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3.王宮
3-11.
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むぅ、手首に痣が残ってしまった。
後で教会に行って直してもらうか。
ヒューゴはこう言うの得意だからな。
「ところでどうして王太子殿下がここに?」
「カロリーナが攫われるのを遠くから見かけてね、追いかけて来たんだ」
「王女殿下の方は!?もう助けたのか?」
「ああ、今頃助かってると思う。アルヴィンが行ってくれてる」
「あの本の虫が…」
まぁアイツは肩書として「宮廷魔術師」を持っているからな。
王族の為に働くのも給料の内だ。
王女が無事ならよかった。
「ところでさ、記憶が無くなったって本当かい?」
「ああ、本当だ」
「じゃああの事ももう覚えてないんだね」
「あの事?」
「なんでもないんだ、気にしないでくれ」
「いいから言えよ。気になるだろ」
「本当になんでもないんだ」
「そうか?だが、そうやって自分に抱え込んでるといつか潰れるぞ?そういうのは誰かに相談するべきだ。そういう友達を持てよ、もしいないんだったら、俺がその相手になってやるからさ」
「お……お前、変わったな」
俺は立ち上がり、外に出ようとした。
王女の救出がどうなったか気になるからだ。
だが、王太子殿下は俺の腕を掴んで制止した。
「痛ッ」
「ああ、すまない」
「大した事じゃない、そうだな、もう少し話すか」
王太子もそれに同意する。
こういう時、どうした?なんだ?と聞くと言い出しそうになった言葉を飲む子供がいる。
さりげなく話せる状況を作り、話すように誘導してやるのが上手な話法だって妻が言っていた。
「さっきのロープは凄かったんだ、動けば動くほど食い込んでゆく、お陰で跡がくっきりとな」
「痛そうだね。ごめんよ、それに気付けなくて」
「いいって事よ。もし気になるなら気がまぎれる様な話をしてくれないか?」
「どんな話でもいいの?」
「ああ、なんでもいい、例え話でも、フィクションでもサスペンスでもホラーでも」
「あはは、じゃあ何でもない話をするよ」
そうして王太子はぽつりぽつりと話を続けた。
要約するとこうだ。
王太子の婚約者(11)を指導・教育しているメイジが不穏な行動をしていた。
それはとある令嬢に対して顕著で、数々の嫌がらせを行っていた。
最後には魔法で足を滑らせ、池に落とし死ぬまで浮かび上がらせない様にした。
婚約者はとある令嬢を排除した事に味を占めたのか、今度は王太子の交友のある女子に対して同じ事を始めたのだ。
そしてそのメイジの素性を探ると、とある革命組織にぶち当たった。
その革命組織を支援しているのが婚約者の家だった事が判明し、婚約を破棄するかと悩み始めている。
という話だ。
「お前さ、婚約者の事は好きか?」
「どうだろう、今となってはよくわからないな」
「今となっては……か。難しいよな。最初の頃は好きでも相手の事を知ると徐々に分からなくなる、そうだよな。慣れてきたらそこに居るのが当たり前。目新しい令嬢が居れば目移りするのも仕方ない事だよな?それは分かるぜ」
「そんな事無いよ!君はちょっと特別だったけど…、他の令嬢に目移りなんてしてない!」
王太子の目は真摯に俺を見ていた。
いや、その眼差しが見ているのは俺じゃなくて婚約者なのだろうな。
「ふぅん、じゃあ、その婚約者が居なくなったらさみしいか?」
「うん……」
「それなら好きって気持ちがあるって事だろ?その家がお取り潰しになっても、その気持ちがあれば付き合ってられるさ。家がどうこうなんて関係ない、お前は一人の女性を好きになった。事実はその一つだけだ。簡単でシンプルな答えはお前の中にある。婚約者の家なんて気にするな、お前の気持ちを大事にしろ。それが一番お前を救う事になる、絆を信じるんだ」
やべえ、王太子殿下をお前呼ばわりしてた。
現実問題として王太子の立場上、平民落ちした令嬢との結婚ってのは難しい。
元反逆者の家の者というレッテルがいつまでも邪魔をするだろう。
だが、平民との結婚をした例なんて有ったハズだ。
あとはその婚約者がレッテルに挫けず付き合い続けれるかって話だな。
結局は二人次第だ。
ぐすん
おお?王太子が泣き始めた。
なんでだ?
*
「そうか、誰も後押しをしなかったんだな」
「うん」
「そう泣くなよ。もし婚約者の家が取り潰しになっても、俺がどうにかしてやる」
「そんな事ができるの?」
「ああ、まぁ厳密に言うと、俺じゃないかもしれないがな……」
「さすがカロリーナだね」
「ふっよせやい」
「そうやって照れるところも可愛いねっ」
「おいおい、おだてるなよな……」
最後の一言に、なにか一抹の不安を感じた。
後で教会に行って直してもらうか。
ヒューゴはこう言うの得意だからな。
「ところでどうして王太子殿下がここに?」
「カロリーナが攫われるのを遠くから見かけてね、追いかけて来たんだ」
「王女殿下の方は!?もう助けたのか?」
「ああ、今頃助かってると思う。アルヴィンが行ってくれてる」
「あの本の虫が…」
まぁアイツは肩書として「宮廷魔術師」を持っているからな。
王族の為に働くのも給料の内だ。
王女が無事ならよかった。
「ところでさ、記憶が無くなったって本当かい?」
「ああ、本当だ」
「じゃああの事ももう覚えてないんだね」
「あの事?」
「なんでもないんだ、気にしないでくれ」
「いいから言えよ。気になるだろ」
「本当になんでもないんだ」
「そうか?だが、そうやって自分に抱え込んでるといつか潰れるぞ?そういうのは誰かに相談するべきだ。そういう友達を持てよ、もしいないんだったら、俺がその相手になってやるからさ」
「お……お前、変わったな」
俺は立ち上がり、外に出ようとした。
王女の救出がどうなったか気になるからだ。
だが、王太子殿下は俺の腕を掴んで制止した。
「痛ッ」
「ああ、すまない」
「大した事じゃない、そうだな、もう少し話すか」
王太子もそれに同意する。
こういう時、どうした?なんだ?と聞くと言い出しそうになった言葉を飲む子供がいる。
さりげなく話せる状況を作り、話すように誘導してやるのが上手な話法だって妻が言っていた。
「さっきのロープは凄かったんだ、動けば動くほど食い込んでゆく、お陰で跡がくっきりとな」
「痛そうだね。ごめんよ、それに気付けなくて」
「いいって事よ。もし気になるなら気がまぎれる様な話をしてくれないか?」
「どんな話でもいいの?」
「ああ、なんでもいい、例え話でも、フィクションでもサスペンスでもホラーでも」
「あはは、じゃあ何でもない話をするよ」
そうして王太子はぽつりぽつりと話を続けた。
要約するとこうだ。
王太子の婚約者(11)を指導・教育しているメイジが不穏な行動をしていた。
それはとある令嬢に対して顕著で、数々の嫌がらせを行っていた。
最後には魔法で足を滑らせ、池に落とし死ぬまで浮かび上がらせない様にした。
婚約者はとある令嬢を排除した事に味を占めたのか、今度は王太子の交友のある女子に対して同じ事を始めたのだ。
そしてそのメイジの素性を探ると、とある革命組織にぶち当たった。
その革命組織を支援しているのが婚約者の家だった事が判明し、婚約を破棄するかと悩み始めている。
という話だ。
「お前さ、婚約者の事は好きか?」
「どうだろう、今となってはよくわからないな」
「今となっては……か。難しいよな。最初の頃は好きでも相手の事を知ると徐々に分からなくなる、そうだよな。慣れてきたらそこに居るのが当たり前。目新しい令嬢が居れば目移りするのも仕方ない事だよな?それは分かるぜ」
「そんな事無いよ!君はちょっと特別だったけど…、他の令嬢に目移りなんてしてない!」
王太子の目は真摯に俺を見ていた。
いや、その眼差しが見ているのは俺じゃなくて婚約者なのだろうな。
「ふぅん、じゃあ、その婚約者が居なくなったらさみしいか?」
「うん……」
「それなら好きって気持ちがあるって事だろ?その家がお取り潰しになっても、その気持ちがあれば付き合ってられるさ。家がどうこうなんて関係ない、お前は一人の女性を好きになった。事実はその一つだけだ。簡単でシンプルな答えはお前の中にある。婚約者の家なんて気にするな、お前の気持ちを大事にしろ。それが一番お前を救う事になる、絆を信じるんだ」
やべえ、王太子殿下をお前呼ばわりしてた。
現実問題として王太子の立場上、平民落ちした令嬢との結婚ってのは難しい。
元反逆者の家の者というレッテルがいつまでも邪魔をするだろう。
だが、平民との結婚をした例なんて有ったハズだ。
あとはその婚約者がレッテルに挫けず付き合い続けれるかって話だな。
結局は二人次第だ。
ぐすん
おお?王太子が泣き始めた。
なんでだ?
*
「そうか、誰も後押しをしなかったんだな」
「うん」
「そう泣くなよ。もし婚約者の家が取り潰しになっても、俺がどうにかしてやる」
「そんな事ができるの?」
「ああ、まぁ厳密に言うと、俺じゃないかもしれないがな……」
「さすがカロリーナだね」
「ふっよせやい」
「そうやって照れるところも可愛いねっ」
「おいおい、おだてるなよな……」
最後の一言に、なにか一抹の不安を感じた。
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