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43.一方通行の帰り道
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馬車がかたごとと進む中、私は物思いにふけるしかなかった。
レッドやダリアが先に帰国してしまったのだから、話し相手がいないのだ。
見た事も無い教会の人々に連れられて、公国を後にした。
窓から見える景色が街中だった間はまだ楽しかった。
農村になったあたりも、景色が良くて楽しかった。
でも、それは長々と同じ景色を見せられるという事ですぐに飽きてしまう。
2日半もすれば、王国内に入る。
そうなれば景色も多少変わるだろうと、心待ちにしてうたた寝をしてしまった。
教会の人達はお金がないのか、村や町で泊まらずに野宿するという。
殆ど森の中としか思えない空間に、ぽっかりと開けた空間があった。
そこに馬車と馬を停め、彼らは野営の準備を始める。
手慣れた感じでテントを張り、火を起こし小川から水を運んでくる。
簡単な料理を手渡され、堅いパンと引きちぎれない干し肉を無心で齧った。
干し肉を齧ってる間というのは何もかもを忘れる事が出来て都合がいい。
嫌な事を全て・・・。
私は何を嫌がっていたのだろう。
エリザベス様と離れる事?長旅をする事?それともウォルターと会う事?
きっと最後のそれが理由だと、結論づけた。
会って何を話せばいいのか分からない。
でも、だからといって会いたくない訳じゃない。
もしかするともっと何か別の理由があったかもしれない。
それから2泊目の野営地に到着した。
馬に乗ってる人が先行でどこかの村で買い物をしてくれたらしく、今日の食事には柔らかめの干し肉が渡された。
きっと堅い方を食べてる時、難しい顔でもしていたのだろう。
彼らなりにご機嫌を取っているつもりなのかもしれない。
だとしたら、水浴びくらいさせてほしい。
街のいい宿なんて贅沢は言わないのにね。
そして3泊目。
未だに公国内に居る。
普通なら王国に入っておかしくないと思って、少し嫌な予感がした。
「ねぇ、後何日で到着する予定なの?」
「14日後だ、まだまだかかるから体力を温存しておけ」
「普通、王都まで10日でしょ。どうしてそんなにかかるのよ」
「何も聞いていないのか、王国との国境は魔物が出没して閉鎖中だ、それ故に迂回しているから時間がかかるんだ」
「そうだったのね、聞いてなかったわ。それでも村には寄ってよ、そろそろ水浴びくらいはしたいの」
「わかった、考慮する」
それから4泊目、ようやく小さな村の空き家を借りて泊まる事となった。
一応、衝立がある状態で水浴びができるだけ、マシと思える状況。
せめて教会の方達の中に女性がいれば安心できるのにと思っていた。
そこに村の小さな女の子が現れて話しかけて来た。
「こんばんわ、お姉ちゃん」
「こんばんわ」
「お姉ちゃんは何処に行くの?」
「エリージャ王国に帰る所なの」
「エリージャ王国?それってどこにあるの?」
「アリニャーヌ公国から南西に向かった方だよ」
「へえ~、ここからなら、エステポナ教国が近いから寄って行けばいいのに~」
「へ・・へえ、エステポナ教国ってどれくらいで行けるの?」
「1日あればつくよお?」
「そうなんだ、ありがとうね、そうだ、この村の名前を教えてくれるかしら」
「えとねー」
女の子の頭を優しく撫でながら、内心焦っていた。
この教会の人達が王国の人間じゃない可能性が高い事と、現在地が王国とは真反対だという事にようやく気が付いた。
逃げなきゃ・・・。
逃げる?
どうやって?
走って逃げれる場所じゃない。
馬に乗った事もない。
せめてこの事を誰かに伝える事が出来れば何かが変わるかもしれない。
ダメ元で御者に話してみた。
「ねぇ、女大公様と話さなきゃいけない事を思い出したのだけど、引き返してくれないかしら」
「おお、それは大変でございますな。では到着次第、文を送ればよろしいでしょう」
「急ぐのよ!今すぐ戻ってほしいの!」
「なりません、私は旅を完遂するよう言われておりますので」
「誰に言われたのよ」
「貴女様が知る必要はございませぬ」
全く話にならないどころか、言葉遣いが御者とは到底思えない。
落胆しつつ大人しく指定された空き家に戻る。
それと同時に、全身に身の毛がよだった。
エステポナ教国と言えば女神信仰が最も強い国で『全ての聖女はエステポナ教国に属すべき』なんて無茶苦茶なスローガンを掲げ、大聖女ともなれば誘拐まがいな事も辞さないという、私が最も警戒すべき相手だったのに王国と教国は国境を接していないせいですっかり忘れていた。
軍事力でも王国と拮抗しているのが厄介で、このままでは私が火種になって戦争が起きかねない。
戦争になって最も困るのが王国と教国の間にある公国と言う事になる。
しかも公国内で誘拐されたとなれば尚の事、王国からどのように責任を問うのか分からず、矢面に立たされるのは目に見えてる。
公国にそんな戦力なんて無いというのに。
そんな危機感を募らせている最中、外は慌ただしく騒ぎ立てている。
こっそり窓から覗いてみると、狂暴そうなメイスを片手に死体を見下ろす教国兵の姿が目に入る。
逃げれば殺される───
その結論に震える体を縮こませ、ただ、誰かが来る事を祈っていた。
レッドやダリアが先に帰国してしまったのだから、話し相手がいないのだ。
見た事も無い教会の人々に連れられて、公国を後にした。
窓から見える景色が街中だった間はまだ楽しかった。
農村になったあたりも、景色が良くて楽しかった。
でも、それは長々と同じ景色を見せられるという事ですぐに飽きてしまう。
2日半もすれば、王国内に入る。
そうなれば景色も多少変わるだろうと、心待ちにしてうたた寝をしてしまった。
教会の人達はお金がないのか、村や町で泊まらずに野宿するという。
殆ど森の中としか思えない空間に、ぽっかりと開けた空間があった。
そこに馬車と馬を停め、彼らは野営の準備を始める。
手慣れた感じでテントを張り、火を起こし小川から水を運んでくる。
簡単な料理を手渡され、堅いパンと引きちぎれない干し肉を無心で齧った。
干し肉を齧ってる間というのは何もかもを忘れる事が出来て都合がいい。
嫌な事を全て・・・。
私は何を嫌がっていたのだろう。
エリザベス様と離れる事?長旅をする事?それともウォルターと会う事?
きっと最後のそれが理由だと、結論づけた。
会って何を話せばいいのか分からない。
でも、だからといって会いたくない訳じゃない。
もしかするともっと何か別の理由があったかもしれない。
それから2泊目の野営地に到着した。
馬に乗ってる人が先行でどこかの村で買い物をしてくれたらしく、今日の食事には柔らかめの干し肉が渡された。
きっと堅い方を食べてる時、難しい顔でもしていたのだろう。
彼らなりにご機嫌を取っているつもりなのかもしれない。
だとしたら、水浴びくらいさせてほしい。
街のいい宿なんて贅沢は言わないのにね。
そして3泊目。
未だに公国内に居る。
普通なら王国に入っておかしくないと思って、少し嫌な予感がした。
「ねぇ、後何日で到着する予定なの?」
「14日後だ、まだまだかかるから体力を温存しておけ」
「普通、王都まで10日でしょ。どうしてそんなにかかるのよ」
「何も聞いていないのか、王国との国境は魔物が出没して閉鎖中だ、それ故に迂回しているから時間がかかるんだ」
「そうだったのね、聞いてなかったわ。それでも村には寄ってよ、そろそろ水浴びくらいはしたいの」
「わかった、考慮する」
それから4泊目、ようやく小さな村の空き家を借りて泊まる事となった。
一応、衝立がある状態で水浴びができるだけ、マシと思える状況。
せめて教会の方達の中に女性がいれば安心できるのにと思っていた。
そこに村の小さな女の子が現れて話しかけて来た。
「こんばんわ、お姉ちゃん」
「こんばんわ」
「お姉ちゃんは何処に行くの?」
「エリージャ王国に帰る所なの」
「エリージャ王国?それってどこにあるの?」
「アリニャーヌ公国から南西に向かった方だよ」
「へえ~、ここからなら、エステポナ教国が近いから寄って行けばいいのに~」
「へ・・へえ、エステポナ教国ってどれくらいで行けるの?」
「1日あればつくよお?」
「そうなんだ、ありがとうね、そうだ、この村の名前を教えてくれるかしら」
「えとねー」
女の子の頭を優しく撫でながら、内心焦っていた。
この教会の人達が王国の人間じゃない可能性が高い事と、現在地が王国とは真反対だという事にようやく気が付いた。
逃げなきゃ・・・。
逃げる?
どうやって?
走って逃げれる場所じゃない。
馬に乗った事もない。
せめてこの事を誰かに伝える事が出来れば何かが変わるかもしれない。
ダメ元で御者に話してみた。
「ねぇ、女大公様と話さなきゃいけない事を思い出したのだけど、引き返してくれないかしら」
「おお、それは大変でございますな。では到着次第、文を送ればよろしいでしょう」
「急ぐのよ!今すぐ戻ってほしいの!」
「なりません、私は旅を完遂するよう言われておりますので」
「誰に言われたのよ」
「貴女様が知る必要はございませぬ」
全く話にならないどころか、言葉遣いが御者とは到底思えない。
落胆しつつ大人しく指定された空き家に戻る。
それと同時に、全身に身の毛がよだった。
エステポナ教国と言えば女神信仰が最も強い国で『全ての聖女はエステポナ教国に属すべき』なんて無茶苦茶なスローガンを掲げ、大聖女ともなれば誘拐まがいな事も辞さないという、私が最も警戒すべき相手だったのに王国と教国は国境を接していないせいですっかり忘れていた。
軍事力でも王国と拮抗しているのが厄介で、このままでは私が火種になって戦争が起きかねない。
戦争になって最も困るのが王国と教国の間にある公国と言う事になる。
しかも公国内で誘拐されたとなれば尚の事、王国からどのように責任を問うのか分からず、矢面に立たされるのは目に見えてる。
公国にそんな戦力なんて無いというのに。
そんな危機感を募らせている最中、外は慌ただしく騒ぎ立てている。
こっそり窓から覗いてみると、狂暴そうなメイスを片手に死体を見下ろす教国兵の姿が目に入る。
逃げれば殺される───
その結論に震える体を縮こませ、ただ、誰かが来る事を祈っていた。
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