6 / 54
4ギルドの依頼
しおりを挟む
これからどうしよう。
ドラコ達がここを拠点に活動するなら、私は早く出て行った方がいいよね。
その為にはまずある程度の資金と物資、仲間が必要かな?
仲間は最悪いなくてもいいか。
仲良くなっても、どうせ黒目黒髪が知れたら離れるだろうし。
『称号:やさぐれ者を獲得しました』
ええい、そんな称号いらないのよ!
とにかく、新しいスキルで色々パワーアップしよう!
効果付与を使い、マジックバックのグレードアップをする。
入る数は無限大。中に入れた時点でその物の時間を止める。なので生き物は入れない。更に自分だけが使えるようにする。
着ている服全部に物理防御と全属性魔法耐性。温度調節機能、状態異常耐性。
靴には早く走れる様に疾走を。
うん。我ながらやり過ぎた感があるなー。
でもいいや。この先もずっと一人かもしれないし。
あー、やさぐれ者が出てきてる。
首を振り、色々と振り切って部屋を後にした。
ディグに地図とかどこに売ってるのか聞くと、冒険者ギルドに売ってるとのことだったので行く事にする。
ドラコたちは一階には居なかった。
ギルドに入り、物がいっぱい並んでいる窓口を見つけたので色々と買う事にする。
「地図と、杖とかも欲しいんですけど」
「はい!地図は王都地図と世界地図がございます!杖は初心者の杖のみの販売です。これ以上の性能をお求めでしたら武器屋に行く事をおすすめ致します!」
クリーム色のボブのお姉さんが元気よく答えてくれる。可愛いなぁ!
「じゃあ地図はどっちもください。杖は初心者用で結構です。…これはなんですか?」
何故か驚いたお姉さんは、
「こちらの青い瓶はHPポーションです。銅貨10枚です。こちらの赤い瓶はMPポーションで、銀貨1枚です」
「…HPよりMPの方が高いんですね?」
「勿論でございます!手に入る薬草の割合が違う事と、HPは休憩や食事で回復しますが、MPは寝なければ回復しません」
え?私1秒で1回復するけど?もしかして加護を持っているからかな。
変に納得していると、
「新しい冒険者の方とお見受け致しました。私にも丁寧に接して頂き嬉しく思います。冒険者の方は粗暴な方が多くて」
あぁ、もしかして私の口調に驚いていたのか。見ず知らずの相手に粗暴な言葉なんて私は絶対しない。
「そうなんですね。大変ですね。でも私はそんな事しませんから。ポーションはやめておきます。おいくらですか?」
ポーションはなくても何とかなるし。本当にいらないんですか?と本気で心配されたけど、回復魔法が使える事を教えると、納得してくれた。
「では王都地図が銅貨10枚、世界地図が銀貨10枚、杖が銅貨5枚です」
世界地図高ぇー!理由は全世界を踏破する事自体がいまだに難しいからだそうだ。世界地図だけれど、まだまだ未踏の地もあるらしい。
言われた値段を払い、お金を稼ぐべく依頼掲示板に足を運んだ。
S~Fランクまで、様々な依頼の中。Fランクの依頼は2件しかなかった。1件目はHPポーションになる薬草の採取依頼。2件目は生活魔法が使える方、クリーンによる街のトイレの清掃、とある。
とりあえず薬草採取にしようかな。
みんなが依頼の紙を剥がして窓口に持っていっていたので、私も同じようにする。
他の冒険者がすれ違いざまや遠巻きにジロジロ見られてたけど、無視!スキル平常心が随時発動中!
平常心じゃなくなる時もあるけどね。
「次の方、どうぞー」
みつ編みの黄色い髪の女のコが私に手を振る。
この子も可愛いなぁー!
「ギルドカードを一緒に出してください」
ランクと合っているかの確認と、受理の為に差し出す。
「ランクF、初依頼ですね。こちらの薬草採取の説明を簡単にさせて頂きます」
薬草の名前は『ディディ草』、根っこの先から20センチの物を採取。5本を一束とし、一束で依頼達成。何束でも持ち込みOKで、その都度依頼は達成される。
「ポーション用の薬草はいくつあってもいいですからね。FからEにランクアップするには、Fランクの依頼を30回達成です」
「ということは、30束持って来たらランクアップですか?」
「そういう事になります。因みにEランクの依頼もランクアップ対象です。その場合は達成数が少なくなりますので、ぜひ挑戦してみてください。Fランクでなりたて、Eランクで駆け出しみたいなものですから」
Dランクで一人前です、と言われた。
ディディ草一束の達成で銅貨10枚の報酬。受注後3日以内に達成出来なければ違約金銅貨1枚。
受注後の期間は依頼によって様々で、ディディ草は初歩の初歩なので今まで違約金を支払った人はいない。
お姉さんは王都地図を広げて、
「中央広場から城を背にし右の門から出ると初心者の森に出るので、そちらで採取するといいですよ」
と教えてくれた。
ありがとうお姉さん!ディディ草のイラストも貰い、いざ初心者の森へ!
門番にギルドカードを見せ、日が暮れると門を閉めるのでそれまでにお帰りを、と言われた。
良い返事をし、初心者の森へ足を入れる。
野宿とか絶対嫌だ。寝袋もないし。
まぁ、いざとなれば創ればいいんだけど。
そうだ。杖に効果付与しておこう。
攻撃力アップと魔法威力アップ。これで殴っても使える杖になった。イメージは棍棒だ。
どんな魔物が出るのか聞いてなかったな。魔物を殴る事なんて私には出来ないだろうなぁ。
攻撃魔法も使った事ないし。
そういえば、スキルに鑑定とかあったっけ。
『鑑定』ON。
すると見る間にパッパッパッと、全ての者にウィンドウが付いた。
ぎゃー!ちょっと見づらい!
鑑定薬草のみ!
絞ると薬草のみがウィンドウを開いている。
あ、あった!ディディ草!
『ディディ草。HPポーションの原料。ポーション一つ作るのに5つ必要。生食不可。鮮度で等級が決まる』
へぇー!じゃあポーション一つ作る用の依頼なんだ。割とすぐに見つかったし、って考えたら本当になりたて依頼なんだなぁ。鮮度で等級?なんだろうそれ?戻ったら窓口の人に聞いてみよう。
ん?このトゲトゲしたのは?
『ギィギィ草。MPポーションの原料。ポーション一つ作るのに3つ必要。生食不可。鮮度で等級が決まる』
これがそうなんだ!ラッキー♪でも確かにディディ草が10見つかったら1しかないんだ。
しかもトゲトゲ。物を傷つけない軍手を即興で作り、束ねる為の紐も作っておく。
あ、ここにも!ここにも!
採取し始めると『スキル:採取職人』を獲得した。
見渡しては見つけ、見渡しては見つけを繰り返していると、どんどん森の奥に入って行った。
気づくと周りは木々だらけ。遠目にも城は見えない。
珍しい草やキノコに目を奪われ過ぎた。
自分を叱咤する。
どうしよう。
《くすくす》
《くすくす》
幻聴まで聞こえるし、盾とかも買っておけばよかったかも。
《こっちだよ》
《こっちこっち》
「え、な、なに?」
無数の光が私の周りに現れる。風が身体を後押しし、誘われるがまま足を進めた。
広く開けた場所に、ディディ草とギィギィ草が一面に生えている。
「わぁ!凄ーい!群生地だぁー!」
さっきまでの不安な気持ちはどこ吹く風。
一心不乱に薬草の採取を行った。
全部は取らずある程度取り終え、マジックバックに入れる。一段落すると、不意にお腹が鳴った。
そういえばお昼食べてない。こんなに動いたんだから、そりゃお腹も空く。
バックの中に食べ物は何もない。キノコは生食不可だ。買ってくればよかったー!
《こっちだよ》
また幻聴が聞こえ、広場の真ん中にあった木に惹かれる。
よく見ると果実が成っている。あれ食べれるかな?
りんごに似ているけど色が金色で、鑑定には『メルパの木。金色になる果実はひどく美味だが、木が気に入った者にしか手に出来ない』とあった。
どれぐらい美味しいんだろうか。大きくて立派な木を眺めていると、上から金色の果実がゆっくりと落ちてきた。
食べていいって事かな?!
『メルパ。美味すぎて栄養満点。鮮度で美味しさが変わる』
ツヤツヤで金色。匂いはりんごみたいだ。
ローブを敷き、木を背もたれにしてメルパにクリーンの魔法をかける。
「いっただきまーす!」
しゃくっとイイ音が鳴る。うまい、旨すぎる!
これ一つでメインからデザートまで食べられた気分だ。
一つで充分お腹も膨れた。
「美味しかったー!ご馳走さまー!メルパの木さんありがとー!…でもこの芯どうしよ?」
りんごみたいに芯がある。ここはさすがに食べられない。
《土に還してあげて》
「土に…還す?」
埋めろって事かな?
軍手で柔らかめの土の中に芯を埋める。これでいいのかな?
幻聴は何も言わないのであってるはずと自分に言い聞かせると、お腹が膨らんだからか眠たくなってきた。
日はまだ高いしちょっとくらいならいいかなぁ。
ローブの上に寝そべり、バックを抱いて瞳を閉じた。
************
初心者の森の奥地には、ポーションの原料である薬草の群生地がある。
辿り着けるかどうかは五分五分。その日のメルパの木の気分次第。
精霊が導くとも言われているが、見えない俺には関係ない。
いつも少なからず禍々しい森の中は、今日は清々しく感じる。
ここまで魔物は出てきてもラットビぐらい。
この静けさが逆に怖い。
「お、見っけた」
群生地を見つけ、ギィギィ草を採取する。このトゲトゲがなければ採取しやすいんだけどな。
「…ん?あれは…」
メルパの木の根本。誰かが倒れている。
まさか魔物にやられたのか?
急いで近づくと、一瞬目を疑った。
「て、天使…か?」
目を何度もゴシゴシと擦る。木陰で眠りにつく天使、いや姫?が規則よく寝息をたてている。
着てる服は綺麗で外傷はないみたいだから、一安心した。
「にしても…なんでこんなとこで?」
触れようと手を伸ばすけれど、見えない物に遮られ、彼女に触れられない。
防壁?いや、あれならバチッとくるはずだ。
もしかしてメルパに気に入られたのか?
「…ん…ぅ」
ゴロンと上向きになった彼女から、可愛すぎて目が離せない。目の色は何色だろうか。どうすれば起きるかな?
彼女の声が、聞きたい。
*************
心地良い眠りから目が覚める。ベッドで寝た時よりもちゃんと眠れた様な気がする。
夢を見なかったからかなぁ。
頭がぼーっとして目をしぱしぱとさせた。
「あ、起きた?姫さん」
聞き慣れない声は幻聴ではない。ハッキリと耳に入ってきた。
ガバッと起き上がり声のした方を見ると、赤い前髪がトサカの様に立ち上がった男の人が近くに座っていた。オールバックに後ろの髪は少し長い糸目の人。
着こなした鎧は傷が目立っている。帯剣しているところを見ると剣士のようだ。
「良かったわー起きてくれて。姫さん助けようにも触られへんかったから途方に暮れててん。なんでこんな所で寝てたん?」
あ、あれだ。関西弁だ!こんなところで関西弁に会えると思ってなかったから返答がすぐにできなかった。
「怪しいもんちゃうで。でもこんなイカついやつに話しかけられても困るかぁ。悪かったなぁ」
糸目と眉尻が下がる。頬にある大きな傷跡を指で掻いて立ち上がった。
「ほな、ちゃんと連れと合流しぃや。こんなとこで寝てたら襲われるで」
「ぇ、あ、あの」
「ほなな!」
もしかして起きるまで見守っててくれたのだろうか?だとしたら悪い事をした。感謝の言葉も伝えられなかった。
冒険者だろうし今度ギルドで出会ったら謝ろう。
赤いトサカの人。
大分採取したので帰路に着こうと王都地図を開いてみる。
王都地図には城や住民地、商業地を壁に囲われた絵と初心者の森までが書かれていた。今は必要ない。
その後に世界地図を開くと、頭の中で声がした。
『スキル:マッピングを獲得しました』
もうこの声に驚く事はなくなっている。恐るべし慣れ。
マッピングって、今どこにいるかわかるやつかな?
展開するとウィンドウが目の前に開いた。
初心者の森に青い点滅。これが今いるところ?
そういえば危険察知っていうスキルもあったっけ。それを併用して使うと、遠くに赤い点滅がチラホラ見えた。
これが魔物ってことかな?
この辺りには全然いない。初心者の森だからかな?
スマホみたいにピンチやスクロールをすると少し先に『モンデセント』と書かれていた。
やった!これで帰れる!
帰る途中にも珍しい石や薬草をゲットしつつ帰路に着いた。
因みにスマホは圏外のまま、充電がなくなってしまったので放置している。なくても支障はなかった。
ギルドに着き、もしかしてギィギィ草の依頼もあるかも?と先に掲示板に向かった。
やっぱりある!Eランクの採取で三本で一束、報酬は銅貨50枚!違約金銅貨30枚と書かれていて、違約金の高さに驚いた。
希少だから腕に自身のない人は受けないようにする為かな?
その紙を取り、窓口へ向かう。
「あ、お帰りなさい。どうでしたか?」
さっきの女のコだ。私の事を覚えていてくれたみたいで嬉しい。
「あの、質問なんですけど。一緒にギィギィ草も見つけて。受注してないのに、持ってるからって後から受注してもいいんですか?」
「大丈夫ですよ!それは魔物にも言えることですから。ただ、魔物の場合は討伐部位の掲示が必要になります。それも魔物によって違うので、マジックバックで丸々一匹入れてくる人とか多いですから」
へぇー!そうなんだ!
でも魔物ってまだ会った事ないからちゃんと倒せるかどうかが心配だな。やっぱり手練の人達とパーティ組んだ方がいいんだろうか。
「じゃあこれもお願いします。…ちょっと多いんですけどここで出して大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫ですよ!」
快い返事を頂いたのでバックからディディ草20束とギィギィ草10束を出す。
ディディ草には驚かなかったがギィギィ草には面を食らっていた。
「初めてでこれは凄いですね!群生地を見つけたんですか?」
「実はそうなんです。奥地に行ったら凄くいっぱいあって!」
「ラッキーでしたね!これですぐにランクEですね!精算して参りますので少しお待ちください」
笑顔で喜ばれたので笑顔で返す。もーこの子可愛すぎる!
20×10で銀貨2枚と10×50で銀貨5枚!計7枚でランクもアップ!これだけの依頼でも宿代なら充分稼げるなぁ~♪
「あの~…すみません。ギルドマスターがお呼びですので、こちらに来て頂けますか?」
わ、私なにかしましたかね?!
ドラコ達がここを拠点に活動するなら、私は早く出て行った方がいいよね。
その為にはまずある程度の資金と物資、仲間が必要かな?
仲間は最悪いなくてもいいか。
仲良くなっても、どうせ黒目黒髪が知れたら離れるだろうし。
『称号:やさぐれ者を獲得しました』
ええい、そんな称号いらないのよ!
とにかく、新しいスキルで色々パワーアップしよう!
効果付与を使い、マジックバックのグレードアップをする。
入る数は無限大。中に入れた時点でその物の時間を止める。なので生き物は入れない。更に自分だけが使えるようにする。
着ている服全部に物理防御と全属性魔法耐性。温度調節機能、状態異常耐性。
靴には早く走れる様に疾走を。
うん。我ながらやり過ぎた感があるなー。
でもいいや。この先もずっと一人かもしれないし。
あー、やさぐれ者が出てきてる。
首を振り、色々と振り切って部屋を後にした。
ディグに地図とかどこに売ってるのか聞くと、冒険者ギルドに売ってるとのことだったので行く事にする。
ドラコたちは一階には居なかった。
ギルドに入り、物がいっぱい並んでいる窓口を見つけたので色々と買う事にする。
「地図と、杖とかも欲しいんですけど」
「はい!地図は王都地図と世界地図がございます!杖は初心者の杖のみの販売です。これ以上の性能をお求めでしたら武器屋に行く事をおすすめ致します!」
クリーム色のボブのお姉さんが元気よく答えてくれる。可愛いなぁ!
「じゃあ地図はどっちもください。杖は初心者用で結構です。…これはなんですか?」
何故か驚いたお姉さんは、
「こちらの青い瓶はHPポーションです。銅貨10枚です。こちらの赤い瓶はMPポーションで、銀貨1枚です」
「…HPよりMPの方が高いんですね?」
「勿論でございます!手に入る薬草の割合が違う事と、HPは休憩や食事で回復しますが、MPは寝なければ回復しません」
え?私1秒で1回復するけど?もしかして加護を持っているからかな。
変に納得していると、
「新しい冒険者の方とお見受け致しました。私にも丁寧に接して頂き嬉しく思います。冒険者の方は粗暴な方が多くて」
あぁ、もしかして私の口調に驚いていたのか。見ず知らずの相手に粗暴な言葉なんて私は絶対しない。
「そうなんですね。大変ですね。でも私はそんな事しませんから。ポーションはやめておきます。おいくらですか?」
ポーションはなくても何とかなるし。本当にいらないんですか?と本気で心配されたけど、回復魔法が使える事を教えると、納得してくれた。
「では王都地図が銅貨10枚、世界地図が銀貨10枚、杖が銅貨5枚です」
世界地図高ぇー!理由は全世界を踏破する事自体がいまだに難しいからだそうだ。世界地図だけれど、まだまだ未踏の地もあるらしい。
言われた値段を払い、お金を稼ぐべく依頼掲示板に足を運んだ。
S~Fランクまで、様々な依頼の中。Fランクの依頼は2件しかなかった。1件目はHPポーションになる薬草の採取依頼。2件目は生活魔法が使える方、クリーンによる街のトイレの清掃、とある。
とりあえず薬草採取にしようかな。
みんなが依頼の紙を剥がして窓口に持っていっていたので、私も同じようにする。
他の冒険者がすれ違いざまや遠巻きにジロジロ見られてたけど、無視!スキル平常心が随時発動中!
平常心じゃなくなる時もあるけどね。
「次の方、どうぞー」
みつ編みの黄色い髪の女のコが私に手を振る。
この子も可愛いなぁー!
「ギルドカードを一緒に出してください」
ランクと合っているかの確認と、受理の為に差し出す。
「ランクF、初依頼ですね。こちらの薬草採取の説明を簡単にさせて頂きます」
薬草の名前は『ディディ草』、根っこの先から20センチの物を採取。5本を一束とし、一束で依頼達成。何束でも持ち込みOKで、その都度依頼は達成される。
「ポーション用の薬草はいくつあってもいいですからね。FからEにランクアップするには、Fランクの依頼を30回達成です」
「ということは、30束持って来たらランクアップですか?」
「そういう事になります。因みにEランクの依頼もランクアップ対象です。その場合は達成数が少なくなりますので、ぜひ挑戦してみてください。Fランクでなりたて、Eランクで駆け出しみたいなものですから」
Dランクで一人前です、と言われた。
ディディ草一束の達成で銅貨10枚の報酬。受注後3日以内に達成出来なければ違約金銅貨1枚。
受注後の期間は依頼によって様々で、ディディ草は初歩の初歩なので今まで違約金を支払った人はいない。
お姉さんは王都地図を広げて、
「中央広場から城を背にし右の門から出ると初心者の森に出るので、そちらで採取するといいですよ」
と教えてくれた。
ありがとうお姉さん!ディディ草のイラストも貰い、いざ初心者の森へ!
門番にギルドカードを見せ、日が暮れると門を閉めるのでそれまでにお帰りを、と言われた。
良い返事をし、初心者の森へ足を入れる。
野宿とか絶対嫌だ。寝袋もないし。
まぁ、いざとなれば創ればいいんだけど。
そうだ。杖に効果付与しておこう。
攻撃力アップと魔法威力アップ。これで殴っても使える杖になった。イメージは棍棒だ。
どんな魔物が出るのか聞いてなかったな。魔物を殴る事なんて私には出来ないだろうなぁ。
攻撃魔法も使った事ないし。
そういえば、スキルに鑑定とかあったっけ。
『鑑定』ON。
すると見る間にパッパッパッと、全ての者にウィンドウが付いた。
ぎゃー!ちょっと見づらい!
鑑定薬草のみ!
絞ると薬草のみがウィンドウを開いている。
あ、あった!ディディ草!
『ディディ草。HPポーションの原料。ポーション一つ作るのに5つ必要。生食不可。鮮度で等級が決まる』
へぇー!じゃあポーション一つ作る用の依頼なんだ。割とすぐに見つかったし、って考えたら本当になりたて依頼なんだなぁ。鮮度で等級?なんだろうそれ?戻ったら窓口の人に聞いてみよう。
ん?このトゲトゲしたのは?
『ギィギィ草。MPポーションの原料。ポーション一つ作るのに3つ必要。生食不可。鮮度で等級が決まる』
これがそうなんだ!ラッキー♪でも確かにディディ草が10見つかったら1しかないんだ。
しかもトゲトゲ。物を傷つけない軍手を即興で作り、束ねる為の紐も作っておく。
あ、ここにも!ここにも!
採取し始めると『スキル:採取職人』を獲得した。
見渡しては見つけ、見渡しては見つけを繰り返していると、どんどん森の奥に入って行った。
気づくと周りは木々だらけ。遠目にも城は見えない。
珍しい草やキノコに目を奪われ過ぎた。
自分を叱咤する。
どうしよう。
《くすくす》
《くすくす》
幻聴まで聞こえるし、盾とかも買っておけばよかったかも。
《こっちだよ》
《こっちこっち》
「え、な、なに?」
無数の光が私の周りに現れる。風が身体を後押しし、誘われるがまま足を進めた。
広く開けた場所に、ディディ草とギィギィ草が一面に生えている。
「わぁ!凄ーい!群生地だぁー!」
さっきまでの不安な気持ちはどこ吹く風。
一心不乱に薬草の採取を行った。
全部は取らずある程度取り終え、マジックバックに入れる。一段落すると、不意にお腹が鳴った。
そういえばお昼食べてない。こんなに動いたんだから、そりゃお腹も空く。
バックの中に食べ物は何もない。キノコは生食不可だ。買ってくればよかったー!
《こっちだよ》
また幻聴が聞こえ、広場の真ん中にあった木に惹かれる。
よく見ると果実が成っている。あれ食べれるかな?
りんごに似ているけど色が金色で、鑑定には『メルパの木。金色になる果実はひどく美味だが、木が気に入った者にしか手に出来ない』とあった。
どれぐらい美味しいんだろうか。大きくて立派な木を眺めていると、上から金色の果実がゆっくりと落ちてきた。
食べていいって事かな?!
『メルパ。美味すぎて栄養満点。鮮度で美味しさが変わる』
ツヤツヤで金色。匂いはりんごみたいだ。
ローブを敷き、木を背もたれにしてメルパにクリーンの魔法をかける。
「いっただきまーす!」
しゃくっとイイ音が鳴る。うまい、旨すぎる!
これ一つでメインからデザートまで食べられた気分だ。
一つで充分お腹も膨れた。
「美味しかったー!ご馳走さまー!メルパの木さんありがとー!…でもこの芯どうしよ?」
りんごみたいに芯がある。ここはさすがに食べられない。
《土に還してあげて》
「土に…還す?」
埋めろって事かな?
軍手で柔らかめの土の中に芯を埋める。これでいいのかな?
幻聴は何も言わないのであってるはずと自分に言い聞かせると、お腹が膨らんだからか眠たくなってきた。
日はまだ高いしちょっとくらいならいいかなぁ。
ローブの上に寝そべり、バックを抱いて瞳を閉じた。
************
初心者の森の奥地には、ポーションの原料である薬草の群生地がある。
辿り着けるかどうかは五分五分。その日のメルパの木の気分次第。
精霊が導くとも言われているが、見えない俺には関係ない。
いつも少なからず禍々しい森の中は、今日は清々しく感じる。
ここまで魔物は出てきてもラットビぐらい。
この静けさが逆に怖い。
「お、見っけた」
群生地を見つけ、ギィギィ草を採取する。このトゲトゲがなければ採取しやすいんだけどな。
「…ん?あれは…」
メルパの木の根本。誰かが倒れている。
まさか魔物にやられたのか?
急いで近づくと、一瞬目を疑った。
「て、天使…か?」
目を何度もゴシゴシと擦る。木陰で眠りにつく天使、いや姫?が規則よく寝息をたてている。
着てる服は綺麗で外傷はないみたいだから、一安心した。
「にしても…なんでこんなとこで?」
触れようと手を伸ばすけれど、見えない物に遮られ、彼女に触れられない。
防壁?いや、あれならバチッとくるはずだ。
もしかしてメルパに気に入られたのか?
「…ん…ぅ」
ゴロンと上向きになった彼女から、可愛すぎて目が離せない。目の色は何色だろうか。どうすれば起きるかな?
彼女の声が、聞きたい。
*************
心地良い眠りから目が覚める。ベッドで寝た時よりもちゃんと眠れた様な気がする。
夢を見なかったからかなぁ。
頭がぼーっとして目をしぱしぱとさせた。
「あ、起きた?姫さん」
聞き慣れない声は幻聴ではない。ハッキリと耳に入ってきた。
ガバッと起き上がり声のした方を見ると、赤い前髪がトサカの様に立ち上がった男の人が近くに座っていた。オールバックに後ろの髪は少し長い糸目の人。
着こなした鎧は傷が目立っている。帯剣しているところを見ると剣士のようだ。
「良かったわー起きてくれて。姫さん助けようにも触られへんかったから途方に暮れててん。なんでこんな所で寝てたん?」
あ、あれだ。関西弁だ!こんなところで関西弁に会えると思ってなかったから返答がすぐにできなかった。
「怪しいもんちゃうで。でもこんなイカついやつに話しかけられても困るかぁ。悪かったなぁ」
糸目と眉尻が下がる。頬にある大きな傷跡を指で掻いて立ち上がった。
「ほな、ちゃんと連れと合流しぃや。こんなとこで寝てたら襲われるで」
「ぇ、あ、あの」
「ほなな!」
もしかして起きるまで見守っててくれたのだろうか?だとしたら悪い事をした。感謝の言葉も伝えられなかった。
冒険者だろうし今度ギルドで出会ったら謝ろう。
赤いトサカの人。
大分採取したので帰路に着こうと王都地図を開いてみる。
王都地図には城や住民地、商業地を壁に囲われた絵と初心者の森までが書かれていた。今は必要ない。
その後に世界地図を開くと、頭の中で声がした。
『スキル:マッピングを獲得しました』
もうこの声に驚く事はなくなっている。恐るべし慣れ。
マッピングって、今どこにいるかわかるやつかな?
展開するとウィンドウが目の前に開いた。
初心者の森に青い点滅。これが今いるところ?
そういえば危険察知っていうスキルもあったっけ。それを併用して使うと、遠くに赤い点滅がチラホラ見えた。
これが魔物ってことかな?
この辺りには全然いない。初心者の森だからかな?
スマホみたいにピンチやスクロールをすると少し先に『モンデセント』と書かれていた。
やった!これで帰れる!
帰る途中にも珍しい石や薬草をゲットしつつ帰路に着いた。
因みにスマホは圏外のまま、充電がなくなってしまったので放置している。なくても支障はなかった。
ギルドに着き、もしかしてギィギィ草の依頼もあるかも?と先に掲示板に向かった。
やっぱりある!Eランクの採取で三本で一束、報酬は銅貨50枚!違約金銅貨30枚と書かれていて、違約金の高さに驚いた。
希少だから腕に自身のない人は受けないようにする為かな?
その紙を取り、窓口へ向かう。
「あ、お帰りなさい。どうでしたか?」
さっきの女のコだ。私の事を覚えていてくれたみたいで嬉しい。
「あの、質問なんですけど。一緒にギィギィ草も見つけて。受注してないのに、持ってるからって後から受注してもいいんですか?」
「大丈夫ですよ!それは魔物にも言えることですから。ただ、魔物の場合は討伐部位の掲示が必要になります。それも魔物によって違うので、マジックバックで丸々一匹入れてくる人とか多いですから」
へぇー!そうなんだ!
でも魔物ってまだ会った事ないからちゃんと倒せるかどうかが心配だな。やっぱり手練の人達とパーティ組んだ方がいいんだろうか。
「じゃあこれもお願いします。…ちょっと多いんですけどここで出して大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫ですよ!」
快い返事を頂いたのでバックからディディ草20束とギィギィ草10束を出す。
ディディ草には驚かなかったがギィギィ草には面を食らっていた。
「初めてでこれは凄いですね!群生地を見つけたんですか?」
「実はそうなんです。奥地に行ったら凄くいっぱいあって!」
「ラッキーでしたね!これですぐにランクEですね!精算して参りますので少しお待ちください」
笑顔で喜ばれたので笑顔で返す。もーこの子可愛すぎる!
20×10で銀貨2枚と10×50で銀貨5枚!計7枚でランクもアップ!これだけの依頼でも宿代なら充分稼げるなぁ~♪
「あの~…すみません。ギルドマスターがお呼びですので、こちらに来て頂けますか?」
わ、私なにかしましたかね?!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
358
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる