聖女は記憶の残滓に恋焦がれる ~男体化してしまった聖女の妹が私を汚そうとするんですが誰か助けてください~

なのの

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38.女神、参戦

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 帰るに帰れなくなった私は、教会に行く時間を増やした。
 事情は大司教様に説明し、父への伝言をたのんだ。
 といっても父も今は屋敷に居ないのだから、伝言の伝言になってしまう。

 エリザベスは前よりべたべたとくっついて来るようになった。
 そして、肝心な呪いも解除してもらった。

 男の子の名前も思い出した。

 約束もだ。

 私は何て約束をしてしまったのかと、若気の至りを恥じるばかりだった。
 どうせだったら結婚の約束でもしてる方が可愛いかったのに。

 話を聞く限り、ウィルター改め、ウォルター第一王子は私に呪いをかけたのはエイダの姉だと思っているらしい。
 そしてそれは父も同様の可能性が高い。
 実際、エイダが妹を呪っていたし、私自身を呪われた事もあった、それにウォルターまでも呪っていたのだから、反逆罪と言うのはあながち外れていない。
 ただ、これは本当に不毛な戦争。
 即刻止めたいと考えたが、その方法が思いつかなかった。

 ところがひょんな事からダリアが持ってきた荷物の中に、私の求める物があったと気が付いた。
 王都を出発する時に大司教様から頂いた大きな巻物を広げた。
 それは王国の全域地図で、領地の境界線と、主要施設、そして教会の位置と教会内の模写が記載されていた。

「つまり、これがあれば、私は何処へでも降臨できると言う事ね」
「今の戦場から考えて、このあたりでしょうか。近くの村に教会がりますから、それか砦内の仮設教会」

 その砦内については皆が反対した。

「もし攻撃された時どうなるか分からないでしょ」
「そうよ、女神像に降臨中と言えど、刺されれば痛いでしょ」
「じゃあ、確認してみよっか、ここから近くの教会に降臨するから、そこでナイフを渡してくれないかな」
「では私が行きます」

 そう言ったのはエリザベート。
 公国の人間でないと、信用されないかもしれないとの懸念だった。
 そうして、実験はすぐに行われ、ナイフで指先をちょっと切ってみたら普通に切れた。

「駄目ね、危険は冒せないから、砦内は諦めましょう」
「ですね。ナイフ持って帰るので受け取ります、あと、血はこのタオルで拭き取ってください」
「ありがとうございます、エリザベート様」

 そういう訳で、父の陣取る近くの村に降臨する事になり、それはすぐに実行した。
 降臨すると教会の雰囲気が極端に悪い事に気が付いた。
 教会内は怪我人で埋め尽くされ、治療を受けている者が大多数を占める。
 そこに見知った顔の人物が居た。

 アトウッド、第一騎士団の副団長。
 近くに寄って声を掛けようとした所、女神像が動き始めた事に教会内に歓喜の声が上がる。
 こうなるとアトウッドに近づくことも難しく、とりあえず治療を施す事にした。

「一人一人ですよ、治療しますから、並んでください」

 治療の光を発動させ次々と患者を治してゆき、ようやくアトウッドの番となった時に話を聞けた。

「あの、ウォルター様や公爵様はどちらに」
「公爵様は砦の前面です、ウォルター様は遊撃で背後を突く為潜伏中です、援軍の撃退もしくは裏門からの侵入予定です」
「では治療が終わり次第、公爵様の元に連れて行ってもらえますか」
「承知しました」

 全員を治療し終わった時、既に治療済みの人達は前線に戻ったのかと思えば外で待機していた。
 約二百人程になる彼らは騎士団だったり、ウォルター様が連れて来た王国軍の兵。
 治療したのはその内五十名程だったのに、降臨したという話が広まり後詰や待機状態の兵も集まってしまった。
 それがぞろぞろと前線へ移動。
 砦が近くに見えた頃には、前線の兵にも降臨の話が広まり、それが自陣に来た事で皆が口々に叫んだ。
 その中でも、父が全体に通る声で兵士に鼓舞した。

「女神様が応援に駆け付けて来た!勝利を献上せずにどうする!死ななければ治してもらえるのだ、恐れる物など何もない!いまこそ総攻撃の時だ!」

「「「「おおおおおおおおおおお!」」」」

 地響きがする程の声量は砦の方にも届いており、砦内は一瞬で浮足立った。

 砦の門に攻城槌を突撃させる。
 それを砦の兵が弓で応戦するも、父の軍は怯まなかった。
 恐怖を忘れた軍と言うのは恐ろしい物で、砦の兵は恐慌状態に陥る。
 武器を捨てて逃げ出す者が次々現れたかと思えば、砦の門が重い音を鳴らしながら開いた。

 そこにはウォルター様の姿があった。
 反対側の門から潜入したのち、恐慌状態に陥った事に便乗して門を開けたのだ。
 それから砦は一瞬で落ちた。
 兵も女神に率いられた軍に抵抗する気も失い、次々と投降する。

 おおよそ全ての敵兵を捕縛した所で、ウォルター様が話しかけて来た。

「エリアナだよな」
「そうです、お久し振りですね、ウォルター・・・・・様」
「・・・もしかして、呪いが・・・」
「はい、あの約束も思い出しました」
「そ、そうか、よかった・・・」

 少し照れ臭そうに喜ぶウォルター様に当てられ、私まで恥ずかしくなる。

「殿下!女神様をナンパですか!流石ですね!」

 周りから冷やかされ、更に恥ずかしくなる。

「その話は帰ってからにしよか」
「わかりました」

 そうして、重要拠点の戦いは終り、後は領都になだれ込むだけとなった。
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