33 / 39
現実しか見せてくれない①
しおりを挟む
「心臓を交換する発想はともかくナナがそんな立証しづらいことを確信するとは思わなかったな」
「意地悪を言うなよ。立証できたから推理ショーをしているんじゃないか」
ナナの言葉に思わず、ニイとわたしは彼女に視線を向けてしまう。
「どういう意味ですか、ナナ」
「シイがサンの心臓を抜き取り、交換したのを立証するためにわたしは実験したんだよ」
「ナナ、前にも言ったよな。そういう歪な自己犠牲が駄目だと。実験はわたしとロクが同意してやったんだ、勝手に悪役になるなよ」
わたしの左隣にいるロクがゴウみたいにではなく姿は違うが彼女本人で、ナナの話が本当だったら。
「シイが本当にサンと入れ替わっているのか調べるためにゴウとロクの心臓を交換した」
「本当はシイしか知らない情報を引き出させてから今の話をする予定だったが、ここまで用意周到だし自白させるしか方法がないと思ったのさ」
ハチの言葉で罪悪感を刺激されたのか、あっさり白状してくれたけどね。ナナが注意深くシイを観察している。
「こんな推理ショーをする時点で入れ替わっているのを確信した相手に嘘は無意味だし」
とにかく話の続きをしてくれよ、犯人のわたしが種明かしするのは野暮でしょう。
なんて言いながらシイは楽しそうに笑った。
「サンとシイが入れ替わっていたのなら、あなたが殺されたと思った日の朝に見かけた彼女は」
「サンとは朝食の後で会う約束だったから、ニイが見かけたのは本物だ」
偽装のためにトレーニングをするほど、わたしは俳優じゃないとシイが説明を続ける。
「その約束を利用して自分の部屋に招き入れたサンを殺したんだな」
「利用はしてないよ。サンは館の外に出たいようだから一階の開かない扉をどうにかする方法を一緒に考えないかと誘っただけさ。相談料が自分の命だとは教えてなかったけどね」
ゴウに返事をしながらシイは怒っているであろう彼女の顔を見てもあっけらかんとしていた。
「美人が台無しだよ。もっとにこやかな表情をしたほうが良いんじゃないかしら」
「わたしを怒らせているからだろう。分かっているのかどうか知らないがよ、サンの純粋な思いを踏みにじったんだぞ」
ついでに言うと美人なのはロクだ。わたしの本来の顔はあれなんだからな、ゴウが自分の顔になっている彼女を指差す。
「結局、動機はなんなのよ。メッセージに書かれていた人間になりたいから」
「ニイ以外は知っているんだし、聞いてみれば」
シイが自信満々な様子なので推測は当たっていると考えて間違いなさそうか。外れていても好転する訳でもないけれど、それでも。
「ハチもシイの動機を知っているの」
「覚えてないのでニイには教えられません」
「ハチも話すべきじゃないと思っているのなら今はタイミングが悪いのね」
わたしの嘘がばれていたのか、気持ちを察したのかは分からないがニイは他の皆にも動機については聞かなかった。
ニイは気になってないようだがゴウとロクが心臓を交換していたのがどことなく違和感がある。
ゴウはともかくロクに心臓を交換することを同意させる方法が個人的には思いつかない。
もしかするとわたしが知らないだけでロクは死にたがりだったりするのかな。
じろじろと見ていたからか、ロクがこちらに顔を向けた。
「ハチ、わたしに聞きたいことでもあるの」
「死んでしまう場合もあったのに、どうしてゴウと心臓を交換してくれたのかと」
「心配してくれてありがとう。わたしにもメリットはあるから気にしないことね」
詳細を教えてくれるつもりはないようで、ロクはシイを警戒するのを再開してしまった。
「ゴウもロクも怖いな。推理ショーが終わるまではなにもするつもりはないよ」
そんなに心配だったら逆立ちしておこうかとシイが冗談を口にする。
「シイが退屈みたいだから、さっさと続きを話してくれない。わたしも隣に犯人がいて気分が悪くて、今にもばらばらになりそうだわ」
「相変わらずロクは悪態が上手なようで」
ゴウが今にも噛みつきそうなほど怒っているのに気づいてかシイが視線を向けた。
「ところで斧はサン本人がシイの部屋に持ってきたのかい、なにかしらの身の危険を感じてとか」
「丸腰だったよ。斧があろうがなかろうがバトルになった時点でわたしなんか手も足も出ない、というかサン以外の全員でも根本的に無理な話」
罠を仕掛けていたが正直、サン相手に通じるかは五分五分だった。当時のことを思い出してかシイが冷や汗をかいている。
「結果は見ての通りさ。斧はサンが回収をしていたみたいで部屋にお邪魔させてもらった」
廊下でイチと出会ってサンと斧について聞かれた時はかなり焦ったなとシイが語る。
「ニイも連れてこれているし、殺したサンの頭部で部屋の扉を開けたとは考えてないでしょう。そっちの件が分かったからこそ心臓の交換にも」
「本人の解説はありがたいが、先にイチの殺害方法について説明させてくれないかい」
「悪い悪い。変な話だが自分の計画していたことを誰かに解いてもらえるのが」
「ゴウ、まだ怒ったら駄目ですよ」
シイに殴りかかろうとしたゴウをわたしは羽交い締めにした。先程の自分の台詞が変だと理解できているのに心臓の動きが激しいような。
「ハチ、どいてろ。こいつだけは一発ぶん殴らないと気が済まない」
「ぶん殴りたい気持ちは分かるけど落ち着いて」
「落ち着けだと、これでも我慢した。自白しているんだ、こいつを」
「ゴウ、わたしとの約束を本当に守ってくれるなら冷静になってくれない」
ニイやゴウやわたしと違い冷ややかなロクの声を聞き、羽交い締めにされた彼女は落ち着こうとしているらしく深呼吸を繰り返す。
「もう大丈夫だ。安心してくれよ、ハチ」
まだ肩で息をしているけれどゴウの言葉を信じて離れ、わたしは元の位置に戻った。
「サンキュー、ハチのおかげで助かったよ」
シイにお礼を言われたので頭を下げておいた。
「意地悪を言うなよ。立証できたから推理ショーをしているんじゃないか」
ナナの言葉に思わず、ニイとわたしは彼女に視線を向けてしまう。
「どういう意味ですか、ナナ」
「シイがサンの心臓を抜き取り、交換したのを立証するためにわたしは実験したんだよ」
「ナナ、前にも言ったよな。そういう歪な自己犠牲が駄目だと。実験はわたしとロクが同意してやったんだ、勝手に悪役になるなよ」
わたしの左隣にいるロクがゴウみたいにではなく姿は違うが彼女本人で、ナナの話が本当だったら。
「シイが本当にサンと入れ替わっているのか調べるためにゴウとロクの心臓を交換した」
「本当はシイしか知らない情報を引き出させてから今の話をする予定だったが、ここまで用意周到だし自白させるしか方法がないと思ったのさ」
ハチの言葉で罪悪感を刺激されたのか、あっさり白状してくれたけどね。ナナが注意深くシイを観察している。
「こんな推理ショーをする時点で入れ替わっているのを確信した相手に嘘は無意味だし」
とにかく話の続きをしてくれよ、犯人のわたしが種明かしするのは野暮でしょう。
なんて言いながらシイは楽しそうに笑った。
「サンとシイが入れ替わっていたのなら、あなたが殺されたと思った日の朝に見かけた彼女は」
「サンとは朝食の後で会う約束だったから、ニイが見かけたのは本物だ」
偽装のためにトレーニングをするほど、わたしは俳優じゃないとシイが説明を続ける。
「その約束を利用して自分の部屋に招き入れたサンを殺したんだな」
「利用はしてないよ。サンは館の外に出たいようだから一階の開かない扉をどうにかする方法を一緒に考えないかと誘っただけさ。相談料が自分の命だとは教えてなかったけどね」
ゴウに返事をしながらシイは怒っているであろう彼女の顔を見てもあっけらかんとしていた。
「美人が台無しだよ。もっとにこやかな表情をしたほうが良いんじゃないかしら」
「わたしを怒らせているからだろう。分かっているのかどうか知らないがよ、サンの純粋な思いを踏みにじったんだぞ」
ついでに言うと美人なのはロクだ。わたしの本来の顔はあれなんだからな、ゴウが自分の顔になっている彼女を指差す。
「結局、動機はなんなのよ。メッセージに書かれていた人間になりたいから」
「ニイ以外は知っているんだし、聞いてみれば」
シイが自信満々な様子なので推測は当たっていると考えて間違いなさそうか。外れていても好転する訳でもないけれど、それでも。
「ハチもシイの動機を知っているの」
「覚えてないのでニイには教えられません」
「ハチも話すべきじゃないと思っているのなら今はタイミングが悪いのね」
わたしの嘘がばれていたのか、気持ちを察したのかは分からないがニイは他の皆にも動機については聞かなかった。
ニイは気になってないようだがゴウとロクが心臓を交換していたのがどことなく違和感がある。
ゴウはともかくロクに心臓を交換することを同意させる方法が個人的には思いつかない。
もしかするとわたしが知らないだけでロクは死にたがりだったりするのかな。
じろじろと見ていたからか、ロクがこちらに顔を向けた。
「ハチ、わたしに聞きたいことでもあるの」
「死んでしまう場合もあったのに、どうしてゴウと心臓を交換してくれたのかと」
「心配してくれてありがとう。わたしにもメリットはあるから気にしないことね」
詳細を教えてくれるつもりはないようで、ロクはシイを警戒するのを再開してしまった。
「ゴウもロクも怖いな。推理ショーが終わるまではなにもするつもりはないよ」
そんなに心配だったら逆立ちしておこうかとシイが冗談を口にする。
「シイが退屈みたいだから、さっさと続きを話してくれない。わたしも隣に犯人がいて気分が悪くて、今にもばらばらになりそうだわ」
「相変わらずロクは悪態が上手なようで」
ゴウが今にも噛みつきそうなほど怒っているのに気づいてかシイが視線を向けた。
「ところで斧はサン本人がシイの部屋に持ってきたのかい、なにかしらの身の危険を感じてとか」
「丸腰だったよ。斧があろうがなかろうがバトルになった時点でわたしなんか手も足も出ない、というかサン以外の全員でも根本的に無理な話」
罠を仕掛けていたが正直、サン相手に通じるかは五分五分だった。当時のことを思い出してかシイが冷や汗をかいている。
「結果は見ての通りさ。斧はサンが回収をしていたみたいで部屋にお邪魔させてもらった」
廊下でイチと出会ってサンと斧について聞かれた時はかなり焦ったなとシイが語る。
「ニイも連れてこれているし、殺したサンの頭部で部屋の扉を開けたとは考えてないでしょう。そっちの件が分かったからこそ心臓の交換にも」
「本人の解説はありがたいが、先にイチの殺害方法について説明させてくれないかい」
「悪い悪い。変な話だが自分の計画していたことを誰かに解いてもらえるのが」
「ゴウ、まだ怒ったら駄目ですよ」
シイに殴りかかろうとしたゴウをわたしは羽交い締めにした。先程の自分の台詞が変だと理解できているのに心臓の動きが激しいような。
「ハチ、どいてろ。こいつだけは一発ぶん殴らないと気が済まない」
「ぶん殴りたい気持ちは分かるけど落ち着いて」
「落ち着けだと、これでも我慢した。自白しているんだ、こいつを」
「ゴウ、わたしとの約束を本当に守ってくれるなら冷静になってくれない」
ニイやゴウやわたしと違い冷ややかなロクの声を聞き、羽交い締めにされた彼女は落ち着こうとしているらしく深呼吸を繰り返す。
「もう大丈夫だ。安心してくれよ、ハチ」
まだ肩で息をしているけれどゴウの言葉を信じて離れ、わたしは元の位置に戻った。
「サンキュー、ハチのおかげで助かったよ」
シイにお礼を言われたので頭を下げておいた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる