カテキミ ~if 家庭教師は正義と君の味方~

つきの麻友

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第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

18 仲良く

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「本当にここで良いのか?」

「うん。ホントはバッグ取り返してくれたお礼に私がご馳走しなきゃいけないんだし」

 俺は曜子と二人でファミレスに来ていた。陽子お勧めのシフォンケーキがある店は制服で行くような雰囲気じゃないしまた今度ということでファミレスになった。俺に金が無いようにみえたかな?陽子なりの気遣いだとしたら案外優しい一面があるんだな。

「それにウタル、お金持ってなさそうだしね。フフフ」

 前言撤回だな。

「ここ、新しく出来たばかりだから一度来てみたかったの」

「チェーン店なんだし何処も味は同じだろ?」

「レシピは同じでも微妙に違ってくるし盛り付け方で味も変わってくるのよ」

「へー、そうだったのか」

「そんなわけないじゃん。なんでも信じちゃうのね」

 この野郎、と思う前にバカみたいな話を普通に信じた自分が情けなくなる。

「さっきのエメラルダもそう。なんでも疑問にもちなさいよ。フフフ」

 陽子は楽しそうに俺をおちょくってくる。少しだけ沈黙があってから

「私、もうすぐ死んじゃうの」

「この流れでその話を信じるバカはいないよ」

「……そうだよね。けど、バッグ取り返してくれてホントにありがとね」

「大事なものとか入ってた?」

「おばあちゃんがくれたペンダント。ずっと大事にするっておばあちゃんとの約束だから」

「そか。じゃあ取り返した甲斐があったな」

「それよりさっきの黒い奴、わさび屋の嫌がらせなわけないよね。ちゃんと説明してちょうだいよね」

 ちょうど頼んでおいた美味しそうなパンケーキが運ばれてきたが、マズイ話になった。

 俺はドリンクバーのコーヒーを注ぐ為に席を離れた。どうしたものか。昔のヒーローじゃないし正体がバレたからと言って星に帰らなければならないとかじゃないし。

 適当に誤魔化して話が広まるよりきちんと説明して口止めしといた方が後々良いのかな。

 考え事しながらだとアメリカンかエスプレッソかも決めれずドリンクバーでボーっと突っ立っていたら、若造に声を掛けられた。

「オッサン、悩んでないで早くどけよ」

「ハハハハハ」

「あ、あぁすまんな」

 ドリンクバー近くの席に数人暇を持て余してますって感じのチャラチャラした若造が、行儀悪く座ってこっちを見ながら笑っていた。

 ここは新しく出来たと言っていたが、どこでもこういった連中っていうのはわらわらと湧いてくるんだな。

 こういった連中は群れると態度が大きくなるが、一人になるとそうでもないんだよな。もしくは店員とか自分より確実に弱者には強がったりするが。カッコ悪いって言うのに気づかないのは年頃のせいか躾の責任か。

 そんなことを考えながら順番を待ってやっとコーヒーを注いで席に戻ったら少々ご機嫌斜めらしく

「遅かったじゃないの。罰としてウタルのパンケーキ少し頂いたわよ」

 俺が頼んだパンケーキにはミントしか残っていなかった。

「美味しかったからさ、もう一度頼むのをお勧めするわよ」

「曜子がお勧めするなら仕方ないね」

 少しはご機嫌が直ったようだ。これもパンケーキのおかげなら安いものだ。女性を扱うのは不慣れだから機嫌を損ねた時の対処の仕方なんて甘い物を食べてもらう以外知らないからな。
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