『最後の王女』が生きた世界

なごまる

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コラム

竜は最強の獣なのか?

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 竜が最強の獣と呼ばれた時代も、今となっては過去の栄光であろう。獣の中で竜に分類されるものは皆、翼を持ち、手足があるか四脚(ワイバーン、ワイアーム類は近年分類が別種として見直された)の肉食獣である。しかし現存する竜は皆小柄で、多くの生態系においてもある程度有利という位置付け。彼らが最強の称号を我が物としていた頃はほとんど四脚の竜で、体は現在よりもひと回りふた回り大きいだけでは済まなかった。まだ魔法の存在しなかった当時、大木よりも高く大きな竜の多くが体表を丈夫な鱗に覆われ、足音が聞こえれば誰もが震え上がって隠れる程恐れられていたのだ。ただ一つの種族を除いて。

 同じ時代、竜や他の獣が住むオーネ大陸の外から、海を渡ってやって来た者たちがいた。彼らは大陸のどの獣とも違う見た目で、二足歩行で小さいが力は強く、頭部以外の体毛がごく薄い不思議な獣たちだった。争う事を好み、遊びで殺戮を行う野蛮さがすぐさま有名になり、彼らは「悪魔族」と呼ばれるようになる。
 しばらく大陸の森中を荒らして回り、ついに巨大な竜たちに出くわすと、悪魔族は早速集団で狩を始めた。それまで森に入って百歩歩けば竜に会うとまで言われていたというのに、大きくて強い竜は見る見る内に減り、ほとんど見かけられなくなった。脅威が一つ無くなった他の獣たちはひと時の安息を得たが、悪魔族はやはり戦いの手を止める事なく獣たちにも襲いかかる。悪魔族は戦い甲斐のある相手を求めて、雑魚に当たる小さな獣たちを無残にも引き裂いていった。

 大陸には竜よりも強い獣はいなかった。圧倒的な悪魔たちの殺戮を止めるには、獣たちは結束して立ち向かうしかない。そこで獣たちは異種族同士で大規模なコロニーを作り、悪魔たちを海の向こうへ追い返すことにする。共同生活を送り、悪魔一人でも縄張りに侵入した瞬間に袋叩きにして川に流すことを繰り返した。この獣たちの共同体は、悪魔からの襲撃を恐れる者たちが次々と加わることで自然と拡大し、その後の時代に「国」として発展することになる。
 大いなる脅威の消えた後もこうして異種族同士で助け合い、生きていくことができるのは大変素晴らしいことだ。しかしその繋がりの「強さ」は驕りを生み、時折衝突することがある。戦いは生きていく為には避けられない。だがその矛先を向ける相手が何者であるか、理解しようとしない者はいずれ身を滅ぼすことになる、という教訓かもしれない。
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