聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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8.クリストン男爵邸襲撃事件(中編)

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 テロリストのリーダー格はレッドと名乗り、私と二人で王宮に向かう事になった。
 屋敷を出る前に王妃様に状況を話すと「無理はしないで」と心配されてしまう。
 王妃様には無事に解放させる事を約束し、大人しくするように念を押した。
 風船王子はというと、殴られてからそのまま寝込んでいるらしい。

 私とレッドは風船王子の馬車を借りて、王宮内にある武具管理局に向かった。

「どうして、王太子を連れて来た」
「治療と称して脱出してきた、その手土産と言えば王宮に入りやすいでしょう?人質なら王妃様だけで十分ですし」
「──そうだな」

 武具管理局は主に貴族からの仕入れ量の申請と商人からの売買情報の申請を受け付ける部署。
 ここで照会すれば、何処からどれだけ仕入れたと言う事がわかる。
 ただ、ここで特定できるのは表立って取引した業者だけ。

 私達は風船王子を利用して潜入、風船王子を引き渡した後、情報を入手して商人街に向かった。

 深夜だというのに帳簿の写しをしてくれる職員には頭が上がらない。
 その内容を集計するだけで、少しは何かがわかるかと考えていた。

「あんた計算早いな、しかしもうちょっと離れて方が見やすくないか?」
「そこは気にしなくていいわ」

 目が悪くて、はっきり見る為に、至近距離で見ないとちゃんと計算できない。
 それに馬車の揺れも見づらさを引き立てていた。
 それでも計算を続け、多少なりと誤差が出て来た。
 ぎりぎり不自然な量になる程の仕入れ。
 申請ミスを演出するような、2割程度の申請誤差。
 仕入れ量だけ見ても近々戦争でもするのかってくらいの量にはなっているけど、装備の総入れ替えを理由にすれば話は通るし、申請ミスとして再申請すれば誤差は誤魔化される。

「この帳簿だけで判る事は、記帳ミスが意図的に一定割合で発生してる、つまり誤魔化す必要があったって事ね」
「つまりは・・・どうなんだ?」
「えっとね、普通は記帳ミスなんて有り得ないの、それが定期的に起こること自体が異常、それは誤魔化したい理由があるのよ」
「その答えが商人街にあるというのか?」
「そうよ」

 私達が向かったのは商人街の中でも、特殊な酒場。
 知る人ぞ知る、裏社会の商人が集まっている場所だ。
 とはいえ、ドレスで行くと目立つのでレッドには先に馬車から降りてもらって着替える事にした。
 予め馬車に乗せていたバッグを開くと、男装用の衣装が入っていた。
 サラシを巻いて胸を潰し、髪を纏めて帽子で隠す。
 服は安めのスーツで眼鏡もかけた。
 これで、どこからどう見ても成人男性だろう。

 馬車を降りるとレッドが目を見開いて動揺している。
 私が降りた後に慌てて馬車の中を確認したのを私は堪える事が出来ず笑ってしまった。

「レッド、何かあったら護衛してくれる?」
「あ、ああ・・・任せてくれ、それにしても・・・いや、なんでもない」

 その入口は寂れた武器屋になっていた。
 商品も碌になく店員すらも居ない。
 時間に関係なく、ここはいつもこんな状態だ。

「ここ、何の店だ?というか店なのか?」
「そうよ、ここの地下が目的の場所よ」

 武器屋の奥に入ると、武器の飾り棚だけがある。
 その横の壁に手を当てると、壁はくるりと回転し、奥の部屋に入る事が出来た。

「こんな仕掛けが、聖女なのによく知ってるな」
「その名前は出さないで」
「すまん」

 奥の部屋には階段があるだけだ。
 その階段を下りてゆくと、頑丈な扉が出てくる。
 防音を意識した扉を開くと、ざわざわと耳障りな騒ぎ声が鳴り続けていた。
 カウンターには丁度空席が1つあり、そこに向かって私は進んだ。

「おー、リア・・じゃえねぇか、こんなところに来るなんて珍しいな」
「カイン、久しぶりだな、今日は忙しいから又今度な」
「ああ、またな」

 痩せて色つきのメガネをかけた明らかに真っ当ではないカインをスルーして、カウンターに座る。

「マスター、ミルク貰える?」
リア・・か、いつもの砂糖入りかい?」
「そうだな、今日は黒糖入りがいいな、あるだろ」
「そうか、それは奥の倉庫に行かないと無いな、取ってきてくれるか?」
「わかった」

 その言葉に従ってカウンターの奥に進もうとすると、マスターが連れを見て怪訝そうにしている。

「気になる?」
「ああ、彼氏か?」
「そうだよ、いいだろ?」
「そうか、良かったな」

 んんんーーーーーーーー?
 あれ?男装してるハズなのに、彼氏か?って聞く?
 いや、まぁ、いいや、本題をこなしましょう。

 奥に入ると一人の人物が帳簿らしきものと睨めっこしていた。
 その人物に私が声をかけると、またお前かみたいな呆れた顔で私を見たが視線はすぐにレッドに向いた。

「彼氏か?」
「それってどういう意味?」
「いや、え、まさか自分が男だって思われてるとでも?」
「え?それ以外に見える?」
「なあ、彼氏さんよ、こいつ男に見えるか?」

 レッドを見ると、目線をしらしてぽつりと答えた。

「見えないな」

 がーん!!!!
 ずっと男装で来てると思ってたのに、どうしてバレたの?
 付け髭でも生やせばよかったのかなぁ。

「まぁ、それより本題に移ろうじゃないか、今日は何が知りたい?」
「そ、そうだな、今日はアルター子爵の噂と、闇ルートからの武器購入帳簿が欲しい」
「そんな物か、安い御用だ」
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