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第一章 夢から覚めたら

04 求人募集

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 電車内で恐らく会社の先輩と新人っぽい後輩だろう。

 今日の説教タイムをこの電車での移動時間に決めやがった。

 おい、その先輩とやら、そこまでにしとけよ。

 だいたい後輩、まして新人なら先輩がスキル上なのは平安時代より昔から決まっていることだろうに。

 平安時代の人からしたら先輩面してるお前なんかド新人中の新人も良いところなんだぞ。そこら辺を肝に銘じとけ。

 新人を教育するのも、新人の失敗を補うのも、上司から助けるのも全て先輩の仕事だろうに。

 それを電車でガミガミ言ってる時点でお前は職務放棄したようなものだ。つまり後輩の事を怒れる立場じゃないってことだ。自分の仕事を全うにしてからにしろってんだ。

 こんな先輩がいる会社に入ったら、運が悪いも群を抜いている抜きすぎているようなもんだ。

 有望な新人社員たちも心が折れて歪んでしまうだろう。つまり会社に不利益をもたらしているのは間違いなくこの先輩社員だろうに。

 俺が上司なら即刻無能さを見抜いてクビにするところだが、俺はまだ実力の半分の力もだしていない状態、つまり面接に向かっている状況なので、お前をクビにする立場は他の無能な誰かが居座っているということだ。

 今の会社にクビの皮が一枚繋がっているのは、本気を出してない俺のおかげだということに感謝して、とにかく新人を叱るのは今すぐ止めるんだな。

 後輩が入ってこなければ、いつまでたっても己が下っ端だということだ。つまり新人後輩はこれからの宝の人材だと言いうことを忘れるな。

 

 さて、気を取り直して、俺は昨日貰った求人募集のチラシを取り出し、昨日の事をまるで昨日の事のように思い出すことにした。

 

 <求人募集>

 やる気と正義感があって時間も余っている人

 年収一千万円 (研修期間あり)

 経験不問 ニート歓迎

 住み込み可 制服支給

 興味ある方は裏の履歴書に記入して

 気軽に面接してみませんか?

 面接時の服装は普段着でOK!

 からし屋マタジ

 

「どう見ても怪しい仕事だろう」

 ニートで時間が有り余っている俺は駅ビルの中にある本屋で用事を済ませ、少し気分転換に商店街のアーケードを目的もなく歩いていたら、可愛いメイド服を着た無表情なバイトの女の子がチラシを手渡してきた。

 金のない俺は、例えお得な情報であっても興味を示すことはなかったのだが、求人募集と記載されていたら無下に捨てるわけにもいかない。

 このままずっとニートをするわけにはいかない。

 好きでなったニートではない。

 貯金を使いながら生きている、言わば計画性のあるニートなのだ。

 だが、その計画では1年以内に就職する予定だったのだが、時が経つのは早いもので三年目に突入した四月が終わろうとしている。

 大学二年の時に単位が足らず留年決定と同時に俺は大学を中退した。

 実家を出て、地方で一人暮らしをしている俺は奨学金を借り、生活費はバイトで凌いでいた。

 学生専用の格安アパートを借りていた俺は、中退した時にアパートを出なければならなかったのだが、同じ大学だった友達の名前で借りてもらって住んでいたのだが、その友達も一度留年はしたが今年で無事卒業する予定なので新しい住まいを探さなければならなかった。

 バイトのやり過ぎで単位を落として落第。

 おかげで貯金があったのでニートの時の生活費はなんとかなったが、借りてた奨学金の返済がきついので高給の情報は魅力的である。
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