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幽霊プログラミング①
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ロクの部屋へは北から移動することになった。
「北だったら、先にハチの日記を見たほうが効率的なんじゃないか」
「先に皆の安否を確認しておきたくてね。もしかしたらがあるだろう」
イチの死因も優先的に調べておきたいしさと口にしながらナナはシイの部屋の前を横切っていく。
「ロクは平気だって、頭電話もできないように設定してあるし。部屋に侵入をされない限りは安全だ」
前を歩くゴウがこちらに顔を向けてきた。
「なんだよ、珍しくご立腹のようだな。ハチ」
「どちらかというと納得がいかないという感じですかね」
ゴウがわざとサンをグループに入れなかったのはわたしでも分かる。
「サンの加入を邪魔した理由はなんでしょう」
「状況を戻したくなかったというより、犯人らしきアンドロイドを孤立させたかったが一番伝わるか」
「ニイが疑われるのはイチの件で分かりますけど、どうしてサンまで」
「ハチが涙を流したことを話した時にサンが怒っていたからだな」
冷たい視線のことか、個人的には怒りではなくてずるいと思われている感じがしたような。
「それにニイとサンが共犯の可能性もあるからゴウは邪魔をしたんじゃないかい」
「そこまで考えてないが、サンがニイの発言に合わせてそうだと思っただけだよ。わざわざアリバイがないのを証明する必要もないし」
わたしなりに納得をして頷いたつもりなのだが、ゴウが心配そうな顔をした。
「ハチ、素直なのは良いがよ。あくまでもそういう場合もあるぐらいにしておいてくれ」
「ゴウはこんな状況でもお人好しなんですね」
「ありがたい言葉だけど、この館にいる誰かが犯人なのは事実だ」
できることならサンが犯人じゃないと願いたいとゴウが祈るようなポーズをしている。
「誰も犯人じゃないのが一番良いのでは」
「ハチのほうが優しいじゃねーかよ。未だに外部犯がいるとか想像してくれていたりして」
「さすがにそんなことは考えていません」
とはいえイチの時みたいに泣きたくはならない。
「優しくないゴウはサンが犯人だと不都合があるんですか」
「変な判定はスルーするとして、サンが犯人なら今この館に生き残ったメンバー全員で協力しても返り討ちにされるからだよ」
「サンがそこまでの圧倒的な強さだとは」
ぬいぐるみを抱きしめないと眠れない体質だけが個性じゃなかったらしい。
「ナナなんか腕を千切られているしな」
「ゴウ、話を盛るのは良くないよ。腕相撲で神経を千切られてしまっただけさ」
こちらを振り向かないままでナナが口にする。
「嫌な昔話を思い出して気分が悪くなった。今日のところは部屋で休ませてもらうと」
「謝るって、気を悪くしないでくれよ。場を和ませようとしただけじゃんか」
自分の部屋に戻ろうとするナナの両肩を揉んだりしつつ、ゴウがなだめすかしていた。
「わたしにトラウマを植えつけるほどの武力に自信があるからこそ、サンは勧誘を断ったんだろうね。寝込みでも襲われない限り自分が負けるなんて想像すらしてないはず」
「ナナはサンを誘ってましたっけ。だったらわたしがゴウに怒らなくても良かったのでは」
「ハチなりの反抗期じゃなかったんだな」
残念ながらゴウにわたしの怒りの感情は伝わってなかったようだ。
「ドアスコープでわたしの姿が見えているんだろうが、本物だって」
「イチの首を斧で切ったんでしょう。だったらゴウのも不可能じゃない」
「首を切られていたら唇なんか動かせない。わたしを信じろ、罠なんかじゃないって」
荒々しく声を出し、ゴウが部屋の扉を叩く。
「その程度の細工はいくらでもできるわよ。本物の声だったとしてもナナとハチが録音でもすれば」
「おい、ロク。まじでいい加減にしろよ」
「もうやめておこう。ロクの言い分も命がかかっているなら考えて当然だ」
なぜかは分からないが、怒っているであろうゴウにわたしは肉体を密着させていた。
「そもそも食堂で宣言をしたわよ。わたしは部屋にこもると、誰が来たとしても絶対に出ないともね」
「分かった。そうやって部屋にいろ、今のところは安全だ。けど未来は分からない、もしかすると生き残るための最後のチャンスを逃した可能性も考えておけよな」
「ゴウに言われなくても、わたしは覚悟している」
「ナナ、ハチ、わたしの我儘に付き合わせちまって悪かった」
もうロクを勧誘するつもりはないようで、ゴウが部屋の扉から離れる。
「本当に良いんですか。ナナは知りませんがわたしは頭数が多いほうが便利だと考えてますので」
「サンキュー。けど双子とはいえ他人みたいなものだし。ロクが自分で決めてどうなっても納得すると言っているんだし、わたしが騒ぐのも迷惑な話だ」
こちらはもうゴウになにか言うつもりはなかったのに。
「わたしになにかあったらロクと仲良くしてやってくれ。犯人を見つけて、やっつけて。二人きりで気まずい状況だったとしても」
「しれっとわたしを壊さないでほしいね。まだまだ読みたいミステリー小説があるんだからさ」
「万一の話だ。わたしも殺されるつもりなんかさらさらない」
「今更かもしれませんが、ゴウとナナは犯人を」
ゴウとナナの顔つきを見てなのか、わたしは口を閉じてしまった。
「心配しなくても、わたしがやる。すでにイチの首を切るような人でなしと思われているんだし」
「わたしも手伝いますよ。罪悪感も忘れられるはずなので」
「忘れられるかはともかく、ナナに嫌なことを押しつけて終了させられないな。つーか犯人以外の全員で平等にやるのが一番じゃないのか」
気持ちは嬉しいが、まずは犯人を。ナナの動きが止まる。
「確か、以前にもこんなことがあって皆で」
ぶつくさと唇を動かしていたが、すぐにわたしとゴウにナナは問題ないと作り笑顔を浮かべた。
眠ってはいけないのに目をつぶって寝息を立てたせいか、わたしは蝶になっていた。
本当のわたしはこちらかもしれないと思いながら奇麗な模様の羽をばたつかせていると。
いきなり目の前が真っ暗に。
「起きたか、ハチ。おはようさん」
見たことない天井と傍らに座るゴウの顔を交互に見つつ、頭の中を回転させてみた。
「笑われそうですけど、もしかするとわたしは記憶喪失になった可能性が高いかと」
「それだけのジョークを言えるなら正常だと思うが気になるならついでに調べておくか」
ベッドの上で寝転がったまま白を基調とした部屋を見回す。健康に良さそうな機械がたくさん置いてあって。
「ここは三階の医療室ですか」
ロクの勧誘に失敗して、イチの死因を調べるために医療室に来たんだったっけ。
イチの頭部にチューブを差しこんで死因を調べるのに時間がかかるとかなんとかで。
「北だったら、先にハチの日記を見たほうが効率的なんじゃないか」
「先に皆の安否を確認しておきたくてね。もしかしたらがあるだろう」
イチの死因も優先的に調べておきたいしさと口にしながらナナはシイの部屋の前を横切っていく。
「ロクは平気だって、頭電話もできないように設定してあるし。部屋に侵入をされない限りは安全だ」
前を歩くゴウがこちらに顔を向けてきた。
「なんだよ、珍しくご立腹のようだな。ハチ」
「どちらかというと納得がいかないという感じですかね」
ゴウがわざとサンをグループに入れなかったのはわたしでも分かる。
「サンの加入を邪魔した理由はなんでしょう」
「状況を戻したくなかったというより、犯人らしきアンドロイドを孤立させたかったが一番伝わるか」
「ニイが疑われるのはイチの件で分かりますけど、どうしてサンまで」
「ハチが涙を流したことを話した時にサンが怒っていたからだな」
冷たい視線のことか、個人的には怒りではなくてずるいと思われている感じがしたような。
「それにニイとサンが共犯の可能性もあるからゴウは邪魔をしたんじゃないかい」
「そこまで考えてないが、サンがニイの発言に合わせてそうだと思っただけだよ。わざわざアリバイがないのを証明する必要もないし」
わたしなりに納得をして頷いたつもりなのだが、ゴウが心配そうな顔をした。
「ハチ、素直なのは良いがよ。あくまでもそういう場合もあるぐらいにしておいてくれ」
「ゴウはこんな状況でもお人好しなんですね」
「ありがたい言葉だけど、この館にいる誰かが犯人なのは事実だ」
できることならサンが犯人じゃないと願いたいとゴウが祈るようなポーズをしている。
「誰も犯人じゃないのが一番良いのでは」
「ハチのほうが優しいじゃねーかよ。未だに外部犯がいるとか想像してくれていたりして」
「さすがにそんなことは考えていません」
とはいえイチの時みたいに泣きたくはならない。
「優しくないゴウはサンが犯人だと不都合があるんですか」
「変な判定はスルーするとして、サンが犯人なら今この館に生き残ったメンバー全員で協力しても返り討ちにされるからだよ」
「サンがそこまでの圧倒的な強さだとは」
ぬいぐるみを抱きしめないと眠れない体質だけが個性じゃなかったらしい。
「ナナなんか腕を千切られているしな」
「ゴウ、話を盛るのは良くないよ。腕相撲で神経を千切られてしまっただけさ」
こちらを振り向かないままでナナが口にする。
「嫌な昔話を思い出して気分が悪くなった。今日のところは部屋で休ませてもらうと」
「謝るって、気を悪くしないでくれよ。場を和ませようとしただけじゃんか」
自分の部屋に戻ろうとするナナの両肩を揉んだりしつつ、ゴウがなだめすかしていた。
「わたしにトラウマを植えつけるほどの武力に自信があるからこそ、サンは勧誘を断ったんだろうね。寝込みでも襲われない限り自分が負けるなんて想像すらしてないはず」
「ナナはサンを誘ってましたっけ。だったらわたしがゴウに怒らなくても良かったのでは」
「ハチなりの反抗期じゃなかったんだな」
残念ながらゴウにわたしの怒りの感情は伝わってなかったようだ。
「ドアスコープでわたしの姿が見えているんだろうが、本物だって」
「イチの首を斧で切ったんでしょう。だったらゴウのも不可能じゃない」
「首を切られていたら唇なんか動かせない。わたしを信じろ、罠なんかじゃないって」
荒々しく声を出し、ゴウが部屋の扉を叩く。
「その程度の細工はいくらでもできるわよ。本物の声だったとしてもナナとハチが録音でもすれば」
「おい、ロク。まじでいい加減にしろよ」
「もうやめておこう。ロクの言い分も命がかかっているなら考えて当然だ」
なぜかは分からないが、怒っているであろうゴウにわたしは肉体を密着させていた。
「そもそも食堂で宣言をしたわよ。わたしは部屋にこもると、誰が来たとしても絶対に出ないともね」
「分かった。そうやって部屋にいろ、今のところは安全だ。けど未来は分からない、もしかすると生き残るための最後のチャンスを逃した可能性も考えておけよな」
「ゴウに言われなくても、わたしは覚悟している」
「ナナ、ハチ、わたしの我儘に付き合わせちまって悪かった」
もうロクを勧誘するつもりはないようで、ゴウが部屋の扉から離れる。
「本当に良いんですか。ナナは知りませんがわたしは頭数が多いほうが便利だと考えてますので」
「サンキュー。けど双子とはいえ他人みたいなものだし。ロクが自分で決めてどうなっても納得すると言っているんだし、わたしが騒ぐのも迷惑な話だ」
こちらはもうゴウになにか言うつもりはなかったのに。
「わたしになにかあったらロクと仲良くしてやってくれ。犯人を見つけて、やっつけて。二人きりで気まずい状況だったとしても」
「しれっとわたしを壊さないでほしいね。まだまだ読みたいミステリー小説があるんだからさ」
「万一の話だ。わたしも殺されるつもりなんかさらさらない」
「今更かもしれませんが、ゴウとナナは犯人を」
ゴウとナナの顔つきを見てなのか、わたしは口を閉じてしまった。
「心配しなくても、わたしがやる。すでにイチの首を切るような人でなしと思われているんだし」
「わたしも手伝いますよ。罪悪感も忘れられるはずなので」
「忘れられるかはともかく、ナナに嫌なことを押しつけて終了させられないな。つーか犯人以外の全員で平等にやるのが一番じゃないのか」
気持ちは嬉しいが、まずは犯人を。ナナの動きが止まる。
「確か、以前にもこんなことがあって皆で」
ぶつくさと唇を動かしていたが、すぐにわたしとゴウにナナは問題ないと作り笑顔を浮かべた。
眠ってはいけないのに目をつぶって寝息を立てたせいか、わたしは蝶になっていた。
本当のわたしはこちらかもしれないと思いながら奇麗な模様の羽をばたつかせていると。
いきなり目の前が真っ暗に。
「起きたか、ハチ。おはようさん」
見たことない天井と傍らに座るゴウの顔を交互に見つつ、頭の中を回転させてみた。
「笑われそうですけど、もしかするとわたしは記憶喪失になった可能性が高いかと」
「それだけのジョークを言えるなら正常だと思うが気になるならついでに調べておくか」
ベッドの上で寝転がったまま白を基調とした部屋を見回す。健康に良さそうな機械がたくさん置いてあって。
「ここは三階の医療室ですか」
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