変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水

文字の大きさ
256 / 296
最終章:知識の街

255話

しおりを挟む

 俺は屋根の上からセラに指示を出す。

「セラ空間把握、何人いる?」

「3階に14人、2階に25人、1回に46人……地下に65人? うっ……ケビン兄。64人になった……」

「おっふ、気にするな。俺達が来たことで助かる命だってあるんだからな?」

 涙目になったセラを抱きしめあやす。
 そして妹を悲しませた八つ当たりとして完全詠唱の強力な魔法叩き込んでやるよ!!

「『香りは誘い、音は入口、視界は通過、幻夢の祭は始まりの鐘を知らず知らずのうちに入るだろう。
 全てが実であり夢であるその境界を曖昧にせよ!』『幻夢香』」

 地下に魔法が発動し包み込む。
 全員が気を失ったことを確認した後にどんどんと上に匂いを調整して行く。

 煙や匂いは上に行くという俺自身の知識から来る魔法指向の力だ。
 この辺はセラや他の子達にも実際に焚き火を見せたりして煙の動きで教えたりしているので
 セラは空間把握の魔法で倒れて行ったり魔法行使の魔力を感知して
 既に口や鼻を隠す装備に切り替えていた。

 俺達はとある1つの部屋以外の全員を眠らせひとつだけかなり大きい部屋を強襲すると
 ポカーンと驚き口を開けた金塊を磨く醜い豚が居た……

「なっ!? 誰だっ! 護衛はどうした!? 幾ら払ってると思ってんだフガッ!」

 やめて……不意打ちの豚鼻鳴らしは笑えるから。
 ほらセラも必死に我慢して最初なんて「クピュ」とか言って完全に噴き出し抑えきれてなかったじゃんか!

「それも重税・脱税で得た金だろ?」

 その言葉に伯爵様? は驚くけれど少し考えりゃ分かるわ……
 こいつは多分、貧困層で死んだか隠れているという噂を流し
 本当はこの地下に居る人達みたく痛い目に合わせて従順にしてから売り飛ばしていたと見ていた。

 死体が少な過ぎるのに、そういった家もなけりゃ臭いもないのだ。
 人間の痕跡を探すのに1番不自然なのは無味無臭だ。

 その場で忽然と足取りを追えなくなった時点で9割が事件と分かってしまうんだよ。

 子供の数も少ないのもおかしかった。
 それに金持ちの子供ほど、家の中で厳重に護られていたということは
 この領地では既にキチンと納税している対象外にすら手を出し始めていたと言うことだ。

 俺は伯爵様に俺の捕縛術を味わってもらおうと魔法を3つ唱えた。

「『ウッドバインド』『ライトバインド』『捕縛術・極』」

 ウッドバインドで口、腕、足を固定し。
 ライトバインドでその間を通す形で固定し、最後にそれを補強してロープで天井に引っ掛けてブランコにしてしまった。

 後は目隠し代わりに『無能』と文句をつけてから紙を貼った。
 その後は俺とセラで手分けして探そうと思ったんだけどね……

「ケビン兄、これも、これも、これもだ。
疲れた……」

 証拠が多過ぎてまとまりがない状況なので俺は面倒くさくなり
 鑑定眼で価値のありそうな物以外、省き全てを収納すると悪人特有の金庫があり一言。

「『キーブレイク』」

 ガチャンという音と共に金庫の扉が破壊され開く。
 俺もセラも溜め込みすぎな財宝に呆れていた。

 重税を課さなくても数年は生き残れる程の財宝が残っていたので2人で手分けしてマジックボックスにぶち込んだ。

 その後は地下に行き重傷者の治療を行った後、快楽で拷問してたアホ共を固定し受ける側にさせて周りを幻術で惑わせる魔法陣を描く。

 悪巧みの全貌を知った大人組にかなり強ばった顔をされてしまった気がするが気のせいってことにしておこうかな。


 助けた人達の中には隣の伯爵領から来た人も居てここと同じくらい酷いらしい。
 全員を孤児院に送り届けた時に俺の目には1つの才能が輝いていた。

『武神の申し子』

 この表記がたまたま目に入ったのであちらでアースさんにしごかれてくれ。
 指針だけで評価する国もどうかと思うけれどここまでという1点だけで左右される国は前世を思い出すからやめて欲しいぜよ。

 こちらには法治国家は無いに等しい。
 建国者の意図的には法治国家を目指そうとした兆しはあれど
 すぐに王侯法に切り替わった形跡が残ってるのだ。

 国法が法治国家的な制度でも1度でも例外を出してしまえば何の意味も無くなるのだから。
 その上各領地にも法があれば重複税金なんてかけ放題だからな。

 そして長命種の悪い所も出ている。
 世代交代の期間が長過ぎて既得権益受益者が長きに渡りしがみつく傾向があるのだ。

 上が変わらなければ、変化は生まれないということだ。
 エルフ族はその辺を加味して掟を作っていたけれどここにはそんな法律は無い。

 こうして隣領地も同じ様に襲撃して俺達は合計200人程の魔人族を知識の街に送った。

 そして重税に苦しむ民に無償提供の炊き出しを同時に5ヶ所で行った。
 襲撃した各領地の住民はどこも協力的だったのと
 伯爵家の領地に入ってから露骨な位の監視者が居た為に
 ダミー兄妹を作り上げてフードを被らせどこの炊き出し場に待機させては俺達が入れ替わることを繰り返した結果。
 
 1日で全ての監視が途切れるのだった。
 追い切れないと判断したのだろうね。



 そして次の日。
 清々しい朝に俺達は街を出た。

 本気で走って王都まで2時間程度だったので俺達はゆっくり歩いていくことにするのだった。

 遠目から見えるこちら側に来る騎士達がこちらを目視出来る距離に差し掛かった時に
 騎士の集団の最後尾に転移してやり過ごすのであった。

 王都までの道中何回もそういう場面に出くわしそうになったが回避して動いて王都にたどり着くのであった。

「なぁ? セラ? 城にはどうやって忍び込む?」

「兄も分かってるでしょ? 一緒にせーの!!」

「「真正面から堂々と入り込む!」」

 そう決意して王都に入る2人。
 さあて水仙国王はどんな反応するのかな?
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...