令嬢である妹と一緒に寝ても賢者でいられる方法を試してたらチート能力が備わった件

つきの麻友

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仮説スワンプマン

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「まだ名前を言ってなかったな」

 背中に打撃を受ける。

「俺は月野ウタル」

 今度は下腹部に。

「二十二歳」

 後ろから抱きつかれおんぶの状態。

「おじさんじゃないよ」

 前からも抱きつかれてバランスを崩して倒れてしまった。

「黙って聞けよー!」

「うさぷーはわるいかいじゅうだよー」

「うさぷー怒っちゃだめー。カイトはいつもニコニコしてやられてるよー」

「俺はうさぷーでもカイトでもねー!」

 落ち着けと言わんばかりに、俺は二人を振りほどいて大きなベッドに腰をかけた。

 二人は俺の両サイドに座って、ピョンピョン跳ねている。落ち着けと。

「おじさんはどこから来たの?」

「おじさんじゃなくて、月野ウタル。俺は遠い遠い所から来たの」

「ウタルー?」

「私はミゼルーン・シュバイツェル。みんなミゼルって呼んでるからミゼルって呼んでね。そしてこの娘は私の妹でキャゼルーン」

「それで、お母さんがロイエルーン?」

「そう、ロイエルーン。パパはリーゼンバッハ。どっかいっちゃったけどね」

「おーさまだよー」

 王? この国の王がミゼルのお父さんなのか? どっか行ったって? そこは子供には聞きにくいなぁ。

「じゃあお母さんはロイエルーン王妃ってこと?」

「そうよ。私はお姫様になるの。えへへへ」

 満面の笑みは十歳の無邪気さか。

 俺は腕を組んでベッドに身体を倒して天井から吊るされた豪華なシャンデリアを見つめた。その後両サイドには、同じようにベッドに寝転がった勢いで両足を天井に向けて遊んでいるミゼルの真似をキャゼルもしようとしては、バランスを崩して足が俺の方に倒れたりして攻撃に変わる。

「お母さん、怖いか?」

「ママは優しいよ。ジュリアにはいつも怒られちゃうけどねぁ」

「ジュリア?」

「そう、ジュリアーノ。ママや私たちの世話をいつもしてくれるの。怖いんだよー」

 ロイエルーンの隣にいた女性がそのジュリアであるのだろうと思いだす。

「ところで俺にできることでなにかしてほしいことないかな?」

「うさぷーであそぶー」

「カイト最近忙しいからね。キャゼルもミゼルも退屈ー」

「そうか。ママにお話に行ってママやジュリアーノが怒ってきたら庇ってくれるかな?」

「いいよー。おまかせー。その後でまたうさぷーで遊んでね」

「あぁ、わかった。無事に話が済んだらな。せめてブラックソードだけでも取り戻さないと」

「フフフ、ダンナ。ブラックソードはもう既に一本持ってるじゃないですか?」

 だから、どこでその喋り口調を覚えたんだ。中身が十歳だから微妙に違うんだな、下ネタの境界線が。

「よし! じゃあ取り戻しにいくぞ!」

「おーーー!」

「その必要はありません」

 鍵をかけておいた扉が開き、ジュリアーノという女性が言いながら部屋の中にスタスタと入ってくる。当然のように入ってくるのは合鍵を持っていたのだろう。

「おー、ジュリアー」

「お嬢様、こんな得体の知れない男を部屋に入れてはいけません」

「ウタルはいいひとだよ。うさぷーで遊んでくれたし」

「そうですか。丁度良い、その者、ロイエルーン様が命の保証をしてくださるので探し出して連れてまいれとのご命令だ」

 俺は腕組をして考えた。ジュリアーノの言葉が本当なら話し合いの余地があるかもしれん。俺をおびき出すとっさの嘘なら飛んで火にいるだが。

 どちらにしても行くつもりだったし、ブラックソードを取り戻さないとな。

「わかった、行こう」

 腕組をしたまま、ジュリアーノの言葉に乗った。

「その格好でかっこつけても冗談にしか見えないぞ」

「ぐぬぬ」

「素っ裸の方がロイエルーン様は喜ばれるかもしれんがな。ハッハハハ」

「ぐぬぬぬぬぬ」

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