聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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30.アリアナの糾弾(アリアナ視点)

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「では、エリアナを連れて行け」

 いい気味ね、わざわざ高いお金を出して買い直した魅了のペンダントの効果で陛下まで私の味方よ。
 姉は、私にとって邪魔者でしかなかった。
 大聖女なんて言われ、良い気になっている上に、王妃様の試験を突破してジェイミーとの結婚を進めてしまった。

 試験と称して私の邪魔をする王妃様なんて死ねばいいのにと思っていた。
 死ぬのが姉でもよかった。
 そう思ってアイスローズを仕込んだ。
 だというのに、姉は其れすらも知って回避した。
 本当に邪魔でしかない。

「陛下、お願いです、王家を騙し、すり替わりってジェイミー様の婚約者になった件、及び偽聖女になった事、姉ながら罪深くて末恐ろしく思います、この先、どれだけ王国に仇をなすか分かったものではありません、ですからエリアナ・エジャーに極刑をお願いいたします」

 陛下のお言葉を待っていると、隣に座る王妃様が口を開く。
 それも怪訝な表情で。

「アリアナ・エジャー、何か勘違いをしていますね」

「勘違いですか」

「私はクリストン男爵邸襲撃事件で会った時から、エリアナ・エジャーだと気づいておりましたよ」

「ではその時点で、誑かした事は事実」

「ですが、それもこれも、妹の貴女の為にした事。貴女からそれを糾弾して欲しいなんて、どうしてそう言えるのかしら」

「それは、事の重大さから、仕方のない事───」

「黙りなさい!」

 扇子を激しく折り畳み、厳しい口調になって立ち上がった。
 その瞳には私に対する憎悪すら感じ取れる。

「そもそもクリストン男爵邸襲撃事件を手引きしたのも貴女でしょう」

「そんな、証拠も無しに疑うのですか!」

「証人ならいますよ、会いたいでしょう、元フレイバーシャム男爵の騎士団団長をここに!」

 彼は、私を知っている。
 彼をそそのかし、襲撃するように言ったのは私だ。
 茶番で済ませる筈だった。
 問題を解決するのが私になって、王妃様に認めてもらう予定だった。
 なのにその直後に男体化してしまい、焦った私は手紙で指示を変更した───

 私を殺して、と。

 周りが騒ぎ始める。
 当の襲撃犯が現れたのだ。
 元フレイバーシャム男爵の騎士団団長、レッド。

 彼は私を見るなり、すぐに指摘した。
 この人に指示された、と。

 もう、弁解のしようがない。

 その場に尻もちをつき、へたり込んだ。
 私はどうなってしまうのか。

 殺されるくらいなら、国外追放に・・・。
 それならまだ、活路はある───

 そうよ。
 もう、ブキャラン侯爵様も亡くなったのよ。

 本当なら、王妃という地位について、ジェイミーを毒殺し、ブキャラン侯爵様と添い遂げるつもりだった。

 だからもう、私が生きてく理由なんて、復讐しかない。
 父に、姉に、ついでに弟も殺しちゃいたい。
 王家ももういらないよね。
 この国、みんな滅びちゃえばいいんだわ。

「しってるかね、アリアナ・エジャー」

「───何をでしょうか」

「ブキャラン侯爵の支持するドルヴァー公爵の息子の側室が貴女に呪いをかけたのよ」
「その側室がどうしましたか」
「側室はブキャラン侯爵の妹よ、それが貴女を呪ったってどういう事でしょうね」
「よ、よくわかりません」
「そう、頭の回転が悪い子ね、ブキャラン侯爵にとって貴女は用無しになったと言う事よ」

 あざ笑うように言葉を並べる王妃様に、殺意を覚えた。
 そんな筈がある訳がない。
 だって、男体化する前日に私はあの人と会ってるのだもの。
 愛を確かめあって確認したもの・・・目はつぶってたけど・・・。

「そうね、最後に会った時に呪われたのではなくて?よく思い出してみなさい」

「そんな・・・そんなことは・・・私は信じない・・・信じません!あのお方は私を愛してくれていたのです!」

 厭らしく嘲笑う王妃の表情に、はっと我に返った。
 言わされた。
 ジェイミーの婚約者としての不義理の事実を───

「あ、いまのは間違い・・・です」

 ジェイミーは私を見て、信じられないといった顔をしている。
 私の事を信じていない。
 そんな表情。

「ジェイミー!私は貴方だけを信じて愛してるの!だから貴方も私を信じて───」

「はっ、どの口がそういう、下の口か?」

「ジェイミー・・・そんな言葉遣いを教えたつもりはありませんよ、後で説教です」

「すみません!母上!」

「では、円満一致と言う事で婚約破棄を決定しますが、異論はありませんね」

「陛下!陛下からも何か一言、お願いします!」

 ペンダントを掲げ、陛下に見せつける。
 これで私の言う事を聞いて!

「おい、そのペンダントはなんだ!」

 衛兵が私を取り押さえ、ペンダントが陛下の元に転がって行ってしまう。
 それを陛下が持ち上げ、冷たい目線を私に送った。

「魅了のペンダント、しかも低品質だな、王家にこんな物が効くか!即刻牢屋にぶちこめ!追って沙汰を下す!」

 そう言って、ペンダントは床にったきつけられて壊れた。
 最後の頼みの綱が、以前と同じ値段を払って買ったのに、低品質・・・。
 闇マーケットからも見限られていたと言う事・・・。

 兵士に連れられ、その場から退場させられそうになった時、外が異様に明るくなっていた。

 巨大な光の柱にまとわりつく様な風の渦、明らかに何か異変が起きていた。
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