エーデルワイス

鳩の唐揚げ

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「あぁ~、あちぃ~。」

今は8月半ば。
そう半ばだ。もうとっくに夏休みだ。なのに何故俺は制服を着て駄菓子屋のベンチでアイスを食べているんだろう。
テストで赤点を回避していれば、今頃は水着を着てヒャッホイとなっていただろうに…。
あぁ。

「暑い。すごく暑い。ちくしょう。」

そんな事を考えながら憂鬱な夏休みを送っている俺こと高城祐一は、何処にでもいる唯の一般人だ。この話の中でもきっとモブキャラだろう。主人公気質でもなければ、ずば抜けた超能力などは無い…いや、あるといえばあるのだが。まぁ、主人公であるのならこんな時期に制服なんて着ていないだろう。

「なんだい、にいちゃん泣いてんのかい?
これでも食って元気だしな!」

優しそうな駄菓子屋の店主は、そう言ってシャリシャリ君を俺に差し出した。
こんな底辺の人間にそこまでしてくれるのだから本当に優しい人なのだろう。でもまだ一本目の半分も食べていない。

(嬉しいけど、溶けちゃうよぉ…。涙が止まらないよぉ。)

そんなこんなで今日も祐一は平和に生きている。そろそろモブは退散して、主人公を出そう…と思う。

その少女は俺のいる駄菓子屋の向かいにある田んぼに居た。
主人公に向いていそうな、こんな田舎には不釣り合いな、綺麗な白髪。その白い髪は不気味に見えるけれど、美しくも見える。例えるなら、吸い込まれそうな美しさというべきか。歳は、10歳くらいだろうか、小柄な少女だ。
その場違いな風貌を持つ少女に気づいた俺は思わず駄菓子屋の店主に話しかけた。

「ねぇおっちゃん。あの子ってここら辺の子?俺、最近引っ越してきたばかりだからわからないんだけど。」
「え?どのこだい?」
「ほら、あそこにいる女の子。」
「ん?誰もいないじゃないか。」
「え…あーごめん見間違いだったみたい。」
「?、そうか。」

(あんな見た目だから勘違いしてしまった。なんだ、あの子…)

「…人間じゃないのか。」

薄々気づいてはいた。あの歳で髪の白い人間なんて早々いない。最近は人の形をしたものは見ていなかったので、勘違いしてしまった。
超能力のことで「あるにはある」といったのはこのことがあったからだ。

俺は子供の時から普通は見えないものが見えた。妖怪や幽霊とか。大抵この手の人は虐められていたり浮いたりしているが、よくある見える人とは違い、虐められてはいない。祐一の家系は代々見える家系らしく、「あの子たちはみんなには見えないから気をつけなさい。」と、死んだ祖父から教わり、変な目で見られることはなかった。

「人間だったら、間違いなく主人公だったのにな。」

俺はあんまり妖怪とは関わりたくない。
妖怪に関わると、ろくなことがないからだ。自分が関わったことがあるわけではないけれど、そういう話をよく聞く。
最近ある学校のクラスで起きた集団失踪事件。
その事件に、従姉妹である父ちゃんの兄の娘が巻き込まれ、もう何日も見つかってないらしい。歳は俺と同じくらいだった気がする。
警察は誘拐だなんだと言っているが、高城家では、「妖怪が原因だ。」ということになった。父ちゃんは俺を妖怪と関わらせたくないらしく、その件には関わらないと言ったので、今はどうなってるかわからない。

それにしてもあの子ここで何をしてるんだろう。関わりたく無いとは言ったが、なんだかあの子の事は気になった。
散歩をしているようにも見えるが、何かを探しているようにも見える。

「あ…。」

目があってしまった。
だか、少女はこちらに興味がないらしく目を背けた。
気にはなったが、向こうも目を背けたのだから、このまま気にせず家に帰ろう。もうすぐ暗くなってくる頃だ。

「おうふ…」

そう、俺は気づいてしまった。
あの少女を見つけてからもう何分もたっている。下を見てみると無残に転がっている溶けたシャリシャリ君。しかもこれは一本目だ。二本目のシャリシャリ君は…名前のようなシャリシャリという音をたてるようなものとは程遠い物になっていた。

「 …あたりだ。」

しかも二本とも。皮肉だろうか。
なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになり、今二本もらう気にはなれない。

(ごめんなさい。優しそうな店主のおっちゃん。)

複雑な気持ちになりながら、俺は駄菓子屋を後にした。

「あ、そうだ。ここから近いしあそこに寄るか。」

もうとうちゃんが死んでしまってから一年になる。とうちゃんの墓はここから近かったので、寄って帰ることにした。

お墓に着いてからいろいろと話した。
とうちゃんが死んだ後のことを。
話終わる頃にはもう空がオレンジ色になっていて、遠くからカラスの鳴き声が聞こえてきた。

お墓から家までは5分とかからないで帰ってこれた。いつもは駄菓子屋方面だと遠回りになると思い、他の道から帰っていたがあまり変わらないようだった。夏休みに学校に通うのは結構苦痛なので、これからは駄菓子屋に寄って帰るのも良いのかもしれない。

「お、祐一今帰ったのか。」
「あ、父ちゃん。」

家に帰ると、駐車場には車が停まっていた。ちょうど父ちゃんも帰ってきたところだったらしい。
え?お前の父ちゃん死んだんじゃって?
さっきのは去年死んだカブトムシの十ちゃんだ。掛かったなアホが。

「何にやにやしているんだ?今日のご飯はお前の好きなハンバーグらしいぞ、はやく着替えて降りて来なさい。」

よし、はやく着替えてこよう。


「こら祐一、もうご飯出来るのに何食べてるのよ、かき氷?」
「シャリシャリ君だったもの。」

数秒で着替えてリビングに来た俺は、晩ご飯ができるまでさっき溶けてしまったシャリシャリ君を罪悪感を感じながら食べていた…
飲んでいた。


『…〇〇市の〇〇高校のとあるクラスで起きた生徒失踪事件ですが、またもや生徒が…』


「…………」

テレビのニュースで従姉妹の高校の事が報道されていた。
どうやら失踪したのは従姉妹だけじゃないらしく、もう何人も失踪しているらしい。

(…やっぱり、妖怪系の仕業なんだろうか…)

俺がテレビのニュースを見ていることに気がつくと、父ちゃんはチャンネルを変えた。妖怪関係の話はあまり聞きたくないらしい。

「祐一、ご飯出来たから運ぶの手伝って
ー!」






「ごめんな祐一、転勤のせいでこんなことになって。」

父ちゃんは夏休みの補習の事を自分せいだと思っているらしく、ご飯を食べる手は止まっている。ただ俺が頭が悪いだけなのだが。少し気まずくなってくる。

「べ、別に父ちゃんのせいじゃないし。ほら、もともと俺って頭悪いし…」
「そうよ、あなた。祐一はもともと頭が悪かったじゃない。」

否定はしないが、なぜ俺が言ったことを繰り返した母上よ。泣くぞ。

「そ、そうか。」

納得…はしていないようだが、やっとご飯を食べ始めた。

やはり母ちゃんの作るハンバーグは美味しかった。素晴らしく美味しい。でも母上よ。これは煮込みハンバーグだ。俺は煮込まないのが好きなのだ。
いや、これは父ちゃんが悪い。父ちゃんがお前の好きなっていうから期待してしまったのだ。


まぁ、凄く美味しいけども。




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