ドラゴニック・ブラッド ~竜騎士だった俺の転生先は死んだ公爵令嬢だった。令嬢なんて面倒くせえ!勝手気ままに生きてやる!~

なのの

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6.モルバーン学園(二年生編)

6-14.廃墟ダンジョンにて

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 ダンジョンに潜って暫く経過した頃、高所から視線を感じるようになっていた。
 思わず「またか」と口に出してしまうが、彼らゴブリンのテリトリーなのだから当然の事ではある。

 兄以外は女ばかりのパーティって事で、あまり危険な目には遭って欲しくない。
 エミリーみたいなトラウマになっては事だから、休憩したいと言っては尻尾を飛ばして遠隔で始末して回った。
 私が最年少なせいか、皆一様に私を囲むように動く。
 真ん前に兄、右前にウェンディ、左前にサーシャ、後にリリーとエリーといったフォーメーションだ。
 勿論、私は暴れたくて仕方がないのだが、皆の顔を立てる為にも少し大人しくしておいた。

 1フロア目を歩き疲れた頃、ボス部屋が現れた。
 ルグランジ地下迷宮と違って1フロアがかなり狭いという印象だ。
 兄が意気揚々と扉を開けると、中から剣が振り下ろされた。
 ウェンディが咄嗟に受け止めて、兄を守ったが非常に危ない所だった。

「油断しすぎよ!」

「す、すまない」

 そんな兄を見て、まるで兄が姫でウェンディが勇者のように見えてきた。
 それが少し面白く、ニヤニヤしながら見ていると兄をウェンディがフォローし始める。

「ボス部屋に入った途端に攻撃するなんて思わないよね」

「そんなの聞いた事がないのだわ」

 当然ながら私もそんなのは知らん。
 だが、ボス部屋と言えば、全員が入って入口が閉まるまでボスが出没しなくて安全というイメージがある。
 その先入観を逆手に取った攻撃だとすれば、一筋縄でいかないボスかもしれないと考えた。
 その敵だが不意打ちを受け止められた事に、動揺したのか一旦距離を取った。
 ずる賢そうな表情をする狼が二足歩行する大型動物タイプの魔物で、大きな武器を持っている。
 名は確か、トリックウルフだっただろうか。
 少しだけ珍しいモンスターではある。
 知恵が働く敵であると考えると、ちょっとワクワクしてきのだが、私が前に出ようとすると三年の3人が邪魔をした。

「みんな、行くぞ!」

「「はい!」」

 兄が強化魔法を唱え終わるとウェンディが特攻、サーシャが攻撃魔法を詠唱を始めた。
 私がウズウズしているのを双子が制止する。
 兄の成長を見届けろとでもいうのだろうか。

「たぶん、カロリーナ様の考えている事は外れているのだわ」

「そうなの。あれはメインディッシュではないのね」

 ボス部屋に入ってすぐには気づかなかったが、ボス部屋の壁と言う壁に何かがうずくまっている。
 これはもしや───

「ボス部屋でモンスターパラダイスが発生しているという事か・・・」

 思わず口角を上げてしまった。
 ボス部屋でこんな事が起こるなんて予想だにしなかった。
 奇想天外で面白いじゃねえか!

 ドワーフに打って貰った刀を斜めにか構えたと同時に壁際の敵を片っ端から切り捨てた。
 流れるような様な剣筋と俊足を生かし、次々と魔物を葬った。
 あまり獲物を取ってはいけないと剣技は使わなかったが、そんな心配は必要無かった。
 双子も負けじと壁際を逆回りで殲滅して行く。
 そして壁際の最後の一匹を双子と私で同時に切り裂き、立ち止まる。
 三人でお互いの戦果を称えるようにアイコンタクトをした。
 清々しい気分だ、私はこういうのを求めていたのだよ。

 また、時を同じくしてトリックウルフを三年生が退治した。
 壁際とは異なり、そこそこ強かったようだが、それに苦戦するのはまだまだとしか思えない。
 どちらも、ちょっとした準備運動になった程度だろう。

 敵を一掃し、コアを破壊してボス部屋クリアかと思ったが、そうではないようだ。
 その時点でようやくボス部屋の入口が閉まった。
 要するに今までのはただのモンスターパラダイスで、今からボスが登場と言う訳だ。
 だが、モンスターパラダイスのコアを潰せばセーフティーエリアが展開されるはずが、それは無かった。
 きっと、ボス部屋だから例外的な物なのだろう。
 ちなみにコア破壊報酬は種だったが、連戦の為、何も考えずポケットに押し込んだ。

 固唾を飲み、部屋の中央あたりからどこかに抜ける風圧に押される中、何かが現れた。
 全員が武器を構えて準備する。
 だが、風がやむと同時に霧が濃くなり視界を封じられた。
 全員の姿が見えなくなって、気分が高揚してきたところに足元がなくなる感覚──

 それは実際に床が抜けて落下していた。
 それほど高くないにせよ、建物の3階分くらい落ちた気がする。
 そして、霧は晴れていたが敵の気配は二つに増えていた。
 敵は、ジャイアントメイジという巨人の魔法使いに、巨大な昆虫系魔物、ジャイアントレディーバグだった。

 ジャイアントメイジはジャイアント族なだけあって巨大で、前世の私でも掌に収まる程だ。
 本来であればその大きな体に蓄えた膨大な魔力で面倒な魔法を同時詠唱して攻撃してくる。

 ジャイアントレディーバグはまんまるとした容姿で防御態勢になるとどんな攻撃も跳ね返し、攻撃時には背中の10の斑点を様々な色に変色させ、それを見た者の自律神経を狂わせ、その隙に捕食するといった魔物だ。

「みんな、大丈夫か!?」

「ブレイク様とサーシャが足を捻ったようです」

 二人の事をウェンディに頼み、問題なく着地した双子と私対処する事とした。
 それにしても、ウェンディはなかなか頼れる奴だ。
 兄の嫁に押すのも悪くないかもしれない。

「リリー、エリー、ビーストを任せていいか?ジャイアントメイジを瞬殺したらすぐに応援する」

「瞬殺とは豪胆だわ」
「自信過剰、油断禁物なのね」

「メイジがメイジとして動かなければ、それはただのジャイアントだからな」

 ジャイアントメイジは巨大な杖を振り下ろして攻撃してくる。
 ヘイトリングのお陰で敵が魔法を使ってこないのは都合が良いのだが、ジャイアントとして物理攻撃を仕掛けてくる方が面倒に思えた。
 それは巨大な体を使った純粋な暴力。
 本来であれば、それはそれで脅威なのであろう。
 だが、私にとってはただ標的が大きい敵でしかなかった。

あがなええ、忌むべき世界に覇を唱えよ『高速剣技・彼岸時化ひがんじけ』!」

 踏みつぶされないよう気を付けて、ひたすら打ち込んでダメージを与える。
 まるで嫌がらせをするかのように足元ばかり攻撃する。
 ジャイアント系の倒し方は足元をひたすら攻撃して、立てなくなって蹲ったところに止めを刺すのが一般的だ。
 今となっては尻尾を使って空を飛べるのだから、人目さえなければ直接弱点を攻撃できるのだが、それは少しズルしていると言われそうでやめておいた。
 ジャイアントメイジの足首を骨ごと貫かれ、バランスを崩して倒れてくる。
 恰好の的となった弱点である顔面が手の届くところに来たのだから、後は剣技をぶち当てるだけだった。
 そんな状況で、昆虫の方は双子があっさり仕留めてしまった。
 ボスなのに何とも呆気ない結末だ。
 そしてここのボス2体の報酬は、どちらも種だったが兄の事が気になってポケットに突っ込んでしまった。

 此処のダンジョンのボス部屋の奥にもセーフティエリアが存在した。
 そこで、兄とサーシャの手当てをする事にする。
 ここで回復する方法だが、聖女の適正がある私の出番となる。
 あまり気乗りはしないのだが、祈りを捧げて治療する。
 流血があるならともかく、足首の捻り程度なら私でもどうにかなるのだ。
 ちょっと時間はかかるのはお恥ずかしい限りだ。

 *

「今のはもしかすると、それぞれ、1フロア目と2フロア目のボスだったんじゃないか?」
「2フロアのボスの同時攻撃って反則よね、過去の攻略情報では普通の単独ボスだったハズだけど」
「ウェンディも知らないのか。だが、こうなると次は3フロア目か・・・モンスターパラダイス目当てなら、3フロア目は行き過ぎかもな」
「ですね、ここからは1フロア目を目指しましょう、ボス部屋だったけど一応、モンスターパラダイスの発生は確認できたわけですし」
「ここにもリールさえあればなぁ・・・」

 ※リールはダンジョン脱出用の安価な魔導具だが、対になる戻り先に設置する巨大な魔道具が非常に高価で今回は間に合わなかった。
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