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すなお問題①
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「ハチの仮説が本当なら、一番疑わしいのはニイだよな」
エビフライを食べ終えて合掌していると、黙っていたゴウがようやく口を開いた。
「今回の事件の根幹は人間になりたい欲望。それが一番強いのは今のところニイだからな。シイも共犯として誘う可能性も高そうだし」
人間に憧れて真似事をしていてアンドロイドにはにないはずの感情みたいなものを振りかざすニイだからこそシイも御しやすいと考えた。
「このシェアハウスのような生活が嫌になり、人間欲を建前に壊している可能性もないとは言えない」
シイが人間に憧れていたのは確定だとしても犯人まで同じだと一括りにするのは判断が早すぎる。
ナナの意見にゴウも賛成のようで頭を上下させていた。
「シイの件はおいといてもイチを壊した犯人候補としてだけなら、ニイが一番怪しいんですよね」
「わたしとハチがファッションルームに行くまで、二人きりだったし」
「だがよ、わざわざ二人きりの時にイチを殺すか。犯人に嵌められたより疑われるほうが確率は高そうだけどな」
「その辺りも含めて三階に行く前にサンとロクにもアリバイを確認しておこう」
ナナ的には、今のところ考えられる答えが出尽くしたと思ったようで椅子から立ち上がる。
「そういえばイチが壊されたのでまたグループ分けをするんでしょうか」
サンの部屋に向かう途中でわたしがそんな質問をすると、ゴウとナナは同じような種類の笑みを浮かべた。
「ニイが反対するからもうできない」
「シイの時と違ってイチが壊された時は近くにニイがいたからね」
「犯人候補ナンバーワンだからですか」
ニイとタッグを組む相手は、自分が壊されるかもしれないと恐怖することになるからか難儀な話だ。
「もしかしたらハチとだったら」
「ナナ、お前と同じグループだったんだから結果は目に見えていると思うぞ」
「言われてみればそうだね。わたしがなにかしらを吹きこんでいると邪推されるのが関の山か」
「遅かれ早かれ、グループ分けは破綻していたからそこまで気にする必要もない。それに」
素早く後ろに回りこんできたゴウがわたしを抱きしめる。歩きづらいが動けないほどではない。
「今更わたしが加入するのを反対しないよな」
機嫌が良いようで、普段よりもゴウの言葉遣いが女の子らしくなっている気がした。
「味方だったら一人でも多いほうが良いんだが」
「ナナが望むなら今からでも敵対をしてやろうか、人間になるのも悪くなさそうだ」
横槍を入れるのはあまり良くないけれど。
「ゴウは犯人じゃないと思いますよ」
「わたしをフォローしてくれるのか、ハチ。お礼にキスしてやるよ」
「ナナ、助けてください」
「言ったそばからわたしに助けを求めないでくれ」
サンの部屋の扉の前に立つナナが、ゴウにキスをやめるように説得をしてくれた。
「ハチがゴウを犯人じゃないと考えた理由は」
「話せば長くなるので、明日の朝まで待ってもら」
直感なんだねとナナにあっさりと見破られる。
「わたしの勘はさておき、ゴウの行動を監視できる立場も悪くないと思います」
「同意するけど。本人の前で言わないでほしいね、お互い様かもしれないが」
うっかりゴウの整った顔を見上げてしまった。
「心配そうな顔をしなくてもハチは疑ってないぞ」
ただしハチという名前の最強の盾を利用しているナナは別だが。ゴウの視線はこちらに向いているが彼女を警戒していてか目つきが鋭い。
「この館のアンドロイドの耐久性は同じはずなのでわたしだけが特別に頑丈でもないかと」
「隠れ蓑のほうが分かりやすいか。純粋無垢なハチを自分のために利用している可能性が高いとわたしはナナを疑っている」
「ナナはへそ曲がりですが、良い人の方向に傾いていますよ」
善人だと思っている奴を捻くれ者と言ってやるなよなとゴウが頭の上からつっこんできた。
「こちらも監視できるし、個人的にはゴウの意見は参考になるから。ぜひとも加入をしてもらいたい」
「わたしにおべっかは必要ねーよ。ハチと同じグループになれればナナが犯人でも問題はないし」
「暴力反対だよ、ゴウ」
「とは言っても最終的に暴力沙汰になるのはナナも分かっているんだろう。この館のアンドロイドの数が半分になったら、さらに現実味を帯びてくるぜ」
例外はいるが、手を組める相手は多いほうが生き残りやすいしさ。ゴウが顎でわたしの頭のてっぺんをぐりぐりする。
「いずれにしても腕っぷしは必要になってくるか」
なんやかんやで同盟が成立したらしくゴウとナナが力強く握手をした。
「さっそくで悪いがロクもグループに入れてやってくれないか」
「こちらは別に問題ないが本人が嫌がるんじゃないか。ハチがいるのなら、なおさら」
「なんでだよ、ロクもハチを気に入っているぞ」
ゴウの言葉にナナとわたしは戸惑い、まばたきをすることさえも忘れてしまう。
「ハチもロクに本気で嫌われているとか勘違いしているのかよ」
「嫌われようと努力しているつもりはないですが」
シイが壊された日の廊下でのこと以前によくよく思い出してみれば、ロクから避けられている印象はあったような記憶がある。
「全く、わたしと二人で話している時みたいに素直になっていれば。変な誤解を与えなかったのに」
「ゴウも大変だね」
「ハチが共感してくれるなら分かるが、ナナに言われてもな」
話がまとまると、ナナがサンの部屋の扉をノックした。
チェーンロックをかけた扉を開けて、サンが隙間から顔を覗かせる。
イチが壊されたことを話して、シイの事件の日のアリバイなども聞いたが目立った反応や有力な情報はなかった。
「ニイから聞いたんだが、シイが壊された日に五階と六階の踊り場の辺りですれ違ったとか」
「どうだったかな。アスレチックから部屋に戻ろうとしていたはずだから、朝だと思うが」
サンがわたしのほうに視線を向けた気がする。
エビフライを食べ終えて合掌していると、黙っていたゴウがようやく口を開いた。
「今回の事件の根幹は人間になりたい欲望。それが一番強いのは今のところニイだからな。シイも共犯として誘う可能性も高そうだし」
人間に憧れて真似事をしていてアンドロイドにはにないはずの感情みたいなものを振りかざすニイだからこそシイも御しやすいと考えた。
「このシェアハウスのような生活が嫌になり、人間欲を建前に壊している可能性もないとは言えない」
シイが人間に憧れていたのは確定だとしても犯人まで同じだと一括りにするのは判断が早すぎる。
ナナの意見にゴウも賛成のようで頭を上下させていた。
「シイの件はおいといてもイチを壊した犯人候補としてだけなら、ニイが一番怪しいんですよね」
「わたしとハチがファッションルームに行くまで、二人きりだったし」
「だがよ、わざわざ二人きりの時にイチを殺すか。犯人に嵌められたより疑われるほうが確率は高そうだけどな」
「その辺りも含めて三階に行く前にサンとロクにもアリバイを確認しておこう」
ナナ的には、今のところ考えられる答えが出尽くしたと思ったようで椅子から立ち上がる。
「そういえばイチが壊されたのでまたグループ分けをするんでしょうか」
サンの部屋に向かう途中でわたしがそんな質問をすると、ゴウとナナは同じような種類の笑みを浮かべた。
「ニイが反対するからもうできない」
「シイの時と違ってイチが壊された時は近くにニイがいたからね」
「犯人候補ナンバーワンだからですか」
ニイとタッグを組む相手は、自分が壊されるかもしれないと恐怖することになるからか難儀な話だ。
「もしかしたらハチとだったら」
「ナナ、お前と同じグループだったんだから結果は目に見えていると思うぞ」
「言われてみればそうだね。わたしがなにかしらを吹きこんでいると邪推されるのが関の山か」
「遅かれ早かれ、グループ分けは破綻していたからそこまで気にする必要もない。それに」
素早く後ろに回りこんできたゴウがわたしを抱きしめる。歩きづらいが動けないほどではない。
「今更わたしが加入するのを反対しないよな」
機嫌が良いようで、普段よりもゴウの言葉遣いが女の子らしくなっている気がした。
「味方だったら一人でも多いほうが良いんだが」
「ナナが望むなら今からでも敵対をしてやろうか、人間になるのも悪くなさそうだ」
横槍を入れるのはあまり良くないけれど。
「ゴウは犯人じゃないと思いますよ」
「わたしをフォローしてくれるのか、ハチ。お礼にキスしてやるよ」
「ナナ、助けてください」
「言ったそばからわたしに助けを求めないでくれ」
サンの部屋の扉の前に立つナナが、ゴウにキスをやめるように説得をしてくれた。
「ハチがゴウを犯人じゃないと考えた理由は」
「話せば長くなるので、明日の朝まで待ってもら」
直感なんだねとナナにあっさりと見破られる。
「わたしの勘はさておき、ゴウの行動を監視できる立場も悪くないと思います」
「同意するけど。本人の前で言わないでほしいね、お互い様かもしれないが」
うっかりゴウの整った顔を見上げてしまった。
「心配そうな顔をしなくてもハチは疑ってないぞ」
ただしハチという名前の最強の盾を利用しているナナは別だが。ゴウの視線はこちらに向いているが彼女を警戒していてか目つきが鋭い。
「この館のアンドロイドの耐久性は同じはずなのでわたしだけが特別に頑丈でもないかと」
「隠れ蓑のほうが分かりやすいか。純粋無垢なハチを自分のために利用している可能性が高いとわたしはナナを疑っている」
「ナナはへそ曲がりですが、良い人の方向に傾いていますよ」
善人だと思っている奴を捻くれ者と言ってやるなよなとゴウが頭の上からつっこんできた。
「こちらも監視できるし、個人的にはゴウの意見は参考になるから。ぜひとも加入をしてもらいたい」
「わたしにおべっかは必要ねーよ。ハチと同じグループになれればナナが犯人でも問題はないし」
「暴力反対だよ、ゴウ」
「とは言っても最終的に暴力沙汰になるのはナナも分かっているんだろう。この館のアンドロイドの数が半分になったら、さらに現実味を帯びてくるぜ」
例外はいるが、手を組める相手は多いほうが生き残りやすいしさ。ゴウが顎でわたしの頭のてっぺんをぐりぐりする。
「いずれにしても腕っぷしは必要になってくるか」
なんやかんやで同盟が成立したらしくゴウとナナが力強く握手をした。
「さっそくで悪いがロクもグループに入れてやってくれないか」
「こちらは別に問題ないが本人が嫌がるんじゃないか。ハチがいるのなら、なおさら」
「なんでだよ、ロクもハチを気に入っているぞ」
ゴウの言葉にナナとわたしは戸惑い、まばたきをすることさえも忘れてしまう。
「ハチもロクに本気で嫌われているとか勘違いしているのかよ」
「嫌われようと努力しているつもりはないですが」
シイが壊された日の廊下でのこと以前によくよく思い出してみれば、ロクから避けられている印象はあったような記憶がある。
「全く、わたしと二人で話している時みたいに素直になっていれば。変な誤解を与えなかったのに」
「ゴウも大変だね」
「ハチが共感してくれるなら分かるが、ナナに言われてもな」
話がまとまると、ナナがサンの部屋の扉をノックした。
チェーンロックをかけた扉を開けて、サンが隙間から顔を覗かせる。
イチが壊されたことを話して、シイの事件の日のアリバイなども聞いたが目立った反応や有力な情報はなかった。
「ニイから聞いたんだが、シイが壊された日に五階と六階の踊り場の辺りですれ違ったとか」
「どうだったかな。アスレチックから部屋に戻ろうとしていたはずだから、朝だと思うが」
サンがわたしのほうに視線を向けた気がする。
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