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復讐する予定の相手とのレベルの違い
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クーシーをベッドに転がしたままシュウジはゆうぜんと身体を洗う。朝食をとるべき時間がとっくにすぎているからか大きな腹の音がした。
空腹を満たし、しばらくクーシーをながめていたが結局シュウジは彼女を殺さず、メイのいる小屋へ移動をする。
「おはよう……ございます」
戻ってきたシュウジと小屋のほうを交互にメイが見ていた。
「その荷物はどこから?」
「知り合いに預けておいた荷物を返してもらった」
シュウジのそんな返事を聞くと、メイは彼を疑うようなことはなにも言わずに笑顔をつくる。
「その知り合いさんはとても良い人のようですね。悪人を自称するシュウジさんがそれだけの高価そうなものを預けるほどなんですから」
「まあな。長い付き合いになるとは思う」
昨夜のクーシーとのお楽しみでも思い出したのかシュウジが自分の唇を舌でなめていた。
「それでメイは復讐に付き合ってくれるのか?」
「最後まで付き合えるかは分かりませんが、男性がいたほうが円滑にすすむ場合もありますので」
打算的ですかね、というメイのセリフにシュウジは大きく首を横に振っている。
「それよりもおれに襲われる心配をするほうが」
「そのときは……わたしの見る目がなかったのだとシュウジさんに楽しませてもらうことにします」
「やっぱり苦手な考えかただな」
今のシュウジの言葉は聞こえてなかったからなのかメイは気の抜けた顔つきをしていた。
「ヨウインの力を高めるアイテムですか」
メイが隣を歩くシュウジの質問にそう答えた。
「ああ。確か、昨日そんなアイテムもあるみたいなことを言っていた記憶があるんだが」
昨日の記憶をさかのぼっているのかシュウジからもらった干し肉をかじりつつ声をあげているメイ。
「ガントのことですかね? この辺りで一番大きな国であるフミダインで近々、武術大会のようなものの優勝商品だったはず」
「誰でも参加できるのか」
「はい。お祭りみたいなものですからね……運営の方々もにぎやかなほうが良いと思っているかと」
ですが、それだけのとてつもない実力があるのにまだ求める必要がありますか? とメイが聞く。
「ある」
「そうですか。復讐をしたい相手はさらにとてつもなく強いようで」
「女神さまだからな」
「ほう。それは大変ですね」
思っていたほどのリアクションではなかったようでシュウジが少しだけ残念そうな表情に。
フミダインまでの道中、自然に生える特殊な草を見つけるたびにメイはむしっていった。
「それが薬になるのか?」
「ええ。この辺りの草は化膿どめとしてわたしたちの間では重宝されています」
「だったら勝手にむしるのはダメなんじゃないか」
「大抵の方々はこの草が化膿どめになるという知識がないのでムダなものと判断しているようです」
地面に生える化膿どめになる草を少しだけ残してメイは再び歩きはじめた。先ほども彼女が同じようにしていたな、とでも思ったのかシュウジが来た道を振りかえる。
「その化膿どめは高く売れそうだな」
メイを追いかけながらシュウジがそう口にした。
「あー、そうですね。化膿どめとしてかなりの效果を発揮するので……でも薬にするまでの手順がわりに合わないと思います」
「商売にするつもりはさらさらないよ」
「実はとても手順は簡単です。教えましょうか?」
「いや。そういうのをつかう必要のない体質だし」
「知識は一つでも多いほうがなにかと便利ですよ。シュウジさんが誰かを助けたいと思ったときに必要になるかもしれませんから」
やんわりと意見を押し通すよな。はっきりとそう言っているような表情をシュウジがしたが、メイは笑顔のままだった。
化膿どめになる草の他にもさまざまな種類の植物の知識をメイから聞かされながらフミダインに到着をした。外壁にそって歩き、出入り口であろう門を二人は見つけた。
重厚そうな西洋風の甲冑を身につけた門番たちの横を通りぬけて、目の前の光景を見てかシュウジが動きをとめる。
「すり鉢みたいなところだな」
「わたしは蟻地獄に見えましたね、はじめてこの国を見下ろしたときは」
「メイの例えだとその底に住んでいる偉い方が人間じゃなくなるのではないかと」
巨大なドリルでえぐられたような地形の底に建てられた城をシュウジが指さす。軽く笑うだけでメイは弁解のようなことをしなかった。
「それにしても、この国の偉い方はかなり独創的なセンスをもっているようだな」
「わざわざこういう地形にしたわけではなく再利用をしたというほうが正しいですかね。今でこそ落ちついてますが、かつてこの場所で神さま同士の闘争があったとかなかったとか」
そのキズアトと表現をするべきでしょうか、その神さま同士の闘争でつくられた大きな穴にリーダーはこの国をつくったらしいです。
と国の歴史について話すメイの隣に立つシュウジが身体を震わせていた。
「シュウジさん、寒いんですか?」
「いんや……武者震いみたいなものだよ。とんでもない相手を殺さなければならないんだと再確認させられたものでね」
空腹を満たし、しばらくクーシーをながめていたが結局シュウジは彼女を殺さず、メイのいる小屋へ移動をする。
「おはよう……ございます」
戻ってきたシュウジと小屋のほうを交互にメイが見ていた。
「その荷物はどこから?」
「知り合いに預けておいた荷物を返してもらった」
シュウジのそんな返事を聞くと、メイは彼を疑うようなことはなにも言わずに笑顔をつくる。
「その知り合いさんはとても良い人のようですね。悪人を自称するシュウジさんがそれだけの高価そうなものを預けるほどなんですから」
「まあな。長い付き合いになるとは思う」
昨夜のクーシーとのお楽しみでも思い出したのかシュウジが自分の唇を舌でなめていた。
「それでメイは復讐に付き合ってくれるのか?」
「最後まで付き合えるかは分かりませんが、男性がいたほうが円滑にすすむ場合もありますので」
打算的ですかね、というメイのセリフにシュウジは大きく首を横に振っている。
「それよりもおれに襲われる心配をするほうが」
「そのときは……わたしの見る目がなかったのだとシュウジさんに楽しませてもらうことにします」
「やっぱり苦手な考えかただな」
今のシュウジの言葉は聞こえてなかったからなのかメイは気の抜けた顔つきをしていた。
「ヨウインの力を高めるアイテムですか」
メイが隣を歩くシュウジの質問にそう答えた。
「ああ。確か、昨日そんなアイテムもあるみたいなことを言っていた記憶があるんだが」
昨日の記憶をさかのぼっているのかシュウジからもらった干し肉をかじりつつ声をあげているメイ。
「ガントのことですかね? この辺りで一番大きな国であるフミダインで近々、武術大会のようなものの優勝商品だったはず」
「誰でも参加できるのか」
「はい。お祭りみたいなものですからね……運営の方々もにぎやかなほうが良いと思っているかと」
ですが、それだけのとてつもない実力があるのにまだ求める必要がありますか? とメイが聞く。
「ある」
「そうですか。復讐をしたい相手はさらにとてつもなく強いようで」
「女神さまだからな」
「ほう。それは大変ですね」
思っていたほどのリアクションではなかったようでシュウジが少しだけ残念そうな表情に。
フミダインまでの道中、自然に生える特殊な草を見つけるたびにメイはむしっていった。
「それが薬になるのか?」
「ええ。この辺りの草は化膿どめとしてわたしたちの間では重宝されています」
「だったら勝手にむしるのはダメなんじゃないか」
「大抵の方々はこの草が化膿どめになるという知識がないのでムダなものと判断しているようです」
地面に生える化膿どめになる草を少しだけ残してメイは再び歩きはじめた。先ほども彼女が同じようにしていたな、とでも思ったのかシュウジが来た道を振りかえる。
「その化膿どめは高く売れそうだな」
メイを追いかけながらシュウジがそう口にした。
「あー、そうですね。化膿どめとしてかなりの效果を発揮するので……でも薬にするまでの手順がわりに合わないと思います」
「商売にするつもりはさらさらないよ」
「実はとても手順は簡単です。教えましょうか?」
「いや。そういうのをつかう必要のない体質だし」
「知識は一つでも多いほうがなにかと便利ですよ。シュウジさんが誰かを助けたいと思ったときに必要になるかもしれませんから」
やんわりと意見を押し通すよな。はっきりとそう言っているような表情をシュウジがしたが、メイは笑顔のままだった。
化膿どめになる草の他にもさまざまな種類の植物の知識をメイから聞かされながらフミダインに到着をした。外壁にそって歩き、出入り口であろう門を二人は見つけた。
重厚そうな西洋風の甲冑を身につけた門番たちの横を通りぬけて、目の前の光景を見てかシュウジが動きをとめる。
「すり鉢みたいなところだな」
「わたしは蟻地獄に見えましたね、はじめてこの国を見下ろしたときは」
「メイの例えだとその底に住んでいる偉い方が人間じゃなくなるのではないかと」
巨大なドリルでえぐられたような地形の底に建てられた城をシュウジが指さす。軽く笑うだけでメイは弁解のようなことをしなかった。
「それにしても、この国の偉い方はかなり独創的なセンスをもっているようだな」
「わざわざこういう地形にしたわけではなく再利用をしたというほうが正しいですかね。今でこそ落ちついてますが、かつてこの場所で神さま同士の闘争があったとかなかったとか」
そのキズアトと表現をするべきでしょうか、その神さま同士の闘争でつくられた大きな穴にリーダーはこの国をつくったらしいです。
と国の歴史について話すメイの隣に立つシュウジが身体を震わせていた。
「シュウジさん、寒いんですか?」
「いんや……武者震いみたいなものだよ。とんでもない相手を殺さなければならないんだと再確認させられたものでね」
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