ドラゴニック・ブラッド ~竜騎士だった俺の転生先は死んだ公爵令嬢だった。令嬢なんて面倒くせえ!勝手気ままに生きてやる!~

なのの

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5.モルバーン学園(一年生編)

5-37.ラミレス王国王都にて

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 フローレンス・フェレーラ公爵令嬢との決闘となり、相手は魔法の杖を構え、俺は借り物の短剣を構えた。
 決闘とは言え、女同士である以上、傷をつけるのは気が引けていた。
 だからルールが安全重視で助かったとは思っていた。

「それでは始めます、上に投げたコインが地面に着いた瞬間から、詠唱なり攻撃なり移動なりするといいわ」

「わかりました、では始めましょう」

「それでは───」

 キーンという音と共に、コインが宙を舞った。
 そのコインが落下する瞬間に、フローレンスは詠唱を始める、俺はと言うと魔操糸術を展開し、どうとでも出来る様にした。
 練習を重ねた成果だが、10歩程離れた相手の頭の羽根に糸を巻き付けるのは造作もない。
 それはつまり、一瞬で羽根を落とす事が可能と言う事だ。
 自由落下などではなく、一瞬で、ベターンと落ちる様子はさぞ異様に映るだろう。
 だが、それだけでは面白くもない。
 ここは余興とばかりに、一発攻撃を喰らってやろうというのだ。
 それを耐えた上で、羽根を落としても遅くはない。
 というか、ハンデでそれくらいは与えるべきだという事だ。

 そんな余裕をかましている内に相手の詠唱が終わり、少し小ぶりの氷の玉が8個、頭上に浮かび上がった。

「下手に動いて変な所に当たったのなら、私の責任じゃございませんわ───」

 という無茶な事を言った後に「行きなさい!」と命令を下した。
 その言葉に反応してか、氷の玉は俺目がけて飛んでくる。
 それが傷つけるものではないとなると、拘束系、つまり凍結なのだろう。
 曲線を描き飛んでくる氷の玉は最初に俺の足に当たる。
 瞬間、足が凍り付き身動きが取れなくなった。
 次に、手、膝、肘と、ご丁寧に左右一つずつ命中した。
 それが全て地面と繋がり、手足が完全に動かなくなった。

「ふふふ、もう終わりかしら」

「あ・・・」

 そんな事を言ってこちらに近寄り始めたフローレンスの頭から羽根が取れて宙に浮いてしまった。
 それを取り巻きが指摘すると、フローレンスは頭の上を確認し、羽根がない事に大いに焦りはじめた。

「え・・・え・・・えええ・・・?」

 魔操糸術で予め羽根を掴んでいたのだが近寄ってこようとするもんだから、うっかり頭に追尾できず、羽根が離れてしまったのだ。

「どうして、羽根が宙にういてるのよお~~~」

 とりあえず、フローレンスの手の届かない所にまで持ち上げてみると、フローレンスはぴょんぴょんと跳ねながらどうにか取ろうと努力する。
 その姿は、なんとも可愛いというべきか、可愛そうというべきか。
 兎に角、勝敗の結果は俺の手に握られているのだ。
 フローレンスは取るのを諦めたのか、咳払いと同時にこちらに向き直した。

「まぁいいわ、貴女の羽根を落とせば私の勝ち、身動きが取れない今となっては私の勝ちは揺るがな───」

 ベチーンッッッ!

 羽根が落ちた音とは思えない音がした。
 フローレンスが振り向くと床にひびが入り、落ちた衝撃で粉砕された羽根があった。
 それを見たフローレンスの顔色一瞬で青ざめてしまった。

「羽根ってこんな落ち方しますのー??」

 たしかに普通ではなかった。
 だがこれは勝負の世界、厳しいかもしれんが現実を受け入れてもらわねば困る。

「じゃあ勝負あったという事でいいですか?」

「貴女、なにやったのよ、詠唱も何もしなかったじゃない!」

「大した事はしていませんが、誰しも見えている世界が同じとは限らないと知るべきでしょうね」

「なによ、もう一度勝負よ!」

 それから12回も勝負を続け、全く同じ結果で終わった。
 2回目からは氷の玉の攻撃も受け付けなかったため、まさに完封と言った感じだ。
 そのせいで約束は果たしてくれるのか怪しいと思っていたが、最後にはどうにか渋々友達だと認めてくれた。

「13勝0敗、まだ続けたいのですか、お友達のフローレンスちゃん」

「ちゃん!?」

「だめですか?」

「もうそういう、年でもありませんから・・・その」

「ではフローレンス、呼び捨てでいいよな」

 少し声のトーンを落として、前世で女を口説くときの様に振舞ってみた。
 これは令嬢に対する礼儀みたいなもので、ちょっくら体に染みついていた癖だ。

「あ・・・あの・・・え?実は男とか・・・言わないですわよね」

「一応、生物学上は女だな。この口調は駄目か?俺は友達ならこの口調で話したいんだが」

「え、ええ、よろしくてよ」

「そうか、ありがとな!」

「あ、あの、できれば、一度、男物のスーツを着て頂けないかしら」

「うん?借りれるのなら、それで構わないぜ、サイズが合うのがあればだが」

 フローレンスは大急ぎで屋敷の中に戻り、一瞬でサイズぴったりのスーツを持ってきた。
 それは有難い?と言うべき話だがここで着替えるのは抵抗があった。

「着替える場所を借りれるか?」

「もちろんですわ、お着換え手伝わせて頂きます!」

 そんなのはメイドの仕事だろうなどと思っていたが、乗り気だったので世話になった。
 ドレスを脱ごうとした時点でまじまじと見られるのが気になりつつも続けていると、脱いだ時点で声を上げられた。

「どうしてブラやコルセットをつけていないのですか!」

「こんな貧相な体には必要ないからだよ!」

「だからって、淑女の嗜みに反しますわ!」

「だが、シャツを着る以上、どちらも合わないだろ?」

「ですが・・・胸が少し膨らんで居る以上、乳首が目立ちますわ」

「あー・・・まぁそうだな、客は女ばかりだし、上着を切れば済む話だ。だからまぁ気にするな」

「いえ、そこはサラシを巻きましょう」

 そうして、何処からともなく出てきたサラシで少ししか膨らんでいない胸を押しつぶし、少し緩かったウェスト周りはベルトで調節し、ようやく着替えが終わった。

「完璧を期すなら、手直しが必要ですが・・・これはこれで尊いですわ・・・」

「髪も上げてもらって思ったのだが、なんでこんなに慣れているんだ?」

「男装が趣味だからですわ。あ、見る方ですよ、私はできません。オーラがそれを邪魔するんです」

「いや、無駄にデカイ胸が邪魔で出来ないってーんだろ」

「嗚呼、その口調も最高ですわ・・・、貴方、その恰好でココに住みなさいよ」

 無茶な事を言い出した。
 結局、お互い悪口を言った事は水に流すという事になり、悪くない関係が気づけそうだった。
 つまりは、もう友達なのだから、たまにこんな恰好で相手をしてやるのも悪くないかもしれない。
 なにせ、この格好は動きやすくて楽だからな。
 ただ、こんな姿をオルドリッジ様に見せたらどう反応するのだろうかと少し気になった俺は、このスーツを借りて会いに行った。

 *

「オルドリッジ様、帰ったぞ~・・・って居ないのか」
「お前は誰だ・・・ってカロリーナか」
「・・・気配もなく急に後に立つなよ、しかも首元にナイフを突き立てやがって」
「いやいや、見慣れぬ姿の者が来れば警戒するだろ?」
「じゃあ新衣裳を着る度に俺はナイフを突きつけられるのか?」
「わかった、次からは抱きしめる様にする」
「・・・勝手にしろ」
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