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序章
1.好きじゃない
しおりを挟む「君のことが好きなんだ…」
「あ、私は好きじゃないです」
何回目かも数え忘れた見合い。
目の前の…名前は忘れてしまいましたが男爵令息さんは出会い頭こんな事を言ってきました。
確かに彼の顔立ちは整っていて、男爵とはいえ婚約話が多く出てくる程。
だからと言って婚約する訳ではないんですが。
「ティヴァン…これで何回目だ?」
「分かりません」
お見合いが終わった後、お父様が問いかけてきました。
「そういう事ではない、何故何度も婚約話を振る?公爵家、侯爵家、伯爵、男爵、もう子爵にまで手を付けないと行けなくなるんだぞ?」
「へぇ、まだあるんですか」
「だから……」
そうでしたね、私は今年で16、家の為に結婚をしないといけないんでした。
政略的になるとはいえ、私的には愛が欲しい。
ですが、私、世間一般に言う"イケメン"、というものに好みを感じなくて…。
顔立ちを気にする侯爵家や伯爵家には嫁ぐ気にもなれないんです。
有難い事に、お母様の血を引き継いだ私は、ミルキーブランドの髪とライトシアンの瞳、それを引き立てる顔付き、陶器の様な肌色、健康的で魅力的な体つきと貴族…男性受けしやすい外見ですので婚約話はバンバン出てきます。
上の階級の令息が振られたから自分にもチャンスがあるんじゃないか、と最近は下の階級の令息さんからも話がやって来てるんですよね。
今回もそう。
「正直言うと、私は外見で婚約者を選んでいるんです」
「?今までも社交界で話題になる顔の良い令息を選んできたが…」
「そっちじゃないんです!」
バン、と思わず机を叩く。
「……まさか」
「そうです、私は世間で言う"イケメン"というものを好きになれません!!」
「………そうだったか、次からはそこも配慮しよう。だが、結局重要視するのは家に利益があるかないか、だからな」
「…分かってます」
顔の良く立場もある人は"あの子"に嫁がせれば良いのに、と言葉を飲み込んで。
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