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第四章 智慧
72 過去は全て現在におさまる03
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「な、なんで……?」
そうとしか言いようがなかった。あんなに仲良く接してこれたと思っていたのに、思っていたのは自分だけだったのかと。
「私はあの時、病院で治療するかしないか最後の選択の日だったの!私は治療しないで死を選んだのよ?その日にウタルに出会ったのよ。何も知らないウタルは私の夢の為に必死に勉強を教えて……合格しても卒業まで命が持たないのに……」
泣いてるせいなのか言葉に詰まりながら曜子は続けた。
「私は死ぬ運命だった!その運命を受け入れた日にウタルに出会った!なのに今日までの間、どれだけ運命を憎んだと思う?ウタルとの何気ない日々を過ごす度に死は近づいてくるの。いつウタルに言おうかって思ってても言えなかった……ウタル、一生懸命お仕事して真っ直ぐ生きてるんだもん……」
ゴメン……。自然と出た言葉だった。曜子の事を何も知らなかった俺は、思い返せば傷つけるような事も言っただろう。謝っても取り戻せないが謝るしかなかった。
「……違うの……。ウタルと一緒にいることで、死ぬ覚悟をした自分に嘘をついてることに気付いたから!言ってももう遅いのに!言ったらウタルに嫌われるから!」
俺はポケットからペンダントを取り出してテーブルの上に置いた。全てはこのペンダントから始まったのだ。
「ウタルと離れたくない!死にたくない!一緒に生きていたいよぉ……」
泣き叫ぶ曜子を引き寄せ、強く抱いた。自然ととった行動に驚いているはずなのに、どこか落ち着きを感じながら確信した。
これが、愛しいという感情なのだと。
ずっと胸の真ん中に引っかかっていたもの。
愛という字は、真ん中に心がある。
言葉でも、頭の中でも理解するものなんかじゃない。愛は、心で感じるものなんだ。
腕の中で大声で泣き続ける曜子の頭を、くしゃくしゃになるまで撫でた。小さく震える曜子がこんなにか弱く思ったのは初めてだった。腕に涙の温度を感じた。
泣き続ける曜子の涙が、テーブルの角に置いてあったペンダントに落ちた。
次の瞬間辺りは真っ暗になり、鏡から放たれた光に部屋は包まれ、俺と曜子は光の渦にとけていった。
全ての偶然が重なりあって一つの必然を生み出し、その必然が偶然を呼び合って繰り替えしていく。
あの日、マタジに面接に行かなければ
あの日、曜子があの場所を歩いていなければ
無数の偶然が重なりあって俺と曜子は出会う。
けどそれは出会う運命だったはず。
運命は変えられない。だけど自ら導くもの。
俺は曜子を引き寄せ
曜子は俺を引き寄せた
世界に何十億という人がいるのに
今抱き合っているのは運命以外考えられないよ
俺は曜子と抱き合っていた。
いつかみた夢のように、水の中にいるよな感覚で
夢と違うのは、抱いているのが曜子だとはっきりわかること
「……ここは?」
目を覚ましたかい?
ここは俺の夢の中かもしれないし、曜子の夢の中かも。二人が同時に同じ夢を見ているのかもしれないし。
「なんで二人とも裸なの?」
わからないけど、もしかすると母の胎内なのかもしれないな
「お母さん?」
ふわふわ浮いて気持ちが良く、不安な心が一切なかった。
人は誰でも母から生まれてくる。俺達が生れて出会えたのも、両親が出会ってくれたからなんだ。今の自分がこの世に存在していることを両親に感謝しないといけないね。
その両親も母から生まれてくる。じいちゃん、ばあちゃんと、ずっとずっと昔があって今があるんだよ。
今から思えば俺達が出会うのは運命だったってこと。遠い昔からの運命だったはずだよ。だけど
「だけど?」
これからの運命は自分たちで切り開いていくものなんじゃないかな。その結果を未来の自分や子孫が運命って決めてくれるんだよ。
「でも、私……」
これから変えるんだよ。未来は今から作られる。今の連続が未来になるんだ。
無理だと諦めてる自分を変えるんだ。死ぬまで諦めちゃいけない。俺もいる。
俺が曜子の未来を今から変えるよ。
二人なら出来る。その為に出会う運命だったんだよ。
「……うん」
見つめ合ってた俺達は互いに瞳を閉じた。
そうとしか言いようがなかった。あんなに仲良く接してこれたと思っていたのに、思っていたのは自分だけだったのかと。
「私はあの時、病院で治療するかしないか最後の選択の日だったの!私は治療しないで死を選んだのよ?その日にウタルに出会ったのよ。何も知らないウタルは私の夢の為に必死に勉強を教えて……合格しても卒業まで命が持たないのに……」
泣いてるせいなのか言葉に詰まりながら曜子は続けた。
「私は死ぬ運命だった!その運命を受け入れた日にウタルに出会った!なのに今日までの間、どれだけ運命を憎んだと思う?ウタルとの何気ない日々を過ごす度に死は近づいてくるの。いつウタルに言おうかって思ってても言えなかった……ウタル、一生懸命お仕事して真っ直ぐ生きてるんだもん……」
ゴメン……。自然と出た言葉だった。曜子の事を何も知らなかった俺は、思い返せば傷つけるような事も言っただろう。謝っても取り戻せないが謝るしかなかった。
「……違うの……。ウタルと一緒にいることで、死ぬ覚悟をした自分に嘘をついてることに気付いたから!言ってももう遅いのに!言ったらウタルに嫌われるから!」
俺はポケットからペンダントを取り出してテーブルの上に置いた。全てはこのペンダントから始まったのだ。
「ウタルと離れたくない!死にたくない!一緒に生きていたいよぉ……」
泣き叫ぶ曜子を引き寄せ、強く抱いた。自然ととった行動に驚いているはずなのに、どこか落ち着きを感じながら確信した。
これが、愛しいという感情なのだと。
ずっと胸の真ん中に引っかかっていたもの。
愛という字は、真ん中に心がある。
言葉でも、頭の中でも理解するものなんかじゃない。愛は、心で感じるものなんだ。
腕の中で大声で泣き続ける曜子の頭を、くしゃくしゃになるまで撫でた。小さく震える曜子がこんなにか弱く思ったのは初めてだった。腕に涙の温度を感じた。
泣き続ける曜子の涙が、テーブルの角に置いてあったペンダントに落ちた。
次の瞬間辺りは真っ暗になり、鏡から放たれた光に部屋は包まれ、俺と曜子は光の渦にとけていった。
全ての偶然が重なりあって一つの必然を生み出し、その必然が偶然を呼び合って繰り替えしていく。
あの日、マタジに面接に行かなければ
あの日、曜子があの場所を歩いていなければ
無数の偶然が重なりあって俺と曜子は出会う。
けどそれは出会う運命だったはず。
運命は変えられない。だけど自ら導くもの。
俺は曜子を引き寄せ
曜子は俺を引き寄せた
世界に何十億という人がいるのに
今抱き合っているのは運命以外考えられないよ
俺は曜子と抱き合っていた。
いつかみた夢のように、水の中にいるよな感覚で
夢と違うのは、抱いているのが曜子だとはっきりわかること
「……ここは?」
目を覚ましたかい?
ここは俺の夢の中かもしれないし、曜子の夢の中かも。二人が同時に同じ夢を見ているのかもしれないし。
「なんで二人とも裸なの?」
わからないけど、もしかすると母の胎内なのかもしれないな
「お母さん?」
ふわふわ浮いて気持ちが良く、不安な心が一切なかった。
人は誰でも母から生まれてくる。俺達が生れて出会えたのも、両親が出会ってくれたからなんだ。今の自分がこの世に存在していることを両親に感謝しないといけないね。
その両親も母から生まれてくる。じいちゃん、ばあちゃんと、ずっとずっと昔があって今があるんだよ。
今から思えば俺達が出会うのは運命だったってこと。遠い昔からの運命だったはずだよ。だけど
「だけど?」
これからの運命は自分たちで切り開いていくものなんじゃないかな。その結果を未来の自分や子孫が運命って決めてくれるんだよ。
「でも、私……」
これから変えるんだよ。未来は今から作られる。今の連続が未来になるんだ。
無理だと諦めてる自分を変えるんだ。死ぬまで諦めちゃいけない。俺もいる。
俺が曜子の未来を今から変えるよ。
二人なら出来る。その為に出会う運命だったんだよ。
「……うん」
見つめ合ってた俺達は互いに瞳を閉じた。
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