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第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い
20 パンケーキの心配
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「さぁさっきの話の続き。黒い奴の正体教えてよ」
「んー。曜子がさっきの黒い奴が見えてること自体が謎のはずなんだよ」
「はず、ってどういうこと?」
「これは特殊に作られた眼鏡なんだけど、さっきの黒い奴は“W”って呼んでるんだけど“W”はこの眼鏡をかけていないと見えないはずなんだよ」
「へー。けど実際私にはしっかり見えたよ。眼鏡もコンタクトもしてないけど」
「おかしいよなぁ。見えないはずなんだけどな」
「はずってなによ」
「いやぁ俺も今日この仕事に採用されてそのまま実習してたから詳しくは分からないんだよ」
「え?なに?今日が初めてでいきなり死にそうになってたの?」
「まぁそういうこと。死ぬ前に所長が助けてくれてたと思うから死んではないと思うけどね。ただ聞いてたのより“W”が大きくて狂暴だったけどね」
「仕事初めでその“W”っていうのを退治して女子高生を救って私に出会えて、今日は人生の運命的な日だね」
最後の曜子に出会えたのが運命的な日かどうかは置いといて、確かにニートだった昨日までに比べたら今日は俺の運命を変えた日であることは間違いないかもしれないな。
その後も曜子は“W”のことを茶化しながらも眉唾物のような感じではなく現実的として聞き入れてくれた。こんなところは素直な子なのだろうか。単純と言えばまた不貞腐れるだろうから言わないでおこう。
「ウタルはずっとこの仕事を続けていくの?」
「まぁ本採用になれば給料もいいし、命の危険は自分の努力不足ならこれから改善できるだろうし、それに」
「それに?」
「“W”の仕組みは良く分かっていないけど“W”を退治することで人が本来の心を持って世の中が少しでも平和になっていく手助けができるなら続けていきたいなと思っているよ」
「ふーん。今日採用されたばっかりでもう夢を追いかけてるモードになってるんだね」
「素直なオトナだろ?」
「単純なだけじゃないの?」
「お前なー」
曜子は嬉しそうな顔で自分のシフォンケーキを食べて満足げだった。俺はまだ食べていない追加のパンケーキが待ち遠しかった。
曜子と“W”の話をしている時も、ドリンクバーにいた若造達はウエイトレスのお姉さんにちょっかいを何度もだしていた。
ウエイトレスは困った様子だったが仕事なので仕方ないという諦めもあったのだろうか。時折男性のスタッフが歩いて店内の空気をたしなめる様子も見られた。
その若造共は店を出たと思ったが駐輪場で馬鹿みたいな、いや馬鹿の大声ではしゃいでいる。窓際に座っている俺たちからはその様子が見たくなくても視界に入ってくる。
若造だし大きな犯罪もしてないだろうから俺は“W”退治の練習になるのではないかと閃いた。それに曜子にまた“W”が見えるのか確認がしたかった。もしかしたらあの時だけだったかもしれないし、“W”の大きさや形で変化があるかもしれない。
「今から駐輪場で騒いでる大馬鹿野郎共の“W”を退治してくるから、また“W”が見えるかどうか確かめてみよう」
「万が一さっきみたいなヤバイ“W”だったら逃げるんだぞ。俺も逃げるから」
「ウタルは逃げる前提の勇者なんだね」
「勇者見習い研修中だからいいんだよ。だいたいレベル一の勇者の最初の敵はスライムって決まっているんだよ」
「じゃあ表の若造達はスライムレベルかな?」
「女子高生に若造とか言われてるからスライムレベルだろうな。とにかく良く見て“W”が出たらサイン送るからヨロシク」
表の駐輪場に行きながら今一番心配しているのは、パンケーキがまた曜子に食べられないかどうかだった。
「んー。曜子がさっきの黒い奴が見えてること自体が謎のはずなんだよ」
「はず、ってどういうこと?」
「これは特殊に作られた眼鏡なんだけど、さっきの黒い奴は“W”って呼んでるんだけど“W”はこの眼鏡をかけていないと見えないはずなんだよ」
「へー。けど実際私にはしっかり見えたよ。眼鏡もコンタクトもしてないけど」
「おかしいよなぁ。見えないはずなんだけどな」
「はずってなによ」
「いやぁ俺も今日この仕事に採用されてそのまま実習してたから詳しくは分からないんだよ」
「え?なに?今日が初めてでいきなり死にそうになってたの?」
「まぁそういうこと。死ぬ前に所長が助けてくれてたと思うから死んではないと思うけどね。ただ聞いてたのより“W”が大きくて狂暴だったけどね」
「仕事初めでその“W”っていうのを退治して女子高生を救って私に出会えて、今日は人生の運命的な日だね」
最後の曜子に出会えたのが運命的な日かどうかは置いといて、確かにニートだった昨日までに比べたら今日は俺の運命を変えた日であることは間違いないかもしれないな。
その後も曜子は“W”のことを茶化しながらも眉唾物のような感じではなく現実的として聞き入れてくれた。こんなところは素直な子なのだろうか。単純と言えばまた不貞腐れるだろうから言わないでおこう。
「ウタルはずっとこの仕事を続けていくの?」
「まぁ本採用になれば給料もいいし、命の危険は自分の努力不足ならこれから改善できるだろうし、それに」
「それに?」
「“W”の仕組みは良く分かっていないけど“W”を退治することで人が本来の心を持って世の中が少しでも平和になっていく手助けができるなら続けていきたいなと思っているよ」
「ふーん。今日採用されたばっかりでもう夢を追いかけてるモードになってるんだね」
「素直なオトナだろ?」
「単純なだけじゃないの?」
「お前なー」
曜子は嬉しそうな顔で自分のシフォンケーキを食べて満足げだった。俺はまだ食べていない追加のパンケーキが待ち遠しかった。
曜子と“W”の話をしている時も、ドリンクバーにいた若造達はウエイトレスのお姉さんにちょっかいを何度もだしていた。
ウエイトレスは困った様子だったが仕事なので仕方ないという諦めもあったのだろうか。時折男性のスタッフが歩いて店内の空気をたしなめる様子も見られた。
その若造共は店を出たと思ったが駐輪場で馬鹿みたいな、いや馬鹿の大声ではしゃいでいる。窓際に座っている俺たちからはその様子が見たくなくても視界に入ってくる。
若造だし大きな犯罪もしてないだろうから俺は“W”退治の練習になるのではないかと閃いた。それに曜子にまた“W”が見えるのか確認がしたかった。もしかしたらあの時だけだったかもしれないし、“W”の大きさや形で変化があるかもしれない。
「今から駐輪場で騒いでる大馬鹿野郎共の“W”を退治してくるから、また“W”が見えるかどうか確かめてみよう」
「万が一さっきみたいなヤバイ“W”だったら逃げるんだぞ。俺も逃げるから」
「ウタルは逃げる前提の勇者なんだね」
「勇者見習い研修中だからいいんだよ。だいたいレベル一の勇者の最初の敵はスライムって決まっているんだよ」
「じゃあ表の若造達はスライムレベルかな?」
「女子高生に若造とか言われてるからスライムレベルだろうな。とにかく良く見て“W”が出たらサイン送るからヨロシク」
表の駐輪場に行きながら今一番心配しているのは、パンケーキがまた曜子に食べられないかどうかだった。
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