を目指しているのか決まっている子がこんなにもいるのかと驚いた。
そして私は生徒たちに今手が上がった人はそれに目指して頑張っていってほしいしそうじゃない子もこれから見つけていけばいいと思います。なぜなら私が先生になろうと決めたのは高校時代で中学時代は全く勉強が出来ない生徒でした。なのでみんなは何にだってなれると思いますと自己紹介を終えた。
1時間目は道徳の授業だが生徒たちも色々な学校から集まった子たちばかりで名前と顔が分からない状況だし、何しろ私が生徒のことを把握出来ていないために1つずつ自己紹介として名前、出身小学校、趣味特技を言って欲しいと伝えて1人ずつの特徴をメモをしていた。その後、生徒たち同士の仲を深めるために1時間ずっと喋って友達を作って欲しいという思いがあった。その間、私は副担当の加藤先生と学校の方針や生徒との関係性をどうしたらいいか聞いていた。
1時間目の授業が終わって音楽の授業の用意をして音楽室に向かった。他のクラスの生徒たちには最初の授業で挨拶をした。
給食を食べて1日が終わり、合唱部の顧問として再び音楽室に向かった。だか音楽室には誰もおらずまず人数集めから始めなきゃいけないと感じていた、
音楽室に合唱部入部募集と紙を貼って職員室に行って授業の用意をしていた。加藤先生から勅使河原先生お疲れ様です。明日から宿題を見たり、学級通信や生徒1人1人にシェア南寺北を提出してもらってそれに対して1人ずつコメントしていきます。これは全生徒がやっているもので私たち先生に直接いえないことでもそこに書けば何について悩んでいてどんなことが嬉しかったのか分かって解決出来るので。
勅使河原先生も困ったことや仕事が終わらないこととかもあれば私に仕事を振ってもらって構いませんよ。2週間後には林間学校があるのでその準備も学年の先生たちと一緒に進めていきましょう。
私は分からないことだらけで加藤先生や他の先生方にご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いしますと頭を下げた。
林間学校の準備をして冊子を作りクラスで配布した。生徒たちは林間学校を楽しみで私も中学生以来の林間学校で生徒とともに楽しもうと考えていた。
そして1泊2日の林間学校が始まった。南寺北中学生の周りにはお寺が沢山あるところでそういう場所から自然に行って小鳥の囀《さえず》りを聞くのもいいものだなと思っていた。
少年自然の家に行って午前中は班対抗で森の中にあるキーワードを見つけて1つの単語にするというものでみんな走り回って真剣に探していた。私はその中の1つのポイントで待っていて生徒たちがちゃんと来るのかを見守っていた。全班ポイントの通過を確認してスタート地点に戻った。その途中で必死で探しつつも笑顔溢れる生徒たちを見ていてかわいいなと思うのとこっちまで元気を貰えるような気がした。
夜にはクラスみんなでカレーを作ろうと飯盒(はんごう)炊飯をしてそれぞれお米を炊く人、野菜を切る人と役割分担してやっている姿を見てすごい効率がいいなと思っていた。しばらくしてカレーが出来て生徒の1人がこれ綾咲先生の分だよと渡してくれた。
生徒の号令でみんなで手を合わしていただきます。
給食で生徒たちの顔を見ながら食べるのもいいが自分たちで一生懸命作ったカレーを食べている姿を見るといつも以上に笑顔に満ちているような感じだった。カレーを食べてキャンプファイヤーに移った。
生徒たちが行うキャンプファイヤーは圧巻で見ていて感動するものがあった。そして部屋に行って2段ベッドでみんな寝ていてまだ寝ていない生徒がいれば注意して回って先生たちも翌日に備えて寝た。
翌日の朝ごはんは自然の家で用意してくれたものをみんなで食べて最後は自然の家でお世話になった人たちのために冊子を見ながら私は指揮をしてみんなで歌ってバスで自然の家を後にして学校に戻っていった。後日、みんなでシェア南寺北には林間学校の思い出を書いている生徒が沢山いた。
合唱部の顧問になったはいいものの1ヶ月経っても誰も来ず、音楽室で1人ポツンと事務仕事をしていてその姿に何故か空《むな》しくかんじていた。初心者でも経験者でも誰でもいいからこの音楽室に来てくれないかな。歌が好きならばそれでいい。私が合唱を始めた時は楽譜を読めなかったからもし楽譜が読めなくて合唱を躊躇(ためら)いがある生徒がいるならば音符の読み方を教えてあげるから来て欲しいと嘆(なげ)いていた。たまに誰もいない音楽室で1人、音楽の教科書に載っている曲を弾いていた。すると余計に自分は何をしているのかと更に惨《みじ》めな思いをしてピアノをそっと閉じた。

新入部員と美乃里ちゃん
私は合唱部の顧問になったものの部員がまだおらず音楽室で出来る仕事は音楽室で誰か合唱部に入ってくれる子が居ないかなと事務仕事をしていた。
音楽室で事務仕事をしてしばらく経ったある日、音楽室の扉が開いた。すみません、男ですが合唱部に入っても宜しいですか?
始めまして1年3組の川崎道弘《かわさきみちひろ》です。合唱部は女の子だけですか?
私はそんなことないよ。川崎君はどうして合唱部に入ろうと思ったの?
歌が好きだからです。そんな理由じゃあ合唱部に入っちゃあダメですか?
そんなことないよ。その理由があれば充分だよ。
続くように今度は女の子が入ってきた。
私、合唱部に入りたいと思っていますが宜しいですか?1年1組の桜井香苗《さくらいかなえ》です。
とりあえず2人とも来てくれてありがとう。音楽室の裏に何冊かあった音楽の教科書を2人に渡して私は伴奏を弾きながら様子を見ていた。人数は少ないがこうやって合唱部の顧問として生徒とともに活動できることの喜びを感じていた。
川崎君は俯《うつむ》いた顔をしていた。
僕、楽譜読めないし音痴ですが合唱部に入っても宜しいですか?
私は川崎君に尋ねた。
さっき私に歌が好きだから合唱部に入りたいって言っていたでしょ?その理由だけで充分だよ。先生も始めて合唱部に入った時はまともに楽譜読めなかったし川崎君以上に音が取れなかったから気にしなくていいよ。桜井さんは川崎君がこう言っているけれどどう思う?
私は合唱初心者で人のこととやかく言える状態ではありません。なので綾咲先生、私たちに基礎から合唱を教えてください。すると川崎君も頭を下げた。
桜井さんはどうして合唱部に来ようと思った?
小学生時代に歌うことが好きで合唱部に入っていましたが当時、顧問の先生が厳しくて辞めてしまいました。こんな根性なしですが大丈夫ですか?
私は川崎君にも行ったけれど合唱が好き、理由はそれだけでいいよ。合唱コンクールとか目指すならスパルタでしようかなって思ったけれどその前にまずは合唱の基礎からやっていこうね。まずは音符の読み方から教えてあげるから心配しないでね。2人が合唱部に入ってくれるってなればの話だけどね。
私の過去の実績をひけらかすとせっかく来てくれた川崎君と桜井さんがいなくなるような気がして聞かれたら答えよう、そう考えた。
私は部活と仕事を終えて家に帰った。すると久しぶりに美乃里ちゃんから電話がかかってきた。
綾咲ちゃん、久しぶり元気にしている?
うん、元気にしているよ。今日は嬉しいことがあって美乃里ちゃんにも聞いて欲しいの。
私に聞いて欲しいこと?どんなこと?
前から合唱部の顧問に就任したけれどしばらく誰も来なかったけれど今日ね1年生の川崎君って男の子と桜井さんっていう女の子が来て入部してくれそうな雰囲気で。
きっとその2人は合唱部に入るよ。
私は美乃里ちゃんにどうして分かるの?
だって顧問が優しい綾咲ちゃんだからだよ。
そうだといいけどな……。入らないって言われたらまた1から生徒集めないといけないな。
じゃあ2人が入部したら合同練習やらない?私も今通っている学校が兵庫県の碧石市立多湖中央中学校、通称タコ中ってところで合唱部の顧問としてやっていてこっちは生徒が4人だから合同練習として出来たらいいねと話していた。
とりあえずこっちは入部が決まったらまたラインするね。まずそこからだからさ。
美乃里ちゃんはじゃあ決まったらまたライン送っておいてねと電話を切った。
美乃里ちゃんはそういってはくれたもののホントに2人が入部してくれるのか不安で仕方なかった。
翌日、授業後に音楽室に行くと川崎君と桜井さんが待っていた。2人で話あって入部することを決めました。綾咲先生、よろしくお願いします。
私は音楽室を開けて2人に待ってもらった。職員室に行って2人分の楽譜を印刷して音楽室に戻って渡した。歌う前に音符の読み方を黒板に書いた上にピアノで音階で説明をした。自分が出来なかったからこそ合唱を始めてやる2人には丁寧に説明をする必要があると思った。
私は家に帰って美乃里ちゃんに2人が入部することが決まったことをラインした。前に言っていた交流会したいってこと言っていたけれどいつにする?
綾咲ちゃんの都合のいい時でいいよ。こっちが行った方がいい?それともこっちの中学校に来る?
私たちがそっちに行くよ。2人にいつ都合いいか聞いて美乃里ちゃんにまた連絡しようと思う。美乃里ちゃんたちが都合つかないなら別の日にするよ。
翌日、私は川崎君と桜井さんに交流会することを伝えた。2人は嬉しそうに手を握り合っていると川崎君は頬を赤くし、きっと川崎君は桜井さんのことが好きなのかなと傍らで見ていた。いつが2人にいいか尋ねると桜井さんは5月末の土曜日がいいと提案した。私は川崎君その日でいいかと尋ねるとうんと頷いた。すると川崎君はそういえば合同練習ってどこで行いますか?
兵庫県の碧石市にある多湖中央中学校ってところだよ。現地までは電車に乗って行こうと思っているよ。引率はもちろん顧問の私が責任を持ってやらせてもらうよ。2人にちょっと待ってもらい美乃里ちゃんに電話した。
もしもし美乃里ちゃん、5月末の土曜日がいいかなって思っているけれど大丈夫?
うん、いいよ。楽しみにしているね、じゃあ生徒たちにその旨を伝えておくね。じゃあまた会おうね。
桜井さんは私に尋ねた。
今、誰と電話されていましたか?
大学時代の同級生で合唱部の先生をやっている先生だよ。お互いに人数少ないから合同練習みたいにしてやればお互いにいいかなって思っていてさ。
多湖中央中学校は4人って言っていたから私たちは2人でもスゴいってところ見せようと2人の士気を上げて私の伴奏もより一層腕が鳴った。
5月末、私は川崎君と桜井さんを星河駅に来てもらい電車で1時間かけて向かった。ホントは新幹線で行きたかったが創部したての部活に部費などあるはずもなく生徒2人分の新幹線往復代を出してあげられるほどお金を持っていなかった。でも2人は遠足を行くような感じで車窓を眺めていてこれはこれでよかったのかなと思っていた。そして私たちは最寄りの碧石駅に着いたがどうやって行ったらいいか分かずにいてとりあえずスマホで多湖中央中学校と調べて行こうとしたが徒歩20分と意外と距離があった。
綾咲ちゃんこっちだよ~。私に向かって手を振っていたのは美乃里ちゃんだった。
迎えに来てくれたの?美乃里ちゃんありがとう。スマホで調べたら徒歩20分って書いてあったからバスかタクシー乗って行こうかなって思っていたよ。
綾咲ちゃん、残念だけど中学校に行くバスはないしタクシーで行こうとすると結構値段するからね。だから迎えに来た方がいいかなって思っていてさ。
美乃里ちゃんありがとう。助かるよ。川崎君、桜井さん2人とも挨拶をして。
始めまして星河市立南寺北中学校の川崎道弘と同じく桜井香苗です。宜しくお願いします。
2人ともよく来てくれたね。綾咲先生と同級生の碧石市立多湖中央中学校で国語教諭をしている谷川美乃里です。宜しくお願いします。自己紹介終わった事だし3人とも車に乗って。
美乃里ちゃんの運転で多湖中央中学校に向かった。
学校に着いて美乃里ちゃんを含めて4人で音楽室に向かった。
美乃里ちゃんはみんなお待たせ、京都の南寺北中学校の皆さんが来てくれたよ。1人ずつ挨拶して。
多湖中央中学校2年の神戸綾香《こうべあやか》です。同じく2年生の喜多川美久《きたがわみく》です。同じく1年生の坂井凛花《さかいりんか》です。同じく1年生の春日井成美《かすがいなるみ》です。
私は美乃里ちゃんとどっちが伴奏弾いてどっちが指揮をする?じゃあ私が伴奏するから綾咲ちゃん指揮を弾いてくれる?
うん分かった。美乃里ちゃん、どの曲やる?
みんなが知っている曲だからとりあえず指揮をして。私は美乃里ちゃんに言われるがまま指揮をすると南寺北中学校の2人は練習もしていないのに歌えている。この光景どこかで見覚えあるなと感じていた。そうして何曲か歌ってお昼になり、近くのファミレスでお昼を食べた。
桜井さんはすみません、綾咲先生とはどこで知り合われましたか?
美乃里ちゃん小学校の時に知り合って同じ合唱部にいて4年生の時に一緒にいたけれど私が途中で仕事で京都に行って高校でまた同じ合唱部に入った感じだよ。でも府県は違ったけれど中学時代にも何回か会っていてね。
川崎君からそれは連絡取り合って遊びに行ったとかですか?
私は違うよ。私は滋賀県の杜端中学校、美乃里先生は星河大学付属中学校の合唱部に入っていて近畿大会で出会ってコンクールが終わってから遊びに行ったよ。あの時は杜端も星河学園の2校が全国大会一緒に行けないかなって思いつつやっていたよ。
桜井さんは美乃里先生も同じことを思われていましたか?
そうだね。結果そうなればいいけれどそればかりは生徒たちが決めることじゃなくて審査員が決めることだからね。川崎君、桜井さんの顧問の綾咲先生は全国合唱コンクールで金賞取った実績があるから分からないことがあれば何でも教えてくれるよ。
川崎君はそれは初めて知りました。綾咲先生は楽譜の読めない僕のためにまず音符の読み方から教えてくれてとても優しい先生だなと思いました。
美乃里ちゃんはさすが綾咲先生、生徒たちに慕われているね~。
そのような話を1時間ほどしていて、お昼が終わり再び合同練習を再開して何曲か歌ってこの日の合同練習を終えて私は美乃里ちゃんと握手して定期的に行おうと話し合って碧石駅に送ってもらった。電車が来るまで私たちは名物の碧石焼きを食べて電車で星河駅に帰って行った。

異動
美乃里ちゃんの碧石市立多湖中央中学校との合同練習で私たちが行ったり、京都に来てもらったりして1年間、合同練習が行われた。
私と美乃里ちゃんは法人で働く私立ではなく常に異動が伴う公務員でいつ異動が出て他の学校に行くかは分からない。仕方ないことだが教師と生徒が築いてきた絆を1から構築する必要になるがこればかりは私も美乃里ちゃんも自分たちで決めることは出来ず、毎年異動の公示されるのを待つしかない。3月、私は学校に行くと教頭先生に呼ばれた。勅使河原先生、4月から府立喜多山高校に赴任してもらいたいが可能ですか?
私は南寺北中学校を離れるのはつらいが先生として続けられるのならばと行けますと返事をした。
この時、私は喜多山高校のことを何も調べずに返事をしたことに後悔をしていた。なぜならば偏差値72を誇る進学校で難関大学を目指す生徒ばかりが通う生徒で一方私は大学の教育学部を出ているとはいえ偏差値でいえば生徒たちの半分あるかないかの状況で大丈夫なのか不安で仕方なかった。
私は美乃里ちゃんに異動で府立喜多山高校に異動になったから今後合同練習をするかどうかは次に来る顧問の先生と話して欲しいと伝えた。
こればかりは公務員の宿命だからまた音楽や教育を通して綾咲ちゃんと繋がれたらいいな。
私も美乃里ちゃんと同じ意見だよ。教育者として1人の友達としてこれからも宜しくねとラインを終えた。
何も知らずに喜多山高校に行くのは酷だと思い、喜多山高校に電話をして全体の授業内容を拝見したいと申し出た。教頭先生から許可をもらい授業を見学しているとレベルが高くて正直何を言っているのか分からなかった。これは音楽の教科書も難しいと考えて1度職員室に行って学校にいる先生たちに挨拶をして音楽の教科書を借りて家で勉強することにした。教科書には大学では行わなかった音楽の歴史について載っており、インターネットで 調べていた。
綾咲先生と慕ってくれたかわいい中学生と違い、進学校で難関大学を目指すような学校に行ったら先生こんなことも知らないの?それはそうじゃなくてこうですと訂正されてバカにされるに違いない。そう考えたら喜多山高校に行くのが怖くなってきた。とはいえ自分のなりたかった先生になって働く場所で一喜一憂していてはいけないと自分の頬を叩いた。
4月、正式に喜多山高校に赴任が決まって始業式の日に挨拶をするように言われて私は挨拶をした。
バカにされても生徒に教えるのが私の仕事。春休み期間に音楽の教科書に載っている分からないところは勉強はしていたが全部勉強出来るようになったかと言われたらそうではない。これは今まで以上に気合いを入れて勉強しないとダメだなと感じていた。
そして音楽の授業だけでなく合唱部の顧問もお願いされてこんなダメダメな先生で教わる生徒たちがなんか可哀想だなとすら思っていた。
音楽の勉強と合唱部の顧問両立出来るのか……。

生徒に教えてもらう先生
喜多山高校では部活前に毎日問題集を行うのが慣わしみたいだ。もし分からない問題などがあれば先生に尋ねてヒントをもらい自分で解いてもよいとされている。たまたま私が回ったクラスで問題が分からないから教えて欲しいという生徒がいた。
どんな問題なのか見てみると何が書かれているのか全く分からない。だが先生が生徒に対して分からないから自分で考えてなどと丸投げするなんてしてはいかない。考えた末、とりあえず私は教科書のこの問題と似ているからこの問題を解ければ大丈夫だと抽象的な答えをしてしまった。
音楽の勉強も全部終わっていないのに問題集の勉強もしなくてはいけないのかと思うとどれだけ時間があっても足りないような感じだった。
音楽室で生徒が来るまで音楽の勉強と問題集を勉強していた。先生になっても勉強されていてスゴいですね。僕だったら勉強出来なかったらそのままにするので勅使河原先生を尊敬します。
私は拗ねてちょっと何その言い方?先生のことバカにしているでしょ?
そんなことありません。僕でよければ教えましょうか?
そう私に言ってきたのは2年生の宮本匠海《みやもとたくみ》君だった。
私は生徒に教えてもらうほど落ちぶれていない。そう言いたかったが私の学力ではどうにでもならないことがあり宮本君に教えてもらうことにした。
部活が終わり ってから私は宮本君を図書室に誘って問題集を教えてもらっていた。まず解く前に高校の数学から教えてもらって改めて自分がこんなことも分かっていなかったのかと惨《みじ》めに思えてきて涙が出てきた。
宮本君は勅使河原先生、僕の教え方悪いですか?とりあえずハンカチで涙を拭ってくださいとこんな出来の悪い先生にも優しく接してくれてハンカチで涙を拭いた。いつまでも宮本君に頼ってばかりいる訳にはいかないと家に帰っても問題集や音楽の教科書を勉強していた。
そのような生活が1週間、1ヶ月と続いて私は宮本君に何かしてあげないといけないと思うようになり、気がついたら私は優しく教えてくれる宮本君に一線を超えて好きという感情になっていた。もちろん先生が生徒に対して好意を抱くのは言語道断で生徒から誘われたとしても断らなくてはならない立場である。だが私はその一線を超えてしまった。
ある日、私はいつものように部活後に宮本君とともに図書室に行って勉強をしていて気がついたら夕暮れ時になっていた。宮本君に先生がお金払ってあげるから喫茶店に行って勉強しようと誘った。
私は助手席に宮本君を乗せて近くの喫茶店に向かった。コーヒーを飲みながら問題集を分かりやすく教えてくれて時刻は午後7時を回っていて親御さんも心配すると思って家の近くまで送って私も家に帰った。
翌日私は喜多山高校に行くと教頭先生に呼び出されて事情聴取を受けてスマホで撮影された私と宮本君が喫茶店にいる所が移っていた。これはどういうこと?この映像はある生徒から提出されたものだけど事実だとしたらどうなるか分かっているよね?
この言葉を聞いてある覚悟をしていた。

情状酌量ならず
今回の1件で私は新聞やテレビに報道された。学校を去る前に宮本君のご両親が学校にやって来た。
私は教員免許を持っているが自分の学の無さで宮本君に勉強を教えてもらってそのお礼にコーヒーをご馳走して家の近くまで送ったことなど一連の流れを説明した。私と教頭先生は宮本君、そしてご両親に申し訳ありませんと頭を下げた。そして去るように私は喜多山高校を離れた。
車に向かっていく途中で私は泣いていた。河端先生に憧れて先生になろうと必死にやってきたのに私は何をしているのかと自分がイヤになってきた。
そしてスマホに1通のラインが届いた。誰かなと思い私は開くと美乃里ちゃんから時間があったら電話くださいと記されていた。
駐車場で電話をしようと思ったがもう喜多山高校の人間ではないと思って1度家に帰って美乃里ちゃんに電話をかけた。
もしもし美乃里ちゃん、綾咲だけどテレビや新聞って見た?
うん、その事で電話を話を聞こうかなって思って電話をして何があったか説明してもらってもいい?
南寺北中学校から喜多山高校に赴任することになって調べたら偏差値72の進学校で入学式前に授業の様子を見学させてもらってから挨拶をして音楽の教科書を見たら分からないことがあって勉強したいから持ち帰らせてもらったけれど勉強はしたけれど全部出来なくて4月を迎えちゃって合唱部の顧問もやりつつ勉強していた感じでね。
綾咲ちゃんマジメだね。勉強が分からないから教科書を借りて勉強するって同じ教師の鑑だよ。
でもね、問題はここからで部活前に喜多山高校では問題集を解いてから部活に行くっていう慣わしがあって生徒に聞かれたけれど何もちゃんと答えられず同じ問題を解けば出来るなんて言っちゃってね。自分は先生なのに何しているのかなって思って音楽の勉強と問題集の勉強をしていたけれど全く分からなくてね……。自分がもっと勉強が出来ればって改めて感じたよ。
綾咲ちゃん、勉強が苦手なのに生徒のためにって一生懸命やっていてスゴイと思うよ。
そんなダメダメな先生を見かねた宮本君っていう生徒が私に勉強を教えますと言ってくれて教えてもらっているうちに一線を超えて宮本君のことが好きになっちゃって勉強を教えてくれたお礼に喫茶店に行ってコーヒーをして家の近くまで送っていった感じだよ。
これを言ったら綾咲ちゃん怒るかもしれないけれど小学生時代に河端先生が今回と同じことをしてくれて学校を去ることになって裁判になってその時は綾咲ちゃんの情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)のおかけで河端先生は教員免許を剥奪されなかったことを知っている綾咲ちゃんがどうして今回のことをしたの?同じようになるとは思わなかった?
私は核心をつかれ、美乃里ちゃんに怒ったことなど1度もなかったが思わず声を荒らげた。そんなこと分かっているよ、生徒に対して好きとかいう感情を持っちゃいけない。一線を超えてはいけないっていうことは分かっているけれど教師としてよりも1人の女性として優しくされたことが嬉しくてつい……。
綾咲ちゃんが怒るなんて初めてかも。河端先生と同じ過ちをしたってことだからもし裁判ってなったらどんな処分でも受け入れてまた先生として戻ってきてね。人は誰でも過ちを起こすもの、大事なのはそこから反省してどう立ち直るかが大事だよ。私はいつでも待っているよ綾咲先生。
……。美乃里ちゃんありがとう。もし裁判になってもどんな処分でも受け入れるよ。教員免許が剥奪になったらその期間は別の仕事をして免許更新して再び音楽の先生として戻ってくるよ。
綾咲ちゃんが元気になったみたいだからもう電話切るね。私はどんな時も美乃里ちゃんは私の味方でいてくれてホントに嬉しかった。
1週間後、私の家にある封筒が届いた。
中身を見ると裁判に出廷するように書かれていて悪いのは私だが電話で弁護士の人に全て話した。1度弁護士の法律事務所に来るように言われた。弁護士の人から勅使河原さんのしたことはよくないが生徒にも断ることが出来たし、勅使河原さんから持ちかけたというよりも生徒側から教えますという観点から情状酌量《じょうじょうしゃくりょう》を求めましょうという話になった。
そして私は裁判に出廷して決まった判決に従うつもりだった。心のどこかで私が河端先生にしたように教員免許剥奪は辞めて欲しいと情に訴えてくれるものだと考えていた。
裁判は淡々と進んでいき私は裁判官にあなたのやった事は間違いありませんかと聞かれてはいと答えた。
主文勅使河原綾咲を懲役2年、執行猶予1年の判決を受けた。そして今回と同じことがないように教員免許の欠格期間3年も付け加えられた。
私はこの期間頭を冷やそうと半年は今まで遊んでこなかった分はっちゃけて遊ぶことにした。半年が経ってずっと遊んでいる訳にもいかず、次こそはどこの学校に赴任してもいいように勉強を始めた。
私はもう1度先生に戻って生徒に教えよう、いやそれ以外何もしてこなかったらこそ自分の天職は教師だと自分に言い聞かして教員免許が再び取れるその期間まで正社員とならずにアルバイトをすることを決めた。酸いも甘いも経験したからこそ生徒とどのように接して教えるのは勉強だけじゃないと改めて知って再び教員として帰ってくるその日まで頑張ろうと決めた。
3年後、再び教員免許を更新して母校の星河学園大学付属高校の音楽教諭として教師として復活を遂げた。
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