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第九章 景品を取り返せ!
83.終了スタンプラリー
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それから間もなく、スタンプラリーの結果発表が行われた。
今ごろ事件の対応に追われている学年主任ではなく、別の先生がマイクを持って前に立つ。優秀な結果を残したグループの生徒の名前を呼び、上位順にみんなの前に出て感想を述べる。
拍手しながらその光景を眺めながら、私は恐ろしさに震えた。
(ひ、ひえ……スタンプラリーに参加しなくってよかった……!)
てっきり呼ばれて終わりだと思っていたが、まさかあんなに目立つことをさせられるなんて。
一位の男子が朗らかに喜びを語るのを尊敬の目で見る。眼鏡を輝かせる姿は自身にあふれており、優等生っぽい雰囲気に反して言葉巧みな印象を受ける。
事件の緊張感から解き放たれた私は、のんびりとした心でスタンプラリーの閉会式を楽しんだ。
(でもさすがに、景品は学校に戻ってから改めて……ってなったんだ)
やはり最初から景品目当ての生徒は少なかったのか、急にタイミングが変わったことに不満をぶつける生徒はいなかった。
というか、みんなこの後のキャンプファイヤーに意識を持っていかれてたというべきか。
スタンプラリーの閉会式も終わり、この後に残されるのはバーベキューとキャンプファイヤーだけだ。
準備に時間がかかるから、一度休憩時間が挟むが……男女変わらず、みんな休憩よりも身支度に時間を割くだろう。
(ジャージ参加だから、おしゃれしてもそんなに変わらない気がするけど……)
なんて言葉を心の中にしまって、私はホテルの部屋に戻る。
帰りは野上くんがアキくんを支えようとしていたが、アキくんはそれとなく断っていた。
「もうっ、一条さまはどちらにいらっしゃるのかしら! もう時間ないのに」
途中、綾小路さんの声が聞こえて、慌ててエレベーターに駆け込む。
こんな時に顔を合わせたら、また嫌味を言われそうだ。
(綾小路さん、まだ颯馬くんを誘えてないんだ)
そんな余裕もなかったし、颯馬くんたちとは一度もキャンプファイヤーの話にならなった。
アキくんと同じく、私が踊らないと知ったら親切心で誘ってくれそうだったから、と意図的に避けていたのもある。
(颯馬くんたちが踊らない、なんてありえないよね。男同士で踊るイメージもないし、綾小路さんと一緒に踊るのかな)
なぜか突然キャンプファイヤーのジンクスが頭を過り、私は全力で変な考えを追い払った。どうせ私は踊るつもりないし、おかしなことを考えるのはやめよう。
胸にもやがかかるような感じを振り払うように、私は急ぎ足で部屋に駆け込む。
ささっとジャージに着替えてから、私はベッドに大の字で転がった。
「疲れたから、変なことを考えちゃったんだよ……」
時間まで少し休もう。
そう考えてスマホのアラームを設定しようとしたその時。
コンコンコン
部屋のドアが叩かれる音がした。
綾小路さんなら鍵で入ってくるし、アキくんは女子階に来れない。事件の話で先生が来たのかなんて考えつつ、私は返事をしてドアを開けた。
「ユキ、相手も確認しないでドアを開けちゃダメだよ」
「……!? ……っ!? お、桜二くん!?」
考えもしなかった相手が現れて、私はひっくり返りそうになった。
そんな私の気持ちなんて知らないように、桜二くんはへらっと笑う。
「来ちゃった♡」
「来ちゃったじゃないよ!? バレたらどうするの!」
思わず大きな声が出そうになった私の口を覆い、桜二くんは考えの読めない笑顔のままスッと部屋の中に身を滑らせた。
パタンとドアが閉まる音が無情にも響き、先生に見つかったら反省文という状況が再び私を襲う。部屋の中に入れてしまった以上、どう言いつくろおうにも私も怒られる。
「それで、何かあったの?」
私の恨みがましい視線を受け流して、桜二くんはにこりと微笑んだ。
「用が無きゃ、友達の部屋に遊びに行けない?」
「女子の部屋に入るのが問題では……」
「そんなルールを破るのがお約束じゃない?」
ふふ、と楽しそうに桜二くんはずいぶんと機嫌がいいらしい。
頭を抱えたくなるけど、無理に追い出さない時点で私の負けなのだろう。
(でも、元気になってよかった)
ドアの前で話すと外に漏れて聞かれるかもしれないので、私は広縁に座るよう促した。
ただ私としては向かい側に座るものだとばかり思っていたので、当然のように隣に来られて言葉を失う。
「いつもアキが占領してたからね。オレもこうしてみたかったんだ」
「いや……あの……」
「いやだったら移動するけど」
ここで断るのも変に意識しているようで、私は強がって大丈夫だと答えた。
しかしそんな考えは見透かされているようで、桜二くんはくすくすと楽しそうに肩を揺らす。このどこが王子様なんだそう呼んでいる女子たち。
どんどん冷めていく私の視線に、桜二くんが降参といったように両手を軽く上げた。
「無事斎藤清の部屋から景品も見つかって、ちゃんと事件は解決したって話しておこうと思ってね」
今ごろ事件の対応に追われている学年主任ではなく、別の先生がマイクを持って前に立つ。優秀な結果を残したグループの生徒の名前を呼び、上位順にみんなの前に出て感想を述べる。
拍手しながらその光景を眺めながら、私は恐ろしさに震えた。
(ひ、ひえ……スタンプラリーに参加しなくってよかった……!)
てっきり呼ばれて終わりだと思っていたが、まさかあんなに目立つことをさせられるなんて。
一位の男子が朗らかに喜びを語るのを尊敬の目で見る。眼鏡を輝かせる姿は自身にあふれており、優等生っぽい雰囲気に反して言葉巧みな印象を受ける。
事件の緊張感から解き放たれた私は、のんびりとした心でスタンプラリーの閉会式を楽しんだ。
(でもさすがに、景品は学校に戻ってから改めて……ってなったんだ)
やはり最初から景品目当ての生徒は少なかったのか、急にタイミングが変わったことに不満をぶつける生徒はいなかった。
というか、みんなこの後のキャンプファイヤーに意識を持っていかれてたというべきか。
スタンプラリーの閉会式も終わり、この後に残されるのはバーベキューとキャンプファイヤーだけだ。
準備に時間がかかるから、一度休憩時間が挟むが……男女変わらず、みんな休憩よりも身支度に時間を割くだろう。
(ジャージ参加だから、おしゃれしてもそんなに変わらない気がするけど……)
なんて言葉を心の中にしまって、私はホテルの部屋に戻る。
帰りは野上くんがアキくんを支えようとしていたが、アキくんはそれとなく断っていた。
「もうっ、一条さまはどちらにいらっしゃるのかしら! もう時間ないのに」
途中、綾小路さんの声が聞こえて、慌ててエレベーターに駆け込む。
こんな時に顔を合わせたら、また嫌味を言われそうだ。
(綾小路さん、まだ颯馬くんを誘えてないんだ)
そんな余裕もなかったし、颯馬くんたちとは一度もキャンプファイヤーの話にならなった。
アキくんと同じく、私が踊らないと知ったら親切心で誘ってくれそうだったから、と意図的に避けていたのもある。
(颯馬くんたちが踊らない、なんてありえないよね。男同士で踊るイメージもないし、綾小路さんと一緒に踊るのかな)
なぜか突然キャンプファイヤーのジンクスが頭を過り、私は全力で変な考えを追い払った。どうせ私は踊るつもりないし、おかしなことを考えるのはやめよう。
胸にもやがかかるような感じを振り払うように、私は急ぎ足で部屋に駆け込む。
ささっとジャージに着替えてから、私はベッドに大の字で転がった。
「疲れたから、変なことを考えちゃったんだよ……」
時間まで少し休もう。
そう考えてスマホのアラームを設定しようとしたその時。
コンコンコン
部屋のドアが叩かれる音がした。
綾小路さんなら鍵で入ってくるし、アキくんは女子階に来れない。事件の話で先生が来たのかなんて考えつつ、私は返事をしてドアを開けた。
「ユキ、相手も確認しないでドアを開けちゃダメだよ」
「……!? ……っ!? お、桜二くん!?」
考えもしなかった相手が現れて、私はひっくり返りそうになった。
そんな私の気持ちなんて知らないように、桜二くんはへらっと笑う。
「来ちゃった♡」
「来ちゃったじゃないよ!? バレたらどうするの!」
思わず大きな声が出そうになった私の口を覆い、桜二くんは考えの読めない笑顔のままスッと部屋の中に身を滑らせた。
パタンとドアが閉まる音が無情にも響き、先生に見つかったら反省文という状況が再び私を襲う。部屋の中に入れてしまった以上、どう言いつくろおうにも私も怒られる。
「それで、何かあったの?」
私の恨みがましい視線を受け流して、桜二くんはにこりと微笑んだ。
「用が無きゃ、友達の部屋に遊びに行けない?」
「女子の部屋に入るのが問題では……」
「そんなルールを破るのがお約束じゃない?」
ふふ、と楽しそうに桜二くんはずいぶんと機嫌がいいらしい。
頭を抱えたくなるけど、無理に追い出さない時点で私の負けなのだろう。
(でも、元気になってよかった)
ドアの前で話すと外に漏れて聞かれるかもしれないので、私は広縁に座るよう促した。
ただ私としては向かい側に座るものだとばかり思っていたので、当然のように隣に来られて言葉を失う。
「いつもアキが占領してたからね。オレもこうしてみたかったんだ」
「いや……あの……」
「いやだったら移動するけど」
ここで断るのも変に意識しているようで、私は強がって大丈夫だと答えた。
しかしそんな考えは見透かされているようで、桜二くんはくすくすと楽しそうに肩を揺らす。このどこが王子様なんだそう呼んでいる女子たち。
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