『小説カフェやすらぎ・フューチャー』

2章

ディメンション・スクール(12)

わたし達は一瞬で日本へ戻った。元いた場所の道にいて、まわりのいつもの景色を見て、安堵しながら自宅のマンションへ向かい歩きはじめた。

「なんか、今日は前髪ぱっつんでストレートヘアの人が多いね」
少しして、わたしは言った。

「ははっ。みんな美人でまるでクレオパトラのようだな」
マスターがこたえた。
さっきから、道を歩く仕事帰りの女性達のほとんどがクレオパトラのような雰囲気を漂わせていた。
「ひょっとしたら、フランスの次はエジプトへ旅行するって、小説に書こうとしてたから、それの具現化かもしれないな、これは」

「ってことはまだわたし達、小説のなかにいるの！ ここは三次元じゃなくて、五次元の世界ってこと？」
「な、なんだ、あれは！」
マスターが前方を見て、叫んだ。

マスターの視線の先を見て、わたしは体が硬直した。
全身がゴールドに輝くツタンカーメンがまっすぐ前を向いてこちらに向かって歩いて来た。

「わーーっ！」
「きゃーー！」
わたし達は走ってマンションへ向かって逃げた。