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第九章 景品を取り返せ!
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「ヒヒッ、お前らばっかり贅沢しやがって……!」
斎藤清は怒声を張り上げ続ける。怒りで我を失っているようだ。
「ちょっとは恵んでくれてもいいじゃねえか! あのパソコンだって、どうせお前らみたいな世間知らずのガキには宝の持ち腐れだろ! 俺が使ってやった方が幸せだっ!」
その瞬間だった。
気付いたら、私は一歩前に踏み出していた。
桜二くんと颯馬くんが驚いたように息をのむ。急に飛び出してごめんと謝りつつも、私はどうしても黙っていられなかった。
「……嬉しいわけ、ないじゃない」
斎藤清が不快そうに私を睨んだ。
「どんなに高価でも、どんなに便利でも関係ない。自分が盗品にされて、喜び物なんてあるわけないよ!」
「僕に文句があるというのか――ッ!」
ちょうどその時、バタバタとたくさんの人がこちらに向かう足音が聞こえた。
廊下の奥から現れた先生たちと何人かの警察は私たちを見ては絶句し、抑えられた斎藤清を見たときには何人か気を失っていそうなほど顔色を真っ白にする。
「あ、あの……これはいったい」
警察の一人が、信じられないといった表情で呟く。
その言葉に、斎藤清はギクリと体を硬直させた。もう、逃げ場はない。
「ああ、この人が窃盗の犯人です。偶然現場に遭遇したので、取り逃がしてはならない一心で捕まえさせてもらいました」
「なッ、犯人ですか!? 本当にどうなっているの!?」
爽やかな笑顔で心にないことを言う桜二くん。
先生たちも呆気にとられたように斎藤清と私たちの顔を見比べるが、桜二くんは事前に考えていたセリフを淡々と述べるだけであった。
そうして簡単な説明をした後、桜二くんは感情が抜け落ちたとしか思えない顔で大人たちを見た。
「オレはちゃんと約束を守ったので、あとは先生たちに任せていいですよね?」
同じ中学一年生とは思えないほどの圧力に、先生たちはされるがまま気まずそうに頷く。
颯馬くんも押さえていた斎藤清を立たせると、引きずるように警官たちへと引き渡す。さすがに勝てないと踏んだのか、斎藤清もやっと動きを止めた。
「あ、そうだ」
そんな彼とすれ違いざま、桜二くんは思い出したように声を上げる。
「斎藤さん、さっきから散々にオレにたちのことをバカにしてたけど……」
「……っ、んだよ」
口角を上げて、楽しいくて仕方ないと言った表情。
天使のような笑顔で、桜二くんは声のトーンを落として言葉を続けた。
「そんな中学一年生にボロクソに負けた今、どんな気持ち?」
す、すごい煽りを見てしまった……。
大きな声ではないものの、確かな棘を含んだ言葉はよく通る。何を言われたか理解できないといった様子で、斎藤清は言葉を失った。
最後に言いたいことが言えて満足したのか、桜二くんは興味を失ったように斎藤清から視線を外した。
「そうだ。ハイ、これも渡しておきますね。録音も映像も、証拠は全部揃ってますので」
桜二くんはにこやかにレコーダーとSDカードを先生に押し付ける。おそらく、さっき撮っておいた犯行映像などだろう。
あたふたと困りながらも先生はそれを受け取り、近くにいた警察にそれを渡した。
「盗まれた景品については、先ほど別の警官に伝えてありますが……犯人の自宅にある可能性が高いです。証拠品なので林間学校の間には帰ってこないでしょうが、学校側はそれでも問題ありませんよね?」
「は、はい! そうですね、こちらが紛失したわけではないと明らかになったので」
最後に念を押すように確認して、桜二くんはほっとしたように小さく息をついた。
「……嘘だ。俺が……こんなことで……」
警察に手錠をかけられた斎藤清が小さく呟いた。
警官はそれに反応することなく、両腕を掴んで連行していく。去り際に感謝の言葉を述べていたが、颯馬くんは慣れた様子で「当然のことをしたまでだ」と軽く手を上げた。
「ちくしょう……ちくしょう、ふざけんなよ……こんなガキどもに……!」
文句を口にしながらも、抵抗する気力すらない。手錠の乾いた金属音を響かせ、斎藤清は階段の影に消えていった。
桜二くんが協力を頼んでいた警察はともかく、ここまで何も知らされなかった先生たちはお互いに顔を見合わせて困惑するばかり。途中から騒ぎを聞きつけたホテルの責任者も合流してきて、桜二くんと颯馬くんは事件説明や対応処理に連れて行かれてしまった。
(あともうちょっとでスタンプラリーが終わるから、他のみんなも戻ってくるころだね)
キャンプファイヤーまでに解放されるといいなあ、なんて考えつつ、私も先ほど任された仕事を果たすべく行動に移る。
斎藤清は怒声を張り上げ続ける。怒りで我を失っているようだ。
「ちょっとは恵んでくれてもいいじゃねえか! あのパソコンだって、どうせお前らみたいな世間知らずのガキには宝の持ち腐れだろ! 俺が使ってやった方が幸せだっ!」
その瞬間だった。
気付いたら、私は一歩前に踏み出していた。
桜二くんと颯馬くんが驚いたように息をのむ。急に飛び出してごめんと謝りつつも、私はどうしても黙っていられなかった。
「……嬉しいわけ、ないじゃない」
斎藤清が不快そうに私を睨んだ。
「どんなに高価でも、どんなに便利でも関係ない。自分が盗品にされて、喜び物なんてあるわけないよ!」
「僕に文句があるというのか――ッ!」
ちょうどその時、バタバタとたくさんの人がこちらに向かう足音が聞こえた。
廊下の奥から現れた先生たちと何人かの警察は私たちを見ては絶句し、抑えられた斎藤清を見たときには何人か気を失っていそうなほど顔色を真っ白にする。
「あ、あの……これはいったい」
警察の一人が、信じられないといった表情で呟く。
その言葉に、斎藤清はギクリと体を硬直させた。もう、逃げ場はない。
「ああ、この人が窃盗の犯人です。偶然現場に遭遇したので、取り逃がしてはならない一心で捕まえさせてもらいました」
「なッ、犯人ですか!? 本当にどうなっているの!?」
爽やかな笑顔で心にないことを言う桜二くん。
先生たちも呆気にとられたように斎藤清と私たちの顔を見比べるが、桜二くんは事前に考えていたセリフを淡々と述べるだけであった。
そうして簡単な説明をした後、桜二くんは感情が抜け落ちたとしか思えない顔で大人たちを見た。
「オレはちゃんと約束を守ったので、あとは先生たちに任せていいですよね?」
同じ中学一年生とは思えないほどの圧力に、先生たちはされるがまま気まずそうに頷く。
颯馬くんも押さえていた斎藤清を立たせると、引きずるように警官たちへと引き渡す。さすがに勝てないと踏んだのか、斎藤清もやっと動きを止めた。
「あ、そうだ」
そんな彼とすれ違いざま、桜二くんは思い出したように声を上げる。
「斎藤さん、さっきから散々にオレにたちのことをバカにしてたけど……」
「……っ、んだよ」
口角を上げて、楽しいくて仕方ないと言った表情。
天使のような笑顔で、桜二くんは声のトーンを落として言葉を続けた。
「そんな中学一年生にボロクソに負けた今、どんな気持ち?」
す、すごい煽りを見てしまった……。
大きな声ではないものの、確かな棘を含んだ言葉はよく通る。何を言われたか理解できないといった様子で、斎藤清は言葉を失った。
最後に言いたいことが言えて満足したのか、桜二くんは興味を失ったように斎藤清から視線を外した。
「そうだ。ハイ、これも渡しておきますね。録音も映像も、証拠は全部揃ってますので」
桜二くんはにこやかにレコーダーとSDカードを先生に押し付ける。おそらく、さっき撮っておいた犯行映像などだろう。
あたふたと困りながらも先生はそれを受け取り、近くにいた警察にそれを渡した。
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「は、はい! そうですね、こちらが紛失したわけではないと明らかになったので」
最後に念を押すように確認して、桜二くんはほっとしたように小さく息をついた。
「……嘘だ。俺が……こんなことで……」
警察に手錠をかけられた斎藤清が小さく呟いた。
警官はそれに反応することなく、両腕を掴んで連行していく。去り際に感謝の言葉を述べていたが、颯馬くんは慣れた様子で「当然のことをしたまでだ」と軽く手を上げた。
「ちくしょう……ちくしょう、ふざけんなよ……こんなガキどもに……!」
文句を口にしながらも、抵抗する気力すらない。手錠の乾いた金属音を響かせ、斎藤清は階段の影に消えていった。
桜二くんが協力を頼んでいた警察はともかく、ここまで何も知らされなかった先生たちはお互いに顔を見合わせて困惑するばかり。途中から騒ぎを聞きつけたホテルの責任者も合流してきて、桜二くんと颯馬くんは事件説明や対応処理に連れて行かれてしまった。
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