聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

文字の大きさ
11 / 51

9.聖女の真実

しおりを挟む
 妹が男に変わる前の事、聖女である事の貴重さを如何に自分がこの国に貢献し、必要とされているかを繰り返し繰り返し言って聞かされた。
 それはテンプレート化された自慢であり、妹の方が優れている事を私に刷り込む為の儀式だった。

『わたくしこそが真の聖女なの、国に求められる国の宝なのよ!
 お姉様の様にただ本の逃げてるだけの穀潰しとは違うのよ、
 いい加減、何処か適当な所に嫁に行ってもらえないかしら。
 相手が居ないなら探して差し上げましょうか?
 マルサー男爵の傍使いになんてどうかしらねっ、おーほっほっほっほ』

 相手の名前は都度都度変わるけど、その日は男爵の使用人、平民だった。
 そんなのと引き合わせたいと言うあたり面白可笑しくて記憶に残っています。

『へぇ、貴女は平民を義理の兄に持ちたいのね。ちょっと考えてみるわ』

 その返事が意外だったのか唐突に意見を変えた。

『じょ、冗談ですわ!本気になさらないでくださいまし!』

 正直、私の記憶にあるあの人が平民なら平民になってもいいのです。
 勘当されそうですけどね。


 □□ □ □ □□

 私は休息日に大聖堂に赴き、祈りをささげる。
 今までなら妹のお仕事だった毎週の作業。
 祈りは大聖堂の女神像から王国内の教会にある女神像に繋がり、祈りの効果が満遍なく行き届く。
 その祈りの効果は『五穀豊穣 無病息災』というありきたりの宗教ワード。
 目に見えてある効果ではないとだけ、言っておきます。

 妹の祈りを見た事があるのですが、それはそれは綺麗でした。
 女神像が淡く光り、頭上から伸びた光は各教会に向かって弧を描いて伸びて行くという、壮大な光景。

 妹の神託が出たのは私の事故直後と言う事もあって、私はその時の盛り上がり様をよく知らない。
 もし、その時、私が元気だったら盛大に祝ってあげたのになんて、思ったものです。
 それだけ当時は仲が良かったのですよ。

 それで、問題なのは私の神聖力。
 聖女であると神託が出た妹と違って、私にそんな力が有るハズがない。
 それでも父が問題ないから行ってきなさいと言って後押しした。

 お仕事ですから渋々やる事になった訳だけど、妹だって時に調子が悪く効果が出ないというのはよくある事だったらしい。
 今回もそういう理由になると思っていました。

 あ、ちゃんと祈祷に専念しなければ。
 私は駄目元で頑張って祈りを込めてみた。

「おおおおお、これは」
「眩しすぎます」

 私が祈り終わった時、教会の方々からそんな言葉が漏れた。
 確かに妹が祈っていた時と違い、目が開けれない程に眩しかったのは確かですけど、これは何かの間違いだと信じたかった。
 だって、聖女と認められたら貴重な読書の時間が・・・ねぇ?

 恐ろしい事に、直後、奥の部屋に通される。
 その中に居たのは老齢の大司教様でした。

「貴女様はエリアナ様ですね」

 まるで確信をもって言われるものだから、私も観念してそれに答える。

「はい、妹が調子が悪いので私が代役として参りました、騙す様な事になって申し訳ありません」

「いえ、それは問題ありません。元より聖女の神託はエリアナ様の事でしたので」

 どゆこと?
 妹は聖女でもないのに、ひたすらこの仕事やらされてたって事?

「妹、アリアナは聖女ではないという事ですか?」
「それは──」

 それから、神託が降りた当時の話を教えてくれた。
 神託が降りて来た当時、教会内は100年ぶりの聖女出現に感極まっていた。
 当然ながら、エジャー家だけでなく陛下や有力貴族全員に使者が送られた。

『エジャー家に聖女が誕生していると神託が下りました』

 その内容に名前まで含まれていない事は不幸中の幸いだった。
 当時の私は事故で記憶が曖昧に、更に体調を崩して年単位で外出を禁止されていた。
 困った司教と父が話し合った結果、妹に白羽の矢が立ってしまった。

 妹にも多少なりと素質があったのか力の弱い聖女程度の力を発揮できた。
 結局、毎週の仕事として祈りを捧げに通い、その貢献のお陰で王子と知り合えた訳です。
 魅了を使ってなければ、同情するんですけどね。

「もしかして大司教様は事故の原因やその状況をご存じなのでしょうか」

 父はその事に関して全く教えてくれなかった。
 『お前は知る必要がない』の一点張りで、私は想像を巡らせるしかなかった。
 どうせ私の事だから自殺騒動でも起こし、原因はきっと記憶にあるあの人が関係していると思っていた。

「ですが、私の口からは言える内容では・・・」
「そうですか、もしその事を教えて貰えると、感謝のあまりお祈りに通う足が軽くなりそうなのですが」
(意訳:教えてくれないとボイコットするよ)

 その意味を的確に理解したのか大司教は焦った。
 恐らくは色々と天秤にかけて悩んだのだと思う。
 しばらくして、大司教様は渋々重い口を開いた。

「私の知る限りでよろしいかな」
「はい、勿論です」

 当時の事故と言うのは王宮の庭園で発生し、私はその庭に無断で侵入して一人で隠れていた。
 その時の私はその広大な庭園の中心で一人泣いていた。
 そこに至る経緯は不明だけど、その時に神聖力が暴走し台風の様な自然災害が発生した。
 その中の私を誰も救出する事は出来ず、結果、庭園の半分を破壊しつくしたとか。
 この件に対して、王宮からは何のお咎めも無かったらしく、箝口令まで敷かれたという話。

「私が言った事は、くれぐれもご内密に」
「ええ、心得ております、また休息日に祈りに来ますね」

 教会からの帰り、もやもやした感情が私の中でさらに燻ぶり、今にも火が点きそうになっていた。
 大司教様のお話、結局何も分からなかった!
 その後の被害とかどうでもよくて、そこに至る過程が知りたかったのにっ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...