カテキミ ~if 家庭教師は正義と君の味方~

つきの麻友

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第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い

31 駅前4

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「そんなに全力で否定するものなのか?」

「当たり前でしょ?女子高生の噂って怖いんだよー。曜子の彼氏、こないだ駅で棒振り回してたわ。私も見た!ヤバイよねぇって噂なったら私学校行けないよ」

「確かに。現実そうだし、説明しても理解してもらえる自信がないな」

「でしょ?それよりポーチがあって良かったわぁ」

「そんなに大事なのかそれ?」

「中身がね。ペンダント入れてたの。これして水泳の授業受けるわけいかないでしょ?」

「ってことは今お前のバッグの中には脱ぎたての女子高生水着が入ってるわけだな?」

「バッカじゃないの!ホンっとにあんたは変態よね!変態ウタル丸」

「お前が勝手に言いそうだから今回は先に行ってやったんだ。本心じゃねーぞ」

「どーだか……」

 少し静かだなと思ったら曜子は寝てしまったみたいだ。瞼《まぶた》を閉じて少しだけ開いた唇。斜め上から見るからだろうか睫毛《まつげ》がやたらと色気を増して見せる。

 電車の揺れ方は疲れた時には心地よい子守歌になる。一人でも寝てしまった程水泳の授業に疲れたのか。到着したら起こしてくれる誰かがいるから安心して寝てしまったのか。それは誰であっても寝てしまったのだろうか。疲れても寝るほど心を許していなかったら意地でも起きていたのだろうか?答えのない答えを探しながら俺はそっと瞼《まぶた》を閉じた。

「ちょっといつまで寝てんのよ!ったく信じらんない!さっさと行くわよ!」

 降りる駅に到着して俺は曜子に揺さぶられながら目を覚ました。手を引っ張られて閉じそうな扉をなんとか通過して電車から降りた。

「しっかりしなさいよ!私が起きてなきゃ乗り過ごすところだったわよ」

 曜子に怒られながら改札口を出たところでダミ声と共に空き缶が足元に飛んできた。

「しっかりしなさいよー」

 振り向くとダミ声と愉快な仲間たち全部で五人がこっちに向かってくる。

 来るときに成敗したタバコポイ捨ての仲間らしい。飲み会の待ち合わせで着いたところを丁度俺が成敗したところだったようだ。その内の一人が曜子との会話を聞いていて忘れ物を取ったらまたこの駅に戻ってくると言っていたから待ち伏せしてみようってことになったらしい。結局は三人の敵討ちというか暇潰しがしたいのだろう。武勇伝でも作って旨い酒が飲みたい年頃といったところか。三十歳前後に見えるんですがねぇ。育ちが悪いのか社会が悪いのか景気が悪いのか?俺は五人一気にブラックソードで切りつけ出てきた“W”を成敗した。

 俺の素質か!?と言ったら梓さんにうぬぼれるなって絶対言われるだろうけど、所長の教え方がきっと良いのだろう、ブラックソードの使い方が意のままにできる感じがした。身体が軽く、決して“W”も全てが雑魚ではないはずなのに成敗しても疲れが最初の頃に比べたら殆どしないで済む。おかげで最初は一体一体倒していた“W”も今みたいに一気に五体まとめて倒せるようになった。やっぱりこれは所長の教え方にプラスして俺のセンスってことにしておこう。梓さんには言えないけど。

「見える!見えるよー!!」

「なにが!?」

「“W”!!さっきの“W”五匹全部見えたよ!」

「どういうことだ!?」

 確かにさっきの“W”は五体のうち四体は大型犬、残りは牛位の“W”だった。
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