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夢が先か、現実が先か①
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この世界の住人には顔がないのが当たり前のようだ。鼻や口がないのにわたしの髪の毛の匂いを確認したり喋ったりできるのはどことなく面白かった。
「お風呂でさっぱりして、さらに美人になったね」
バスタオルなどで水気を拭き取り、看護師さんがドライヤーで髪を乾かしてくれる。
「今日のヤガミちゃんは大人びていて、別の女の子を相手にしているような気分になるわ」
のっぺらぼうの看護師さんに人間性の話をされるのも不思議な感じだな。
「大人になるための階段がエスカレーターに進化をしたので成長速度が上がったんだと」
「エレベーターにはならなかったのかしら」
「下の階層へのボタンをうっかり押すぐらいわたしはおっちょこちょいですから」
偶然だけど本物のヤガミちゃんらしい台詞を口にしたおかげか看護師さんが微笑む。顔の表面の凹凸の変化だけでも意外と読み取れる。
「もしかしてヤガミちゃんも恋をしちゃったとか。 同じ部屋にナナセくんが移動をしてきたし」
今日の夢は長いな、とか思いながら看護師さんと一緒に風呂場から自分の病室に戻る途中で的外れな推測を聞かされた。
「エクレアは好きですが奪い取ったりしませんよ」
「エクレア好きのヤガミちゃんが、男の子を好きになったかもしれないという話ね」
ナナセくんとやらが毎日エクレアを献上するほどの異性だったら悩んでしまうが。
「アンドロイドと人間なので、恋や愛を語ることのできない運命だとわたしは思います」
「実はナナセくんもアンドロイドだとしたらヤガミちゃんとも付き合えるんじゃない」
アンドロイドには感情がないことを看護師さんは知らないようだったので丁寧に教えた。
「今日はアンドロイドのヤガミちゃんでも、いつか人間になれちゃったりして」
わたしがあの館で最後まで生き残ることができたら人間になれる可能性もあるけど。残りのメンバーを犠牲にするのと同じ意味で、犯人を見つけられたとしても選べない未来。
本当に人間になることができるのかどうかさえも半信半疑だしな。
「ヤガミちゃんは最初からアンドロイドじゃなくて人間だったりして」
「人間は心臓が取れたら大変なのに、わたしは平気だったので紛れもなくアンドロイドかと」
「夢の中のヤガミちゃんは頑丈な肉体のようね」
真実はこちらが夢だが、看護師さんは良い人そうだしショックを与えるようなことは言わないで。
病室から出てきた男の子が、わたしと看護師さんを見てか声を上げた。風邪の影響か、目の前の彼の顔が赤くなっていく。
こちらが挨拶をすると男の子も返事をする。
多分、彼がナナセくんなんだろうけど目が覚めるまでの間柄だし仲良くする必要はなさそうか。
「ナナセくん。昼間にヤガミちゃんと話したいとか言ってなかったっけ」
ナナセくんが全身で否定をしていた。
「遠慮しなくて良いですよ。わたしもナナセくんに聞きたいことがあったりするので」
「望むところだ。トイレに行ってから、いくらでも話をしてやる」
我慢の限界だったようで足早にナナセくんが男子トイレの方向へと姿を消す。
「将来はプレイガールね。ヤガミちゃん」
看護師さんに褒められたのはさておきナナセくんの顔は普通にあったな。目と鼻と口があっても男前なのかどうかは判断できなかったが。
「人間の顔は性別によって違うんですね」
「性別に限らないと思うな。わたしとヤガミちゃんの可愛い顔も全然違うし」
女性の美の究極は卵肌を超越した卵顔らしい。
わたしの目が変なのか、館のアンドロイドの顔はほとんど同じだった気がする。髪型や肉体の大きさに違いはあったかもしれないけれど。
人間の男女が布団やベッドに一緒に入るのは特別な意味があると本に書いてあったような。
本当のわたしはアンドロイドだし、関係ないか。
「どうして、わたしはナナセくんのベッドにお邪魔をさせてもらっているんでしたっけ」
「ヤガミちゃんが湯冷めしないようにするためよ」
夢の中でも病気になるか不明だが、のっぺらぼう相手とはいえ親切を無下にするのは人道に反する。
アンドロイドにも適用されるのかは微妙ですが。
看護師さんに聞かれないようにナナセくんに顔を近づけた。目を逸らした状態だが声は聞こえているだろう。
「わたしがどんな女の子だったか分かりますか」
奇妙な質問だったからかナナセくんが不思議そうにこちらを見ている。
「看護師さんには秘密ですが、わたしはヤガミではなくハチという名前のアンドロイドなんです」
与太話と思われなかったようでナナセくんが真剣な顔をする。
「ヤガミも変人だったがアンドロイドとは自称しなかったし、お前はハチなんだな」
なんとなく雰囲気が違うのはそのせいか、ナナセくんが唇を動かしたがこちらまで届かなかった。
「ロボットだったらビームとか出せたのか」
「心臓は取り出せましたね、丸一日が限界ですが」
でもアンドロイドの心臓はチューブがくっついているから正確には取り出せてないのかな。
「眠らないといけない時間になっちゃったわ。内緒話の続きは明日にしましょう」
看護師さんがわたしをお姫様抱っこする。
夢の中で眠るというのも変だけど、ベッドの上で寝転ぶとわたしの意識はすぐに。
「お風呂でさっぱりして、さらに美人になったね」
バスタオルなどで水気を拭き取り、看護師さんがドライヤーで髪を乾かしてくれる。
「今日のヤガミちゃんは大人びていて、別の女の子を相手にしているような気分になるわ」
のっぺらぼうの看護師さんに人間性の話をされるのも不思議な感じだな。
「大人になるための階段がエスカレーターに進化をしたので成長速度が上がったんだと」
「エレベーターにはならなかったのかしら」
「下の階層へのボタンをうっかり押すぐらいわたしはおっちょこちょいですから」
偶然だけど本物のヤガミちゃんらしい台詞を口にしたおかげか看護師さんが微笑む。顔の表面の凹凸の変化だけでも意外と読み取れる。
「もしかしてヤガミちゃんも恋をしちゃったとか。 同じ部屋にナナセくんが移動をしてきたし」
今日の夢は長いな、とか思いながら看護師さんと一緒に風呂場から自分の病室に戻る途中で的外れな推測を聞かされた。
「エクレアは好きですが奪い取ったりしませんよ」
「エクレア好きのヤガミちゃんが、男の子を好きになったかもしれないという話ね」
ナナセくんとやらが毎日エクレアを献上するほどの異性だったら悩んでしまうが。
「アンドロイドと人間なので、恋や愛を語ることのできない運命だとわたしは思います」
「実はナナセくんもアンドロイドだとしたらヤガミちゃんとも付き合えるんじゃない」
アンドロイドには感情がないことを看護師さんは知らないようだったので丁寧に教えた。
「今日はアンドロイドのヤガミちゃんでも、いつか人間になれちゃったりして」
わたしがあの館で最後まで生き残ることができたら人間になれる可能性もあるけど。残りのメンバーを犠牲にするのと同じ意味で、犯人を見つけられたとしても選べない未来。
本当に人間になることができるのかどうかさえも半信半疑だしな。
「ヤガミちゃんは最初からアンドロイドじゃなくて人間だったりして」
「人間は心臓が取れたら大変なのに、わたしは平気だったので紛れもなくアンドロイドかと」
「夢の中のヤガミちゃんは頑丈な肉体のようね」
真実はこちらが夢だが、看護師さんは良い人そうだしショックを与えるようなことは言わないで。
病室から出てきた男の子が、わたしと看護師さんを見てか声を上げた。風邪の影響か、目の前の彼の顔が赤くなっていく。
こちらが挨拶をすると男の子も返事をする。
多分、彼がナナセくんなんだろうけど目が覚めるまでの間柄だし仲良くする必要はなさそうか。
「ナナセくん。昼間にヤガミちゃんと話したいとか言ってなかったっけ」
ナナセくんが全身で否定をしていた。
「遠慮しなくて良いですよ。わたしもナナセくんに聞きたいことがあったりするので」
「望むところだ。トイレに行ってから、いくらでも話をしてやる」
我慢の限界だったようで足早にナナセくんが男子トイレの方向へと姿を消す。
「将来はプレイガールね。ヤガミちゃん」
看護師さんに褒められたのはさておきナナセくんの顔は普通にあったな。目と鼻と口があっても男前なのかどうかは判断できなかったが。
「人間の顔は性別によって違うんですね」
「性別に限らないと思うな。わたしとヤガミちゃんの可愛い顔も全然違うし」
女性の美の究極は卵肌を超越した卵顔らしい。
わたしの目が変なのか、館のアンドロイドの顔はほとんど同じだった気がする。髪型や肉体の大きさに違いはあったかもしれないけれど。
人間の男女が布団やベッドに一緒に入るのは特別な意味があると本に書いてあったような。
本当のわたしはアンドロイドだし、関係ないか。
「どうして、わたしはナナセくんのベッドにお邪魔をさせてもらっているんでしたっけ」
「ヤガミちゃんが湯冷めしないようにするためよ」
夢の中でも病気になるか不明だが、のっぺらぼう相手とはいえ親切を無下にするのは人道に反する。
アンドロイドにも適用されるのかは微妙ですが。
看護師さんに聞かれないようにナナセくんに顔を近づけた。目を逸らした状態だが声は聞こえているだろう。
「わたしがどんな女の子だったか分かりますか」
奇妙な質問だったからかナナセくんが不思議そうにこちらを見ている。
「看護師さんには秘密ですが、わたしはヤガミではなくハチという名前のアンドロイドなんです」
与太話と思われなかったようでナナセくんが真剣な顔をする。
「ヤガミも変人だったがアンドロイドとは自称しなかったし、お前はハチなんだな」
なんとなく雰囲気が違うのはそのせいか、ナナセくんが唇を動かしたがこちらまで届かなかった。
「ロボットだったらビームとか出せたのか」
「心臓は取り出せましたね、丸一日が限界ですが」
でもアンドロイドの心臓はチューブがくっついているから正確には取り出せてないのかな。
「眠らないといけない時間になっちゃったわ。内緒話の続きは明日にしましょう」
看護師さんがわたしをお姫様抱っこする。
夢の中で眠るというのも変だけど、ベッドの上で寝転ぶとわたしの意識はすぐに。
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