ドラゴニック・ブラッド ~竜騎士だった俺の転生先は死んだ公爵令嬢だった。令嬢なんて面倒くせえ!勝手気ままに生きてやる!~

なのの

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5.モルバーン学園(一年生編)

5-77.バーランド近海にて

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 少しケツを痛そうにするオルドリッジ様を後目しりめに。
 俺は眠りに落ちそうになっていた。
 ある意味、激しく体力を消耗したというのだから当然の事だ。
 二隻でどうにか出来るのかという状態に、オルドリッジ様は援軍が来るまで持ちこたえるだけで良いという。
 今は敵軍が3つに分かれた内の一番大きい船団を倒した所で、まだ油断できる状態ではない。
 位置関係としては側面に周ろうとしていた14隻が真後ろに位置し、そこからさらに後方に離れた場所に旗艦を含む16隻がいるという状況らしい。
 ここから14隻を同じような戦法で突破したとしても次の本体と連戦になるが避けれない上に旗艦がある以上、被害が無視できなくなると予測された。
 さらには敵側に居る聖女の存在がこちらの長距離攻撃の優位性を潰していた。
 半分、夢現でそんな説明を聞いていたが、俺はいつの間にか寝入っていた。

 体は眠っているのにそれを眺める俺が居るという状態。
 幽体離脱みたいな状況だが、少しがっかりした事がある。
 勇者相手にした時もそうだが、精神体となった俺の体は少女の体だった。
 最早魂の形がカロリーナとなったのか、そういう定着の仕方をしたのかといった感じだ。
 グレッグに聞けば分かりそうだが、それを明確にするメリットはないし、それはどうでもいい事だ。

 幽体離脱といっても、以前と違って尻尾が幽体の俺について来ていた。
 その小さくなったままの尻尾に捕まっていれば船内を高速に移動できるようだ。
 尻尾なのに乗り物的な使い方ができるという、なんとも不思議な状況ではある。
 ふと、どこまで行けるのかという興味が湧いてきた。

 目指すは敵の軍艦。
 最初に聞いていた通り14隻の船団が見えてくる。
 それを通り過ぎ、暫くすると16隻の船団が現れた。
 そのうち、形状が明らかに違う船を見つけた。
 尻尾を小さくして近づいてゆく。
 恐らくこれが旗艦なのだろうと思っていると、大きな笑い声が聞こえてきた。

「もう奴らもこれでお終いですな!」

「侮るな、まだ勝った気になるのは早いですぞ。酒を飲んでるのか・・・卿という者は・・・」

「いいではありませんか!我らには聖女が居るんですよお。おら!聖女、お前もなんかいうんだよ!」

「あ、あ、、、あの、勝利おめでとう、、ございます」

「まったく、もっと盛り上げる事を言えんのか!こいつめ!」

 まるまると太った体形の声の大きい奴はどこかで見た事があったが、どこかまでは覚えていない。
 恐らくこっちの貴族なのは間違いないだろう。

 聖女は首輪をつけられボロ服を着ている奴隷にしか見えない。
 服もさることながら、肌も所々汚れたままで、何日も風呂に入っていない様子。
 歳は12と言った頃合いだろうか。
 身長は顔立ちに少女らしさがあるが、胸だけはしっかり育っている。
 その胸を悪戯気味に揉んでは、聖女が我慢するという状況。
 聖女に酒を注がせるだけならともかく、やりたい放題の人間に腹が立ってきた。

 まるまると太っている奴が話している相手は、服装からも海軍の提督と言った感じの人物だった。
 落ち着きや年齢からもその様な感じなのだろう。
 提督は地図を広げ、まるまると話すのだが聖女は床に座らせたままだった。
 そして、その聖女の眼差しは俺をじっと見ている。

「もしかして、俺が見えるのか」

 小さくコクリと頷く。
 視えるだけでなく声が聞こえる事にも驚いた。

「可能なら逃げたいか?」

 少し涙ぐみ、強く頷く。
 それだけこの状況が辛いのだろう。

「じゃあ俺について来い、これに乗れ!」

 少し震えながら尻尾に手をかけようとするが、まるまる太った奴が聖女を蹴り飛ばした。

「痛いっっ」

「あー、コイツはもういらないじゃないか?今日の所は使っても・・・・いいよな?提督さんよ」

「平民、それも乞食を抱くとは、些か趣味が悪いな。勝手にするがいい、と言いたいところだが、ここは逢引部屋ではないのでな、陸に上がってから好きな所で勝手にするがいい。この船を汚す事は許さん」

「そうかよ・・・既に手後れだがな・・・」

 そう言うと、聖女に唾を吐きかけ、二人は再び地図を見ながら話し始めた。
 怯える聖女の姿は見てられなかった。

「兎に角、これに捕まれ、こんな状況から助けてやる」

 そう言うと、聖女は尻尾を掴んだ。
 小さな小さな尻尾を掴んだところでどうにもならないとでも思ったのだろう。
 握ると同時に少しほほ笑んだ顔は諦め顔だった。

 そんな状況で終わるなんて冗談じゃない。
 尻尾と俺はそこから上空に浮遊した。
 尻尾を掴んでいる聖女も例外ではない。
 必死に尻尾を掴み、空中に浮いている事に恐怖している様だったが、ぶら下がっている状態というのは辛いだろう。

「少し、手を放してくれるか?」

「落ち・・・」

 そう言った途端に尻尾は大きくなり、人が乗れるサイズになった。
 落ちかけた聖女を拾い上げ、そのまま飛び去ろうとする。

「聖女が宙に浮いてるだと!」

「おい!何処に行く気だ、魔法兵!聖女を撃ち落とせ!傷つけても構わん、生きてればいい!」

 魔法兵と魔法使いの違いが分からんが、とにかく魔法で攻撃してきた。
 そんな攻撃が当たる訳もなく、俺達は鮮やかな回避でその場を後にした。
 飛んでいると聖女は目をまるまるとして遠くを眺めていた。
 それは恐らく初めて空を飛んだ事に感動でもしているのかもしれない。

「飛んでる・・・飛んでるよ!!」

「そうだな、初めてか?」

「うん!はじめて!!夢かな、夢じゃないよね?」

「あー・・・多分、夢じゃない」

 俺は夢の中みたいなものなのだが、これが夢ではない事は知識が裏付けている。
 必要に応じて精神だけで動けて、体を休める事が出来るのは竜族の特徴。
 そもそもあの大きな図体を動かさないと何もできないのが不便だからと、そういう進化に至ったという。
 高位のドラゴンともなれば複数の精神体を操作し、さながら平行思考を可能とするそうだが知識だけしかないので現実味が欠けて想像すらできない。
 実際、今のこの状態ですら初めての事で現実感がないから、もしかすると夢かもなんて思ってしまう。

「ところで、どうして俺の事見えるんだ?あ、姿がちゃんと見えてるのか?」

「どうしてかは分かんない、姿はぼんやりとだよ、ちゃんとした姿、あるんだよね?」

「ああ、あるよ、あんま期待するなよ」

「・・・声変わり前の男の子かな・・・ふふ、楽しみ」

「うん?なんか言ったか?」

「ううん、なんでも」

 ふと、眼下に敵艦が視えてきた。
 敵の旗艦が含まれていない方の船団だ。
 そして、ちょっとやってみたい事が出来てしまう。

 *

「そうだ、ちょっとだけ、一人で宙をさ迷う事になってもいいか?ちゃんと受け止めるから」
「うん、信じる」
「よし、ちょっと上空に行くよ、そのあと俺は急降下して、眼下の船団を潰してくる。それが終わったら受け止める」
「そんな事できるんだ、すごいっ」
「ふふ、上空から眺めててくれよな」
「うん!」
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