Strelitzia

大石或和

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序章

反撃

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 出口のドアに付けられている小窓から、外の様子を覗き込む。
 想像通りといえば想像通りだが、予想外なことといえば、外に生息するクリーチャーの数の多さだった。
 何匹かいるとは考えていたが、さすがに十匹以上は想定外だ。
 それに、クリーチャーたちは群れを成して行動しているようにも見える。

「さて、どうすっか」

 自作弾のストックは多めに作っておいたのだが、敵の数からして全くと言っていいほど足りる気がしない。
 一応30発分は用意しているとはいえ、無駄撃ちを許容できるほどの余裕はないだろう。
 まず何処が弱点であり、即死ポイントとなっているのかが分からないため、何処を狙えば良いか分からない。
 そこも探りさぐり戦う必要がある。

「あとは体の問題だな」

 痛みは未だ引いておらず、ろくに手当もしていないのでいつ悪化してもおかしくはない。
 だからこそ、早めに決着をつけこの場を離れるのが最適解だろう。
 灼は一度深呼吸をして息を整えると、全身に残る力の限りをフル活用し、覚悟を決める。

「よし、やってやる」

 クリーチャー目掛けて攻撃を始めた。
 まず一発、狙いをクリーチャーの一体に集中させることで確実性を持って仕留める。
 着弾点は頭部、狙い通りだった。

「どうだ?」

 灼力作の炸裂弾をもろに喰らったクリーチャーは、悍ましいうめき声を上げると内側から破裂し消滅する。
 予想通り頭部が弱点のようだ。
 どんな原理で破裂したのかは不明ではあるが、今現在そんなことに一々思考を割いている暇も余裕もない。
 一体を処理し勢いづいた灼は、更に迫り来るクリーチャーたちを一体、また一体と討伐していく。

「あと五匹か。玉はあと20発。正確に狙えば、勝機は十分にある。よし、行くぞ!!」

 キツイのは銃の反動くらいだろうか。
 他は怖いほどに順調で、何か嫌なことが起きそうな予感がしてならない。
 灼は慣れてきたのか一発で一体を倒せるまでに成長し、弾もあと15発とかなりのコストカットに成功した。
 空を見ると、太陽が昇りかけていた。

「終わった、のか?」

 辺りを見回せば、あるのは自分が倒してきたクリーチャーの血痕だらけだった。
 とうとう戦いが終わったのだ。
 灼の体は底しれない安心感に包まれ、それに生き残ったという達成感まで生まれていた。

「終わったあああ──────ッ!!!!」

 やっと、この地獄から救われる。
 最後まで希望を捨てず足掻き続けた灼だからこそ、この勝利を掴み取ることが出来たのかもしれない。
 あとは安全地帯に逃げ込むだけ。
 そう、あの敵が現れるまでは。

「待て!まだ終わってない!!」

 刹那、灼の体を巨大な影が覆い隠す。
 その影は刻一刻と迫り寄り、体に限界が来ていた灼は、なす術なく押し潰されると思われた。
 同時に舞う桜吹雪。
 巨大な影を切り裂く、蘭の花のような美しさを秘めた一撃を、桜の花びらが彩る。
 攻撃にしては飾りすぎに思えるが、綺麗という二文字に尽きる技だった。

「──花月刀桜花絢蘭《かげつとう おうかけんらん》!!」

 絶大な威力の攻撃に体制を崩した影は、後ろに飛び移り、灼を守った男に警戒姿勢をとる。

「大丈夫?司紋灼くん」

「は、はい」

 太陽が朝を知らせ、人々を照らすように、希望を失いかけた灼にも光が差した。
 凛とし、立つ姿すら絵になる好青年。
 彼の名は────

「────俺は西園寺涼雅。知らないだろうけど、君の親戚の一人さ」

 
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