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32.エイダとの対談(前半)
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神聖力の暴走事件から一週間が経過した。
妹は牢屋に入れられたままで、私の面会は認めて貰えなかった。
父は屋敷に帰るなり、妹の事を『致し方がない事だ』と切り捨て、そして自領に戻った。
私は教会のお勤めをしながら、暇を持て余していた。
父によって、夜会等の全ての集まりへの参加を禁止されたからだ。
この事は別にそれで構わないとは思っていた。
読書の時間が確保できるのであれば、それに越したことはないのですから。
あれからウィルターも会いに来てくれない事には少し不満が募る。
あんなことをしたのですから、ちょっとは構って欲しいのです。
何もかも私の手の届かない所で物語が進んで行く。
私は無力なままだ。
ただ、無心に錬金術の研究でもしていろと言われている気がする。
それはそれで楽しいのですが、何かが物足りない。
そんな不足したピースを探して、私は無意味な日々を過ごしていた。
そんなある日、ダリアがエイダという少女を連れて来た。
件の魔女だと言う。
「始めまして、エイダと申します」
「よろしくね、私はエリアナ・エジャーよ」
「エリアナ様って・・・あの・・・」
明らかに動揺するエイダの事が素性が気になった。
考えても見れば、魔女はサザーランド公爵家を恐れているのだから、動揺するのも仕方がない事だ。
そう考えれば、ここに来た事自体が騙し討ちみたいな感じに取られているかもね。
「私が怖いのかしら?」
「そ、、そんな事は・・・」
「(父がした事ですから)仕方がない事ですよ、私は気にしないので好きなだけ怖がってください。でも、できたら私に協力してほしい、貴女を悪い様にはしないし、報酬もちゃんと支払うわ、食事と部屋も用意していいのよ」
その返答をエイダが躊躇している間に、ダリアが耳打ちをしてきた。
「お嬢様、エイダは子供を作れない体にされてしまっています。それを聖女の力でどうにか出来ないでしょうか」
「それってどういう状況なの?」
「・・・・・・・・・」
長い沈黙の中で、絞り出すように出た言葉は私に衝撃を与えた。
女性としての尊厳を踏みにじる行為に、純粋な怒りを覚える。
「治療の光を使ってみましょう、再び子を宿せるように・・・しても大丈夫ですか」
「・・・正直、不安です、男の人が怖くて・・・このまなら一生関わらずに済みそうなので・・・」
彼女は言った。
強姦すらも逃げ出す程に悍ましいと。
「そうですね、その様な事をされたのならと、想像する事は出来ます、ですが私にはその体験がないので分かりません。なので、貴女の痛みが分かるとは言えない。でも、もし再び素晴らしい相手に出会えた時に後悔しないよう、今の内に治した方が幸せになれるかもしれませんよ」
エイダは考えに考えて答えを出した。
今はまだ男性を怖がっているとしても、将来に置いての明るい未来があると希望を持ちたいと言う事だった。
「・・・・お願いします」
「わかりました」
彼女の腹部に手を掲げ、子供を授かれるように祈りを込める。
彼女の現状を直接見る勇気は、私には無かった。
それでも、力になれるのであれば、力になりたい。
そう、願いを込めると淡い光が彼女を包み込む。
そして、衝立に隠れて確認をした。
「治っています、有難うございました・・・」
「リハビリがてらに騎士団長のレッドと付き合ってみてはどう?彼なら紳士的に対応するし、奥手だから中々手は出さないわよ」
「そんな、急には・・・」
「もう、会うだけでいいからさ、ダリア、レッドを呼んできて」
「分かりました」
「あの、本当に、治して頂いただけでも十分ですので」
「気にしないで、彼にも多少の女気があっても良いと思っただけよ、気軽に接してみなさい」
「・・・はい」
ダリアは訳も分からない様子のレッドを連れてくると、二人を同じテーブルにつかせた。
二人の前でカップに紅茶を注ぎ、私と共に後ろを向いた。
「お見合いってあんな感じなのかしら」
「多分ちがうのではないでしょうか、全く話をしていませんよ」
「実はハンドサインで会話しているとかない?」
「そのような様子はないですね、二人共俯いています」
「仕方ないですね、手助けをしてあげましょう」
自室の本棚にあった、騎士団の結成譚の本を持ち出し、エイダに手渡した。
「これ、読んだ事ありますか?」
「ええ、私、これ好きなんです、子供の頃に何度も読み返しましたから」
「その本に出てくるレッドってのが目の前にいる人よ」
「・・・・・え?嘘・・・」
「ホント。そうよね、レッド」
照れ臭そうに苦笑いをしながら、「ええ、まぁ」と肯定する。
エイダはそれに反応してか、食い気味に物語のセリフの一部を喋ってほしいとリクエストした。
それにレッドが答えると言う形で、二人の緊張は一瞬で跡形もなく溶けてしまった。
「本について話し合ったら間が持つんじゃない?」
「まぁ、そうですね、後で言っておきます」
「そうね、いま二人は夢中で話を続けてるんだもの、邪魔しちゃ悪いわ」
「ふふ・・・お嬢様はお優しいですね」
妹は牢屋に入れられたままで、私の面会は認めて貰えなかった。
父は屋敷に帰るなり、妹の事を『致し方がない事だ』と切り捨て、そして自領に戻った。
私は教会のお勤めをしながら、暇を持て余していた。
父によって、夜会等の全ての集まりへの参加を禁止されたからだ。
この事は別にそれで構わないとは思っていた。
読書の時間が確保できるのであれば、それに越したことはないのですから。
あれからウィルターも会いに来てくれない事には少し不満が募る。
あんなことをしたのですから、ちょっとは構って欲しいのです。
何もかも私の手の届かない所で物語が進んで行く。
私は無力なままだ。
ただ、無心に錬金術の研究でもしていろと言われている気がする。
それはそれで楽しいのですが、何かが物足りない。
そんな不足したピースを探して、私は無意味な日々を過ごしていた。
そんなある日、ダリアがエイダという少女を連れて来た。
件の魔女だと言う。
「始めまして、エイダと申します」
「よろしくね、私はエリアナ・エジャーよ」
「エリアナ様って・・・あの・・・」
明らかに動揺するエイダの事が素性が気になった。
考えても見れば、魔女はサザーランド公爵家を恐れているのだから、動揺するのも仕方がない事だ。
そう考えれば、ここに来た事自体が騙し討ちみたいな感じに取られているかもね。
「私が怖いのかしら?」
「そ、、そんな事は・・・」
「(父がした事ですから)仕方がない事ですよ、私は気にしないので好きなだけ怖がってください。でも、できたら私に協力してほしい、貴女を悪い様にはしないし、報酬もちゃんと支払うわ、食事と部屋も用意していいのよ」
その返答をエイダが躊躇している間に、ダリアが耳打ちをしてきた。
「お嬢様、エイダは子供を作れない体にされてしまっています。それを聖女の力でどうにか出来ないでしょうか」
「それってどういう状況なの?」
「・・・・・・・・・」
長い沈黙の中で、絞り出すように出た言葉は私に衝撃を与えた。
女性としての尊厳を踏みにじる行為に、純粋な怒りを覚える。
「治療の光を使ってみましょう、再び子を宿せるように・・・しても大丈夫ですか」
「・・・正直、不安です、男の人が怖くて・・・このまなら一生関わらずに済みそうなので・・・」
彼女は言った。
強姦すらも逃げ出す程に悍ましいと。
「そうですね、その様な事をされたのならと、想像する事は出来ます、ですが私にはその体験がないので分かりません。なので、貴女の痛みが分かるとは言えない。でも、もし再び素晴らしい相手に出会えた時に後悔しないよう、今の内に治した方が幸せになれるかもしれませんよ」
エイダは考えに考えて答えを出した。
今はまだ男性を怖がっているとしても、将来に置いての明るい未来があると希望を持ちたいと言う事だった。
「・・・・お願いします」
「わかりました」
彼女の腹部に手を掲げ、子供を授かれるように祈りを込める。
彼女の現状を直接見る勇気は、私には無かった。
それでも、力になれるのであれば、力になりたい。
そう、願いを込めると淡い光が彼女を包み込む。
そして、衝立に隠れて確認をした。
「治っています、有難うございました・・・」
「リハビリがてらに騎士団長のレッドと付き合ってみてはどう?彼なら紳士的に対応するし、奥手だから中々手は出さないわよ」
「そんな、急には・・・」
「もう、会うだけでいいからさ、ダリア、レッドを呼んできて」
「分かりました」
「あの、本当に、治して頂いただけでも十分ですので」
「気にしないで、彼にも多少の女気があっても良いと思っただけよ、気軽に接してみなさい」
「・・・はい」
ダリアは訳も分からない様子のレッドを連れてくると、二人を同じテーブルにつかせた。
二人の前でカップに紅茶を注ぎ、私と共に後ろを向いた。
「お見合いってあんな感じなのかしら」
「多分ちがうのではないでしょうか、全く話をしていませんよ」
「実はハンドサインで会話しているとかない?」
「そのような様子はないですね、二人共俯いています」
「仕方ないですね、手助けをしてあげましょう」
自室の本棚にあった、騎士団の結成譚の本を持ち出し、エイダに手渡した。
「これ、読んだ事ありますか?」
「ええ、私、これ好きなんです、子供の頃に何度も読み返しましたから」
「その本に出てくるレッドってのが目の前にいる人よ」
「・・・・・え?嘘・・・」
「ホント。そうよね、レッド」
照れ臭そうに苦笑いをしながら、「ええ、まぁ」と肯定する。
エイダはそれに反応してか、食い気味に物語のセリフの一部を喋ってほしいとリクエストした。
それにレッドが答えると言う形で、二人の緊張は一瞬で跡形もなく溶けてしまった。
「本について話し合ったら間が持つんじゃない?」
「まぁ、そうですね、後で言っておきます」
「そうね、いま二人は夢中で話を続けてるんだもの、邪魔しちゃ悪いわ」
「ふふ・・・お嬢様はお優しいですね」
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