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第二章 軍属大学院 入学 編
132.結婚とはなんぞや-Ⅲ
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「ああそういえば、サキトは制服って言ってたけど、アイラも制服なんだね」
キュウの疑問への説明も終わったところで、自分も気になっていた事を聞いてみた。
アイラの家はかなり規模の大きな商会のようなので、ドレスなども自前の物を持っていそうだと勝手に思っており、制服を着ているのを見て不思議に思っていたのだ。
「ん? まあドレスもあるけど、私までドレス着ちゃったら制服着てくるのがサキトだけになっちゃうし――」
「そんな事気にしてたのかよ。別に俺は気にしねぇぞ?」
「あんたが気にしなくても私もソフィアもどうしてもちょっとは気にしちゃうのよ。だからスーツあげるって言ってもあんた断るし……。それに私もドレスはいろいろ疲れちゃうから制服の方が楽だし、都合が良いのよ。だから別にあんたが気にすることじゃないわ」
「おお……というか今までパーティーで基本的に制服着てたのもそういう事だったのか……。俺もさっさとスーツ買えるくらいには稼げるようにならねぇとなぁ……」
「だから気にしなくていいって言ってんでしょうが」
なんだか色んな意味で申し訳ない気持ちになってきた。
自分も早く稼げるようになって、どうにかハヴァリーさんなどにお返しをしたいものだ。
そんな事を考えていると、小さな鉦の音が鳴る。
「あら、着いたみたいね。それじゃあ行きましょ」
そう言うとアイラは立ち上がって馬車の扉を開けて外へと出る。
どうやら今の鉦の音が到着を知らせる合図のようだ。
全く止まった感覚がなかったのだが、よく考えれば進んでいる感覚も無かった事を思い出す。
車体が魔法で浮いているが故の現象なのだろう。
(ん? じゃあ何で車輪がついてるんだ……?)
車体を浮かせられるならそのまま馬で引っ張ればいい気もするのだが、まあきっと何か理由があるのだろう。
そうとりあえず納得して自分も馬車から降りる。
地面に敷かれた石畳は特に貴族の居住区画だからといって違うわけでないようで、通りを見るだけでは特に他の区画との違いは感じられない。
違いを感じる部分があるとすれば、その通りに沿うように立ち並ぶ屋敷が作り出す景色だろうか。
どれも一家族が住むにはあまりにも大きく、目の前にあるおそらくソフィアの家と思わしき屋敷も、その例に違わず大きいのだが――
(なんか思ったより小さいな……。それこそ今住んでる屋敷よりも少し大きいくらい……)
四大貴族だとかなんとか呼ばれているらしいので、なんとなく途轍もない程の巨大な豪邸にでも住んでいるのではと考えていたのだが、意外と小さい。
門の前に軍人とはまた違った制服を着た人が二人ほど立って門番のような事をしてはいるが、自分の住んでいる場所とそれ程に差が無いため何だか拍子抜け――
(――いや、これはおかしいな……)
この半年程広い家に住みすぎて感覚が狂ってしまっていたようだ。
たった数人が住むためだけに、こんなマンションみたいな大きさの屋敷なんて必要ないのだ。
「行った事無ぇからしらねぇけどよ、ソフィアの実家ってこの屋敷よりもっとデカいんだよな? ちょっと想像つかねぇよな」
サキトがそんな感覚の狂っていない意見を述べる。
いや、自分もこれよりも大きな屋敷はあまり想像できないからまだ大丈夫なはずだ。
(うん、きっと大丈夫だ)
そんな現実逃避をしていると、門の前に立っていた門番のうち、薄い水色の短い髪の男性の方が捲し立てるように話しかけてきた。
「おお、誰かと思えばサキトとアイラじゃねぇか! よく来たな! 一応聞いとくがお嬢の合格祝いにきてくれたんだよな――って、そっちのスーツ着てんのは……?」
「こんばんはケビンさん。えーっとこっちにいるのは――」
「――ソフィアの命の恩人じゃぞ。なあそうじゃろう少年?」
ケビンという名前らしい彼の質問に答えようとしたアイラの言葉を、優しげな柔らかく深い声が遮った。
声のした方向には、一人の老人がいた。
顔や手に刻まれたしわは深く、少し曲がった腰を年期の入った木の杖で支えており、一目で相応の年を重ねているとわかった。
しかしそのわりに毛髪はしっかりと生えそろっており、一つに結わえられたその深緑の毛髪と彼の風貌から、まるで生命力溢れる樹齢数百年を超えた一本の巨木のような印象を受けた。
それと同時に、彼とどこかで会ったような既視感を――
(あれ? この魔力って――)
「ふぅ、数日ぶりじゃのう少年」
ため息のような薄い笑いを漏らして、そう言葉を続けると彼は右手を差し出し、その上に一匹の深緑の魔力で形作られた小鳥を生みだした。
「あ、じゃあやっぱりあなたが――」
自分が言い切るよりも前に、ケビンとやらが慌てて飛び込んでくる。
「おっ、大旦那様!? どうしてこんな所にいらっしゃるのですか!?」
「ん? ワシがかわいい曾孫の友人と恩人を出迎えて何が悪いのじゃケビンよ」
「い、いえそういう問題ではなく、お腰の方が悪いのですから安静にですね……」
「なあに魔法で補助すればどうと言うことはないわい。さて、外ではなんじゃからパーティーまでの間、中で話しでもしようぞ少年よ。アイラの嬢ちゃんたちはまた後でのう」
「え? じゃあいつも俺らが移動を手伝ってる意味は――?」
「ほれ、遠慮せず中に入るがいいぞ」
老人とケビンとやらのやりとりに目を白黒させていると、何かに柔らかく背中を押される。
「うわわっ!?」
唐突だったため抵抗できず、そのまま門をくぐってしまった。
「あっ、ちょっ、お前!」
「まあいいじゃないケビン、大旦那様が連れて行ってるんだから何も問題はないわ」
「ま、まあそうか……」
後ろからケビンとやらと誰か女性のそんなやりとりが聞こえる。
恐らく門番をしていたもう一人の濃い茶髪の女性の声だろうか。
とりあえず問題は無い様なので、前を歩く老人の後を追いかけながら声をかける。
「あ、あの……ディムロイさん……ですか?」
老人は自分を確認するように少し目線をこちらに向けながら答える。
「うむ、ちゃんと魔力感知はできるようじゃのう。まあ積もる話もある。部屋に戻ってからゆっくりと話そうぞ」
そう言われるがまま、自分は屋敷の中へとつれていかれた。
これがソフィアの曾祖父であり、おじいちゃんの古くからの友人である『ディムロイ・リブルス・ラグルスフェルト』との出会いであった。
キュウの疑問への説明も終わったところで、自分も気になっていた事を聞いてみた。
アイラの家はかなり規模の大きな商会のようなので、ドレスなども自前の物を持っていそうだと勝手に思っており、制服を着ているのを見て不思議に思っていたのだ。
「ん? まあドレスもあるけど、私までドレス着ちゃったら制服着てくるのがサキトだけになっちゃうし――」
「そんな事気にしてたのかよ。別に俺は気にしねぇぞ?」
「あんたが気にしなくても私もソフィアもどうしてもちょっとは気にしちゃうのよ。だからスーツあげるって言ってもあんた断るし……。それに私もドレスはいろいろ疲れちゃうから制服の方が楽だし、都合が良いのよ。だから別にあんたが気にすることじゃないわ」
「おお……というか今までパーティーで基本的に制服着てたのもそういう事だったのか……。俺もさっさとスーツ買えるくらいには稼げるようにならねぇとなぁ……」
「だから気にしなくていいって言ってんでしょうが」
なんだか色んな意味で申し訳ない気持ちになってきた。
自分も早く稼げるようになって、どうにかハヴァリーさんなどにお返しをしたいものだ。
そんな事を考えていると、小さな鉦の音が鳴る。
「あら、着いたみたいね。それじゃあ行きましょ」
そう言うとアイラは立ち上がって馬車の扉を開けて外へと出る。
どうやら今の鉦の音が到着を知らせる合図のようだ。
全く止まった感覚がなかったのだが、よく考えれば進んでいる感覚も無かった事を思い出す。
車体が魔法で浮いているが故の現象なのだろう。
(ん? じゃあ何で車輪がついてるんだ……?)
車体を浮かせられるならそのまま馬で引っ張ればいい気もするのだが、まあきっと何か理由があるのだろう。
そうとりあえず納得して自分も馬車から降りる。
地面に敷かれた石畳は特に貴族の居住区画だからといって違うわけでないようで、通りを見るだけでは特に他の区画との違いは感じられない。
違いを感じる部分があるとすれば、その通りに沿うように立ち並ぶ屋敷が作り出す景色だろうか。
どれも一家族が住むにはあまりにも大きく、目の前にあるおそらくソフィアの家と思わしき屋敷も、その例に違わず大きいのだが――
(なんか思ったより小さいな……。それこそ今住んでる屋敷よりも少し大きいくらい……)
四大貴族だとかなんとか呼ばれているらしいので、なんとなく途轍もない程の巨大な豪邸にでも住んでいるのではと考えていたのだが、意外と小さい。
門の前に軍人とはまた違った制服を着た人が二人ほど立って門番のような事をしてはいるが、自分の住んでいる場所とそれ程に差が無いため何だか拍子抜け――
(――いや、これはおかしいな……)
この半年程広い家に住みすぎて感覚が狂ってしまっていたようだ。
たった数人が住むためだけに、こんなマンションみたいな大きさの屋敷なんて必要ないのだ。
「行った事無ぇからしらねぇけどよ、ソフィアの実家ってこの屋敷よりもっとデカいんだよな? ちょっと想像つかねぇよな」
サキトがそんな感覚の狂っていない意見を述べる。
いや、自分もこれよりも大きな屋敷はあまり想像できないからまだ大丈夫なはずだ。
(うん、きっと大丈夫だ)
そんな現実逃避をしていると、門の前に立っていた門番のうち、薄い水色の短い髪の男性の方が捲し立てるように話しかけてきた。
「おお、誰かと思えばサキトとアイラじゃねぇか! よく来たな! 一応聞いとくがお嬢の合格祝いにきてくれたんだよな――って、そっちのスーツ着てんのは……?」
「こんばんはケビンさん。えーっとこっちにいるのは――」
「――ソフィアの命の恩人じゃぞ。なあそうじゃろう少年?」
ケビンという名前らしい彼の質問に答えようとしたアイラの言葉を、優しげな柔らかく深い声が遮った。
声のした方向には、一人の老人がいた。
顔や手に刻まれたしわは深く、少し曲がった腰を年期の入った木の杖で支えており、一目で相応の年を重ねているとわかった。
しかしそのわりに毛髪はしっかりと生えそろっており、一つに結わえられたその深緑の毛髪と彼の風貌から、まるで生命力溢れる樹齢数百年を超えた一本の巨木のような印象を受けた。
それと同時に、彼とどこかで会ったような既視感を――
(あれ? この魔力って――)
「ふぅ、数日ぶりじゃのう少年」
ため息のような薄い笑いを漏らして、そう言葉を続けると彼は右手を差し出し、その上に一匹の深緑の魔力で形作られた小鳥を生みだした。
「あ、じゃあやっぱりあなたが――」
自分が言い切るよりも前に、ケビンとやらが慌てて飛び込んでくる。
「おっ、大旦那様!? どうしてこんな所にいらっしゃるのですか!?」
「ん? ワシがかわいい曾孫の友人と恩人を出迎えて何が悪いのじゃケビンよ」
「い、いえそういう問題ではなく、お腰の方が悪いのですから安静にですね……」
「なあに魔法で補助すればどうと言うことはないわい。さて、外ではなんじゃからパーティーまでの間、中で話しでもしようぞ少年よ。アイラの嬢ちゃんたちはまた後でのう」
「え? じゃあいつも俺らが移動を手伝ってる意味は――?」
「ほれ、遠慮せず中に入るがいいぞ」
老人とケビンとやらのやりとりに目を白黒させていると、何かに柔らかく背中を押される。
「うわわっ!?」
唐突だったため抵抗できず、そのまま門をくぐってしまった。
「あっ、ちょっ、お前!」
「まあいいじゃないケビン、大旦那様が連れて行ってるんだから何も問題はないわ」
「ま、まあそうか……」
後ろからケビンとやらと誰か女性のそんなやりとりが聞こえる。
恐らく門番をしていたもう一人の濃い茶髪の女性の声だろうか。
とりあえず問題は無い様なので、前を歩く老人の後を追いかけながら声をかける。
「あ、あの……ディムロイさん……ですか?」
老人は自分を確認するように少し目線をこちらに向けながら答える。
「うむ、ちゃんと魔力感知はできるようじゃのう。まあ積もる話もある。部屋に戻ってからゆっくりと話そうぞ」
そう言われるがまま、自分は屋敷の中へとつれていかれた。
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