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20.浮気の現場

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 風船王子から夜会への参加を催促され、予定通り代理エリアナを立てたけど、あっさりと承諾された。
 そして今、エリアナは風船王子のエスコートの元、会場に入る所だ。

 馬車の中でも、風船王子の会話は止まらず、アリアナがどれだけ素晴らしいかを語り続けた。
 内容は兎も角、完全に別人だと思われている事に安心をしていた。
 適当な相槌だけしかできない会話。
 彼は何が楽しいのだろうかと思う。

 会場では、私は隅っこで座っているので、自由にしてくださいと告げた。
 付け加えて、この場で見た事は妹には内緒にしておくとも言ってみた。
 それで、どうするのか見ものですね。

 しばらくすると、私の前に踊りの誘いが列をなした。
 聖女アリアナ目的であって、私にはこれっぽちも興味がないのは分かり切っている。
 それぞれがそれぞれで必死なのでしょ。

 全員断りして、ワインを傾けながら遠くの風船王子を眺める。
 彼は一向に誰とも踊ろうとしない。
 別に踊るくらいなら浮気じゃないんだから、やってもいいハズ。
 その後、どこかに行ったりキスしたりさえしなければいいんです。

 違った。
 ぶっちゃけて言えば、してもらった方が良いです。

 所が、彼は色々な人達と話をした後、私の元に来た。
 そして真横に座ると愚痴を溢した。

「いやあ、挨拶ばかりで疲れるよ」
「そうですよね、お疲れ様です」
「それよりも、君から話題を振って貰えないか、話をし過ぎて喉を痛めそうだ」
「はぁ、どのような話をしたらいいのでしょう?」
「そうだな、先日の戦の話はどうだ。あれの経緯は良く知らないのだが、どうしてあの様になったのだ?」
「さぁ・・・私にも分からない事はありますので」

 あんたの婚約者が寝取られてたせいだとか言えないですよ・・・。
 この事は妹には直接聞けないでいた。
 もし妹の方が本気で侯爵を好きになっていたのならと考えると腫物に触る様なものだから。
 早く元に戻ればいいのに、そしてら改めて聞く事も出来るかもしれない。
 でも、聞いたところで正直には答えてくれないでしょうね。
 面倒だなぁ・・・。

「じゃあ、一族皆殺しにしたのってどう思う?」
「あれはやり過ぎだと思います、陛下や王妃様はどうして何も言わないのでしょうか。特に王妃様は保守派ですよね」
「母上は・・・中立だな、何処にも肩入れする気は無いらしい」
「そうだったのですか、その・・・殿下はどちら側なのでしょう」
「俺もそうだ、片方に肩入れするような事をすれば敵ばかりになってしまう。そうなれば二の舞だ。とはいえ、サザーランド公爵令嬢と婚約している以上、多少なりと改革派と見られるのだろうな」

 武力で押す改革派に、魔女を使って呪う保守派。
 どっちもどっちだと思う。
 いっそどっちも滅びればいいのに──。

 ズキッ

 痛い──

 ズキッズキッ

 痛い────

 何、この、異常なまでの痛みは、頭が、痛い。
 病気にでもなったのかな。

「おい、大丈夫か、エリアナ、エリアナ!」
「大丈夫、ちょっと頭が痛いだけ」
「待ってろ、部屋を借りて来てやる、ノーズ子爵は・・・居たっ」


 □□ □ □ □□

 気が付くと見知らぬ部屋で、大きなベッドに横たわっていた。
 横には風船王子が椅子に座って居眠りをしている。
 頭痛がしなくなっている事を確認して起き上がると、それにつられてか風船王子が目を覚ました。

「起こしてしまいましたか、夜会は参加しなくてよかったのですか」
「あぁ、問題ない、パートナーが急病の時に放り出していくような神経はしてないさ」
「そうですか」

 以前からの印象とは大分違う、紳士的な所を見て少し見直した。
 これなら、妹も結婚して幸せになれるかもしれない。

「思ったんだけどさ・・・」
「はい」
「エリアナ、俺の側室に入らないか、俺、大事にするからさ、エリアナもアリアナも!」
「・・・」
「思ったんだ、これだけ姿が似ているなら、同じくらい愛せるなって、な?悪くない考えだろ?」
「・・・・・・・」
「いやぁ、母上はエリアナは止めた方がいいって言ってたんだけどさ、やっぱり双子を引き離すって酷じゃん?好みも似てるなら、きっと俺の事好きになってるだろう?だから、いまから朝までヤ───」

 ぱぁあんっ

 我慢できず平手打ちを入れてしまった。

 こればかりは本当にダメだ。
 私を馬鹿にし過ぎだ。

「私は貴方と関係を持つつもりはありません!少しでも見直してた私が馬鹿でした、さようなら!」
「あああ、ごめんごめんごめん、いかないで、あ、アリアナには内緒にしてくれよ、頼んだよっ、おーい」

 まさか、浮気相手が私になってしまうとは思いもよらなかった。
 最低、ホント最低!
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