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猫耳姫達との出会い

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「残念だったわねぇ、お兄さん」

 色気のある声で言われたのが逆に残念と感じるほど、整った顔立ちで気品のある女性に思える。悪女っぽい風に見えるのは化粧の仕方によるのだろうか、それとも大きく開いたガウンの胸元が恥ずかしげもなく見せられているからだろうか。

 オスとして単純に思うのは、フェロモンという魅了する見えない物質に巻き込まれていくのがわかっていても、逆らえない定めに従うしかないといくこと。それはこの状況でも素っ裸の俺は誰が見ても、先程まで鉄仮面で隠していた部分が反応していることで一目瞭然である。

 悶絶快楽マシーンである貼り付け台に背中を合わせたら思っていたよりも冷たくて、肩をすくめる。その拍子にくしゃみが出たためなのか、悶絶快楽マシーンが後ろに倒れてしまったのだ。

 台に乗っていた俺は、道ずれになって一緒に倒れたのだが、ざわつく部屋の中で誰もが油断をしていたのだろうか、扉へ向かって走り部屋からと悶絶快楽マシーンからの脱出に成功した。

「さいなら! ロイエルーン! また会おうー会わないと思うけどー」

 長くて広い廊下を走りながら外を見るとこの建物がとてつもなくデカイということがわかった。小学校くらいの大きさはあるのだろう、コの字型の建物の中庭には大きな噴水も見えた。

「ここってどこかの城か?」

 レンガ作りの建物の中を走りながら繋がっている他の建物をみて素直に思ったことを口走る。個人で所有するなら城と表現するのも間違いないが、中世のヨーロッパのような雰囲気に感じた。

 外の中庭が一瞬で曇ったのだが、その曇り方が異常に早く感じたので空を見て雲を確認しようとした。

 すると、巨大な羽を広げた鳥と言ってよいのかわからない程の巨大な生き物が飛んで去っていった。

「巨大翼竜?一体どうなっているんだ、この世界は」

 飛び去って行った生き物の心配よりも今は自分の心配を優先することにした。

 まず、この城のような建物の構図を知らない俺が逃げ続けることはリスクが高すぎるだろう。

 かと言ってこの城から出てもどこに行けば良いかもわからないし、とにかく素っ裸で外に出るのにも抵抗がある。

 この世界について調べる前に素っ裸をなんとかするのが先決だと思った俺は、追手が見えないのを確認して適当に部屋に入った。

 中から鍵ができることに安心したのか、鍵を閉めて部屋の中にある大きなソファに腰かけた。早く適当な服を見つけて城から出たかったのだが、色々ありすぎて頭の中を整理するつもりで目を閉じる。

 走ったために乱れた呼吸を整えながら異世界転生について考えていた。現実逃避をしていても意味がないので、転生したと仮定して考えることにしたその時に声を掛けられて飛び起きた。

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