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9.聖女の真実
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妹が男に変わる前の事、聖女である事の貴重さを如何に自分がこの国に貢献し、必要とされているかを繰り返し繰り返し言って聞かされた。
それはテンプレート化された自慢であり、妹の方が優れている事を私に刷り込む為の儀式だった。
『わたくしこそが真の聖女なの、国に求められる国の宝なのよ!
お姉様の様にただ本の逃げてるだけの穀潰しとは違うのよ、
いい加減、何処か適当な所に嫁に行ってもらえないかしら。
相手が居ないなら探して差し上げましょうか?
マルサー男爵の傍使いになんてどうかしらねっ、おーほっほっほっほ』
相手の名前は都度都度変わるけど、その日は男爵の使用人、平民だった。
そんなのと引き合わせたいと言うあたり面白可笑しくて記憶に残っています。
『へぇ、貴女は平民を義理の兄に持ちたいのね。ちょっと考えてみるわ』
その返事が意外だったのか唐突に意見を変えた。
『じょ、冗談ですわ!本気になさらないでくださいまし!』
正直、私の記憶にあるあの人が平民なら平民になってもいいのです。
勘当されそうですけどね。
□□ □ □ □□
私は休息日に大聖堂に赴き、祈りをささげる。
今までなら妹のお仕事だった毎週の作業。
祈りは大聖堂の女神像から王国内の教会にある女神像に繋がり、祈りの効果が満遍なく行き届く。
その祈りの効果は『五穀豊穣 無病息災』というありきたりの宗教ワード。
目に見えてある効果ではないとだけ、言っておきます。
妹の祈りを見た事があるのですが、それはそれは綺麗でした。
女神像が淡く光り、頭上から伸びた光は各教会に向かって弧を描いて伸びて行くという、壮大な光景。
妹の神託が出たのは私の事故直後と言う事もあって、私はその時の盛り上がり様をよく知らない。
もし、その時、私が元気だったら盛大に祝ってあげたのになんて、思ったものです。
それだけ当時は仲が良かったのですよ。
それで、問題なのは私の神聖力。
聖女であると神託が出た妹と違って、私にそんな力が有るハズがない。
それでも父が問題ないから行ってきなさいと言って後押しした。
お仕事ですから渋々やる事になった訳だけど、妹だって時に調子が悪く効果が出ないというのはよくある事だったらしい。
今回もそういう理由になると思っていました。
あ、ちゃんと祈祷に専念しなければ。
私は駄目元で頑張って祈りを込めてみた。
「おおおおお、これは」
「眩しすぎます」
私が祈り終わった時、教会の方々からそんな言葉が漏れた。
確かに妹が祈っていた時と違い、目が開けれない程に眩しかったのは確かですけど、これは何かの間違いだと信じたかった。
だって、聖女と認められたら貴重な読書の時間が・・・ねぇ?
恐ろしい事に、直後、奥の部屋に通される。
その中に居たのは老齢の大司教様でした。
「貴女様はエリアナ様ですね」
まるで確信をもって言われるものだから、私も観念してそれに答える。
「はい、妹が調子が悪いので私が代役として参りました、騙す様な事になって申し訳ありません」
「いえ、それは問題ありません。元より聖女の神託はエリアナ様の事でしたので」
どゆこと?
妹は聖女でもないのに、ひたすらこの仕事やらされてたって事?
「妹、アリアナは聖女ではないという事ですか?」
「それは──」
それから、神託が降りた当時の話を教えてくれた。
神託が降りて来た当時、教会内は100年ぶりの聖女出現に感極まっていた。
当然ながら、エジャー家だけでなく陛下や有力貴族全員に使者が送られた。
『エジャー家に聖女が誕生していると神託が下りました』
その内容に名前まで含まれていない事は不幸中の幸いだった。
当時の私は事故で記憶が曖昧に、更に体調を崩して年単位で外出を禁止されていた。
困った司教と父が話し合った結果、妹に白羽の矢が立ってしまった。
妹にも多少なりと素質があったのか力の弱い聖女程度の力を発揮できた。
結局、毎週の仕事として祈りを捧げに通い、その貢献のお陰で王子と知り合えた訳です。
魅了を使ってなければ、同情するんですけどね。
「もしかして大司教様は事故の原因やその状況をご存じなのでしょうか」
父はその事に関して全く教えてくれなかった。
『お前は知る必要がない』の一点張りで、私は想像を巡らせるしかなかった。
どうせ私の事だから自殺騒動でも起こし、原因はきっと記憶にあるあの人が関係していると思っていた。
「ですが、私の口からは言える内容では・・・」
「そうですか、もしその事を教えて貰えると、感謝のあまりお祈りに通う足が軽くなりそうなのですが」
(意訳:教えてくれないとボイコットするよ)
その意味を的確に理解したのか大司教は焦った。
恐らくは色々と天秤にかけて悩んだのだと思う。
しばらくして、大司教様は渋々重い口を開いた。
「私の知る限りでよろしいかな」
「はい、勿論です」
当時の事故と言うのは王宮の庭園で発生し、私はその庭に無断で侵入して一人で隠れていた。
その時の私はその広大な庭園の中心で一人泣いていた。
そこに至る経緯は不明だけど、その時に神聖力が暴走し台風の様な自然災害が発生した。
その中の私を誰も救出する事は出来ず、結果、庭園の半分を破壊しつくしたとか。
この件に対して、王宮からは何のお咎めも無かったらしく、箝口令まで敷かれたという話。
「私が言った事は、くれぐれもご内密に」
「ええ、心得ております、また休息日に祈りに来ますね」
教会からの帰り、もやもやした感情が私の中でさらに燻ぶり、今にも火が点きそうになっていた。
大司教様のお話、結局何も分からなかった!
その後の被害とかどうでもよくて、そこに至る過程が知りたかったのにっ。
それはテンプレート化された自慢であり、妹の方が優れている事を私に刷り込む為の儀式だった。
『わたくしこそが真の聖女なの、国に求められる国の宝なのよ!
お姉様の様にただ本の逃げてるだけの穀潰しとは違うのよ、
いい加減、何処か適当な所に嫁に行ってもらえないかしら。
相手が居ないなら探して差し上げましょうか?
マルサー男爵の傍使いになんてどうかしらねっ、おーほっほっほっほ』
相手の名前は都度都度変わるけど、その日は男爵の使用人、平民だった。
そんなのと引き合わせたいと言うあたり面白可笑しくて記憶に残っています。
『へぇ、貴女は平民を義理の兄に持ちたいのね。ちょっと考えてみるわ』
その返事が意外だったのか唐突に意見を変えた。
『じょ、冗談ですわ!本気になさらないでくださいまし!』
正直、私の記憶にあるあの人が平民なら平民になってもいいのです。
勘当されそうですけどね。
□□ □ □ □□
私は休息日に大聖堂に赴き、祈りをささげる。
今までなら妹のお仕事だった毎週の作業。
祈りは大聖堂の女神像から王国内の教会にある女神像に繋がり、祈りの効果が満遍なく行き届く。
その祈りの効果は『五穀豊穣 無病息災』というありきたりの宗教ワード。
目に見えてある効果ではないとだけ、言っておきます。
妹の祈りを見た事があるのですが、それはそれは綺麗でした。
女神像が淡く光り、頭上から伸びた光は各教会に向かって弧を描いて伸びて行くという、壮大な光景。
妹の神託が出たのは私の事故直後と言う事もあって、私はその時の盛り上がり様をよく知らない。
もし、その時、私が元気だったら盛大に祝ってあげたのになんて、思ったものです。
それだけ当時は仲が良かったのですよ。
それで、問題なのは私の神聖力。
聖女であると神託が出た妹と違って、私にそんな力が有るハズがない。
それでも父が問題ないから行ってきなさいと言って後押しした。
お仕事ですから渋々やる事になった訳だけど、妹だって時に調子が悪く効果が出ないというのはよくある事だったらしい。
今回もそういう理由になると思っていました。
あ、ちゃんと祈祷に専念しなければ。
私は駄目元で頑張って祈りを込めてみた。
「おおおおお、これは」
「眩しすぎます」
私が祈り終わった時、教会の方々からそんな言葉が漏れた。
確かに妹が祈っていた時と違い、目が開けれない程に眩しかったのは確かですけど、これは何かの間違いだと信じたかった。
だって、聖女と認められたら貴重な読書の時間が・・・ねぇ?
恐ろしい事に、直後、奥の部屋に通される。
その中に居たのは老齢の大司教様でした。
「貴女様はエリアナ様ですね」
まるで確信をもって言われるものだから、私も観念してそれに答える。
「はい、妹が調子が悪いので私が代役として参りました、騙す様な事になって申し訳ありません」
「いえ、それは問題ありません。元より聖女の神託はエリアナ様の事でしたので」
どゆこと?
妹は聖女でもないのに、ひたすらこの仕事やらされてたって事?
「妹、アリアナは聖女ではないという事ですか?」
「それは──」
それから、神託が降りた当時の話を教えてくれた。
神託が降りて来た当時、教会内は100年ぶりの聖女出現に感極まっていた。
当然ながら、エジャー家だけでなく陛下や有力貴族全員に使者が送られた。
『エジャー家に聖女が誕生していると神託が下りました』
その内容に名前まで含まれていない事は不幸中の幸いだった。
当時の私は事故で記憶が曖昧に、更に体調を崩して年単位で外出を禁止されていた。
困った司教と父が話し合った結果、妹に白羽の矢が立ってしまった。
妹にも多少なりと素質があったのか力の弱い聖女程度の力を発揮できた。
結局、毎週の仕事として祈りを捧げに通い、その貢献のお陰で王子と知り合えた訳です。
魅了を使ってなければ、同情するんですけどね。
「もしかして大司教様は事故の原因やその状況をご存じなのでしょうか」
父はその事に関して全く教えてくれなかった。
『お前は知る必要がない』の一点張りで、私は想像を巡らせるしかなかった。
どうせ私の事だから自殺騒動でも起こし、原因はきっと記憶にあるあの人が関係していると思っていた。
「ですが、私の口からは言える内容では・・・」
「そうですか、もしその事を教えて貰えると、感謝のあまりお祈りに通う足が軽くなりそうなのですが」
(意訳:教えてくれないとボイコットするよ)
その意味を的確に理解したのか大司教は焦った。
恐らくは色々と天秤にかけて悩んだのだと思う。
しばらくして、大司教様は渋々重い口を開いた。
「私の知る限りでよろしいかな」
「はい、勿論です」
当時の事故と言うのは王宮の庭園で発生し、私はその庭に無断で侵入して一人で隠れていた。
その時の私はその広大な庭園の中心で一人泣いていた。
そこに至る経緯は不明だけど、その時に神聖力が暴走し台風の様な自然災害が発生した。
その中の私を誰も救出する事は出来ず、結果、庭園の半分を破壊しつくしたとか。
この件に対して、王宮からは何のお咎めも無かったらしく、箝口令まで敷かれたという話。
「私が言った事は、くれぐれもご内密に」
「ええ、心得ております、また休息日に祈りに来ますね」
教会からの帰り、もやもやした感情が私の中でさらに燻ぶり、今にも火が点きそうになっていた。
大司教様のお話、結局何も分からなかった!
その後の被害とかどうでもよくて、そこに至る過程が知りたかったのにっ。
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