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4.お父様の警告
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それは幼い頃の思い出。
もしかすると夢だったかも知れない、夢現な記憶の断片。
彼とはどこかの広い庭で偶然出会った。
それから沢山の時間を過ごし、惹かれ合った私達は■■の約束をした。
ぼやけた顔にぼやけた姿、相手の素性すらも思い出せない。
ただ、会える事がとても嬉しかった事だとだけ記憶している。
これが、本当に有った事か時折不安になりつつも、その思い出が私の心の拠り所となっていた。
そしていつか、私を救い出してくれると信じていた。
これが事故の前の事で覚えていた唯一の出来事。
□□ □ □ □□
「お姉様、今日は何の本を読んでられるのですか?」
そう言うのは弟のウィリアム、今年で8歳。
優しい弟で、私にだけ懐いてる。
それがまた、とてもとても可愛いんですよ、見た目も中身も。
妹は色々とお忙しい方だったので、弟と遊ぶ機会が少なかったせいで警戒され、男になった今でも結局懐かなかった。
「今はこの国の伝承物ね。悪しき魔女が令嬢を男に変える話なんて面白かったわ」
「へぇ~、僕なら女の子になりたいなぁ」
「どうして?」
「お姉様、と一緒にずっと本を読んで暮らしたいです」
「じゃあ魔女にお願いしないとね」
物語の中では嫌がらせで性別を変えているのですが、女は道具とまで言われるこの時代、むしろご褒美なのでは?なんて思ってしまう。
実際に悪しき魔女は存在して基本的には請負で誰かに呪いをかけるそうです。
そうなると誰が妹を呪う様に依頼したかと言う問題になります。
真っ先に思いつくのは敵対派閥。
父、サザーランド公爵を筆頭とするのは改革派で、他国とも仲良くしていこう、より多くの交流を計ろうという派閥。
対してドルヴァー公爵を筆頭とする保守派で、利権を守りたくて出入りの商人に更なる重税を掛けようと模索する派閥。
私、個人的には中間よりも少し改革派寄りの考えです。
といっても、父に意見出来る訳がないので駒としては改革派の一員です。
その保守派としては、妹が聖女だと言う時点でパワーバランスが崩れるから排除死体と思うのでしょう。
さらに妹が王太子妃になるのであれば、より一層のバランスが崩壊する訳です。
とは言え、呪いを用いた策謀は立証が難しい。
解除させるにしても、対象の魔女の特定、それが出来ても説得か交渉か排除が必要。
私、エリアナの様にコネも力もない令嬢には無理難題という事です。
ですが、アリアナであれば・・・。
次にこの国の歴史。
色々調べてて気づいたのですが、10年前に王家に廃嫡があったそうです。
当時の王子の母親(王妃様)が死去し、側室だった現王妃様の手によって廃嫡、国外追放になったとか。
そうして、今の風船王子が表に出て来たのは王妃様の入れ替わりによる派閥のパワーバランスが狂った事に起因するみたい。
要は、前王妃様は改革派、現王妃様は保守派って事ですね。
その現王妃様が王太子と妹の婚約を許したのはちょっとした謎ですね。
廃嫡については、あくまで書物間の差異から見つけれた矛盾を突き詰めて行った結果で、それを裏付ける物としては些か不十分と言わざるを得ません。
その確証を得るために、父に尋ねる事にしました。
コンコン。
「エリアナです、お父様」
「入れ」
いつもながら物静かに人を見つめる冷たい眼差しが私を孤独にさせる。
物語にある家族のような暖かい眼差しは感じた事が無い。
それも仕方がない事。
長女としての役割を放棄し、研究や本に没頭しているのですから、自業自得なのかもしれない。
「なにかね」
「妹の呪いの件、お父様のお考えをお聞かせ願えないでしょうか」
「お前は呪いに関わるな」
「もしや、身代わりが結婚式までと言うのは嘘と言う事ですか?妹の呪いが解けなければ、私はいつまでも身代をさせられるのではないでしょうか、この先、身代わりの人生なんて御免です」
私の言葉にお父様の眉間に皺が寄った。
結局の所、そういう事なのでしょう。
言う事を聞かない娘が本一冊で自由を捨てて言う事を聞くなんて、馬鹿な娘だと思っているのでしょう。
ま、まぁ、それでも欲しいという気がしますが、いえ、今の問題はそんな事ではありません。
「結婚相手として、何が不満なんだ、妹の代わりとは言え王妃になれるのだぞ」
「お父さま、アリアナは魅了効果の高い魔導具を使ってました」
「──そ、それはどうした」
「私が壊しました。後で発覚すれば大事ですから」
お父様は心労なのか、目をつぶりため息をついた。
そんな手段に出てたなんて、知りたくもなかったでしょうね。
「そうか、よくやった」
「それで、解呪の手配は進めているのですか」
「解呪は諦めろ、迂闊に干渉する方が危険だ」
「手掛かりを探す事もせずに、諦めるというのですか!」
「──そうだ」
「アリアナに、その事は・・・」
「──伝えてある」
「そうですか・・・」
そうなると妹の落ち込み様は手に取る様に分かる。
荒れるだろうなぁ・・・メンドくさ。
「所で、王子の廃嫡が10年前にあ──」
「それは国家機密だ!お前は知らんでいい!今後一切調べるな!いいな!」
「──はい、お父様・・・」
10年前の事となるとお父様はいつもこうだ。
私の事じゃないから大丈夫だと思ったんだけど、どうもそうじゃないみたい。
まぁ、こんな事で引き下がる様な性格じゃないですけどね。
もしかすると夢だったかも知れない、夢現な記憶の断片。
彼とはどこかの広い庭で偶然出会った。
それから沢山の時間を過ごし、惹かれ合った私達は■■の約束をした。
ぼやけた顔にぼやけた姿、相手の素性すらも思い出せない。
ただ、会える事がとても嬉しかった事だとだけ記憶している。
これが、本当に有った事か時折不安になりつつも、その思い出が私の心の拠り所となっていた。
そしていつか、私を救い出してくれると信じていた。
これが事故の前の事で覚えていた唯一の出来事。
□□ □ □ □□
「お姉様、今日は何の本を読んでられるのですか?」
そう言うのは弟のウィリアム、今年で8歳。
優しい弟で、私にだけ懐いてる。
それがまた、とてもとても可愛いんですよ、見た目も中身も。
妹は色々とお忙しい方だったので、弟と遊ぶ機会が少なかったせいで警戒され、男になった今でも結局懐かなかった。
「今はこの国の伝承物ね。悪しき魔女が令嬢を男に変える話なんて面白かったわ」
「へぇ~、僕なら女の子になりたいなぁ」
「どうして?」
「お姉様、と一緒にずっと本を読んで暮らしたいです」
「じゃあ魔女にお願いしないとね」
物語の中では嫌がらせで性別を変えているのですが、女は道具とまで言われるこの時代、むしろご褒美なのでは?なんて思ってしまう。
実際に悪しき魔女は存在して基本的には請負で誰かに呪いをかけるそうです。
そうなると誰が妹を呪う様に依頼したかと言う問題になります。
真っ先に思いつくのは敵対派閥。
父、サザーランド公爵を筆頭とするのは改革派で、他国とも仲良くしていこう、より多くの交流を計ろうという派閥。
対してドルヴァー公爵を筆頭とする保守派で、利権を守りたくて出入りの商人に更なる重税を掛けようと模索する派閥。
私、個人的には中間よりも少し改革派寄りの考えです。
といっても、父に意見出来る訳がないので駒としては改革派の一員です。
その保守派としては、妹が聖女だと言う時点でパワーバランスが崩れるから排除死体と思うのでしょう。
さらに妹が王太子妃になるのであれば、より一層のバランスが崩壊する訳です。
とは言え、呪いを用いた策謀は立証が難しい。
解除させるにしても、対象の魔女の特定、それが出来ても説得か交渉か排除が必要。
私、エリアナの様にコネも力もない令嬢には無理難題という事です。
ですが、アリアナであれば・・・。
次にこの国の歴史。
色々調べてて気づいたのですが、10年前に王家に廃嫡があったそうです。
当時の王子の母親(王妃様)が死去し、側室だった現王妃様の手によって廃嫡、国外追放になったとか。
そうして、今の風船王子が表に出て来たのは王妃様の入れ替わりによる派閥のパワーバランスが狂った事に起因するみたい。
要は、前王妃様は改革派、現王妃様は保守派って事ですね。
その現王妃様が王太子と妹の婚約を許したのはちょっとした謎ですね。
廃嫡については、あくまで書物間の差異から見つけれた矛盾を突き詰めて行った結果で、それを裏付ける物としては些か不十分と言わざるを得ません。
その確証を得るために、父に尋ねる事にしました。
コンコン。
「エリアナです、お父様」
「入れ」
いつもながら物静かに人を見つめる冷たい眼差しが私を孤独にさせる。
物語にある家族のような暖かい眼差しは感じた事が無い。
それも仕方がない事。
長女としての役割を放棄し、研究や本に没頭しているのですから、自業自得なのかもしれない。
「なにかね」
「妹の呪いの件、お父様のお考えをお聞かせ願えないでしょうか」
「お前は呪いに関わるな」
「もしや、身代わりが結婚式までと言うのは嘘と言う事ですか?妹の呪いが解けなければ、私はいつまでも身代をさせられるのではないでしょうか、この先、身代わりの人生なんて御免です」
私の言葉にお父様の眉間に皺が寄った。
結局の所、そういう事なのでしょう。
言う事を聞かない娘が本一冊で自由を捨てて言う事を聞くなんて、馬鹿な娘だと思っているのでしょう。
ま、まぁ、それでも欲しいという気がしますが、いえ、今の問題はそんな事ではありません。
「結婚相手として、何が不満なんだ、妹の代わりとは言え王妃になれるのだぞ」
「お父さま、アリアナは魅了効果の高い魔導具を使ってました」
「──そ、それはどうした」
「私が壊しました。後で発覚すれば大事ですから」
お父様は心労なのか、目をつぶりため息をついた。
そんな手段に出てたなんて、知りたくもなかったでしょうね。
「そうか、よくやった」
「それで、解呪の手配は進めているのですか」
「解呪は諦めろ、迂闊に干渉する方が危険だ」
「手掛かりを探す事もせずに、諦めるというのですか!」
「──そうだ」
「アリアナに、その事は・・・」
「──伝えてある」
「そうですか・・・」
そうなると妹の落ち込み様は手に取る様に分かる。
荒れるだろうなぁ・・・メンドくさ。
「所で、王子の廃嫡が10年前にあ──」
「それは国家機密だ!お前は知らんでいい!今後一切調べるな!いいな!」
「──はい、お父様・・・」
10年前の事となるとお父様はいつもこうだ。
私の事じゃないから大丈夫だと思ったんだけど、どうもそうじゃないみたい。
まぁ、こんな事で引き下がる様な性格じゃないですけどね。
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