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学園編
27話
しおりを挟む俺は今船を漕いでいる。
実際にしている訳でもない、夢と現実の狭間でゆらゆら揺れているだけだ。
どうしてどこの世界の老人や権力者の話は長いのか、世界の不思議だと思う。
そんなつまらない入学式に自分の知ってる名前が魔道具の拡声器で聞こえると
意識がはっきりするのは人とは何とも現金な奴だと思う。
『新入生代表Sクラスーーローズティア・カースド嬢』
遠くからわかる程、清廉な出で立ちに周りの男子達が息を飲む音が聞こえ、後ろの親達つまり貴族達がザワザワする。
生徒の席順はステージからSABCDEFGと列をなしているので
俺はど真ん中ですら遠いので後ろは煩いんだろうなぁ。
『この度は私達の為にこの様な素晴らしい式典を開いて頂きありがとうございます。
私達はあの難しい試験を突破出来た事に満足せずに日々精進して行く事をここに誓います。
そして努力・研鑽に立場や貴賎は関係ないと私は思っております。
その為、平民・貴族関係無く共に高め合って行ける事を望みます。
新入生代表ローズティア・カースド』
最後の部分はローズティア嬢が付け足した文だろうな。
すげえ後ろザワザワしてたけど1人感激して席を立ち拍手してるおじさんが居る。
ローズティア嬢が顔を真っ赤にしつつステージを降りていった。
「ねぇあの子すっごく綺麗だよねぇ。憧れるわー。
後ろの何処かの貴族様が立って拍手するなんて凄いわよね?」
隣のコレットよただの親バカだぞ? とは言えず。
「髪の色似てるから親族なんじゃない?」
と伝えるのが精一杯だった。
入学式が終わるとお昼なので各自ご飯を食べた後、学園の教育日程の説明が行われるらしい。
俺は飯をすぐに食べて屋上でお昼寝して教室に戻ってくると何か入口で揉め事が起きていて入れなかった。
仕方無いので無理矢理入ろうとすると
「いやっ、ヤダ」「触らないで!」
と聞いた事がある声+複数人の女子の声と
「貴様レビン様がお誘いなのに何が嫌なのだ光栄に思え!」
という巫山戯た声が聞こえたので
「はいはいはい~どいたどいた邪魔だよ~」
と間延びした声を出しながら突入するとやはり腕を3人に掴まれた状態の女子4人の中にコレットが居た。
「あ!ケビン助けて!」
涙を浮かべ俺に助けを求めるコレット。
俺はレビンと呼ばれいた中心人物を見ると……
え? 豚ですか? と言った悲しい怠惰なマッシュルームヘアーの太った子供と3人のお付が居た。
お付が俺を睨みつける。
「貴様!助けだと? ふざけた事を抜かすんじゃない!
マール男爵家嫡男のレビン様に見初められたのだ光栄に思え
貴様も助けようだなと思うなよ? Eクラスの分際でDクラスに逆らうな!」
周りの男子、女子達は顔を俯かせて居る。
「はぁ……典型的な馬鹿な貴族の選民思想か。
んでそこの威張り散らしてるぶ、マール男爵嫡男様の後ろの連中は貴族子息なのかい?」
俺はそう問いかけた。
「ぶっ、当たり前だ!マール男爵家に仕える騎士爵家の1人だ」
レビンは何故か誇らしげに胸を張る。
そして女子達は更に絶望的な表情になる。
俺は鼻で笑っていた。
「レビン君? ほんとだな? もう取り返しつかないぞ?」
「ぼ!僕を君付けで呼ぶな平民のゴミがっ!」
俺は手のひらをパンッと叩いた。
「まずは、帝国法違反でそこの3人は死罪だ。レビン貴様も貴族子息なら分かるよな?」
俺の雰囲気が変わった事に何故か周りが驚き少し距離を開く。
お付の3人と、レビンは何を言っているのか分かってない様子でレビン何て顔を真っ赤にしている。
「何を貴様言って「帝国法では騎士の身分は国又は伯爵家以上の身分でないと渡す事が出来ない。
つまり男爵家では騎士の身分を与えられない。
男爵家に仕えるという言葉は騎士の身分を貰った家に叛意を持ったとして死罪相当」ひっ……」
周りに大口を叩いて居たお付の1人が尻もちを着きレビンはまだ事の重大さに気付いてない。
「そして帝国貴族法には平民や同じ貴族を嫁や妾に迎える場合はリスクとメリットを提示して
双方の“成人“している親又は保護者の同意を求めなければならない。
帝国では純潔を重んじられる文化がある為貴族が好き勝手物を言わせない為の法律だ。
これを無理矢理破った場合……」
コレットがここで口を開く。
「破った場合?」
「男より女の人の方が結婚に不利とみなし、賠償を払うか正妻扱いで迎えなければならない」
ここで周りはシーンと沈黙した。
「まぁ、こんな事をしたという噂だけでマール男爵家嫡男様は今後パーティーで爪弾き者として扱われるし多分招待状が来なくなる。
貴族様達は清く尊い純愛を重んじられる。
貴族様と言えど子を持つ親。娘を無理矢理女を連れ込もうとする男の近くに行かせるわけが無いという訳だ」
そこまで説明をした時だった。
「まぁ、そもそも学園内で権力を振りかざしたバカ貴族はそれだけでも処罰又は要注意人物よ」
そんな凛とした声を響かせた方を見ると俺は顔を歪めた。
「そんな顔をするのは酷くありませんか?」
とふふふと笑うのはローズティア嬢だった。
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