大量チートスキルをイマイチ使いこなせない勇者〜それは召喚に巻き込まれた私でした〜

MIILU

文字の大きさ
2 / 54

1才能開花

しおりを挟む
「これは国王から、せめてもの情けだ。ありがたく使えよ」



門兵に渡されたのはくるぶしまで隠れる薄汚れたローブと、マジックバックと呼ばれるカバンだった。

それは多少お金があれば誰でも持てる物で、このカバンは最大10個までの物なら何でも入るマジックアイテムだと言われた。

肩に掛ける大きめの巾着袋の様なそれには、金貨が5枚入った袋が入っていた。



「さぁ、早く行け。二度と戻ってくるなよ」



私が何をしたというのか。

勝手に連れて来られてこの対応は酷いんじゃないだろうか。

街行く人々は私の髪の色を見て遠ざかっていく。黒髪が駄目、なんだろうか。

気乗りしなかったがローブを被って、マジックバックに学校用の指定カバンを入れる。

街の中心にある噴水近くで腰をおろした。

一体全体どうなってるの?

街並みは中世ヨーロッパ風だし、黒髪黒目の人は私以外はいない。奇抜な色で服装も現代とは全然違う。

甲冑を着て帯剣している人もいれば籠を持って出店で買い物している主婦みたいな人もいる。

見る限り人、人、人なのに。私だけが違う。

委員長は勇者だから、丁重に饗されて、魔王とか討伐しに行くのかな。

私は、これからどうしたらいいんだろう。

巻き込まれただけなら、現代に帰してほしい。まぁ、帰ったところで誰も喜ばないけど。

マジックバックの中には金貨入りの袋1つ。学校用の指定カバン1つ。何か袋に入れれば10個以上入る事がわかった。

いや、こんな事がわかっても仕方ない。

もう一度ステータス見てみようか。



「ステータスオープン」



目の前に現れたウィンドウには、先程とは違う事が書かれていた。



・橘 玲奈 ・人族 ・15歳 ・Lv1

・HP50(+10000) ・MP100(+15000)

・職業:精霊術士(魔法使い)(火・水・風・土・聖)

・ATK5(+10000) ・DEF10(+10000) 

・INT5(+a) ・MGR10(+15000)



この()の中の数字は何だろう?さっきまで伏せ字で???になっていた部分だ。それに精霊術士ってなに?



スキル:言語理解、創造魔法、鑑定、隠蔽

ギフト:創造神の加護、神々の恩恵

称号:世界を統べし者



さっきまでの召喚に巻き込まれし者って何だったの?

世界を統べし者って、もしかして勇者より上じゃないの?

うんうんと一人で唸っていると、



「…お姉さん、大丈夫?どこか具合が悪いの?」



頭上から降ってきた声に驚き顔をあげる。

杖を持った女のコが目の前にいた。

後ろには胸当てをし、帯剣した男の子。



「あ…大丈夫です。これからどうしようか途方に暮れてただけで」

「フィーア、ほっとけよそんなやつ」

「レム黙って!」



私より小さいのに、しっかりした女のコだな。



「わたしの名前はフィーア。お姉さんは?」



聞かれて答えないわけにはいかない。



「あ…レーナ、です」

「レーナさん、働く所がないなら、手っ取り早く冒険者になればいいよ!」



そこからは如何に冒険者がいいか語られた。

採取や清掃などの依頼を達成すれば危険も少なく自分のお小遣いになる事。誰かとパーティを組んでモンスターを倒してレベルや冒険者ランクをあげるともっとお小遣いが貰える事。



「銀貨5枚で登録出来るの!王都に入って来れたなら、少なからずお金持ってるでしょう?」



王都や街に入るには入税がいる、らしい。冒険者はそれを払わなくてもよくなるしとかなり推された。

やる事もないし、誰かと組んでパーティになるのもいいかもね。



「お姉さんが良ければ一緒にパーティ組もうよ!お姉さんみたいな大人がいれば小さい私達でもどこでも行けるようになるし!」



有り難い申し出だ。

でもそれは私の髪の色を見ていないから。

多分、見たら。





ほらね。

友好的だった眼差しは一気に色を失くし、後ずさりされた。

ギルドに着き、隠蔽スキルで魔法使いとして登録出来たけど、流石に顔も見ないままでは登録出来ないからと言われ、フードを取った。

周りの誰もが私を見て怪訝な顔や侮蔑した顔を向ける。



「…黒髪では登録できませんか?」



ギルドのお姉さんまでもが顔色を変えていたけれど、銀貨5枚です。と言われたのでマジックバックから金貨1枚を差し出した。



「お釣りを用意しますので、少々お待ちくださいっ!」



バタバタと奥に入って行く。

フードをかぶり、フィーアとレムに向き直ると、徐ろにビクッとされて少し胸が傷んだ。



「フィーア!もう行こうぜ!」



フィーアの手を取り行こうとする二人を止める。



「…ごめんね!騙すつもりじゃなかった。だけどここまで連れてきてくれてありがとう。これはお礼だよ」



フィーアの手を取り、金貨1枚を握らせる。

金貨を見たフィーアは、首を振ってどうしたらいいかわからないと言う顔をした。



「お、お姉さ」

「フィーア!」



レムに連れられ、ギルドから出ていく二人を見送る。

フィーアはこちらを見て涙目だった。ごめんね。パーティに入れなくて。

私によくしてくれてありがとう。

少ししか一緒にいなかったけど、この世界で初めて優しくしてくれた二人を、私は一生忘れない。



お釣りである銀貨95枚をカバンに入れ、冒険者とはと説明された。

冒険者にはランクがあり、最初は皆最低ランクのFから。ランク別に依頼があり、Fの人は1つ上のEまでの依頼を受ける事が出来る。数をこなしたりランクの高い魔物を倒すと冒険者ランクが上がっていき、倒す魔物の強さも上がっていくと言う。

身の丈に合った依頼をこなし、防具や武器を揃え、一人での魔物討伐が無理ならパーティを組んだりと色々と教えられた。

渡された冒険者カードには、見慣れない文字で・レーナ・魔法使い(火)・Lv1・ランクFと書かれていた。

掲示板から依頼の紙を受付に持ってきてカードを掲示し、受注する。期限内に達成出来なかったら違約金を支払わなければいけない。

最初は採取や清掃など、街中の依頼をこなすといいと教えて貰う。

ついでに今日泊まる所はないか尋ねると、すぐ隣の『牛の帽子亭』がオススメだと言われた。

日も暮れてきていたし、これからどうしようか落ち着いて考えたかったので、すぐに向かう事にした。





「いらっしゃい!ご飯なら座って!宿なら二階で手続きしておくれ!」



恰幅の良いおばさんが、両手にお盆を持って忙しそうに歩き回っている。

一階は食堂で人が多くいた。

フードの私を見もしないで酒を煽っている。

二階に続く木製の階段を上がる。ギッギッと鳴る音が祖母の家を思い出させた。

二階に上がってすぐにカウンターがあった。カウンターの中には、男の子が座っている。



「いらっしゃい!牛の帽子亭へようこそ!初見のお客様だね?!」



えらくしっかりした男の子だ。見た目10歳くらいなのに。



「一泊朝夕食付で銀貨1枚だよ!」

「えーと…じゃあとりあえず10日分で」



王都には長く居るつもりはなかった。

あの国王がいる街だという事がどうしても許せなかった。



「じゃあ銀貨10枚だね♪」



銀貨を取り出し、カウンターの上に置く。

変わりに鍵を貰い、三階に上がってすぐの猫の部屋だと言われた。鍵に付いたタグには猫の絵が描かれている。



「お湯は一杯目は無料で、二杯目からは銅貨10枚だよ」



お湯、で身体を拭いたりするらしい。ここってお風呂ないの?!もしかして概念すらないのかな。

と思ったらお風呂は貴族の家くらいにしかないらしい。マジで!

トイレも共同で一階に四つしかないと言われ、がくっと項垂れた。

夕食の際はまたここに寄って欲しいと言われ、とりあえず部屋へ向かう事にした。



三階には扉が等間隔で並んでいて、一人用の部屋専用階といった感じだ。

扉を開け、中に入って鍵をかけた。

一人用のベッドと簡素なテーブルと椅子しかない。

唯一ある窓からは隣のギルドが見えた。

ローブを脱ぎ、ベッドに腰掛ける。



「…はぁ~~~~!」



人生で初めてくらいの深いため息をついた。

数時間前までは学校にいた、よね。

足元に円陣が浮かんで、気づいたらここ、モンデセントという国にいた。

勝手に呼ばれて黒髪黒目を嫌われ、城を追い出され色々あり今この部屋。



「緋色…は、勇者だもんね…丁重に饗される…はず」



玲奈、かぁ。久々に呼ばれたなぁ。

金髪に赤い瞳に変わった委員長。街行く人の中にも黒髪黒目は一人も居なかった。

どうして嫌われるのかは後々図書館らしき所で調べるとして、今は色をどうにかしないと。ずっとローブを着るのも熱くて敵わない。

そういえば、創造魔法というスキルがあったような。



「ステータスオープン」



ウィンドウの中の創造魔法に指を滑らすと、解説欄が出てきた。

『考え、想像し、その名を口にすればMPと引き換えに魔法を生み出す』

という事は髪の色を変えたりとか瞳の色を変えたり出来るんじゃないんだろうか。

考えて、考えて、色を想像して。



「毛髪染色!」



人差し指を立てた腕を宙にあげる。

頭上が白く輝いて、徐々に光が落ち着いてきた。



「おぉー!」



髪が茶色くなってる!

ステータス内のMPが50くらい減っている。だけど1秒に1回復しているのかすぐに満タンになった。

同じ要領で瞳の色も明るめの茶色に変え、歓喜に震えた。

カバンから手鏡を取り出し、染髪やカラコンをした気分になり、テンションが上がっていく。 



「そうだ!服装も変えよう!スカートじゃ歩きにくいもんね!」



ブレザー、スカートを脱ぎマジックバックに入れる。



「作れる物は今作っちゃお♪何だか楽しくなってきた♪」



この調子で下着を5着、膝下をシュッと細めたズボン、嘘みたいに軽いブーツ、レギンス等を作っていく。

もしかしたらこれだけで店が持てるのではと楽天的に思っていると腹の虫が鳴り出した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...