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8.クリストン男爵邸襲撃事件(後編)
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私達は急いで王宮に向かった。
馬車で移動する道中、レッドには目隠しをして貰って、着替えていた。
お父様に知れたらなんと言われる事やら。
王宮に着くと、風船王子を呼び出した。
風船王子はまだ熟睡中だったけど、緊急事態だと言って起きてもらう。
「アリアナ・・・こんな時間に・・・ここは何処だ!?王宮?俺の部屋?テロリストは・・・居た!」
レッドを指差し掴みかかろうとする所を私が肘打ちを腹部に入れた。
「ぐほっ、アリアナどうして・・・」
「ジェイミー様、落ち着いてください、人質は全員無事です、それよりも陛下にお目通りをお願いできないでしょうか」
「ぐぐ、ちょっと待ってくれ、見事に肘打ちが入って・・・」
四つん這いで蹲る風船王子を見て、少々やり過ぎたと思いつつ摩って癒そうとした。
ふわっと暖かい感じが手の先からあふれ出し、風船王子を腹部を包み込む。
「治療の光・・・」
聖女の中でも一部の者にしかできなかった技能。
アリアナでもできなかったのを私が発現させてしまった事に、風船王子が固まり、私の目を見つめた。
「・・・・す、すごいじゃないか!聖女の格が上がったんじゃないか?」
「い、いえ、そんな筈は・・・」
そうです、私は聖女じゃないのだから、そんな事できるハズがありません。
「アリアナ様、それよりも」
「ああ、そうです、そうでした。ジェイミー様が頼みの綱なのです、お願いできないでしょうか」
「────先ずは事情を聞かせてくれないか」
□□ □ □ □□
風船王子を説き伏せて、陛下との対面となった。
今はテロ事件中と言う事もあり、その対応で忙しいから短時間、非公式の謁見となった。
「アリアナ、今日はどうしたと言うのだ」
「陛下、事は急を要しますので、率直に申し上げます。フレイバーシャム男爵の釈放をお願いします。男爵の罪は冤罪だという証拠を揃えて来ました、その事でアルター子爵が関わっており、大量の武器の横流しを行っております、そして──」
陛下は話を一通り聞いた上で、レッドの方に視線を移した。
この場には不釣り合いな謎の人物、気にならない方がおかしかった。
「事実関係は後程、吟味しよう。それでその者は何者だ」
「今回のクリストン男爵襲撃の首謀者です、元はフレイバーシャム男爵の騎士でございます」
「ではその者の首と引き換えに、事態を終結させると言えばどうする?」
「俺の命はどうなっても構わない!男爵様さえ解放、できれば名誉の回復が出来るのであれば・・・」
「随分と都合の良い主張だな」
「お言葉ですが陛下。先の横流し事件で誤った判決を出しいるのは明白です、その分を考慮して頂けないでしょうか」
私の言葉に、陛下は深いため息をついた。
それもそのはずだ。
私の言ってること自体が結論ありきの推測でしかないのだから、
短時間での証拠集めには無理があったと言わざるを得ない。
しかも出所を考えれば、陛下が信用にするに足る物ではない事は火を見るよりも明らかだった。
「男爵にはすまない事をしたな」
「陛下っ、陛下が謝る事ではありません!」
「アリアナ、違うんだよ、そこの者もよく聞け、フレイバーシャム男爵は襲撃事件が起きた時点で自害しておる」
その言葉にレッドが力なく膝を落とし、その場に蹲った。
私は彼に掛ける事が出来ずに、その場に立ち尽くした。
彼は、いえ、彼らは、事を起こした時点で既に手後れだったのだ。
レッドが涙をぼろぼろと落とし、床を激しく叩いた。
主君を失ったのがどれ程までに悔しいと言うのは、騎士団の結成譚を読んでいた私には痛い程分かった。
「レッド・・・貴方達、公爵家の騎士団になりなさい」
「アリアナ様・・・」
「それは今回の騒動の責任として身柄を引き受け、監視すると言う事で良いのだな、アリアナ」
「はい、この度の件、これで手打ちにして頂けないでしょうか」
「わかった、後の事は任せる」
「有難う存じます」
そうして、事件は収束した。
誰一人としての犠牲者を出す事は無く。
馬車で移動する道中、レッドには目隠しをして貰って、着替えていた。
お父様に知れたらなんと言われる事やら。
王宮に着くと、風船王子を呼び出した。
風船王子はまだ熟睡中だったけど、緊急事態だと言って起きてもらう。
「アリアナ・・・こんな時間に・・・ここは何処だ!?王宮?俺の部屋?テロリストは・・・居た!」
レッドを指差し掴みかかろうとする所を私が肘打ちを腹部に入れた。
「ぐほっ、アリアナどうして・・・」
「ジェイミー様、落ち着いてください、人質は全員無事です、それよりも陛下にお目通りをお願いできないでしょうか」
「ぐぐ、ちょっと待ってくれ、見事に肘打ちが入って・・・」
四つん這いで蹲る風船王子を見て、少々やり過ぎたと思いつつ摩って癒そうとした。
ふわっと暖かい感じが手の先からあふれ出し、風船王子を腹部を包み込む。
「治療の光・・・」
聖女の中でも一部の者にしかできなかった技能。
アリアナでもできなかったのを私が発現させてしまった事に、風船王子が固まり、私の目を見つめた。
「・・・・す、すごいじゃないか!聖女の格が上がったんじゃないか?」
「い、いえ、そんな筈は・・・」
そうです、私は聖女じゃないのだから、そんな事できるハズがありません。
「アリアナ様、それよりも」
「ああ、そうです、そうでした。ジェイミー様が頼みの綱なのです、お願いできないでしょうか」
「────先ずは事情を聞かせてくれないか」
□□ □ □ □□
風船王子を説き伏せて、陛下との対面となった。
今はテロ事件中と言う事もあり、その対応で忙しいから短時間、非公式の謁見となった。
「アリアナ、今日はどうしたと言うのだ」
「陛下、事は急を要しますので、率直に申し上げます。フレイバーシャム男爵の釈放をお願いします。男爵の罪は冤罪だという証拠を揃えて来ました、その事でアルター子爵が関わっており、大量の武器の横流しを行っております、そして──」
陛下は話を一通り聞いた上で、レッドの方に視線を移した。
この場には不釣り合いな謎の人物、気にならない方がおかしかった。
「事実関係は後程、吟味しよう。それでその者は何者だ」
「今回のクリストン男爵襲撃の首謀者です、元はフレイバーシャム男爵の騎士でございます」
「ではその者の首と引き換えに、事態を終結させると言えばどうする?」
「俺の命はどうなっても構わない!男爵様さえ解放、できれば名誉の回復が出来るのであれば・・・」
「随分と都合の良い主張だな」
「お言葉ですが陛下。先の横流し事件で誤った判決を出しいるのは明白です、その分を考慮して頂けないでしょうか」
私の言葉に、陛下は深いため息をついた。
それもそのはずだ。
私の言ってること自体が結論ありきの推測でしかないのだから、
短時間での証拠集めには無理があったと言わざるを得ない。
しかも出所を考えれば、陛下が信用にするに足る物ではない事は火を見るよりも明らかだった。
「男爵にはすまない事をしたな」
「陛下っ、陛下が謝る事ではありません!」
「アリアナ、違うんだよ、そこの者もよく聞け、フレイバーシャム男爵は襲撃事件が起きた時点で自害しておる」
その言葉にレッドが力なく膝を落とし、その場に蹲った。
私は彼に掛ける事が出来ずに、その場に立ち尽くした。
彼は、いえ、彼らは、事を起こした時点で既に手後れだったのだ。
レッドが涙をぼろぼろと落とし、床を激しく叩いた。
主君を失ったのがどれ程までに悔しいと言うのは、騎士団の結成譚を読んでいた私には痛い程分かった。
「レッド・・・貴方達、公爵家の騎士団になりなさい」
「アリアナ様・・・」
「それは今回の騒動の責任として身柄を引き受け、監視すると言う事で良いのだな、アリアナ」
「はい、この度の件、これで手打ちにして頂けないでしょうか」
「わかった、後の事は任せる」
「有難う存じます」
そうして、事件は収束した。
誰一人としての犠牲者を出す事は無く。
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