変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水

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魔法研究の為の基盤作り

12話

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 俺は今、屋敷を出て門を通らずに裏門に来ていた。
 冒険者生活を楽しみ過ぎてアレンサリーナさんにゴリ押しされた理由をついつい忘れていたのだ。

「ねぇ君、誰ー?」

 俺よりも少し小さいくらいの男の子に裏門を出てすぐに声をかけられた。

「ここは孤児院で合ってるよね? 院長先生を呼んできてくれるかな?」

「わかったー」

 とトテトテ走っていく姿はとても微笑ましい様子だった。
 10分程待っていたら1人のおばあさんが歩いて来た。

「私に何か御用でしょうか?」

 怪訝な表情をしているので安心させる為に俺は自己紹介をする。

「あぁすみません。俺は1月前に孤児院の前の屋敷に住み始めたケイです。
 色々バタバタしていて挨拶が遅くなってすまない。
 後ろに居るのは同行者兼お目付け役だから気にしないで」

「ハビスですケイの同行者兼保護者です」

 おい!お目付け役って言ったのに保護者言うなよ!

「あらあらすみません。あの御屋敷に新しい人が入ったと商業ギルドから連絡は受けていました。
 こんな所では何ですから中にどうぞ」

 その挨拶が終わると同時に中に勧められたので俺達は中に入ったが……想像以上にボロい。
 おかしいな? 父上から助成金が出ているはず何だけど。
 院長室に入り椅子に腰をおろした後、質問した。

「院長ハッキリ聞いても良いか? 助成金はどうした?」

 院長の老婆はびっくりした顔をした後に落ち込んだ様に肩を落とした。

「3年前から年々減っていた上に最近孤児が増えまして
 今は昔から貯めていた補修費用貯金を切り崩して何とか生活しています」

「ハビス!!どういう事だ? 助成金は孤児院の孤児の人数を
 毎月確認して1人頭金貨1枚出して居た筈だぞ!」

 俺はついつい感情的になってしまった。

「あのうケイさん? どうしてその事を知ってらっしゃるのですか?
 そして1人頭なのですか?」

 俺は椅子から立ち上がり頭を下げた。

「大変申し訳なかった。今はケイと名乗っているが私の本名はケビン・クロス。
 クロス家次男です。クロス家を代表して孤児院院長には正式に謝罪を申し上げる。

 今更ながら今日は月始め、孤児が何人先月まで居ると報告して今日お金が払われるか確認したい」

 その言葉を聞いて院長はおろおろしだした。
 まさか領主の子供がここに来て更には目の前に屋敷を買ったとは思ってなかったのだろう。

「頭を上げてください。えっと報告は32人としています。
 後1時間後の鐘が鳴った辺りに支払いに役人様が来ます」

「そうか……待たせてもらおう。直接院長室に来るのか?
 それとも院長が取りに向かうのか?」

「ここに来ます。横柄なのでお気を付けてください」

「そうか……後程正式な謝罪は申し込む事になりそうだな」




 1時間毎に鳴る鐘が鳴った後、体感的に20分程でそいつはやって来た。
 領主の家に居るのは使用人と騎士のみでその領主に報告をあげるのが役人になる。

 つまり文官や役人の不正はちゃんと締め付け無いとやりたい放題になるのだ。
 俺とハビスは孤児院院長の隣に立ち孤児院の職員がそいつを案内してきた。

「院長先生、役所の方がお見えになりました」

 と言うと許可も取らずとズカズカ入ってきて徐に机の上に袋と足を置いた。
 俺は気を落ち着けるのに精一杯だった。

「はい、ありがとうございます」

 院長先生はそう言って袋を確認すると

「また助成金は減ったのでしょうか……もう昔に比べると約半分ですね」

「チッ、仕方ねぇだろ? 領は最近、税収が減ってるんだから」

 は? 税収減ってたっけ? 俺はハビスにチラリと視線を向けると首を振っている上に役所の人間を射抜かんばかりに睨んでいた。

「ババア珍しく人が居ると思ったら爺さんと子供か?
 さっきからキョロキョロと落ち着きのないちゃんと教育しろよ!」

 俺は我慢の限界が来たと思ってこいつ処分決定と思ったら
 ハビスがテレポートを使い首に短剣を当てていた。

「貴様、先程から誰に向かって口を聞いている?
 殺しは今ここではしないが手と足は要らんな。
 頭と口さえあれば貴様の存在理由等それしか無いからな」

「ひぃえ……だ、どちら様でござりましゅか……」

 ひぃえ!ハビスの口調も消えてガチ殺気を俺と院長除いて当ててるありゃ怖ぇよ。

「ふん、仕方ない。お前が子供と呼んだのは主家の次男様だ」

「ヒョ」

「あ、ちなみにその人家宰だからね筆頭執事のハビスだぞ?
 お前ら役所の文官如きがよくも不正をしてくれたな?

 俺は下げなくても良い頭を下げたぞ? 覚悟は良いな?」

 俺はここぞとばかりニヤリと笑う。


「ひょ、ひょんな……」

 役人はガタガタと震えているがそんな事は知らない。
 院長に断りを入れて俺は中身を確認するも金貨15枚しか無くてため息をつく。

「院長すまないな。ここに金貨50枚ある。

 今まで良く耐えてくれた。子供達を守ってきてくれた。

 領や街にとって大事なのは人を安心して増やせる事、そして未来の人材を育てる事だ。
 今日はその元々寄付をする予定でお金を持ってきて居たのが幸いした。
 それとこれも」

 俺はそろばんもどきこと計算機を10個と使い方を書いた説明書を渡した。

「あ、ありがとうございます。ケビン様に私がそんな言葉を貰う訳には」

 そんな事を言う院長に俺は首を振った。

「何になるにも人は誰しも子供から大人になるのだ。
 そして子供は弱い、だからこそ弱者の受け皿の孤児院が街には大事なのだ。

 そして育てる者が誠実なら子供達はきっと誠実に応えてくれる。
 そういう教育者が必要なのだ。
 そして院長も分かっているだろう? 子供はだ。

 人の善悪の判断など生きる為、いや生き残る為なら一瞬で染まってしまうそれが悪いと知らなくても知っていてもだ
 だからこそ、染まる前に保護してるのだからそれを握り潰した役所は許せるものではないのだ」

 院長は頭を下げっぱなしで前世の大人を思い出した。
 スマホ片手にペコペコ下げる様子は日本独特な文化だよなぁ。
 おっとこうしては居られない。


 俺はそれだけ伝えハビスと役人を引きづり役人が乗って来た
 馬車で久々に家に帰ってきたのであった。
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