2 / 9
序章
司紋灼は巻き込まれる
しおりを挟む
「灼くん、君は今日でクビね」
「‥‥はい?」
何の前触れもなく告げられるクビ宣告に、司紋灼は驚きを隠す事が出来なかった。
一体自分は会社にとって、何か不利益になるような行為を行ったものかと思考を巡らせてみるも、特にこれという問題は起こしていない。
では何故か。
「だから、クビね」
「え!?いや、俺何かしましたでしょうか?」
何故クビなのかを問う灼に、心底疑問を含んだような表情の上司は、「知らないのか?」と言いつつ理由を教えてくれた。
「この前、崇悪思想教団《ファイン・トランティスト》だったかが国を制圧して周っているだろう?もう時期日本も同じ末路を向かうだろうから、会社も早いところ無くなるんだよ」
「崇悪思想教団‥‥?何ですかそれ?」
「それも知らんのか!!」
あははと愛想笑いする灼だが、理由は会社の圧倒的無賃残業にあった。
毎日終わらない業務を強いられ、残業をせざるを得ない灼にとって社会情勢など縁のない話なのだ。
そのため時間を十分に取れず、テレビニュースやネットニュースの類は見る事が出来ないので、昨日の歴史的事件も当然知る由もない。
仕方のないことである。
「まあ簡単に言えば戦争が始まったんだ。とは言っても、悲しいくらい一方的なものだがな。ほら、灼もこんな時くらい家族と一緒にいろよ。な?」
「は、はい‥‥」
そんなこんなで、流される形ではあるが、灼だけでなく会社員全体の一斉リストラの被害に遭ってしまった。
退職金は貰えたものの、これで何日過ごせるのかは未だ定かではない。
いつ切れるのかという恐怖に狩られながら生きる日々はとても恐ろしいので、早いところ新しい仕事を探さねばならない。
「でも、あの人の言い分からして、大体の会社はリストラを行なっているとみた。うーん、駄目だこれは詰んだ」
多分もう給料なんて貰えないんだろうなと考えながら、自宅へ向かいつつ夜飯をスーパ買いに買いに行く。
その間、久しぶりに時間が出来たのでスマートフォンのニュースアプリを用いて今の状況を簡単に整理した。
「要するに、この崇悪思想教団って奴らが暴動を起こしたせいでこんなことになってるのか。げっ、制圧されてないの日本だけじゃん。本当に明日の金より明日の命を気にした方が良い世界になってやがる」
灼、納得。
「そりゃみんな仕事も辞めるよね」
スーパーで一通り今日の晩飯を買い終えると、もう辺りは暗くなっており、気温も下がっていた。
「寒っ!!‥‥こんな状況でも、季節は変わるんだな」
空へ目を向けると、上から白い粒が降ってきており、僅かではあるが冬の訪れを実感できた。
なんだか心が少し和んだようだった。
「さて、帰るか」
気分を切り替え、スーパーの敷地を出ようとした刹那、背後から物凄い爆発音と爆風が灼に押し寄せてきた。
「──っ!?」
そのまま一直線上に勢いよく吹き飛ばされ、強運かはたまた不幸か、近くの壁に激突し静止する。
背中を襲う激痛を必死に耐えながら、爆発音がした場所を見ると、先程までいたスーパーであったことに気づく。
少し遅かったら自分はどうなっていたのだろうと考えると、全身が震えて止まらない。
だが、無事だったことを安心するのは出来そうにない。
「何だ、あれは?」
何故なら、灼の視界には確かにこの世では見る筈のない姿をした生物たちが地を張っていたからだった。
「‥‥はい?」
何の前触れもなく告げられるクビ宣告に、司紋灼は驚きを隠す事が出来なかった。
一体自分は会社にとって、何か不利益になるような行為を行ったものかと思考を巡らせてみるも、特にこれという問題は起こしていない。
では何故か。
「だから、クビね」
「え!?いや、俺何かしましたでしょうか?」
何故クビなのかを問う灼に、心底疑問を含んだような表情の上司は、「知らないのか?」と言いつつ理由を教えてくれた。
「この前、崇悪思想教団《ファイン・トランティスト》だったかが国を制圧して周っているだろう?もう時期日本も同じ末路を向かうだろうから、会社も早いところ無くなるんだよ」
「崇悪思想教団‥‥?何ですかそれ?」
「それも知らんのか!!」
あははと愛想笑いする灼だが、理由は会社の圧倒的無賃残業にあった。
毎日終わらない業務を強いられ、残業をせざるを得ない灼にとって社会情勢など縁のない話なのだ。
そのため時間を十分に取れず、テレビニュースやネットニュースの類は見る事が出来ないので、昨日の歴史的事件も当然知る由もない。
仕方のないことである。
「まあ簡単に言えば戦争が始まったんだ。とは言っても、悲しいくらい一方的なものだがな。ほら、灼もこんな時くらい家族と一緒にいろよ。な?」
「は、はい‥‥」
そんなこんなで、流される形ではあるが、灼だけでなく会社員全体の一斉リストラの被害に遭ってしまった。
退職金は貰えたものの、これで何日過ごせるのかは未だ定かではない。
いつ切れるのかという恐怖に狩られながら生きる日々はとても恐ろしいので、早いところ新しい仕事を探さねばならない。
「でも、あの人の言い分からして、大体の会社はリストラを行なっているとみた。うーん、駄目だこれは詰んだ」
多分もう給料なんて貰えないんだろうなと考えながら、自宅へ向かいつつ夜飯をスーパ買いに買いに行く。
その間、久しぶりに時間が出来たのでスマートフォンのニュースアプリを用いて今の状況を簡単に整理した。
「要するに、この崇悪思想教団って奴らが暴動を起こしたせいでこんなことになってるのか。げっ、制圧されてないの日本だけじゃん。本当に明日の金より明日の命を気にした方が良い世界になってやがる」
灼、納得。
「そりゃみんな仕事も辞めるよね」
スーパーで一通り今日の晩飯を買い終えると、もう辺りは暗くなっており、気温も下がっていた。
「寒っ!!‥‥こんな状況でも、季節は変わるんだな」
空へ目を向けると、上から白い粒が降ってきており、僅かではあるが冬の訪れを実感できた。
なんだか心が少し和んだようだった。
「さて、帰るか」
気分を切り替え、スーパーの敷地を出ようとした刹那、背後から物凄い爆発音と爆風が灼に押し寄せてきた。
「──っ!?」
そのまま一直線上に勢いよく吹き飛ばされ、強運かはたまた不幸か、近くの壁に激突し静止する。
背中を襲う激痛を必死に耐えながら、爆発音がした場所を見ると、先程までいたスーパーであったことに気づく。
少し遅かったら自分はどうなっていたのだろうと考えると、全身が震えて止まらない。
だが、無事だったことを安心するのは出来そうにない。
「何だ、あれは?」
何故なら、灼の視界には確かにこの世では見る筈のない姿をした生物たちが地を張っていたからだった。
0
あなたにおすすめの小説
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
国を追放された魔導士の俺。他国の王女から軍師になってくれと頼まれたから、伝説級の女暗殺者と女騎士を仲間にして国を救います。
グミ食べたい
ファンタジー
かつて「緑の公国」で英雄と称された若き魔導士キッド。しかし、権謀術数渦巻く宮廷の陰謀により、彼はすべてを奪われ、国を追放されることとなる。それから二年――彼は山奥に身を潜め、己の才を封じて静かに生きていた。
だが、その平穏は、一人の少女の訪れによって破られる。
「キッド様、どうかそのお力で我が国を救ってください!」
現れたのは、「紺の王国」の若き王女ルルー。迫りくる滅亡の危機に抗うため、彼女は最後の希望としてキッドを頼り、軍師としての助力を求めてきたのだった。
かつて忠誠を誓った国に裏切られ、すべてを失ったキッドは、王族や貴族の争いに関わることを拒む。しかし、何度断られても諦めず、必死に懇願するルルーの純粋な信念と覚悟が、彼の凍りついた時間を再び動かしていく。
――俺にはまだ、戦う理由があるのかもしれない。
やがてキッドは決意する。軍師として戦場に舞い戻り、知略と魔法を尽くして、この小さな王女を救うことを。
だが、「紺の王国」は周囲を強大な国家に囲まれた小国。隣国「紫の王国」は侵略の機をうかがい、かつてキッドを追放した「緑の公国」は彼を取り戻そうと画策する。そして、最大の脅威は、圧倒的な軍事力を誇る「黒の帝国」。その影はすでに、紺の王国の目前に迫っていた。
絶望的な状況の中、キッドはかつて敵として刃を交えた伝説の女暗殺者、共に戦った誇り高き女騎士、そして王女ルルーの力を借りて、立ち向かう。
兵力差は歴然、それでも彼は諦めない。知力と魔法を武器に、わずかな希望を手繰り寄せていく。
これは、戦場を駆ける軍師と、彼を支える三人の女性たちが織りなす壮絶な戦記。
覇権を争う群雄割拠の世界で、仲間と共に生き抜く物語。
命を賭けた戦いの果てに、キッドが選ぶ未来とは――?
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる