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第一章 カラハダル大森林 異世界転移 編
12.特訓とおじいちゃん-Ⅱ
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「これは……」
「これは?」
切り株の上には六本の反応の跡が残っていた。
全て半分を少し過ぎた辺りで止まっている。
これはつまり――
「良く言えば多才。悪く言えば器用貧乏というところかのぅ。だがまあ、ボウズにはシエラがあるし、キュウもおるから余り気にせんで良いぞ」
「そ、そうですか……」
色々な魔法が試せて良いと考える事にして続きを聞く。
「そいで魔法じゃが、簡単なものなら誰でもすぐに使えるから気負わんでもいいぞ。それでは風を起こしてみるかの。ほれ、"そよ風"じゃ」
そう言ってセイルがこちらに向けて手をゆっくり扇ぐ仕草をすると、顔面に"突風"が叩きつけられた。
頭を持っていかれそうになった上に、空調機能が顔には効かないため、強烈な冷気が顔を襲う。
「ほほほ。なーに、ほんの冗談じゃよ。さあまずは指先から風を出すのじゃ」
なかなかパンチの効いた冗談だが、怪我をしたわけでもないのでとりあえず納得をする。
「あ……扇がなくてもいいんですか?」
「そのうち意味がわかるからまずは指先からやってみるのじゃ」
そう言われてはやってみるしかない。
少し離れたところにある枯れ草に向かって魔力を出しながら指先から風を出すイメージをする。
「お、出た!」
人生初の魔法である。
否応なしに心が踊る。
先ほど受けたイメージが強いためか、思っていたより強い風が発生して辺りの枯れ葉は次々に飛んでいき、枯れ草は激しく揺れている。
「風を弱めたり強めたりしてみるのじゃ。大事なのはイメージじゃぞ」
「わ、わかりました」
今出ている風はどう考えても扇風機の強はあるので、徐々に中、弱、果ては団扇で扇ぐくらいのイメージで押さえていく。
「今どういう風に調整したのじゃ?」
「その、体から指先に送られる魔力の量を調整するようなイメージでやりました」
「なるほど。良いイメージじゃ。それが魔力制御の基本じゃぞ。では次じゃ。今よりもうちょいと強い風を持続させるのじゃ」
言われた通り送り込む魔力を一定に保ち、扇風機の弱くらいにする。
(意外と難しい……)
「上手いものじゃのぅ。ではもう次に行こうかの。今、ボウズの近くにある枯れ葉も風の影響を受けておるのがわかるかの?そこではなく、あの枯れ草だけに風を送ってみるのじゃ」
確かに今自分の指からは放射状に風が出ている。
しかし言われてみれば、セイルがこちらに風を送った時は顔にしか当たっていなかったという事を思いだし、どうすれば良いか考える。
「出口を細めるか……」
指先に意識を集中し、出口を窄める。
「ほれ、風が弱まっておるぞ」
(確かにこれは難しいな……)
指先だけに集中してはダメなようだ。
結局上手く枯れ草に風を送れたのは三十分ほど後のことであった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ハァ……ハァ……」
息を切らして、大の字になって地面に転がる。
ジャージの空調機能のお陰で快適ではあるのだが、それでも額から汗が流れ落ちる。
「キュ」
キュウが「お疲れさん」とでも言うかのように、右前足を額の上に乗せてきた。
何を隠そうこの精霊、一緒に魔力制御の特訓を受けていたのだが、ものの十分程度でセイルから皆伝を伝えられていた。
そう考えるとこの行為も若干憎たらしいが、可愛いので許してしまうのであった。
そんな様子を見て何か察したのか、セイルがフォローを入れてくる。
「まあ、精霊は本来魔力制御で存在しておるような種族じゃからの。ボウズの気にするところではないて。寧ろ、ボウズは才能のあるほうじゃぞ」
「そう、なんですか?」
「おうとも。わしの昔の弟子なんぞはボウズと同じ段階まででも一日使っておったからの。それでも二つ名持ちにまでなっておるから、そう考えるとボウズは将来大成するかもしれんのぅ」
そう言ってセイルは愉快そうに笑っていたが、それよりも――
「あの、セイルさんって実は凄い人だったりします……?」
「ん? まあ昔の功績でちょっと名が知れておるくらいじゃよ。そんなことより、頼みたいことがあるんじゃが……」
「あ、はい。なんでしょう?」
「わしの事を『おじいちゃん』と呼んではくれんかのぅ」
「えっ!?」
「嫌じゃったら構わんのじゃがな……。どうもわしの教えに対して素直に努力しておるボウズの姿を見ておると、こう何か沸々と湧いてくるものが……のぅ?」
「い、嫌というか……」
「バカ息子は家を出ていってしもうたし、弟子も恥ずかしがり屋で、頼んでも呼んでくれんかったからのぅ。そういうものに憧れがあるんじゃよ……。つい最近まで赤の他人じゃったわけじゃが、しがない爺を助けると思うて、呼んではくれんかのぅ……?」
「そ、それじゃあ……」
自分としても、最初こそ厳つい顔に恐怖を覚えたりしたが、赤の他人の自分を助けてくれた上に、こんなに親身になって色々と教えてくれるセイルに対して親しみを覚えないわけがない。
実の祖父達に対しても、会ったことが無いしそもそも存命かすら知らないため後ろめたさも無い。
それならば――
「お、おじいちゃん……?」
自分自身呼んだ経験の無い呼称であったため、上手く言えているか不安であったが――
「はうあっ!!!」
「っ!?」
「ほほほ……良いのぅ……良いのぅ……」
効果は絶大だったようである。
「これは良い……これは良いぞ……」
「あの、おじいちゃん?」
「ん~? なんじゃいタケル?」
随分と幸せそうである。
というか呼び名もいつの間にか変わっている。
(まあ僕も満更でもないし……)
自然と問いかけも砕けた口調になっていく。
「次はどんな事をすれば良いの?」
「ほほほ。そうじゃったのぅ。弱めの風を一ヶ所に向ける事が出来たから、次は風を強く。つまり送る魔力の量を増やしても上手く制御出来るようにする特訓じゃ。少し難易度が上がるから心してかかるんじゃぞ」
「うん、わかった」
「ほほほ」
「キュァ~~……」
眠そうに欠伸をするキュウをよそに、特訓は次の段階へ進むのであった。
「これは?」
切り株の上には六本の反応の跡が残っていた。
全て半分を少し過ぎた辺りで止まっている。
これはつまり――
「良く言えば多才。悪く言えば器用貧乏というところかのぅ。だがまあ、ボウズにはシエラがあるし、キュウもおるから余り気にせんで良いぞ」
「そ、そうですか……」
色々な魔法が試せて良いと考える事にして続きを聞く。
「そいで魔法じゃが、簡単なものなら誰でもすぐに使えるから気負わんでもいいぞ。それでは風を起こしてみるかの。ほれ、"そよ風"じゃ」
そう言ってセイルがこちらに向けて手をゆっくり扇ぐ仕草をすると、顔面に"突風"が叩きつけられた。
頭を持っていかれそうになった上に、空調機能が顔には効かないため、強烈な冷気が顔を襲う。
「ほほほ。なーに、ほんの冗談じゃよ。さあまずは指先から風を出すのじゃ」
なかなかパンチの効いた冗談だが、怪我をしたわけでもないのでとりあえず納得をする。
「あ……扇がなくてもいいんですか?」
「そのうち意味がわかるからまずは指先からやってみるのじゃ」
そう言われてはやってみるしかない。
少し離れたところにある枯れ草に向かって魔力を出しながら指先から風を出すイメージをする。
「お、出た!」
人生初の魔法である。
否応なしに心が踊る。
先ほど受けたイメージが強いためか、思っていたより強い風が発生して辺りの枯れ葉は次々に飛んでいき、枯れ草は激しく揺れている。
「風を弱めたり強めたりしてみるのじゃ。大事なのはイメージじゃぞ」
「わ、わかりました」
今出ている風はどう考えても扇風機の強はあるので、徐々に中、弱、果ては団扇で扇ぐくらいのイメージで押さえていく。
「今どういう風に調整したのじゃ?」
「その、体から指先に送られる魔力の量を調整するようなイメージでやりました」
「なるほど。良いイメージじゃ。それが魔力制御の基本じゃぞ。では次じゃ。今よりもうちょいと強い風を持続させるのじゃ」
言われた通り送り込む魔力を一定に保ち、扇風機の弱くらいにする。
(意外と難しい……)
「上手いものじゃのぅ。ではもう次に行こうかの。今、ボウズの近くにある枯れ葉も風の影響を受けておるのがわかるかの?そこではなく、あの枯れ草だけに風を送ってみるのじゃ」
確かに今自分の指からは放射状に風が出ている。
しかし言われてみれば、セイルがこちらに風を送った時は顔にしか当たっていなかったという事を思いだし、どうすれば良いか考える。
「出口を細めるか……」
指先に意識を集中し、出口を窄める。
「ほれ、風が弱まっておるぞ」
(確かにこれは難しいな……)
指先だけに集中してはダメなようだ。
結局上手く枯れ草に風を送れたのは三十分ほど後のことであった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ハァ……ハァ……」
息を切らして、大の字になって地面に転がる。
ジャージの空調機能のお陰で快適ではあるのだが、それでも額から汗が流れ落ちる。
「キュ」
キュウが「お疲れさん」とでも言うかのように、右前足を額の上に乗せてきた。
何を隠そうこの精霊、一緒に魔力制御の特訓を受けていたのだが、ものの十分程度でセイルから皆伝を伝えられていた。
そう考えるとこの行為も若干憎たらしいが、可愛いので許してしまうのであった。
そんな様子を見て何か察したのか、セイルがフォローを入れてくる。
「まあ、精霊は本来魔力制御で存在しておるような種族じゃからの。ボウズの気にするところではないて。寧ろ、ボウズは才能のあるほうじゃぞ」
「そう、なんですか?」
「おうとも。わしの昔の弟子なんぞはボウズと同じ段階まででも一日使っておったからの。それでも二つ名持ちにまでなっておるから、そう考えるとボウズは将来大成するかもしれんのぅ」
そう言ってセイルは愉快そうに笑っていたが、それよりも――
「あの、セイルさんって実は凄い人だったりします……?」
「ん? まあ昔の功績でちょっと名が知れておるくらいじゃよ。そんなことより、頼みたいことがあるんじゃが……」
「あ、はい。なんでしょう?」
「わしの事を『おじいちゃん』と呼んではくれんかのぅ」
「えっ!?」
「嫌じゃったら構わんのじゃがな……。どうもわしの教えに対して素直に努力しておるボウズの姿を見ておると、こう何か沸々と湧いてくるものが……のぅ?」
「い、嫌というか……」
「バカ息子は家を出ていってしもうたし、弟子も恥ずかしがり屋で、頼んでも呼んでくれんかったからのぅ。そういうものに憧れがあるんじゃよ……。つい最近まで赤の他人じゃったわけじゃが、しがない爺を助けると思うて、呼んではくれんかのぅ……?」
「そ、それじゃあ……」
自分としても、最初こそ厳つい顔に恐怖を覚えたりしたが、赤の他人の自分を助けてくれた上に、こんなに親身になって色々と教えてくれるセイルに対して親しみを覚えないわけがない。
実の祖父達に対しても、会ったことが無いしそもそも存命かすら知らないため後ろめたさも無い。
それならば――
「お、おじいちゃん……?」
自分自身呼んだ経験の無い呼称であったため、上手く言えているか不安であったが――
「はうあっ!!!」
「っ!?」
「ほほほ……良いのぅ……良いのぅ……」
効果は絶大だったようである。
「これは良い……これは良いぞ……」
「あの、おじいちゃん?」
「ん~? なんじゃいタケル?」
随分と幸せそうである。
というか呼び名もいつの間にか変わっている。
(まあ僕も満更でもないし……)
自然と問いかけも砕けた口調になっていく。
「次はどんな事をすれば良いの?」
「ほほほ。そうじゃったのぅ。弱めの風を一ヶ所に向ける事が出来たから、次は風を強く。つまり送る魔力の量を増やしても上手く制御出来るようにする特訓じゃ。少し難易度が上がるから心してかかるんじゃぞ」
「うん、わかった」
「ほほほ」
「キュァ~~……」
眠そうに欠伸をするキュウをよそに、特訓は次の段階へ進むのであった。
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