聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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8.クリストン男爵邸襲撃事件(前編)

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 パーティ参加者は非武装で王妃様や殿下を筆頭に全員が捕まってしまった。
 それはもう、あっけない程に。
 というのも最初に王妃様が人質に取られて脅されたので全員が渋々従った。
 そして私達は10名の武装したテロリストに囲まれ、監視されているとう状況にある。

 こんな状況で、一人無鉄砲にも声高らかに文句を言い出す人が居た。

「君達の目的は何だ!私はこの国の王太子だ、まずは望みを聞くぞ!」

 正々堂々とした立ち振る舞いは立派ではあった。
 状況的に悪手としか言いようがなく、テロリストは風船王子に近づくと殴る蹴るの暴行を加えた。
 誰もが見てられないと目を逸らす。

 その中、私だけがじっと状況を見つめていた。
 それが気に入らないのか、テロリストの関心は私に向いた。

「おい、そこの女」
「──私ですか?」
「アリアナに、手を触れるな!」

 風船王子が、男の足首を握り抵抗するが、一撃蹴りを入れられて抵抗しなくなった。
 そしてまるで何事も無かったかの様に、改めて私を見る。

「お前以外にいない、こっちに来い」
「──はい」

 私は一人、ホールから連れ出され、入口の横に何人かが横たわっている所に連れてこられた。
 そこには横たわるのは5名のテロリスト。

「お前、聖女のアリアナ・エジャーだろ、こいつらを治療してくれよ」

 聖女・・・あー・・そういう設定でした。
 治療なんて出来ないですよ。
 やった事ないですし。
 ですが──

「──できません」
「はっ、やっぱり王国の聖女様は情が無い様だな、人が死にかけてても見て見ぬふりをする訳だ」
「あなた方がどうこうではありません、私は少し前、魔女に呪われ力の大半を失ったのです、ですから出来ないと言ってるのです」
「魔女か──」
「ですが、応急処置くらいはしてあげます。布を持ってきてくださいテーブルクロスで良いでしょう、後、綺麗な水も、ピッチャーの水でも構いません」
「お、おお、わかった」

 テロリストと二人でホールに戻ると、テーブルクロスの端をクイッと引っ張り上に置いてある料理やコップを残して引き抜いた。
 その行動に歓声が上がるがそんな事を気にしている状況ではなかった。
 次にピッチャーの水、あと、アルコール濃度の高いお酒を選んで怪我人の元に戻った。

「酒飲まないとやってられないって訳か?」
「違いますよ」

 傷口を露わにさせ、水で洗い流した。
 お酒のボトルに口を付け、口に含むと傷口に吹き出す。
 適度に裂いたテーブルクロスを傷口に押し当てて、細長く切り裂いたテーブルクロスでグルグルと巻いた。

「一人目終わり!二人目に取り掛かるから、テーブルクロスをさっきのサイズくらいに裂いて!」
「お、おう、わかった」

 それから5人終わる頃には、慣れないお酒を口に含んだ事が気持ち悪くなっていた。

「おい、顔色が悪いが大丈夫か」
「大丈夫じゃないって言えば解放してくれるの?」
「すまないが、それは出来ない」
「──だったら、優しくしなくてよ」
「だが、お礼位は言わせてくれ。アンタ聖女じゃなくても立派だな」
「ありがと、気晴らしついでに、貴方達の事を教えてくれないかしら」

 その言葉に少し怪訝な表情を浮かべたが、先の治療の事もあり目的を教えてくれた。

「我々は、フレイバーシャム男爵の騎士団だ、いや、元騎士団だ」
「フレイバーシャム男爵と言えば、武勲で貴族になった方よね、そういえば、最近なにか事件有ったわね」
「ああ、その件で男爵は爵位没収の上、無実の罪で牢獄に入っている」
「それで、陳情をって事ね」
「そうだ。領地と名誉の回復、濡れ衣を着せられた事を証明したい」

 お酒のせいで、少し思考の纏まりが悪い。
 確かその件って王国産の武器の流出でしたっけ。
 えーと・・・まぁいいか。

「フレイバーシャム男爵の領地って誰が引き継いだの?」
「アルター子爵だ、それがどうかしたか」
「じゃあアルター子爵の武器所有量の照会と縁故にしてる武器商人の特定して売買情報を聞き出しなさい」
「照会なんてできるのか?」
「出来るわよ、あーごめんなさい、頭がふらふらしてるから休憩させて」
「ああ、いいが、その照会方法を先に──・・・寝てしまったか」


 □□ □ □ □□

 気づけば知らない部屋のベッドの上。
 外は暗くどれくらい寝たのか分からない程だった。
 服装も楽なものに代わっていた。
 ドレスはハンガーに吊るされている。
 誰に着替えさせられたのかと考えると、すこしぞくっとした。

「起きたか」
「貴方は、さっきの」

 彼は椅子に座り佇み、物静かで私が気づかない程に部屋のオブジェの様に溶け込んでいた。

「さっきのって言うが、かれこれ5時間も前になるぞ」
「起こしてくれたらいいのに」
「治療してくれた礼だ、着替えもメイドを捕まえてやって貰った」
「そう、紳士なのね」
「腐っても騎士だからな」

 それから照会方法を話した。
 照会者は貴族であれば誰にでも出来る事だけど、その部署自体があまり知られていない。

「そんな部署があるのか、しかし貴族で我々に協力してくれる者が居ない」
「私が行けばいいでしょ」
「それは有難いが、どうしてそこまでしてくれるんだ」
「それはあなた達の騎士団の結成譚を読んだから、じゃ不満かしら?」
「──助かる」
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