余命百日の僕は庭で死ぬ

序章

　ツイッターで完結した「100日後に死ぬワニ」を見た。

　作中ではワニだが、人は誰しも自分の死ぬ時を知らない。

　ましてや、健康な状態であれば尚更のこと。

　完結したこの日は、結末がわかっていながらも、それまでほのぼのとした話に油断していた俺は、ポッカリ胸の中に穴が空いたような気がした。

　

　少し冷めたコーヒーカップをカウンターに起き、頬杖を付いて窓の外を眺めた。

　代わり映えのない景色を見て、早三年が過ぎようとしていた。

　都会の生活に憧れ、高校卒業と同時に上京した俺は、社会の厳しさを痛感して五年でギブアップをした。

　変なプライドが邪魔をして、二年程バイトをしながらも東京にしがみついた。

　

　※

　

「あなた、ちゃんとご飯食べてる？」

　じいちゃんの法事で実家に帰った時、いつも心配してくれている母親は、この時も変わらず優しい声をかけてくれた。

　逆にその優しさを裏切る様な気がして、素直に実家に出戻りすることが出来なかった。

　

　実家から更に田舎に向かった所に、じいちゃんの住んでた家があった。

　ばあちゃんは足腰が悪く、じいちゃんが亡くなってから少しして施設で暮らしている。

　実家からわりと近いので、顔を合わす機会は増えたと母親は言っていた。

　一人息子である俺の父親がばあちゃんの面倒を見るのは必然的なことで、母親もそれは最初から分かっていとことで、嫁姑としては仲良くやっている感じだった。

　それでも、じいちゃんが亡くなり、ばあちゃんも戻ることもないこの家をどうするのか、いつかは答えを出さないといけない案件だったのは間違いない。

　

「俺が住むっていうのは、ダメかな？」

　

　一人息子である父親の、そのまた一人息子の俺。

　我が夜神家が、相続で揉める要素は一つも無かった。