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11思わぬ展開と新しい地へ2
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街を囲む壁は高く、中の様子は見えない。
門兵にギルドカードを見せ、中に入るとモンデセントの3分の1くらいの大きさの街が広がった。
行き交う人は多く、時間が時間だからか美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
「俺がよく行く宿でいいかなぁ。飯がうまいねん」
もちろんレーナが作る方が美味しいけど!
と煽てたって何も出ない。
私はプロチュインの特産物を食べてみたい。
行きつけの宿に入ると、一階は食堂、二階から上が宿という造りで、牛の帽子亭と同じだった。
これが基準なのかもしれない。
ただ一つ違う事は、
「あらぁ?カサトさん。もうプロチュインに戻って来たのぉ?私が忘れられなかったのかしら」
給仕さんが若いボンキュボンのお姉さんで、お色気ムンムンで、カサトに寄り掛かってきた事だ。
「ちょ、アリアさんやめて!レーナが見てる!」
赤い顔なのか青い顔なのかわからない顔色をしてあたふたしている。ジトッとした目で返しておく。
「レーナ?あら。誰かと一緒なんて初めてじゃない…それにとーっても可愛い子ね」
顎に人差し指を添え、上を向かせられる。メイクバッチリ、いい匂いがするお姉さんは美人で巨乳だ。
ふわふわの髪はウェーブでクリーム色。
谷間に視線がいっちゃうくらい凄い!
「レーナは俺のパートナーや!誘惑せんとって!」
「あら!やっと見つけられたのぉ!おめでとう!!じゃあもう私とはベッドを共にする事はないのねぇ…」
つまり二人はそういう関係かぁあ!
「…へぇぇえ…!?」
「いや、これは、その、過去!過去の事やから!」
「いいよ別に!私とはまだだから!我慢出来ないんならお姉さんと今日もベッドを共にすればいいわ!」
一切否定しないんだね!男の人って不潔だわ!!
結局誰でもいいんじゃない!?
二階に上がり、カウンターにいたおじさんに一人部屋を2つ用意して貰う。一泊銀貨1枚だから2枚渡し、夕食用の木札と鍵を受け取り階下に降りた。
二人がけのテーブルに座って待っていたカサトの横で、お姉さんはまだしなだれかかっている。
「木札!夕食お願いします!」
「いつものでよろしゅう…」
「はぁい!二人分ねぇ」
アリアさんは木札を手に厨房へ入って行った。
カサトは人差し指をツンツンと合わせて俯いて、上目遣いで私を見る。顔が赤くて隠せてないけど。
「あ、あの、レーナさん?」
「これ、カサトの分の部屋の鍵」
「え、待ってや、何で同じ部屋じゃないん?」
「私の目の前でお姉さんとするの?!悪趣味なの!?」
「何でそうなるん!俺のパートナーはレーナやろ!?」
「だって私してあげられない!我慢したくないでしょ!?」
「レーナちゃん、本当にいいのぉ?私がカサトさんと寝ちゃってもぉ?」
夕食を持ってきたアリアさんが間に入る。
目の前に並べられるステーキの匂いが鼻を刺激する。
サラダ、パンや果物が並び、最後にエールが置かれた。
「…私よりナイスバディなアリアさんの方が魅力的で、我慢できないとか言われたら仕方ないですよ…」
気持ちが沈んでいく。俯いて二人の顔が見れない。
少しの間ののち、アリアさんの笑い声が響く。
「あははは!可愛い!レーナちゃん!私たちなにもないよぉ?!」
「…へ?」
「一緒に寝た事はあるって言ったけど、雑魚寝!他にも人いっぱいいたしぃ。あれはワイバーン退治の時だっけぇ?私元冒険者だからさぁ!あの時はみんな疲弊し過ぎてそれどころじゃなかったしぃ!」
元冒険者?ワイバーン?雑魚寝?!
「ワイバーンが3体ぐらい現れてさぁ…あの時はプロチュインが崩壊してもおかしくなかったわよ。でも冒険者みんなで撃退して、力尽きて。…そんな私に手を出してきたのは今の旦那よ」
厨房を親指で指差す。
「宿は接客第一だからね!こういう誘惑した格好もするの。夫は何人居てもいいものだしねぇ」
二階のカウンターも指差す。マジ?!結構おじさんだったよね?!
「でも残念…カサトさんも私の夫にと思ってたのにぃ」
「アリアさん!」
「冗談冗談!ゆっくりしていってよね、レーナちゃん♡」
頭をポンッと撫でられ、アリアさんは去っていった。
周りのお客さんにお尻を触られ、お盆で頭を叩いていた。
「な!?わかってくれたか?!しかも5年くらい前の話やで!」
「…じゃあどうして寄りかかられて顔赤くしたの?」
「う…!それは…!」
キョロキョロして、耳を寄せる様に促される。
「俺が寝てる横で、厨房におる旦那と…してたからや。俺目覚ましてもて早く終われってそればっかり思ってたわ」
想像して顔を赤くしてしまった。
「ほらな、そんな顔なるやろ」
「うるさい!」
ナイフとフォークを取って、ヤケ食いとばかりに目の前の食事を口に運んだ。
噛んだお肉は柔らかく油っぽくなくていくらでも入りそうだった。ただ、やっぱりこの世界の味付けは薄味で残念だなと思った。ステーキソースとか絡めると更に美味しくなりそうなのに。
食事を終わらせ、二人部屋でいいやんと言うカサトに抵抗し、一人部屋で寝る事にする。二人部屋空いてないとも言われたし。
「なんでー…?」
「じゃあアリアさんが寄りかかってきたのに、何で払いのけなかったの?ちょっとはイイ気になってたんじゃないの?」
身体が強張ったのがわかった。やっぱり男ってホント最っ低!!
「じゃあ、私この部屋だから。おやすみ、カサト。いい夢を!!」
部屋に入ってすぐに鍵をかけた。
今回はすぐ諦めたのか、渡した鍵の部屋へ向かったみたい。
こんなに嫉妬するくらいカサトの事を好きになってるんだなぁ。
認めざるを得ないかな。
朝。
カサトが朝食を食べようと迎えにきた。
すぐ出発できるように荷物も全て持っていく。
カウンターに鍵を返し、朝食の木札を受け取る。
テーブルに座り、アリアさんと軽く挨拶し、木札を渡した。
今朝のアリアさんはメイクもなしのすっぴんで、服もちゃんと着こなしている。
それでも美人が漏れ出ている。
「朝からあんなケバいの居たらしんどいでしょぉ?安売りもしたくないしねぇ」
話し方は変わらないんだな、と思った。
朝食を食べ終え、携帯食や特産物を購入する。
昨日食べた牛のお肉も買い、鶏肉も買っていく。
「こっから次に大きい街は隣の国になる。そこまではもう小さい村しかないから、野宿ばっかりや」
カサトが今朝からおとなしい。
どうしたんだろう。いつもうるさいくらいなのに。
不思議に思ってじぃっと見つめていると、
「そんな顔せんとって。俺が悪かったんや…。これからはほんまに手出さんよって。でも…キスは許して。それ以上は、レーナが良いって言うまで触らんから」
私が良いって言うまで?!そんなこと恋愛初心者の私に言えると思ってるの?!
こっちは昨日腹を括ったのに!!
「…レーナ?」
「…わかった」
「な、なんで怒るん…?俺また何かした…?」
狼狽えているカサトを尻目に、プロチュインを後にした。
馬車を借りるという手もあったけれど、お金は無限じゃないし今回でかなり出費したので、歩いて行こうと言う事になった。
街から村はそんなに遠くなかったけれど、次の村まではかなり遠かった。
カサトは手を出さないと誓ってから、私の身体には一切触れてこない。
キスをしたり手を握ったりするだけ。
そのキスも触れるだけとか、食んだりとかで舌は入れてこない。
どうしよう。物足りない。キスをする度そう思ってしまって、顔に出てしまうのかカサトはすぐに目を逸らす。
本当に我慢してくれているんだ。
仲は悪くないけど、ギクシャクしてしまう。
そんな日が20日くらい続いて、レベルが21になった頃。
次の街『アンブシュア』に着いた。
どこからともなく硫黄の匂いがする。それに露出している顔や手が熱く感じるということは、遠目に見えるあの山は火山だろうか。微妙に煙が出ている気がする。
「暑ー…!凄い熱気やな」
そうだ。カサトの衣服には体温適温化が付いてないんだっけ。後で付けてあげよう。
ギルドカードを見せ中に入り、手頃な宿を探す。
『猪突猛進』と書かれた建物の中は広く。
いかついおじさんが給仕で、厨房には綺麗な女の人が数人立っていた。もしかしてお嫁さんだろうか?
予感は的中し、手を出されるのが嫌なので仕方なく給仕しているとおじさんは教えてくれた。若いお兄さんも数人給仕している。
二階の受付のお兄さんは好青年で、おじさんの息子で下で給仕しているのも兄弟だと教えてくれた。
仲良く話す私をカサトが引き剥がし牽制し、二人部屋を取り、夕食を食べにすぐに階下に降りた。
イノシシがメインでカサトは大満足という顔をしている。私にはイノシシ肉は固かったのでカサトに差し上げると凄く喜ばれた。
代わりに煮卵が絶品で、追加注文してしまった。
「…ちょっとここで滞在して、ギルドの依頼受けて纏まったお金稼ごか」
ここに来るまでに魔物を狩った素材を売っても、価値はピンキリだった。まぁ、そんなに戦ってないんだけど。
「ここは街の中に火山があるから、温泉あるし手頃に強い魔物もおるし」
「温泉!?あるの?!」
「あるで」
お風呂に入れる!やっと!!
「俺の村でも風呂あったからなぁ。風呂ないとか考えられへんで」
流石日本人!そうだよね!お風呂に浸からないと意味がないよね!
「街の中に風呂屋あるし、なんなら食べ終わったら行く?」
「行きたい!」
「決まりやな」
手を繋いで街の中を歩く。結局脱ぐからと鎧と剣を置いてきたカサトは、ただの村人に見えて距離が近く感じる。
周りにいる鎧を着た冒険者たちは暑くないのかな、と疑問に思っていると、お風呂屋に着いた。
「多分俺の方が早く終わるけど、ゆっくり浸かってきていいで。終わったら看板の下に並んでるベンチにおるから」
「はーい」
看板には『癒し処』と書かれている。料金は1人銅貨10枚。
壁沿いにベンチが並び、カップルで来た人たちが待ち合わせる場所だと番台さんに聞いた。ちなみに番台さんはおばちゃん。
男女別で、時計もない世界だから、そうなるよね。
火山が近いから湯冷めはしなさそうだし。
クリーンで身体を綺麗にしてから湯船に浸かる。
頭を洗ってる人はいなくて、シャワーのような設備もない。
本当に浸かるだけなんだな。
お言葉に甘えてゆっくり浸かろうと思っていたけど、誰かが待ってると思ったらそんなにゆっくりも出来ない。時計が普及すればなぁ。
頭も身体も泡で洗いたかったので、端っこの、人がいない場所でしゃがみながら、現代の知恵を振り絞り使っていたシャンプーとトリートメント、身体を洗うタオルにボディソープを創り全身洗っていく。
創造魔法サマサマだ~!結構いいシャンプーなのに、お金いらないとかラッキー!
「良い香りねー!それなぁに?」
声に振り返ると、いつの間にか後ろに人だかりが出来ていた。
シャワー代わりに温水を上から降らせていたからか、音と香りとで人を集めてしまったみたいだ。
「あなた杖なしで魔法使えるの?凄いわね!」
「髪を洗ってるの?どうして?」
「髪も身体もすべすべ!いい香りだし!ねぇねぇ、何したの?!」
この日のお風呂屋さんでは、女風呂からとてもいい香りが充満したという。
門兵にギルドカードを見せ、中に入るとモンデセントの3分の1くらいの大きさの街が広がった。
行き交う人は多く、時間が時間だからか美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
「俺がよく行く宿でいいかなぁ。飯がうまいねん」
もちろんレーナが作る方が美味しいけど!
と煽てたって何も出ない。
私はプロチュインの特産物を食べてみたい。
行きつけの宿に入ると、一階は食堂、二階から上が宿という造りで、牛の帽子亭と同じだった。
これが基準なのかもしれない。
ただ一つ違う事は、
「あらぁ?カサトさん。もうプロチュインに戻って来たのぉ?私が忘れられなかったのかしら」
給仕さんが若いボンキュボンのお姉さんで、お色気ムンムンで、カサトに寄り掛かってきた事だ。
「ちょ、アリアさんやめて!レーナが見てる!」
赤い顔なのか青い顔なのかわからない顔色をしてあたふたしている。ジトッとした目で返しておく。
「レーナ?あら。誰かと一緒なんて初めてじゃない…それにとーっても可愛い子ね」
顎に人差し指を添え、上を向かせられる。メイクバッチリ、いい匂いがするお姉さんは美人で巨乳だ。
ふわふわの髪はウェーブでクリーム色。
谷間に視線がいっちゃうくらい凄い!
「レーナは俺のパートナーや!誘惑せんとって!」
「あら!やっと見つけられたのぉ!おめでとう!!じゃあもう私とはベッドを共にする事はないのねぇ…」
つまり二人はそういう関係かぁあ!
「…へぇぇえ…!?」
「いや、これは、その、過去!過去の事やから!」
「いいよ別に!私とはまだだから!我慢出来ないんならお姉さんと今日もベッドを共にすればいいわ!」
一切否定しないんだね!男の人って不潔だわ!!
結局誰でもいいんじゃない!?
二階に上がり、カウンターにいたおじさんに一人部屋を2つ用意して貰う。一泊銀貨1枚だから2枚渡し、夕食用の木札と鍵を受け取り階下に降りた。
二人がけのテーブルに座って待っていたカサトの横で、お姉さんはまだしなだれかかっている。
「木札!夕食お願いします!」
「いつものでよろしゅう…」
「はぁい!二人分ねぇ」
アリアさんは木札を手に厨房へ入って行った。
カサトは人差し指をツンツンと合わせて俯いて、上目遣いで私を見る。顔が赤くて隠せてないけど。
「あ、あの、レーナさん?」
「これ、カサトの分の部屋の鍵」
「え、待ってや、何で同じ部屋じゃないん?」
「私の目の前でお姉さんとするの?!悪趣味なの!?」
「何でそうなるん!俺のパートナーはレーナやろ!?」
「だって私してあげられない!我慢したくないでしょ!?」
「レーナちゃん、本当にいいのぉ?私がカサトさんと寝ちゃってもぉ?」
夕食を持ってきたアリアさんが間に入る。
目の前に並べられるステーキの匂いが鼻を刺激する。
サラダ、パンや果物が並び、最後にエールが置かれた。
「…私よりナイスバディなアリアさんの方が魅力的で、我慢できないとか言われたら仕方ないですよ…」
気持ちが沈んでいく。俯いて二人の顔が見れない。
少しの間ののち、アリアさんの笑い声が響く。
「あははは!可愛い!レーナちゃん!私たちなにもないよぉ?!」
「…へ?」
「一緒に寝た事はあるって言ったけど、雑魚寝!他にも人いっぱいいたしぃ。あれはワイバーン退治の時だっけぇ?私元冒険者だからさぁ!あの時はみんな疲弊し過ぎてそれどころじゃなかったしぃ!」
元冒険者?ワイバーン?雑魚寝?!
「ワイバーンが3体ぐらい現れてさぁ…あの時はプロチュインが崩壊してもおかしくなかったわよ。でも冒険者みんなで撃退して、力尽きて。…そんな私に手を出してきたのは今の旦那よ」
厨房を親指で指差す。
「宿は接客第一だからね!こういう誘惑した格好もするの。夫は何人居てもいいものだしねぇ」
二階のカウンターも指差す。マジ?!結構おじさんだったよね?!
「でも残念…カサトさんも私の夫にと思ってたのにぃ」
「アリアさん!」
「冗談冗談!ゆっくりしていってよね、レーナちゃん♡」
頭をポンッと撫でられ、アリアさんは去っていった。
周りのお客さんにお尻を触られ、お盆で頭を叩いていた。
「な!?わかってくれたか?!しかも5年くらい前の話やで!」
「…じゃあどうして寄りかかられて顔赤くしたの?」
「う…!それは…!」
キョロキョロして、耳を寄せる様に促される。
「俺が寝てる横で、厨房におる旦那と…してたからや。俺目覚ましてもて早く終われってそればっかり思ってたわ」
想像して顔を赤くしてしまった。
「ほらな、そんな顔なるやろ」
「うるさい!」
ナイフとフォークを取って、ヤケ食いとばかりに目の前の食事を口に運んだ。
噛んだお肉は柔らかく油っぽくなくていくらでも入りそうだった。ただ、やっぱりこの世界の味付けは薄味で残念だなと思った。ステーキソースとか絡めると更に美味しくなりそうなのに。
食事を終わらせ、二人部屋でいいやんと言うカサトに抵抗し、一人部屋で寝る事にする。二人部屋空いてないとも言われたし。
「なんでー…?」
「じゃあアリアさんが寄りかかってきたのに、何で払いのけなかったの?ちょっとはイイ気になってたんじゃないの?」
身体が強張ったのがわかった。やっぱり男ってホント最っ低!!
「じゃあ、私この部屋だから。おやすみ、カサト。いい夢を!!」
部屋に入ってすぐに鍵をかけた。
今回はすぐ諦めたのか、渡した鍵の部屋へ向かったみたい。
こんなに嫉妬するくらいカサトの事を好きになってるんだなぁ。
認めざるを得ないかな。
朝。
カサトが朝食を食べようと迎えにきた。
すぐ出発できるように荷物も全て持っていく。
カウンターに鍵を返し、朝食の木札を受け取る。
テーブルに座り、アリアさんと軽く挨拶し、木札を渡した。
今朝のアリアさんはメイクもなしのすっぴんで、服もちゃんと着こなしている。
それでも美人が漏れ出ている。
「朝からあんなケバいの居たらしんどいでしょぉ?安売りもしたくないしねぇ」
話し方は変わらないんだな、と思った。
朝食を食べ終え、携帯食や特産物を購入する。
昨日食べた牛のお肉も買い、鶏肉も買っていく。
「こっから次に大きい街は隣の国になる。そこまではもう小さい村しかないから、野宿ばっかりや」
カサトが今朝からおとなしい。
どうしたんだろう。いつもうるさいくらいなのに。
不思議に思ってじぃっと見つめていると、
「そんな顔せんとって。俺が悪かったんや…。これからはほんまに手出さんよって。でも…キスは許して。それ以上は、レーナが良いって言うまで触らんから」
私が良いって言うまで?!そんなこと恋愛初心者の私に言えると思ってるの?!
こっちは昨日腹を括ったのに!!
「…レーナ?」
「…わかった」
「な、なんで怒るん…?俺また何かした…?」
狼狽えているカサトを尻目に、プロチュインを後にした。
馬車を借りるという手もあったけれど、お金は無限じゃないし今回でかなり出費したので、歩いて行こうと言う事になった。
街から村はそんなに遠くなかったけれど、次の村まではかなり遠かった。
カサトは手を出さないと誓ってから、私の身体には一切触れてこない。
キスをしたり手を握ったりするだけ。
そのキスも触れるだけとか、食んだりとかで舌は入れてこない。
どうしよう。物足りない。キスをする度そう思ってしまって、顔に出てしまうのかカサトはすぐに目を逸らす。
本当に我慢してくれているんだ。
仲は悪くないけど、ギクシャクしてしまう。
そんな日が20日くらい続いて、レベルが21になった頃。
次の街『アンブシュア』に着いた。
どこからともなく硫黄の匂いがする。それに露出している顔や手が熱く感じるということは、遠目に見えるあの山は火山だろうか。微妙に煙が出ている気がする。
「暑ー…!凄い熱気やな」
そうだ。カサトの衣服には体温適温化が付いてないんだっけ。後で付けてあげよう。
ギルドカードを見せ中に入り、手頃な宿を探す。
『猪突猛進』と書かれた建物の中は広く。
いかついおじさんが給仕で、厨房には綺麗な女の人が数人立っていた。もしかしてお嫁さんだろうか?
予感は的中し、手を出されるのが嫌なので仕方なく給仕しているとおじさんは教えてくれた。若いお兄さんも数人給仕している。
二階の受付のお兄さんは好青年で、おじさんの息子で下で給仕しているのも兄弟だと教えてくれた。
仲良く話す私をカサトが引き剥がし牽制し、二人部屋を取り、夕食を食べにすぐに階下に降りた。
イノシシがメインでカサトは大満足という顔をしている。私にはイノシシ肉は固かったのでカサトに差し上げると凄く喜ばれた。
代わりに煮卵が絶品で、追加注文してしまった。
「…ちょっとここで滞在して、ギルドの依頼受けて纏まったお金稼ごか」
ここに来るまでに魔物を狩った素材を売っても、価値はピンキリだった。まぁ、そんなに戦ってないんだけど。
「ここは街の中に火山があるから、温泉あるし手頃に強い魔物もおるし」
「温泉!?あるの?!」
「あるで」
お風呂に入れる!やっと!!
「俺の村でも風呂あったからなぁ。風呂ないとか考えられへんで」
流石日本人!そうだよね!お風呂に浸からないと意味がないよね!
「街の中に風呂屋あるし、なんなら食べ終わったら行く?」
「行きたい!」
「決まりやな」
手を繋いで街の中を歩く。結局脱ぐからと鎧と剣を置いてきたカサトは、ただの村人に見えて距離が近く感じる。
周りにいる鎧を着た冒険者たちは暑くないのかな、と疑問に思っていると、お風呂屋に着いた。
「多分俺の方が早く終わるけど、ゆっくり浸かってきていいで。終わったら看板の下に並んでるベンチにおるから」
「はーい」
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壁沿いにベンチが並び、カップルで来た人たちが待ち合わせる場所だと番台さんに聞いた。ちなみに番台さんはおばちゃん。
男女別で、時計もない世界だから、そうなるよね。
火山が近いから湯冷めはしなさそうだし。
クリーンで身体を綺麗にしてから湯船に浸かる。
頭を洗ってる人はいなくて、シャワーのような設備もない。
本当に浸かるだけなんだな。
お言葉に甘えてゆっくり浸かろうと思っていたけど、誰かが待ってると思ったらそんなにゆっくりも出来ない。時計が普及すればなぁ。
頭も身体も泡で洗いたかったので、端っこの、人がいない場所でしゃがみながら、現代の知恵を振り絞り使っていたシャンプーとトリートメント、身体を洗うタオルにボディソープを創り全身洗っていく。
創造魔法サマサマだ~!結構いいシャンプーなのに、お金いらないとかラッキー!
「良い香りねー!それなぁに?」
声に振り返ると、いつの間にか後ろに人だかりが出来ていた。
シャワー代わりに温水を上から降らせていたからか、音と香りとで人を集めてしまったみたいだ。
「あなた杖なしで魔法使えるの?凄いわね!」
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