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目の上のタンコブ様は恋のライバル
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「いろはちゃん、来ないのかな?」
「来るわけないじゃないですか。向こうも仕事中なんだし。なんだったらお店に行けばいいじゃないですか」
「バカ野郎。偶然を装おって会わなきゃ気まずいだろうが!」
「……ですよね」
知らない人が聞いたら、なんてウブな人なのだろうと思ってしまうセリフである。
声も大きいが負けじと身体もデカイ。柔道をしていた頃に良い肉を食べまくったからだと本人から何回も聞かされた。
裕福な家庭にどっぷり浸かったからこそのセリフだろう。聞く人によっては不快に思うかもしれないが、彼がそんな事をいちいち気にして言葉を発することはなかった。
そんなガタイの良い彼なのに、桜井さんにはどうも逃げ腰になっていた。
───去年のことだ。彼女の店を改装している時から、可愛い可愛いと何度もコーヒーを飲みながら俺は聞かされていた。それだけ言われたら、どれだけ可愛いのかと俺の評価も自然と上がって行ったのだが、見てない人を評価するわけにもいかなかった。
五十嵐さんも三十歳。特に付き合ってる彼女もいなかったし、冗談半分で言ってみた。
「告白したら良いじゃないですか」
「やっぱりそう思うか?」
まんざらでもない返答に俺は絶句した。
仕事上で知り合った、ただのお客さんに告白なんて、上手くいくはずないのは明白だった。逆に聞きたい、どれだけ自分に自信があるのですかと。
「その彼女、おいくつなんですか?」
「知らん。けど俺より若いだろうな」
「彼氏とかいないのでしょうかね?」
「知らん。けどいつも一人だからいないのだろう」
なんてお花畑なのか。仮に彼氏や旦那がいたらきっぱり諦めるのだろうか。毎日同じことを聞かされるこっちとしては、白黒付けてくれた方が助かるのだが。
いや、旦那ならともかく彼氏位なら俺の方が良いだろうと言い出しかねない。
「もし……付き合ってる人がいたらどうするんですか?」
「引っ越し改装に一度も顔を出さないような男なんざ、とっとと別れた方がいいだろ。この町に住むのなら俺と結婚した方が幸せだろ?」
「彼氏さんには自分の仕事があるのかもしれないし……。ほら、東京の店の片付けとか……」
「やっぱりそうなのかな?」
デカイ図体を縮め、弱々しい声を出す。なんなんだこの人は。周りお構い無しに豪快で勝手に物事を進めるかと思えば、未確認な情報にうろたえて。人間味があると言えばそうなのだろうが。
「よし、決めた」
コーヒーを飲みほし、空になったカップを雑に置いて耳障りな音を店内に響かせる。
「来るわけないじゃないですか。向こうも仕事中なんだし。なんだったらお店に行けばいいじゃないですか」
「バカ野郎。偶然を装おって会わなきゃ気まずいだろうが!」
「……ですよね」
知らない人が聞いたら、なんてウブな人なのだろうと思ってしまうセリフである。
声も大きいが負けじと身体もデカイ。柔道をしていた頃に良い肉を食べまくったからだと本人から何回も聞かされた。
裕福な家庭にどっぷり浸かったからこそのセリフだろう。聞く人によっては不快に思うかもしれないが、彼がそんな事をいちいち気にして言葉を発することはなかった。
そんなガタイの良い彼なのに、桜井さんにはどうも逃げ腰になっていた。
───去年のことだ。彼女の店を改装している時から、可愛い可愛いと何度もコーヒーを飲みながら俺は聞かされていた。それだけ言われたら、どれだけ可愛いのかと俺の評価も自然と上がって行ったのだが、見てない人を評価するわけにもいかなかった。
五十嵐さんも三十歳。特に付き合ってる彼女もいなかったし、冗談半分で言ってみた。
「告白したら良いじゃないですか」
「やっぱりそう思うか?」
まんざらでもない返答に俺は絶句した。
仕事上で知り合った、ただのお客さんに告白なんて、上手くいくはずないのは明白だった。逆に聞きたい、どれだけ自分に自信があるのですかと。
「その彼女、おいくつなんですか?」
「知らん。けど俺より若いだろうな」
「彼氏とかいないのでしょうかね?」
「知らん。けどいつも一人だからいないのだろう」
なんてお花畑なのか。仮に彼氏や旦那がいたらきっぱり諦めるのだろうか。毎日同じことを聞かされるこっちとしては、白黒付けてくれた方が助かるのだが。
いや、旦那ならともかく彼氏位なら俺の方が良いだろうと言い出しかねない。
「もし……付き合ってる人がいたらどうするんですか?」
「引っ越し改装に一度も顔を出さないような男なんざ、とっとと別れた方がいいだろ。この町に住むのなら俺と結婚した方が幸せだろ?」
「彼氏さんには自分の仕事があるのかもしれないし……。ほら、東京の店の片付けとか……」
「やっぱりそうなのかな?」
デカイ図体を縮め、弱々しい声を出す。なんなんだこの人は。周りお構い無しに豪快で勝手に物事を進めるかと思えば、未確認な情報にうろたえて。人間味があると言えばそうなのだろうが。
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