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マイルドヤンキーみたいな国

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「そんなことよりもこの国で一番偉い方をリーダーと呼んでいいのか? 王とか皇帝なんだろう」
「シュウジさんの言うとおり正確な立場は皇帝ですが、ご本人がリーダーと呼ぶようにこの国が出身の同志たちに言っているらしいですよ」
「同志たちねえ」
 鼻で笑い、宿泊をできる場所をさがそうとしてかシュウジが歩きだした。
「皇帝ということはここだけじゃなくいくつかの国もまとめているんだな。そのリーダーさま」
「そうですね。昨日、わたしたちがお世話になった集落のケツ持ちもこちらがしていますよ」
「そのわりには貧しそうだったが?」
「シュウジさんがどう思ったかは分かりませんが、ああいう自然と調和するような質素な暮らしを望む方々があそこには住んでおります」
「メイはとても口が上手いんだな」
 とつぜんシュウジが立ち止まった。
「にしても、身体能力の高いやつならここからそのリーダーの住む城に殴りこめるんじゃないか」
「それは少し難しいですかね。落下防止もかねて、階層ごとに強力な結界がありますから」
 メイの説明を聞きおえると、シュウジは城のあるほうに落ちようとしたが。トランポリンをつかってとびはねたかのように結界にはばまれて彼女の隣に着地する。
「リーダーさまに会おうと思ったら一つずつ順番におりていくしかないわけね」
「まあ、フランクなリーダーなのでどんな旅人とも顔を合わせてくれるはずですが。目的はガントではなかったのですか?」
「その武術大会みたいなものに参加をさせてもらうんだからリーダーにあいさつするのは別にヘンでもないだろう」
「シュウジさんは意外と律儀なんですね」



 階層を順番におりていき甲冑の門番たちの目の前を四回ほど通りすぎたところで。
「あんなに強力な結界をはっているわりに門番たちはなにも言ってこないんだな」
 シュウジがそう言った。
「今日はフランクな門番さんが多いようですね」
「なんでもかんでもフランクって言葉で解決できると思わないでくれ」
 メイがなにかを隠していると疑っているのかその隣を歩くシュウジが彼女を見下ろす。
 シュウジの視線には気づいているようだがメイに動揺した様子はない。今日のホテルを見つけたようで彼女が走りだした。
「それでは、またあとで」
 にこやかな表情をつくりメイはホテルのフロントで受付をしてくれた従業員に大きく手を振る。
「シュウジさんも荷物を預ければ良かったのに」
「メイほど簡単に他人を信じられないんだよ。人相も悪かったしな」
「人相で性格などを判断するのは良くないですよ。もしかしたらあのいかつい顔の方は凄腕の料理人の可能性もないとは言い切れません」
「まずは、いかつい顔と判断するのをやめようか」
 シュウジのつっこみをスルーしたが、メイはにこやかな表情を変えないでいる。今の自分のセリフでなにかに気づいたようで彼が通行人の顔を確認。
「おれの気のせいかもしれないがここにいる連中のほとんどが人相が悪くないか」
「シュウジさんがそういう方々だけだと思っているからそう見えてしまうのです。ほら、あちらを見てください。ナイフで小動物を殺しそうな顔つきの方もいますよ」
「ぼけか?」
「わたしはいつだって真面目です」
 リーダーの住む城に辿りつくまでメイが通行人になん回か襲われたが全てシュウジがあっさりと退治した。
「やはりシュウジさんは良い人ですね」
「もしかしたら地味に口が悪いメイを差しだすほうが世界は平和になる確率が高そうな気がする」
「そうすることができないからこそシュウジさんはわたしに善人だと思われているんだと」
「勉強になりますな」
 無数の拳をくっつけたような城の前に立つ甲冑の門番たちにとめられることなく素通りできて不思議なのかシュウジが首をかしげる。
「ちょっと待て。さすがにおかしくないか? この先にリーダーがいるのに警戒心なさすぎるだろう」
「身内だと勘違いされているんでしょうね」
「身内? おれがリーダーの息子だとでも」
「血縁関係ではなくグループみたいなものですよ。えーと、この場合は国民ですかね」
 この城に来るまでに遭遇した人相の悪い方たちを思い出してか納得したようにシュウジが軽く笑う。
「わたしが言えなかった理由のほうは分かっていただけましたか」
「次からは遠慮せずに言ってくれ」
「シュウジさんにそんなに酷いことは言えなさそうですが、努力はしてみます」
「話は変わるが。それだけ身内同士の絆っぽいものが強いとなると他の国との取引なんかは機能をしてないんじゃないのか」
 メイが感心したように口を大きく開けた。
「気になりますか?」
「知らないのなら別にいい」
「シュウジさんの考えているとおり他の国との取引は苦手なようですが独自のやりかたで克服している印象が強いかと」
「合併とかか」
「どちらかというと仲間になるですかね。身内同士のつながりがとても強いのは本当のことですし」
 そうするための強引なやりかたについてメイから聞くつもりはないのかシュウジが口を閉じる。
「確か……最近もナイネナン森の辺りで特殊なモンスターが出たかもしれないという噂だけでハンターを三人ほど派遣させてましたよ」
「太っ腹な話で」
「ええ。特殊なモンスターではありませんでしたが密猟者はいたらしいので結果オーライだったとか」
「その密猟者はどうなったんだ?」
「アテナシ収容所にいるはず、悪人じゃなさそうなシュウジさんには関係のない話ですよ」
 これから、やろうとしていることに影響をするであろう情報を聞かされてかシュウジは面倒くさそうな顔をしていた。
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